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『アンダードッグ 1〜2 』 作者:裏道一辺倒 / 未分類 未分類
全角8903文字
容量17806 bytes
原稿用紙約27.95枚
〜クソガキどもの再会〜


 目が覚めると日はもう傾きかけていた。時計を見ると四時半を指している。俺は欠伸をしながらベッドから抜け出るとベランダに出てタバコに火をつけた。深く吸い込んでしばらく息を止め静かに吐き出す。ゆっくりと消えていく煙の向こう側から冬の終わりを告げる暖かい日差しが俺を照らす。不意に焦りを感じた俺は八つ当たりをするように太陽を睨みつけた。



 部屋に戻ると留守番電話に一件録音があった。マツからだ。マツは小学校からの腐れ縁で毎日くだらない理由をつけては俺を呼び出す。今日はいったいどんなお誘いだろう。俺はとりあえず再生ボタンを押した。
『ちゃーっす!今日女の子と飲み会の約束取り付けたからそのつもりでー!起きたら電話くれやー』
 ったく、マツはよくやるぜ。昨日俺が女と遊びたいって言ったら早速約束取り付けてやがる。さすが彼女いない歴二十年なくせに週四ペースで「しっぽり」してる男だ。俺は子機を持つとトイレにこもりマツに電話をかけた。
 ワンコールも鳴り終わらないうちにマツは電話にでた。
『うーっす。なんだ、今起きたのか』
「おお。あれだー、今日の夜…」
『ちょい待て。お前クソしながら電話してくんなよ』
「あ、わかる?」
『臭ってくんだよ!』
「うっせーな。今日の夜どーすんだよ」
『おー、取り合えず飲むのは七時に約束したけどよ』
「おお。んで?」
『俺らは作戦会議があんじゃん?』
「なんだよ、作戦会議って」
『今日はお泊りする気でいっからよー、相手は一人暮らしの大学生二人組みだぜ』
 ったく、この男は。
『だからうまく物事運ぶために作戦会議しなくちゃじゃん?』
「あー、わかったわかった」
『じゃ、今から広場こいよ』
「は?今すぐ?」
『おお。平気だべ?』
「まーな。シャワー浴びたら行くわ」
『OK。んじゃ後でな』
 クソ、落ち着いて飯食う暇すりゃありゃしねー。



 俺は急いでシャワーを浴びるとクローゼットの前で五分ほど悩み、服が決まると財布をポケットに突っ込んで外に飛び出した。夕日はもうマンションの影に隠れそうになっていた。広場までは走って五分。小学校の頃はサッカーや野球をし、中学高校の頃は溜まり場にしていた所だ。今はもっぱら待ち合わせ場所にしているが行くと相変わらず中学、高校の同級生がいることからすると溜まり場ってことに変わりはないのかもしれない。
 広場につくと、マツはもう待っていた。その横には男が一人立っている。あれ、二対二じゃないのか?
「おう、お待たせ」
「おお、待たされました」
「うーっす。久しぶり」
 マツの隣にいる男が声をかけてきた。金髪のロン毛をオールバックにし、白のダブルのスーツを着ている。袖から覗いて見える時計も高そうだ。年は俺と同じくらい。どう見てもカタギじゃない。最近多いチャラチャラした筋者かホストか。
「…誰だっけ?」
 俺は少し身を硬くして答えた。昔はともかく最近はそっち系と関わっていない。
「おいおい、忘れちまったのかよ!俺だよ」
 男はそう言うと俺の目を覗き込んできた。この冷たいようでどっか温かい目は見たことある。
「えーっと…」
「ったく、しょーがねーな。ケイゴだよ」
「あーーー!!ケイゴ君だ!久しぶりぶりじゃん、何やってんのこんなトコで」
「本気で忘れてたのかよ」
 ケイゴは拗ねたようにそう言うとタバコを取り出し吸い始めた。ライターも随分と高そうだ。
「五分くらい前に来たらさー、いきなりベンツ停まってケイゴ君降りてこっち来るんだもん。一瞬びびっちまったよ」
 マツが本当に焦った表情で言った。
「んでさー、いきなりシュウどこいるか知ってるってさー聞かれてさ、もうすぐ来るよって言ったら丁度お前がついたんだよ」
 俺はケイゴを見たが、ケイゴは横を向きタバコをくわえたまま何も話そうとしない。仕方なく俺は自分から話しかけた。
「んで俺に何の用なのさ?」
 ケイゴは少し何かを考えるように首をかしげ、おもむろに言った。
「まあ、ここじゃなんだからとりあえず車乗れよ」



 ケイゴの車、ベンツのC200コンプレッサーリミテッドに乗った俺たちはしばらく口をきかなかった。まったくケイゴは何をして金を稼いでいるのか。俺なんかベンツどころか免許をとる金すらない。
「シュウは中学卒業してからどーしたんだっけ?」
 おもむろにケイゴが話し出した。
「あー、俺は工業にいったけど一年で退学になっちゃってさ、去年の春から通信通ってんだ」
「まじかー」
 薄暗いこの見慣れた町の中をベンツに乗って移動するのはなんだか不思議な感じだった。
「マツもシュウも成人式来なかったべー」
「だってかったりーじゃんかよ」
 もうすっかり落ち着いたマツはいつもの調子を取り戻していた。
「かったりーかー。ハハハ、お前たちらしいや」
「何がおかしいんだよ?」
「わりーわりー、気にすんな」
 俺たちは駅前のファミレスに入った。
「いらっしゃいませー。三名様ですか?」
 散々使いまくり、磨り減った笑顔をウェイトレスが俺たちに向けた。ケイゴはウェイトレスを無視し奥のボックス席に陣取った。
「好きなもの頼めよ。奢ってやるよ」
「まじで?わりーな」
 マツは早速メニューとにらめっこを始めた。
「話ってなんなのさー」
 俺はタバコに火をつけながら聞いたがケイゴは答えようとしない。
「まあ、食う物食ってからでいーべよ」
 マツは奢りと聞いてからすっかりくつろいでいる。俺は仕方なくウェイトレスを呼びパフェとメロンソーダを注文した。
「なんだよ、ガキみてーなもん頼むんだな」
「こいつは中学のときからちっとも成長しねーんだよ」
 マツとケイゴは心底おかしそうに笑っている。うるせーな、好きなもんは好きなんだから仕方ないじゃんかよ。俺はそう思ったが口に出すのはやめて違うことを聞いた。
「ケイゴ君は卒業してから何してたん?たしか高校は行かなかったべ」
 ケイゴは少しは照れたような笑いを浮かべながら言った。
「俺は卒業してからすぐ家飛び出したんだけどさ、金なんか全然無かったんだよ。稼ぎがいい仕事っつたら現場か夜の仕事じゃん?俺は作業服着る気無かったから夜の世界に飛び込んだんだよ。しばらく皿洗いとかボーイとかやってさ、したら社長に声かけられたんだ。そしてホストになった。でも駆け出しのホストの稼ぎなんてたかが知れてるだろ?俺は汚いこともやったよ。殺し以外なら何でもやった」
「殺し以外って…」
 マツが引きつったような笑いを浮かべながら口を挟んだとき、ウェイトレスが注文したものを持ってきた。ケイゴはコーヒーを一口飲むと再び話し始めた。
「そのうちコツがわかってきてさ、あっとゆー間にナンバーワンだよ。女なんか簡単さ。あのベンツも客にプレゼントされたんだ」
「まじかよ!」
「うっそ!?」
 俺とマツはほぼ同時に声を上げた。たしかにホストが女に貢いでもらうっていう話はよく聞く。しかし、それはあくまでテレビの中だけの話だ。リアルに知ってる奴が貢がれてるというのを聞いて、俺は正直動揺した。
「こんなことで嘘つくかよ。そんで今じゃ二件ホストクラブ経営してる。この不況の中でもかなり儲かってるぜ」
 それならこんなファミレスで奢るくらいわけないわな。俺は少しむかついたがケイゴの努力を思うとむかついた自分が恥ずかしくなった。
「んでさ、話ってなんなのよ」
 アイスティーのストローをくわえたままマツが聞いた。
「ああ、それがさー、ちょっとめんどくせー話なんだよ」
 そう言うとケイゴはタバコに火をつけた。
「俺はさー、もう結構派手なことできねーんだよね。なんつーの、夜の黒い世界にも昼間の白い世界にも顔が知れすぎたってゆーか」
 ケイゴはそこで深く煙を吸うとゆっくり吐き出しながら続けた。
「俺みたいに汚いこともやってっとその辺のチームの情報とかもどんどん入ってくんだよね。うーん、グレイゾーンってゆーの?黒と白の中間の世界ってゆーか。そのグレイゾーンで聞いたことのある名前が飛び交ってんじゃん?」
 そう言うとケイゴは俺の顔を覗き込むようにして見てきた。
「この辺のチームじゃ一番でけえギャングのナンバーツーなんだって?シュウは」
「昔の話だよ」
 俺は最後までとっておいたウェハースをかじりながら言った。
「俺はもうガキのイザコザから引退したしナンバーツーじゃねーよ。ギャングにはちゃんと入ってなかったし。かったりーじゃん?そーゆーの。相談役みたいのしてただけ」
「まあ、似たようなもんだべ。それにマツも工業のときでけえ出入り繰り返してたらしーじゃん。しかもシュウのとこと繋がってたりしたらしいじゃん?」
「俺はペーペーだよ」
 マツはもうふてくされはじめていた。
「まあ、そうふてんなよ。そんで今二人ともバイトもなんもやってねーらしーじゃん」
「なんで知ってんだよ!」
 マツが怒鳴りながら身を乗り出した。店内が一瞬シンとする。
「何こそこそ嗅ぎまわってんだよ!ケイゴ君らしくねーじゃんかよ!」
「まあ熱くなんなよ。悪いって思ってるよ」
 ケイゴは静かに言った。
「これは俺が汚いことやってたときに世話になってた人の頼みで断れないんだよ。だから仕方なくお前たちのこと調べさせてもらった。勝手にやって悪かったと思ってる。すまない、勘弁してくれ」
 ケイゴは真っ直ぐマツの目を見つめて言い、頭を下げた。マツは苛立ちを隠そうとはせずに椅子にそっくり返るように座りなおした。
「…めんどくせーことはやりたくねーけどよー、取り合えず話だけでも聞かせろよ」
 俺は隣のテーブルからこっちをチラチラ見ているカップルを睨みつけながらケイゴに言った。
「…わかった。とりあえず最後まで聞くだけでも聞いてくれ」
 ケイゴはそう言うと静かに話し始めた。



〜幕開けは頭痛とともにやってくる〜


「ったく、ケイゴ君も超めんどくせーことに首突っ込んでるなー」
 ファミレスを出てケイゴと別れた俺たちは商店街へと向かっていた。あたりはもうすっかり暗くなり、道を行く人々はうつむき加減で足早に歩いていく。俺たちはまわりの流れに逆らうかのように横に二人並びわざとゆっくり歩いていた。
「まあ、汚い大人たちからすれば俺らみてーな何もしてねーガキは都合のいい捨て駒なんだろーけどよー。ケイゴ君もかったりーことに巻き込んでくれたべなー」
 マツはいまいち納得しきれていない表情を浮かべている。
「ケイゴ君も今まで必死だったんだろーなー。俺らが喧嘩だなんだやってられたのも親に食わしてもらってるからだしなー」
「まーなー」
 俺は通りに面した八百屋の店の中を覗き込み壁にかかっている古臭い時計を見た。いつの間にかもう六時四十分だ。
「女の子とどこで待ち合わせしてんの?」
「駅だよ」
 マツはさっきまでの表情はどこに行ったのか、もうにやけ始めている。
「…でもケイゴ君の話聞いた後だとあんまテンションあがんねーな」
 マツは妙にやさしい目で俺を見ながら言った。
「バーカ、それとこれとは別じゃんよー。思いっきり楽しまなくちゃ!…シュウ今年になってまだ童貞なんだべ?」
「お前ってゆー男は…。どこで飲むんだよ」
「うーん、やっぱハッピーしかねーべ」
「クソ、またハッピーかよ」
「文句あるならいい店紹介しろよ」
「知ってるわけねーだろー」
 俺たちはお互い罵り合いながら、しかし胸のうちには淡い期待を抱きながら駅へ向かって歩いていった。



 ケイゴの話はこういうものだった。
 最近、この町に合法ドラッグが出回っているという。合法ならいいんじゃないかと言われそうだが元々この町じゃマリファナ以外はご法度だ。合法ならって軽い気持ちでやれるのもが出回ると今までマリファナをシノギの一つにしてきた裏社会の方々はたまったもんじゃない。はじめは組織の方々がプッシャーを探そうとしていたが派手に動き警察沙汰になりマリファナのシノギが駄目になるのを危惧し(まあ、今は警察はマリファナを黙認してるような、めんどくせー事は勘弁みたいな)、逮捕されても知らぬ存ぜぬで通せる、逮捕されても組織の名をださないとわかってる俺らみたいなストリートに巣食う暇人にやらせることになったらしい。
 それともう一つ、これも最近の話だがここ一週間ホステスやキャバ嬢が仕事帰りに何者かに襲われているという。これは当然警察沙汰になっているが毎月ミカジメ料をとっている組織としては犯人を黙って警察に渡すことはできないのでこっちもそれとなくあたってみてほしいということだった。
「めんどくせーとは思うけどさー、やってみてくんないかな。頼むよ」
 ケイゴはそう言うと深く頭を下げた。
 俺とマツは顔を見合わせしばらく考え込んだ。
「…いつまでにやんなきゃいけねーんだよ」
 マツがボソリと呟くように言った。
「いつまでとは聞いてねーけどさ、あの人たちも気が短い上に血の気は多いからさ…。まあ、無理にとは言わねーけど…」
「つってももう俺らの名前が出てんだべ?」
「まあ…ね」
 チッと小さく舌打ちをし、マツはそっぽ向いた。マツの腹は決まったらしい。
「まあ、いい暇つぶしにはなるべな。しゃーねー、やってみっか」
 マツはそう言うと同意を求めるように俺を見た。
「クソ、かったりーけどケイゴ君の頼みだからな」
 俺はそう言うと氷が溶け薄まったメロンソーダをすすった。
「ほんと悪いな。ありがとう。うまくいったら報酬弾むって言ってたからさ」
 ケイゴはそう言うと安心したようにタバコに火をつけた。
「あんまアテにすんなよ?もしも今回がうまくいってもあんまめんどくせー話持ち込んでくれるなよ」
「わかってるって」
 俺たちはその場で携帯の番号を交換し、その後一時間ほど中学校の思い出話に花を咲かせ店を出て別れたってわけだ。



 駅につくと女の子たちはもう来ていた。これから家に帰る人、遊びに行く人、何をするでもなくボーっとしてる人などで駅はごった返していた。まだ七時前だというのに、すでに千鳥足のリーマンが俺にぶつかってきた。なんか文句を言ってるようだが、ろれつが回らず何言ってるかわからない。その男の部下らしい人がしきりに俺に頭を下げてネオン街のほうへ歩いていった。クソ、反吐か出る。この町は昔から変わらねー、金とゲロとタンポンが入り混じったような所だ。
 しかし、そんな俺の苛立ちも女の子を見ると一気に吹っ飛んだ。駅に向かう道程で、俺とマツは軽い作戦を立てていた。今回の飲み会は相手の女の子のうちの一人をマツがナンパしたらしくて、マツはその子を、俺はその子の友達のほうを担当して落としにかかる作戦だった。
「こんばんわー、トモミでーす」
「ミカでーす」
 マツ担当のほうがトモミで、俺のほうがミカだ。
「…どーも。シュウです」
 俺ははっきり言ってあがっちまった。それもそのはず、ミカは背が低めで、痩せすぎず太りすぎず、髪は肩までの黒で、小さい顔に大きい目、ちょっぴり南国フレイヴァー。それに控えめに言って巨乳。マチガイナイ、俺のモロ好みだ。神様ありがとう、俺頑張るよ!



 居酒屋ハッピーは商店街の終わりにある、家庭的な店だ。と言っても、この店の二代目になる予定のヒコちゃんとは幼稚園からの付き合いだからもう第二の家と言ってもいいかもしれない。だから家庭的に感じるのかもな。俺らは週に二回はハッピーにきちゃグダグダやってる。
 俺たちはハッピーに向かいながらお互いの事を話した。ミカとトモミは同じ大学で学部も同じらしい。何の学部かも聞いたが何のことかさっぱりわからなかったから忘れることにした。学歴社会の崩壊の波は俺らの足元まできてるらしくて、俺が未だ通信高校に通っていると言ってもまったく態度は変わらず、俺は内心安心した。俺ははっきり言って学歴にコンプレックスがある。ストリートのギャングどもはまったくそんなこと気にもせず、毎日楽しくやっているみたいだが、俺は開き直ることもできず、かと言ってしっかり勉強して大学にいきもう少しまともな人生を送ろうって気にもなれなかった。はっきり言って中途半端。大人になるのを嫌がってる燻ったクソガキだ。
 ハッピーにつく頃には俺たちはすっかり打ち解けていた。最初の緊張はどこいったのか、俺もいつものペースを取り戻していた。
「こんばんわーっす」
 開き戸を開けると、そこには見慣れた光景が広がっている。ヒコちゃんのおばちゃん、おじさん、そしてばーちゃんが忙しそうに動き回っている。カウンターには馴染みのおっさんが座り、水割り片手におじさんと話している。
「あらあら、シュウちゃんいらっしゃい。あら、今日は女の子も一緒なのね」
「へへへ、たまにはね。おばちゃん奥の座敷いい?」
「うん、いいわよ。シュウちゃん今日もCDかけるの?」
「うん、いい?」
「いいわよ」
 俺はミカたちを座敷に案内すると、カウンターの中に入りCDを数枚手に取った。ハッピーに来るたび持参のCDをかけさしてもらううちに、いつの間にか俺のCD置き場ができていた。
 俺はThe Notorious B.I.G.のReady To Dieを選ぶとコンポの前に立った。
「なんだい、兄ちゃん今日は女連れか?」
 おっさんが話しかけてきた。
「うっす。俺もたまには女とも遊びますよ」
「俺もわけー頃はそりゃあ随分といわしたもんだぜ」
 おっさんは遠くを見るような目で笑いかけてきた。
「今じゃこんなになっちまったけどな」
 ガハハハと豪快に笑いおっさんは水割りをおかわりした。
 スピーカーからゆっくりとThihgs Done Changedがかかり始める。
「兄ちゃんはホントこーゆーの好きだなー」
 おっさんはしばらく曲を聴いていたが頭を振り言った。
「駄目だ、ちっともわからねえ。こりゃ英語か?」
「そーっすよ」
 俺は他のCDを片付けながら答えた。
「最近のはこーゆーのを聞くのか。まあ、あんまアメリカに洗脳されんなよ。最近日本人はどーも大和魂を無くした気がしてならねえ」
「俺もそー思いますよ。でもまあ、こーゆーのがいいって思う時点で洗脳されてんのかもしれないっすけどね」
 俺はおっさんとの話もそこそこに座敷へ戻った。おっさんはいい人なんだけどどーも絡み癖がある。今日の俺はそんなのに付き合ってる暇はない。ちらっとおっさんのほうを見ると、再びおじさんと話し始めたようだ。俺はすでにきていたビールのジョッキを持つと立ち上がり叫んだ。
「おっしゃーー!今日はとことん飲むぞーー!!」



 コーヒーの香りで俺は目を覚ました。その香りの向こうには甘い女の匂いがする。寝起きの霞む目であたりを見回すと、まったく見覚えのない部屋にいた。
 どこだここは。
 やたら頭が痛い。必死に思い出そうとするが頭痛が邪魔をしまったく思い出せない。
「あ、目ー覚めた?」
 声のするほうを見ると、ミカが髪の毛を拭きながら笑っていた。
「今コーヒー入れてくるね。ちょっと待ってて」
 立ち上がり歩き始めるミカの背中に俺は呟いた。
「…み、水」
「はいはーい」
 コーヒーと水を持って戻ってきたミカの手からひったくるように水が入ったコップをとり、俺は一気に飲み干した。
「大丈夫?二日酔い?」
 ミカは心配そうに俺の顔を覗き込んで聞いてきた。
「ああ。クッソ、頭いてー…」
「とりあえずシャワー浴びる?」
「おお」
 俺はミカからタオルを借りると熱めのシャワーを頭から浴びながら昨夜のことを思い出そうとした。しかし、何も思い出せない。
 シャワーを浴びたら少し頭痛が弱まった。
「あのさー、俺昨日のこと何も覚えてねーんだけど…」
 化粧をするために鏡とにらめっこしているミカに話しかけた。
「うっそー!ホントに何も覚えてないの?」
 スッピンでもミカは十分可愛い。
「そんじゃあんなこともこんなことも覚えてないのー?」
「なんだよ、あんなこともこんなこともって…」
 やったのか俺は。やってしまったのか!?
 俺は若干の焦りを感じつつミカに聞いた。
「サイッテー」
 ミカはふてくされたようにプクッとほっぺを膨らました。ガキっぽいがこれも可愛い。
「なんだよ、俺なにしたんだよ!」
 俺の焦りはピークに達しようとしていた。ヤバイ、俺やったのか?やったんなら覚えてねーってのは悔しすぎるぞ。
 突然ミカは笑い出し目に涙を浮かべながら言った。
「ウソウソ、シュウ君なんもしてないよ!昨日飲み始めて一時間もしないうちにシュウ君潰れちゃって仕方ないからみんなでミカの部屋にきたんだよ。さっきまでトモミもマツ君もいたんだけど、なんかトモミの部屋見たいとか言っていっちゃった。なんか昼頃広場で待ってるって」
「おお、まじかー。びびったー」
 俺は安心しつつもちょっぴりガッカリしたがそれは表に出さず、コーヒーに口をつけた。
「んで今何時?」
「えっとねー、十二時半」
「なんだよ、もう昼じゃねーか。俺行くわ」
「ちょっと待ってて!ミカも一緒に行く!」
「…おお」
 俺は座りなおしタバコに火をつけ、ミカの部屋を眺めた。俺やマツの無機質で男臭い部屋とは違い、なんだかほんわかした女の子らしい部屋だ。
「ジロジロ見ないでよー!恥ずかしいじゃん、散らかってるしー」
「おお、わりい…」
 俺は慌てて目線をコーヒーに移した。これで散らかってるって?そんなら俺の部屋はゴミ溜めじゃねーか!
「ゴメン、お待たせ!そんじゃ行こっか」
ミカは化粧が終わると手早くカップなどを片付け玄関に向かった。
「おお」
 俺はスニーカーに足を突っ込み外に飛び出した。アパートの廊下から身を乗り出すと日はもう頂点に達していた。雲一つない、しかし春の訪れを告げるかのように妙に灰色っぽい空が俺を出迎えた。
「天気いーねー」
 ミカが眩しそうに空を見上げた。その横顔も可愛い。マツ、グッジョブ!
 広場に向かって歩き始めた俺たちを後押しするかのように、南から吹く強い風が俺の頭痛に会心の一撃をくれた。


2004/02/26(Thu)13:39:00 公開 / 裏道一辺倒
■この作品の著作権は裏道一辺倒さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちわ。読んでもらえたら幸いです。

とりあえず、ここまでの登場人物です。
土屋 修(シュウ)二十歳。通信高校生。ストリートでリスペクトを集める。HIPHOPが全て。
松尾 健治(マツ)二十歳。専門学校生。ナンパ大好き。熱くなりやすい。
長谷川 圭吾(ケイゴ)二十歳。シュウとマツとは中学校の同級生。卒業と同時に町を飛び出し今では夜の帝王。
藤原 靖彦(ヒコ)居酒屋ハッピーの二代目予定。シュウの幼馴染。
杉本 美佳(ミカ)大学二年。大学進学からシュウたちの町で一人暮らしをしている。シュウの心をくすぐるコ。
鈴木 智美(トモミ)ミカの友達。ミカと同じ大学に通う。

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