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『少年A』 作者:小都翔人 / 未分類 未分類
全角1243.5文字
容量2487 bytes
原稿用紙約4.3枚
・・・A.D.2065

−少年Aの罪状
『・・・神戸市須磨区に住む少女(当時15才)に対し、執拗なストーカー行為
 を繰り返したあげく、2月6日未明に同少女を殺害し・・・・・』


少年Aは現在ここ、”ラグドール・サイバー裁判所”の被告席に居た。

俯いたまま、じっとデスクを見つめながら。

所内には大音量で、2000年のアルバムプライマル・スクリーム『エクスターミネーター』が流れている。”すべてのヒッピーどもをぶっ殺せ!!”

裁判長ロボット”バンチョー”が、高らかに開廷を告げた。

「いよぉぉぉぉ〜いぃぃ〜・・・はじめぇぇぇ!!!」

検事ロボット”ケンチャン”が、口からオイルを飛ばしながら、まくしたてる。

「ぎ、ぎ、ぎるてぃーーー!!死刑だ!!死刑だ!!死刑だ!!」

弁護士ロボット”ワダベン”が、豊かなバリトンで穏やかに反論する。

「あのですねぇ。やはり・・・。少年はですねぇ。保護されるべきであって・・・。」

すると、検事ロボットはますます激しくなる。

「バカ言ってんじゃね〜!!有罪!!重罪!!有罪!!重罪!!」

裁判長ロボットが、アクビをしながら切り出した。

「あの〜。音楽を、いわゆるバック・グランド・ミュージックを変えてもよろしいかね?」

検事ロボットと弁護士ロボットは、にらみ合ったまま頷いた。

音楽が突如、『パガニーニ』に変わる。

すると、それまで穏やかだった弁護士ロボットが、大声で訴えた。

「おお!こ、こんな音楽はやめてください!!せめて、せめて、モーニング娘。に!!」

検事ロボットも珍しく同調した。

「アチキも・・・。実は・・・。モーニング娘。が聞きたかったとこで・・・。」

裁判長ロボットは、舌打ちをしながら音楽を切り替えた。

”娘”たちの歌が流れ始める。

「あーつまんねー!!そろそろお仕舞いにしたいんだけどさー!!」

ムっとした口調で、裁判長ロボットが切り出した。

「そうしましょ!」
「そっすね!」

検事ロボットと弁護士ロボットが、同調した。

そして、陪審員ロボットたちが、”あーでもこーでもねー”話し合いをするために、ぞろぞろと退廷していった。

陪審員ロボットたちの顔ぶれはさまざまだ。打撃練習用ロボット”イチロー”、能書きロボット”コイズミ”、料理人ロボット”ウメミヤ”などなど。

少年Aは、なにかを祈るような表情で、彼らを見つめていた。



しばらくして、わいわいがやがやと賑やかに、陪審員ロボットたちが戻ってきた。

少年Aは、じっとしたまま動かない。

やがて、陪審員長である仕切り屋ロボット”イカリヤ”が、こそこそっと裁判長ロボットに囁いた。

廷内の全ての視線が、裁判長ロボットに注がれる。

少年Aも、身を乗り出さんばかりに集中した。

裁判長ロボットは、さんざん勿体ぶった後で、高らかに判決を告げた。


「え〜・・。ヨツビシデンキ製品である、少年型ロボット”タイプA”は、明らかに欠陥製品である。よって、”少年A”をスクラップ処理とする!!」





閉廷
2004/02/06(Fri)16:01:53 公開 / 小都翔人
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