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『洞穴』 作者:小都翔人 / 未分類 未分類
全角921文字
容量1842 bytes
原稿用紙約3.25枚
「そういえば、乱歩の短編に”防空壕”ってあったね。」

タカシは健一に問い掛けた。

「あぁ・・。前に読んだことがあったような・・。」

二人は都内に住む、中学三年生。幼い頃からの遊び仲間だ。

「しかし、こんな所に洞穴があったなんて、どうして今まで気が付かなかったんだろう?」

「少なくとも、俺らの仲間内じゃあ、ココ知ってんのは俺たち二人だけだな!」

二人がこの洞穴を発見したのは、つい三日前のことだった。

小学生時代によく遊んだ、緑多い小山。”K山”に久々に行ってみよう、という会話からだった。

タカシは小さい頃、祖父から戦時中の防空壕での話しを、よく聞かされていた。

二人は今日、リュックに必要品を詰め込み、ここへやってきた。

この洞穴に入ってみるつもりである。

懐中電灯のスイッチを入れ、ゆっくりと中へ入っていった・・。

「うわぁ・・。やっぱり狭いね。それに肌寒いわ・・。」

「もっと厚着してくれば良かったな。」

しばらく進んだ。もう入り口の日差しは全く見えなくなっている。

「あ!だ、誰かいるぞ!!」

健一が叫んだ。

「え!!ど、何処!?」

タカシは健一の指す方向へ、懐中電灯の光をあてた。

「あ!!」

男が座っていた。

全身、血糊のついたボロボロの兵隊服。ヘルメットの下から覗く、延び放題の蓬髪。顔の下半分を覆う髭・・。

「う!!うわぁ〜ッ!!!」

二人は出口に向かって、一目散に逃げ出した!!

「ハァハァハァハァハァ・・・あ!!入り口が!!」

二人は愕然とした。さきほど入ったばかりの洞穴の入り口が、土砂で埋まってしまっていたのだ。

「そ、そんな!!出られない!!」

二人はリュックを投げ出すと、必死になって土砂を手で掻き分けた・・・。



・・・数日後。

捜索隊によって、二人の少年は発見された。

激しい疲労と衰弱のため、全身やせ細り、精神的にも異常をきたしているらしかった。

しかし、発見した捜索隊のメンバーは、二人の少年の行動が理解し難かった。

洞穴は、わずか入り口から5、6メートルほどの一本道。

少年たちは、その洞穴のどん詰まり、つまり”入り口の正反対側”を必死で掘り続けていたのだ。

爪を剥がし、血まみれの両手で・・・。



2004/02/06(Fri)12:37:19 公開 / 小都翔人
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