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『虹を捕まえた少年』 作者:葵 まひる / 未分類 未分類
全角2027.5文字
容量4055 bytes
原稿用紙約7.1枚
『知っているかい?虹を捕まえた少年がいるんだよ。』

小さい頃、父さんがそんなことを言った。
出会った頃には、もう既に父さんは寝たきりになっていた。
僕と父さんは70、正確には68歳の歳の差がある。
血のつながりはない。
後妻に入った母さんの連れ子が僕だった。
僕が10歳の時のことだ。
母さんと父さんとの歳の差は50歳。
夫婦というよりも、親子…いや、少し若めの祖父と孫か…。
でもきっと、人に言われなければそれが普通だと僕は思い続けただろう。
実際には、普通だと思っている。
他人が嘆き哀れむほどのことは、何もない。
父さんは、ただ母さんを愛して、
母さんは、ただ父さんを愛している。
お互いに口で言っているわけではない。
それは日々同じ時を過ごしていると自然と伝わってくるものだ。

「虹を捕まえることなんてできないよ。」

幼い僕は父さんにそう言った。
すると父さんは、顔の前で手を合わせ目を瞑った。1、2秒してからそっと手を扇形に開く。

「わぁ・・・」

そう言った僕の目の前には小さな虹があった。

「少年は、虹を捕まえた後どうなったと思う?」

父さんは、手で虹を作ったまま顔だけを僕に向けて少し寂しそうな笑顔で尋ねた。
父さんの顔と白くて清潔な布団には虹色の光が移っている。

「お父さんとお母さんに見せに行った!」

僕ならそうすると思い、そう父さんに言葉を返した。
父さんは悲しそうな笑顔のまま、ふふふと笑う。
僕は、その笑顔を見るのがとても悲しかった。
きっと、幼いながらも父さんが隠し持っていた辛かった過去を感じ取っていたのだろう。

「違うの?」

父さんは、教えてくれなかった。そのかわり、

「千歳、父さんと同じように手を広げてごらん。」

同じように、手を広げた。
すると父さんは僕の右手に左手を、僕の左手に右手を重ねた。
その途端、体の中を何かが駆け抜ける感じがした。
背中がヒュンとなると、その感じも消えた。
さっきまであった虹が、父さんの手のひらにはもうない。

「大切にな。」

そう言った父さんは、その夜遅く静かに深い眠りについたままどこか遠くに行ってしまった。
そして父が遠くに行ったのと同じ頃、僕は夢をみた。
若い夫婦が公園にいる。まだ幼い少年と少女の夫婦が、子供を連れている。
生まれて間もないらしく白くてきれいな布に大切にくるまれていた。
手を一生懸命動かして、何かを取ろうとしている。
空を仰ぐと、大きくてきれいな虹があった。
母親らしい少女は、空を見上げた後幼い子を見ながら何か語りかけていた。
父親らしい少年は、急に虹に向かって走り出した。
走って走って、それでも虹には追いつけなかった。
でも少年はあきらめず、休んでは走って休んでは走って。それを何度か繰り返した。
しかし、虹には追いつけなかった。

ふと休んだ木の影に何かきらきらと光るものがある。
少年は、そのキラキラ光っている所をのぞいた。
すると、小さな虹があった。
少年は、捕まえようとかまえたが、それに気付いたらしい虹がパッと逃げた。
少年は慌てて追いかけた。
虹は、動きが早く少年はつまずきながらも逃してなるものかと言わんばかりに一生懸命追いかける。
小さな虹は動きは速いのだが、好奇心が多いらしく寄り道をよくした。
その隙を狙って、少年が両手で虹を捕まえた。
すると、虹が強い光を放ちながらじたばたした。
少年は逃がすまいと必死に抱え込む。

その格闘が1、2分続いたかと思うと、パッと光が止んだ。
少年が勝ち誇ったような顔をしたのも束の間、急にうろたえ始めた。
辺りをキョロキョロする。
違うのだ。
景色が全く違うのだ。何となくさっきの景色の名残はあるものの、微かでしかない。
少年は、急いで少女の待つ場所まで走って戻った。
走りっぱなしだったので、相当疲れているはずなのにそれを感じさせないほどの速さで走っていた。
少年の耳を過る音は風がスピードを付けて走り抜ける音だけだった。
雑木林を抜けると、そこには少女と子供がいるはずだった。
しかし、誰も居ない。
それよりも、ここはどこだろう?少年はますます狼狽える。
急に、強い風が通り抜けた。
その風によって運ばれた新聞紙が少年の足に止まる。
少年は、狼狽えたままの顔で新聞紙を取り、今度は信じられないと言うような顔をした。
そして、「ここは、50年前なのか…?」と呟いた。
今まで、声が聞こえることはなかったのに、その言葉だけははっきりと聞こえた。
その直後、母さんに揺り起こされた。


その夢をその後みることは一度もなかったが、どういうわけかあれから10年経った今でもはっきりと覚えている。

「やっぱり、千歳はお父さんに似ているわ。」

学年があがればあがるほど、母さんはその言葉を言うことが増えた。
血の繋がった僕の父さんのことを言っているのだろうと思ったのだが、父さんの書斎で見つけた古い写真を見て確信ができた。
僕は、血の繋がった父さんに瓜二つだと。

〜 end 〜
2004/01/20(Tue)02:18:16 公開 / 葵 まひる
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/3232/
■この作品の著作権は葵 まひるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
『虹を捕まえた少年がいるんだよ。』そう言った義父は虹を持っていた。

初の投稿作品です。これからたくさん書いていけたらなと思ってますので、よろしくお願いします♪
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