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『ようこそ天国へ』 作者:笹の葉 / 未分類 未分類
全角787文字
容量1574 bytes
原稿用紙約2.75枚

手を擦って、離す。
離した手を戻そうとすると、少しだけゴムのような抵抗が生まれる。
これを、『気』と呼ぶんだそうだ。

俺は、この気を出すのを何日か練習してみた。
慣れてくると、その気の大きさを調節する事にも成功した。
ふくらんだ気は、俺の両手ほどにまでなるようになった。
これを応用して、脚で床を擦ってみる。
やった、成功した。僅かに気が生まれて、俺の体がゴムみたいな物に乗っかって浮いている。
俺は、脚の下の気も大きく出来るようになった。
よし、この調子だ。
ベランダに出ると、空中浮遊を愉しんだ。
そろそろ夜だ。夜の街を見下ろすのはなかなか気持ちがいいぞ。
風も出てきた。でも、この風も丁度よくて気持ちいい。
よし、もっともっと上に行こう。俺は、ますます気を大きくした。

しばらく上に行くと、一つの大きなマンションから、こっちを見ている女に出会った。
さぞかし驚いてるんだろうなぁ。俺は自慢してやろうと思って近づいた。
「おい、俺スゲェだろ?」
女はええそうね、とそっけなく頷いた後、深刻そうな顔で付け足した。
「でも、これ以上上に行っちゃ駄目よ。まだあなたには早いわ」

そう言われると、行ってみたくなっちゃうんだよな。
俺は、女の忠告を無視して、ますます上に上がっていく。
―――あれ、こんな繁華街あったか…?
俺の目の前には、今まさに賑わっている繁華街が広がっている。
そこも見下ろせるくらい高く高く上がっていく。

一面が花畑になった。
俺は嫌な予感に襲われる。嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ。
でも、もう引き返す事は出来ない。
がむしゃらに花畑をかき分けて進んでいく。
俺の目の前が、一面光り輝く。
なんとも言えない威圧感を、上から、下から、横から、全ての角度から感じる。
…ちょっと、やばいんじゃないの、コレ?

俺の目の前にあったばかでかい扉が、ゆっくりと音を立てて開いた。
その向こうには―――
2004/01/08(Thu)15:06:47 公開 / 笹の葉
■この作品の著作権は笹の葉さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
この『気』という現象に興味を持ったんで書いてみました。
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