- 『私の先生5 先生の部屋』 作者:ぱちこ / 未分類 未分類
-
全角1032文字
容量2064 bytes
原稿用紙約3.55枚
あの時、手をぐいぐい引っ張られて何がなんだか良くわからなかった。
けどやっと現状を把握できるようになった。
「いや、先生自分の家で消毒できるから!そこまでしなくていいです」
「・・・・・」
無言のまま私は先生の家についた。
綺麗なマンション。
「いやぁ。綺麗・・ですね・・」
「そこに座れ。」
そこ・・といいますと。何も無いんですが。ただのカーペットなんですが。
わたしにどうしろと。
とりあえず体育座りで座った。
「おまえ・・やっぱアホだな。そこってそこのイスだよ」
「え!あぁ!そこにイスあったんだ!あっは・・っは・・・・」
すいません。緊張してるんで。と言いたかったけどやめといた。
救急箱からいろいろととりだす先生。
「傷消毒するから少ししみるぞ」
ちょいちょいと傷口を脱脂綿で優しく拭いていく先生。
今私は先生を見下ろす角度になっている。
「(うわぁ・・せんせい睫毛ながーい。つむじかわいい・・)」
なーんて事思ってると激痛が走った
「ぎゃ!!!」
・・・色気の無い声だことで。
どうやら傷の汚れがなかなか落ちなかったのか。強くこすられた。
「ちょ!先生!い、いたいいたい!あっ、も、もうちょ、優しくやってよ!!」
「・・おまえあんま大きい声だすな。しかもそんなセリフで・・・隣に変な誤解 されるだろうが」
「誤解?そんなのされないよ。なんで?」
(ちょ!先生!い、いたいいたい!あっ、も、もうちょ、優しくやってよ!!)
思い出すさっきの私の言葉。
「・・・・ああ。すいません。さっきのは流石に誤解されますね。いやぁ。すいません」
先生の顔がほんのり紅いなんか私は気付きもしなかった。
脱脂綿が終わって消毒液が終わって・・・
「できたぞ。」
「あー。ありがとうございますー。さってと。さっさと帰りますか。」
マフラーをまいて、コートを着る。
「待て、茶ぐらい、出す。」
「え・・」
すごい嬉しい。でも。
「センセ、あのさ、もう私を期待させないでよ。このまま、さっさと帰らせてよ。」
せっかく先生のこと諦められそうなのに。
家に呼ばないでよ。
優しく傷の消毒しないでよ。
茶ぐらい、出す。なんて。滅多に言わない言葉言わないでよ。
「・・じゃ!さよなり!」
ばたばたと先生の部屋を後にして急に膝が痛み出した。
「・・・もう、嫌だなぁ。」
溜まる涙、もう流さないって決めたのに。
追ってこない先生。あたりまえか。
先生のあっけにとられた顔もすごく愛しいと感じた。
愛しい人よ。
愛しい、人 よ。
-
2004/01/05(Mon)15:07:23 公開 / ぱちこ
■この作品の著作権はぱちこさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
あけましておめでとうございます。
「先生の部屋」とかいって!
妖しい題名ですいませんでした。
今年もいい年でありますように。