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『自分の価値 〜アースの一撃〜』 作者:神無陰 聖夜 / 未分類 未分類
全角1350文字
容量2700 bytes
原稿用紙約4.45枚

 エイク・アースは、何気ない動作で煙草を投げ捨てた。
 辺りは一面見渡す限り、荒野が続いている。
 全てが枯れ、崩れいく世界。
「アース・・・」
 腰に付いている通信機が怒鳴り始めた。いつも聞いてる大佐の声で、通信機はさらに続ける。
「アース、応答しろ」
 アースは溜息をついて、通信機を取り上げた。
「こちらアース」
 無感動にアースは答える。
「て・・敵は近・・い・・・ぞ・・気を・・・」
 音波が乱れている。
「つけ・・ザ・・ザーザー・・・」
 とうとう通信が途絶え、仕方なくアースは通信機を再び腰に戻した。
 今日の仕事は同行することになった新人のロウ・マトスは、青ざめた顔でこちらを見ながら、自分の武器の長剣(剣の一種だが、ここでは両刃で刀身が細いものを指す)の鞘に自分の手を置き、いつでも抜けるように用意している。おそらく、初めての仕事に緊張しているのだろう。
 アースは通信が途絶えると、次の新しい煙草に火をつけようと、ライターを取り出した。
 カチッ。
 火が出ない。
 何度か試してみたが、諦めてライターを遠くへ放った。刹那。
 ゴトリ。
 岩の影で何かが動いた。
 マトスの顔が、さっきよりも一層蒼白になり、すばやく長剣を鞘から引き抜く。しかし引き抜いた手は震えている。
 アースは動きを止め、火の付いていない煙草を噛みながら様子を窺う。もちろん、自分愛用の剣(マトスの剣に比べると刀身が太い)の柄を握り締めながら。
 モンスターだ。
 気づいたときには、敵の口から吐き出された緑色の液体が宙を舞い、アースに向かって飛行していた。アースはその液体を、体を回転することによって避けた。そして、避けられた液体は、アースのすぐ傍にあった焚き火に直撃した。
 ジューという音と共に、火は消え、白い煙をあげながら木屑は溶けていた。見る限りでは、『超』の付くほどの強力な酸のようだ。
 アースは転がりながら、自分の肩に装備していた剣を、待ちわびたとばかりに、一気に引き抜いた。
 敵はもう一度、その強酸を撃ってきた。
「下がれ!」
 アースはマトスに向かって叫んだ。
 そう、次の強酸の液体はアースではなく、恐怖で硬直しているマトスに向かっていた。
「う、うわぁ〜」
 マトスは、反射的に剣を盾にしたため致命傷はまぬがれたものの、防ぎきれなかった酸はマトスの足に当たり、マトスの両足は白い煙を上げ、衣類もろとも肉を溶かしていった。マトスの肉はすぐに溶け、今では煙の奥から白い骨が真っ赤な血の奥から微かに顔を出している。
「ひぎゃぁ――――――――!!」
 マトスの苦痛の叫びが天を裂く。
 アースは、比較的大きな岩の影に隠れ、敵の位置を見定める。
 モンスターが、マトスにとどめを刺そうと近づいている。
 マトスは、恐怖で体が震え、涙を流しながら、はいづりでモンスターから遠ざかろうとしている。地面には、はった跡に真っ赤な血の道を作っている。
 ザシュ――――――
 まさに刹那。モンスターがマトスに触れるか触れないかのところで、アースはモンスターの背に渾身の力を込め剣を振り下ろした。モンスターは呻いて倒れ、その一生に終止符を打った。
 アースは敵の死を確認した後、マトスのもとへ向かい、すぐさま通信機を取り出し、本部へ連絡する。
2004/01/01(Thu)00:06:08 公開 / 神無陰 聖夜
■この作品の著作権は神無陰 聖夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
皆さん初めまして。
この話は...もう少しだけ続きます。
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