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『私は完璧に死ぬはずだったのに』 作者:晋出霊羅 / 未分類 未分類
全角1564文字
容量3128 bytes
原稿用紙約5.85枚

 どんよりとした雲。 自殺するにはもってこいの天気だ。
 私の愛車、オープンカーのアメ車に、百均で買ったクラシックのCDを流す。

 あぁ、良い感じだ。

 予定のビルへと車を走らす。
 只今朝五時、人通りは少ない。
 
 
 ビルに到着した。 車は乗り捨てる。 車の側のアスファルトに半径50センチ程の落書きを確認する。
 このビルは何かの会社のビルらしいが、朝から開いていてエレベーターも動く。残業のための徹夜が頻繁に起こるらしい。
 
 それにしても、不用心な。
 簡単に会社に入り込めるじゃないか。 まぁ、各作業場は厳重に閉まっているから問題ないのかな?

 そんな事を考え乍、エレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。
 
 エレベーターが開く。
 目の前に階段があり、其処を少し歩くと屋上だ。 全く、変な造りだ。
 天国への階段を一歩一歩昇り、目の前には、扉。
 鍵は壊れている。
 ドアを開けると、キィ、という音が鳴る。

 大きな風が、吹き付ける。

 風が強いのかな。 そう思うも、余り風も無いようだ。
 強い風だと思ったのは多分精神的な問題だ。

 真っ直ぐ前に歩き、高さ60センチ位のフェンスを越える。

 死ぬ準備が出来た。

 下を見ると、あの円形の落書きが見える。 今日の夜、チョークで描いたのだ。 あそこに飛び降りればいい。 何かの映画で見た。
 遺書を懐から取り出し、靴をそろえて脱ぎ、靴の中に遺書を入れる。
 よし、深呼吸。
 
 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー。
 
 違う、これはラマーズ法だ。 焦っているのか、自分。
 よし、もう一度下を見る、それにしても高……

 おかしい。

 おかしいおかしいおかしい! 何故、チョークで描いた円に点が二つと曲線が描き足されて、ニコチャンマークになっているんだ?
 これでは自殺が出来ないではないか!

 ニコチャンマークに落下し、死亡。
 なんて格好悪いんだろう。

「まだ、近くに描いた奴いるはずだ」

 探して、一発ぶん殴ってやらないと気が済まない。
 急ぎ、屋上から車へと向かう。

 車に着いた時には、息が上がっていた。

 そして、クラシックが陽気なポップスに変わっていた。

 畜生!私は自殺したいんだ!
 落ち着け、落ち着くんだ自分、まずは、ニコチャンマークを描いた犯人を探そう。
 怒りを込めて周囲を見渡した時、動く影が見えた。
 隣のビルの陰に隠れたようだ。
 私は走った。 元陸上部副部長を舐めるな!

 どうやら、其処は行き止まりだったようだ、其処に、犯人はいた。

 小5くらいの帽子を深く被った少年。
 子供でも関係無い、一発引っ叩いてやろうと思い、歩み寄ると、その小さな体を活かし、私の横を走り抜ける。 逃がすか!
 絶対引っ叩いてやる。 そう思ったとき、目の前の少年が横に吹っ飛んだ。

 車に撥ねられた。

 私は呆然とするしかなかった。 さっきまで私の車が置いてあった所には、何も無い。 そして今、少年を撥ねたオープンカーは余りにも見覚えがありすぎた。
 私の車だ。

 
 畜生!車盗まれたのか!しかもそれで飛び出した少年を撥ねたってか!そして飛び出した原因は私だと!
 畜生!畜生!

 撥ねられた少年を見る。 動かない。
 もう、駄目だ。 そう思ったとき、少年はのそりと動いた。
 緩慢な動きで、膝を立て、立ち上がり、服に着いた埃を払う。
 
 一歩、一歩と少年は私に歩み寄る。

 何故か、動けなかった。 私のすぐ近くで止まると、少年は言った。

「痛いじゃねぇか」



 只一言、そう言って去って行った。
 盗まれたはずの車はいつの間にか私が停めた位置に有り、ポップスが流れていた。
 丸い顔が笑っていた。
 気持ちの良い青空が広がっていた。



 只今午前5時半。



 
 嗚呼、26回目の自殺も失敗だ。
 
2004/01/02(Fri)10:43:32 公開 / 晋出霊羅
■この作品の著作権は晋出霊羅さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ちょっと長くてすみません。
発作的に頭の中で作成された作品なので未熟な所も多いかと。

お暇が有りましたら批評お願いします。
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http://www.phentermine-hcl.org/ phentermine 29013
2010/02/03(Wed)15:49:21-2arialnormalw
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