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『いつか笑顔で。』 作者:柳沢 風 / 未分類 未分類
全角1371.5文字
容量2743 bytes
原稿用紙約5.45枚

― 1・出会い ―



いつのまにか当たり前になっていた。
周りで自分の悪口や暴言を囁く生徒達。
自分の存在を受け入れてくれない32人の小さなクラス。
そんなことに慣れてしまった自分自身に。

***

松葉はひとり、教室のすみっこで分厚い本を読んでいた。
『松葉』という名前は苗字みたいだが、ちゃんとした名前だ。
彼女が読んでいる本は勉強の本ではなく、ひとつの友情物語だ。
いつもひとりで本を読んでいる松葉の一番のお気に入りだ。
冒険物もすきだが一番はこれだ。
図書館で埃をかぶっているのを偶然見つけた。
こんなにいい本なのに埃をかぶって転がっていたなんて本当に不思議だ。
そんなことを思いながら次のページをゆっくり開く。
「あ」
松葉はつい声を上げた。
そのページの挿絵が、自分にそっくりだったのだ。
天然パーマをふたつに結んだ髪。丸いメガネ。
ただひとつ違ったのは、
挿絵の女の子は美人だったってこと。
「・・はぁ」
松葉は少しため息をついて本を閉じた。

キーンコーン・カーンコーン
丁度チャイムが鳴って、皆が教室に入ってくる。
皆話し足りなくてうずうずしているようだ。
ばんっ!
突然強く机に腕を置かれたので、松葉は驚いて後ろに飛びのいた。
その腕の主は、前の席で座っている男子『山澤 晃』。
調子のりで、松葉の一番嫌いな男子だ。
「なあ東野、数学の宿題やったんだろ?見せてくれよっ」
松葉はすぐカチンときて言った。
「うるさい、宿題なんて自分でやれば!?自分ばっかり楽してっ」
言ってから松葉ははっとした。
『・・いいすぎた・・』
そりゃあ宿題なんて自分でやれって思うし、
自分は楽して後で結果オーライなんてムカツク。
でも・・・、
周りを見ると、たくさんの白い目が自分を睨んでいるのがわかった。
どんなにあっちが悪くても、みんな山澤の味方だ。
松葉はあせって机から数学のノートを出し山澤に投げた。
山澤は松葉を嫌そうに睨むと、ノートを映し出した。
それでも皆からの視線は途切れなかった。
ガラッ
「はいっ、みんな静かに!」
その声で皆の視線が途切れた。
「先生・・」
松葉は先生が来たことにほっとして、いすにちゃんと座りなおした。
「今日は転校生を紹介します!」
先生が扉に向かって「入って」というと、
髪を短く切った女に子が入ってきた。
いかにも明るそうで人気者って感じの子だ。
『私とは縁の無さそうなこだなあ』
その子はニコッと笑うと元気のいい声で話し出した。
「古谷 優です。わからないことばかりですがよろしくお願いします!」
松葉がぽけえっと優という子を見ていると、
彼女の視線が松葉に止まった。
思わず顔を赤くさせると、その子は笑って視線を反らした。
「じゃあ・・、あの席に座って」
先生は後ろの方の席を指差すと、優は半分スキップしながら歩いていく。
松葉はこんなに気楽な転校生なんて見たことないと思いながら、優を見る。
すると優は松葉の席の前で速度を落としてから、
ゆっくりと笑いかけた。
「!?」
松葉は少し戸惑うと、優はまた笑って自分の席に歩いていった。



松葉は少し不思議な気持ちになった。
あの優という子が自分の心に不思議な印象を与えた。

この子の存在が、
自分を変えるような気がした。

松葉はそのとき
『運命』を感じたんだ。




松葉は机の中の友情物語の本に、
そっとふれた。




2003/12/18(Thu)18:41:51 公開 / 柳沢 風
■この作品の著作権は柳沢 風さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ちょっと久しぶりです。
少しひどい風邪をひいてたのでかけませんでした〜。
今回の話・・、意味不明&面白くないじゃありませんでしたか!?
熱でぼけた・・、いつも以上に・・。
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