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『満星の使』 作者:赤 長月 / 未分類 未分類
全角1170.5文字
容量2341 bytes
原稿用紙約3.8枚
【満星の使】

一つの世界がある。その世界には天使と人間、そして神が共存していた。
人間は雑穀を耕し糧をつくり、神はその人間を災厄から守り、天使は神の僕として働いていた。
その世界は四の地に分かれている。丁度楕円の大地を均等に五つに割った国土。
佐波(さは)国、企都(きと)国、亞峨(あが)国、侘納(たな)国である。各々には帝王が居り、国土を統一し、神の力を借りて国を守っていた。
その四の地―通常は大陸と称すのだが―とは別空間、しかし同じ世界、に天使と神が住まっていた。世界は同じだが空間は違う。人間には見えないが、何時も隣に、隣国として存在しているのだ。大陸を陽とすればその空間は陰。対照に、だが同じように時を刻み、同じように動いている。

さて。物語は亞峨国から紡ぎだされる。

亞峨国最北部、佳要(かよう)の寒村に妖魔の唸り声が上がった。同時に血と肉片が舞う。それは一人の男だった。
それを合図としたのか、妖魔が狂ったように家家を物色し始めた。
妖魔だぁー
殺されるー
村人の恐怖に刈られた叫びと妖魔のほうこうが響く。一人、一人と妖魔に食われ人は死んでいった。
恐怖のあまり腰が抜け、そのまま餌となった女がいる。
半分食われ喪失されている妻の首に驚き驚愕の余り死んだ男もいる。
序序に時間が経過するに連れ、異臭は増進し、人気は消えて行く。
最後、老婆の頭が宙に跳ね、地に落ちた。ぽと、と軽い音がした。

半時経ったのだろうか。そう少女は感じた。
あの老婆の首が落ちたのを最後に、声が聞こえなくなった。今村にある声といえば、妖魔が骨肉を噛む下品な音のみ。やがてそれも消え、辺りは静寂に支配された。
(今生きているのはあたしだけだろうか・・・・)
そう思い歩き出してみる。しかし見るのは無残にぼろぼろとなった雑巾のような死体と、血と妖魔から滑り落ちた赤い毛だけだった。同朋―あたしのように生きている人は居ない。
母もいない。父も、弟も姉も・・・・
いや、自分は歩いているうちに発見したのかもしれない。だが生きた身体は一つも存在しなかったし、死体も顔がやっと判別出来るか否かの状態が殆どだった。
(誰も居ない・・・あたししか居ない・・・)
崩れた家屋の中までも捜した。だが結果はやはり変わらぬ。

空が翳る。
雲渦巻く空が、何かを呼ぶように叫んでいた。

「いやぁ・・・・っ・・・・!」
喉を、悲鳴が焼く。
居ない。居ない。皆居ない!
自分しかこの村には存在していない。哀しい、寂しいという自己的な感情よりも、皆が哀れで仕方が無い。わたしだけが生き残って、他は死んだ。
老人も若者も子供も。痛い思いをして。喉を、頭を、背を、足を、手を何処か引き裂かれて出血をして。最後は痙攣をしたまま妖魔に殺された。激痛のまま、死んだ。
「みんなぁ・・・・みんなっ・・・・・」
慟哭が響いた。
2003/11/15(Sat)14:01:00 公開 / 赤 長月
■この作品の著作権は赤 長月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、第二回目投稿です。
最初からシリアスモードですね。
妖魔に襲われてみなさんボロボロになって死んでますよ。嗚呼・・・
この生き残って「しまった」少女はこれからどうなってしまうのでしょうか。

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