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『四期 ―SIKI― 第一話』 作者:吏良 / 未分類 未分類
全角3210文字
容量6420 bytes
原稿用紙約11.35枚


   その想いだけは残ると思っていた。
   そして、それは残っていた。
   けれども、それは形だけで。
   それが、恨めしかった。



 「……蓮?」
 「…………」

 「…紅蓮?」
 「…………」

 「…紅蓮さーん?」
 「…………」

 「…………」
 「…………」


 「ぐれぐれ者のぐれっち」
 「……は?」

 意識はその変な言葉で呼び戻された。

 気がつくと辺り一面は白銀の世界。
 少しだけその真っ白な世界にシミの様に赤い斑点があった。
 それだけが、今までここが戦場だった確かな証であるのだけれども。
 
 「何だ、紅蓮さん。人がずーっと呼んでいたのに反応がないくせに、悪口言ったら反応するなんて、      
悪いお人だなぁ」
 先程自分を呼んでいた声の主は、そんな事をいいながら、自分から遠ざかっていく様に後ずさる。
 「なんだ。悪口言っていたのか?」
 「いいえ、滅相もございませんでございます。御方のことを悪くいう事など…」
 「慣れん敬語を使うな。見苦しい」
 「ははは」

 全く、この男はいつも笑って場を凌ごうとする。

 「大体、ぐれぐれとはどういう意味だ? 全く意味がわからないぞ。悪口というものは、意味が分かって      
こそのものであろう?貴様のやっている事は、意味がなさすぎる。そんな事をしている暇があるのならば、
ボキャブラリーでも増やす為に勉強でもしたらどうなんだ」
 そんな言葉をいうと、奴はこれでもかという位不機嫌な顏をみせ、口をとがらして
 「なんだい。やっぱり聞こえていたんじゃないか」
などと、言う。別に、聞こえてなかったとは一言もいってないのだが言うのも、面倒なので放っておく。
 これが最善の方法だと自分の中の長年の経験がいっているからだ。

 判断は正しかった様で、奴は日頃の自分に対する不満やら何やらをあらかた言った後、戦場では絶対に
見せないやけに疲れた表情をみせてから、最後には意味もなくいじけている。全く、進歩のない奴だ。
 さて、これからどうすべきかと考えようとした時、さっきまでいじけていた奴がいきなりすくっと
立ち上がりいきなり走り出した。

 「なっ…! どうしたんだ?」
 「どうしたも、何も、この『気配』は…」
 奴の走りはどんどん速くなり
 「愛しの桜さんではありませんか!!」

 ……最後には、大股のスキップになっていた。その行く先にはああ、なる程。奴の言う通り人がいた。
 自分もここでひとり立っていても仕方がないので奴の後を追う。

 「いやぁ、桜さん。僕を心配して、来て下さったのですね! 感激ですよぉ!」
 気色悪い程の丁寧語と笑顔で言う奴の言葉を
 「違います」
 彼女は、一言で片付けた。そして、またいじける奴を後目に自分の方を見た。目が合ったので取りあえず   
どうも、と軽く礼をする。
 「お久しぶりです、紅蓮殿。御無事でなによりです」
 彼女は自分に対して、定式的な挨拶をすると
 「蒼羽さんと一緒で苦労されていると思いますが」
 と一言、半ば自分の隣でいじけている奴に言う様に付け加えた。奴は、蒼羽はその言葉を聞いて又何か
いらん事を言いそうだったので、自分が蒼羽が何か言う前に話題を変える。
 「しかし何故桜さんが、ここに? 貴方は東の山岳地帯担当でしょう。この首都地帯にくるなんて、
本当に珍しい事ですよね」
 彼女はそれを聞くと、少し驚いた様な表情をしたが、すぐにいつもの表情に戻り、
 「至急帰れとの、伝令がありましたので」
 「? 家族にでも何かあったのですか?」
 「そうではありません」
 「?」
 「私だけではなく、全ての者に対して帰還命令がでましたから」
 「なっ……」
 「そして、帰る途中で『奴等』の『気配』がしましたので念のため確認をしにこちらへ来た
というわけです」

 相変わらず真面目だな、と感心する。隣の人間もこれ位真面目なら良いのにと思ってしまう。
 「しかし、無駄足の様でした。すでに戦いは、終わっていましたから」
 彼女が見渡す辺り一面には嫌という程に雪が積もっている。
 「ええ。後はこの雪を処理するだけです」
 「『呪いのもと』の処理など、下の者にまかせればよろしいではありませんか」
 「しかし……」
 自分が返事に渋っていると
 「貴方様の戦いかたは、我々とは全く違いますから。これ以上精神に負担をかける事はありません。
ああ、ならば、私が先にいって誰かに命じますからどうか身体を休めてください」
と、彼女は続けてそう言った。
 「よっしゃ! 休めるぞぉ!」
 その言葉を聞いて蒼羽はその場で小躍りをする。
 「……貴方は、戦闘に置いて只の肉体馬鹿なのですから、休まなくても良いですよ」
 確かにその通りのことを彼女は顔色変えず言い、自分に対して一礼すると雪道を歩き始めた。


 「相変わらず手厳しいなぁ」
 「そうか」
 蒼羽に対して桜の話題は、突っ込めば酷い目にあうのは分かっている。この前など、間違って
 「あの女性のどこが好きなのか」
 などという話題を持ち出した為に気が遠くなるほどノロケ話をきかされたのだから。

 そんなことを思ってふぅ…とひとつため息をつく。
 「何だ、紅蓮やっぱりお疲れ?」
 「誰のせいだ、誰の。それに、やっぱり、とはなんだ。失礼だぞ」
 「それは、失礼しましたでございます」
 「だから、使えない敬語を使うな」
 「はははは」
 蒼羽は、やはりわらってごまかす。何でこいつは、いつもこうなのか。

 「貴様、その性格変えられないのか?」
 「変える? どこを?」
 「全てだ! すべて!!」
 蒼羽はやはり笑っていて。
 「君みたいに?」
 その表情のままさらりと言った。
 「は?」
 自分が、ききかえすと
 「そういえば、どうしてこんな時期に桜さん達を呼び戻したんだろね」
 急に話題を変えた。

 「知らん」
 確かにそれは不思議なことだった。彼女に会うのさえ半年に一度がいいところでそれは本当に大事な行事のためとかでそんな事情がなければ彼女はここに帰る事はなかった。
 それは他の『同僚』も同じでしかも、そんな時さえ一斉に帰る、なんてことは今まで一度もなかった。   
 「まぁ、帰るとしますか」
 「……何だ、やはり貴様も帰るのか」
 ひどいなぁ、と言う蒼羽を自分は無視し、先程桜が歩いた道を辿り始める。


 辺りには白い雪が沢山積もっている。
 雪が積もるのは不思議な事ではない。
 けれどもそれは、普通の雪ではないのだ。
 それは、残骸。
 その雪は、『奴等』の残骸。

 『奴等』は、壊れた後でさえ自分達の行く道の邪魔をする。
 その雪は、普通の炎では全く溶けず、弔いの儀式なるものをしなければ、溶ける事はまずない。
 
 「馬鹿な話だ」
 自分は、そう呟いた。
 「何が?」
 そんな呟きに蒼羽が反応する。思えば、その雪にかかる赤い斑点は彼がつけたものばかりで。

 「貴様の事だ」
 自分はそう言い、この国の葬儀に着る喪服の様な黒い着物を死に装束のように着る『仕事着』を
はためかし、そこを後にした。




 
 この国が冬という魔物に囚われてから長い年月が過ぎていた。
 そして、それが当たり前だと思うようになった。
 けれども、一つの真実がその思いを壊してしまった。
 この国は、希望の灯の名のもとに、ある者に戦いを挑んだ。
 それが自分達、『冬伐者』の起原である。

 そして、それから又、長い年月が経っていた。
 戦いを挑んでおきながら、挑んだ相手の刺客の対応に追われる毎日で。
 そしてそれが、当たり前だと思うようになってきた。
 それで、良かったのかもしれなかったと
 少なくても『俺』はそう思っていた。
 けれども、自分はそんな事はいってられない。

 

  この物語は、冬伐者と呼ばれた者と、それに不幸にも挑まれた女神の話である。
2003/11/09(Sun)07:51:27 公開 / 吏良
■この作品の著作権は吏良さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はじめまして。
読んで下さってありがとうございます。
吏良という者です。初心者なのでいろいろ変な所や意味が分からない所が沢山あると思いますので、
指摘や感想お待ちしてます。

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