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『魂もあげるから・・・』 作者:暁菜 / 未分類 未分類
全角1324.5文字
容量2649 bytes
原稿用紙約4.95枚


「行ってらっしゃい!」
私は、いつものように彼を・・・拓哉を仕事に送り出した。笑顔で。
これからおきる、出来事など、夢にも見ていなかった。
「いってきまース!」
拓哉のあの笑顔を見たら、何も考えられなくなった。
いつも通りの、日常が始まるとしか思っていなかった。




「ただいま。」
拓哉が帰ってきた。笑顔。
私も笑顔で返す。
「おかえり!早いのね、まだ午前中。」
私は、そう言い終えると、拓哉の方へパタパタと小走りに近づく。そして、重そうな会社着を脱ぐのを手伝ってあげた。
「ありがとう。」
「いつもの事でしょ。」
そう、これがいつもの生活。私の生きがい。拓哉のそばに居られる事、拓哉を手伝ってあげれる事が、私の今の生きがい。
「いつもの事だけど、それが僕には、とても大きい事に感じられるんだ。君にしか出来なくて、君じゃなくちゃいけなくて・・・。本当は毎日ありがとうを言うべきだったと思ってるよ。」
そんな事、今まで言った事無かったから私は凄くビックリした。
「・・・そんな事無い。私は拓哉の役に立てる事が嬉しくて・・・・。」
拓哉の手が、私の肩を優しく掴む。真剣な目に、私は黙ってしまった。
「ありがとう。今まで、僕の役に立ってくれて。僕を支えてくれて。君がいたから・・・・僕は・・・」
「・・・・・拓哉」
「君は、僕の生きがいだった。無くしたくないものだった。」
「・・・・」
拓哉の顔が近づいてきたので、私は目を閉じる。

・・・・しかし、閉じてはいけなかったのだ・・・・・・!

「・・・・拓哉?」
目の前には、もう拓哉は居なかった。




「拓哉・・・拓哉・・・拓哉・・・!」
私は、裸足である事にも気付かずに、外に飛び出していた。拓哉が居ない事は、感覚でわかっていたけど、理解と気持ちは別。理解できても気持ちには言い聞かせられない。たとえ叫ぶ事しか出来なくても・・・・。
「・・・・拓哉・・・拓哉ぁ・・・!」
私は、道に座り込んだ。両手は目から溢れる涙を拭っていた。
「・・・か・・して・・・たく・・や・・・を・・・・」
私は抑えきれない気持ちを、空に叫ぶ。
「・・・・拓哉・・・を・・拓哉を、返してよぉぉーーーーーーー!」

『神様。神様、神様・・・カミサマ・・・・カミサマァ・・・』

涙を拭う事などほっておいて、両手を合わせる。手が震えて、合わさっているのか自分じゃ解らなかった。
「わ、私・・の、体・・でもっ・・・なんで・・も、あげる・・・た、魂も・・・あげる、からっ・・・だっだからぁ、」
立ち上がって、天に良く声が届くように・・・
「おねがい・・・っ・・・・たく、拓哉を・・・返してぇぇーーー!返してよぉ!返せ!返せよぉ!返せぇぇ!・・・・・・返して・・・」
ふらついた・・・・




気付いたのは、病院の中だった。私は、あのまま道で倒れていたらしい。
「鈴木さん、鈴木 みやこさん。お電話です。」
「・・・はい。」
私は自分の名前を呼ばれて返事をした。
「どうぞ。」
「・・・・どうも。」
受話器に耳をあてた。警察の人らしい。
「・・・ここからが本題なんですが、」
「はい・・・」
「ご主人が、昨日亡くなられました。事故で・・・」
「・・・・拓哉」
私の意識はそこで途切れた。


2003/11/05(Wed)21:07:30 公開 / 暁菜
■この作品の著作権は暁菜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
いやぁ、ガラにも無いですね!
私も最近熱を出して頭がどうにかなったんすかね!
でも、感想やアドバイスもらえると嬉しいんですが。
私は、そうっすね。こんな未来は来て欲しくないですね!幸せが一番だ!
贅沢言うなら不老長寿&不死・・・
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