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『ファンタジー・サークル』 作者:青井 空加羅 / 未分類 未分類
全角4072文字
容量8144 bytes
原稿用紙約13.7枚
            第一章   美久の恋

 2015年7月25日私はいつも通りの朝を迎えていた。
ただその日が夏休みの始まりの日であり、お母さんに早めに来月分の小遣いをもらったという事で私の気分はいくらかはしゃいではいたが。
高校三年生ということもあって、海に行く約束も、買い物に行く約束も今年はしていなかった。
将来何になりたい、ということもなく、漠然と親に大学進学を勧められ、親に反抗する気力の無い私は、悩みもせずにそれに従った。
私の毎日はマンネリ化し、今思えば生きる気力をなくしていたのかもしれない。
 とにもかくにも私は生きる事に誠実でなかった事を自白する。
自分が幸せでない事を人のせいにしておきながら、どうやったら幸せになれるのかも考えようとはしなかった。
 あの事件はそんな私に対する生きるメッセージだったのかもしれない。
私は私の全生命をかけて立ち向かう事を求められたのだから。
忘れもしない高校三年の夏、私は不思議な体験をする。
その謎は大学生となった今でもまだ解明されていない。


 八組 五番 後藤 美久   五十八点
 深い暗然とした気持ちが私を襲う。
この時期周りは必死だ。学校に行けば就職する友達もいるけど、予備校にはいなかった。
遊んでいるわけではなかったが、特に勉強に熱心でない私の予備校での順位はおもしろいように下がっていった。
最近受けた統一模試は親には見せていない。
親が入れといった学校の下には大きくE判定(努力不足です)がついていた。
 冴木 徹(さえきとおる)と男子の名前が呼ばれ始める。
小テストを受け取りに行くその姿を私は思わず目で追っていた。
偶然高校が同じ彼は学校でダントツ一位の成績を誇っていたが、ここの名門予備校でも例外ではなかった。
染めてない丁度いい長さの黒髪に百八十はあるのではないかという身長と、さわやかな顔立ちは何処へ行っても女の子の目を引いていた。
 共通の本の趣味が無かったら、彼は私に声をかけてはくれなかっただろう。
その時手にしていた本は今も本棚に飾ってある。
メーテルリンクの「青い鳥」の兄弟が幻の幸福の鳥を探していたように私も目に見えない幸福の鳥をその本に求めていたのだ。
もっとも彼が「青い鳥」を持っていた理由は未だに教えてはくれないが。
 とにかく、それまで違う世界の人、と特別意識もしていなかった彼に、図書館で話しかけられることで、私は彼に新しい感情を持ち始めていた。
それはまだ恋などという美しい響きを持つ感情ではなかったが、その名前を付けようも無い感情は私の黒でも白でもない生活に新たな絵の具を足してくれているようだった。
 私は受けるつもりも無い超難関大学の講座を二つもとり、隅の席に陣取ると、授業中ちらちらと様子を伺っていた。
 
 同じ日、私が昼食を買いに外へ出ると彼が呼び止めてくれた。
私は突然の嬉しさにドキドキしながらも彼にそれを悟られないよう笑みも作らず振り向いた。
「何?」
おそらく私は不機嫌な顔になってしまったのだろう。
彼は少し戸惑うような顔をしたが、持ち前の明るさですぐ微笑むと私を昼食に誘ってくれた。
 近くのハンバーガーショップに腰を下ろすと私はすぐに出来たてのフライドポテトを次々に口に運び始めた。
私から彼に話しかける言葉が見つからない以上、私には話しかけられない状態である、という理由が必要だったのだ。
ポテトを三分の一ほど食べたであろうか、彼は驚いたように私を見つめたまま話しかけてはこなかった。
 口の中にしょっぱさを感じた私はMサイズのコカ・コーラに手を伸ばす。
そしてまたポテトを詰め込む。
ポテトはあっというまに無くなった。
私は困惑し始めた。
男子と外で外食なんてしたことはなかった。
女の子の友達でさへ二人でよいうのはあまりなかった。
私はおしゃべりが苦手という自分の性格を痛いほど熟知していたからだ。
彼は何を考えているのだろう。
ぐいっとコーラを飲み干し、次にハンバーガーに手を伸ばしたとき、突然彼に異変が起こった。
「・・・・・・・ぶっ。」
私は驚いて伸ばした手を引っ込めた。
彼はこらえ切れないように左手で口を押さえもう片方の手で腹を抱えて本格的に笑い始めた。
「・・・くっくっ・・あっはっはっ・・・。」
「・・・なっなに笑ってんの・・・?」
何か笑われる事をしたのだろうか。・・・まだ何もしゃべっていないのに。
私は不安と不快感の入り混じった目で彼を見ていた。
彼もその視線に気づいたらしい。
「ごめん。だって後藤さんすっごい形相でポテト食べてるんだもん。」
「・・・。」
私の顔は比喩無く見る見るうちに赤くなった。
しまった・・・。深い後悔が私の胸を渦巻く。
男子の前で女子が食べ物にがっつくというのは確かにおかしな状況かもしれない。
・・・はしたない子だと思われたに違いない・・・。
しかし男子と食事した事が無いからあがってしまった、なんてことが言えない以上、私は思ってもいないことを口にするしかなかった。
「・・・お腹がすいてたのよ。」
彼はまだ笑っていた。
「私・・・そんなにすごい顔だった?」
彼はまだ笑っていたが私の顔を覗き込むと真剣な顔をして
「うん。こんな感じかな・・・。」
といいポテトに手を伸ばすと必死な顔でポテトを口の中に次から次へと放り込んだ。
さすがにこらえきれなくなった私は、手も押さえる暇なく笑い出した。
「・・・あはっ。」
それに気づいた彼はとびきりの笑顔で笑うとはっと気づいたように今度はすまなそうな顔をしてて手を止め、
「・・・ポテト食べたかった?」
と聞いてきた。
私は吹き出しながら
「いっいらないっ。あっはっははっ。可笑しすぎてくっくるしい。」
彼は話しているうちにめまぐるしく表情を変えた。
知らなかったわけではないが、表情の器用な人だと思った。
 また彼は自分自身のことをよくしゃべった。
弁護士になりたくて法学部を目指しているとか、友達に誘われて今の高校を受験したこととか、両親は共働きで家ではいつも一人で食事をしている事など聞いてもいない事までよく話した。
「冴木君のお父さんってベイスター社で働いてるんだ・・・意外。」
ベイスター社は日本屈指のゲーム会社でそこからは数々のヒット作が出ている。
私の家にもそのゲーム機があり、何個もそこのゲームソフトを持っている。
リアルそのままのようなハイテクCG技術が売りで、最近はどこかの医学研究所を傘下に入れて新作ゲームを作っている事をニュースでみたことがある。
「何で意外?」
「だって、ゲームとかしなさそうだし・・・。」
「そう?俺って結構不真面目なんだけどな。ゲームもよくするし。」
「勉強は?」
私は意外な返事に口をぽかんと開け、思わず聞いてしまった。
私にとってタブーになりつつある勉強という言葉を自ら発してしまうほどに。
彼は少しも気にせずけろりとして答える。
「勉強も、するよ。一日中勉強しかないって日はないけどね。」
人差し指をぐいっと立てて得意げな表情からはほんの少しだけれども幼ささへ感じられた。
「よく食べてよく寝てよく学びそしてよく遊ぶ。これ俺のモットー。」
私は飲んでいたコカ・コーラのストローから口を離し、ふっと笑った。

 外に出ると焼けるような暑さが襲ってきた。
「うっひゃあ。あっついねー。後藤さん、早くもどろー。」
「そっそうだね。」
空からの暑さだけじゃない。アスファルトはフライパンのように熱を帯びていて、下を向くと顔がゆであがりそうだった。
前を向けば五十メートル先はもう陽炎を起こしていた。
『これ、よろしくお願いしまーす。』
駅前では黄色い服に白のスカートで統一された二、三人の女の子たちが暑い日差しの中チラシを配っていた。
『ぜひ、きてくださいねー。』
手渡されたチラシを見ると、偶然にもベイスター社のものだった。
___7月26日、27日東京赤平ブリッツにて新作ゲーム『ファンタジー・サークル』の試遊会が行われます。
今回の目玉は今までにない新感覚参加型RPG!!
ベイスター社が五年の月日をかけてとうとう作り出した『ドリーム・ヘルメット』これを友達とかぶるとみんなで一緒にゲームの中に参加できます。
エルク(この物語のメインキャラクター):『みんなで俺に会いに来てくれよな!』
シルク(この物語のキーパーソン?):『みんなで力をあわせて最高のパーティーになってね!』
もはやキャラクターになりきるのではない、君たち自身がこの世界の住人の一人になるのだ!______________
 「へぇ・・・。」
思わず私は感嘆の声を漏らしていた。
この会社はいつも新しい事をやってくれてはいたが、今回も私はまた自分の常識を打ち破られた驚きを感じていた。
自分がゲームの中でキャラとして動き回る・・・。
「おもしろそう。」
「おもしろそう。」
ハッと二人で目を合わす。
思わずハモッてしまったことが可笑しくてまた笑ってしまった。
「受験生に渡されてもね。」
私はチラシをクシャッと丸める。
「何で?一日もつぶれないよ。行ってみようよ。」
私は呆気にとられて彼を見つめた。
「冴木君ていちいち意外すぎ。」
「第一印象そのままのつまらない奴よりはマシだろ?」
「うん。でも、友達とか誘って行けばいいのに。」
言ってすぐしまった、と私は心から後悔した。
そういえば、そうだね、そうしようという台詞が思い浮かんだ。
罰が当たったんだ。
ちょっとでも二人一緒なら参加してもいいかな、なんて思った事に。
私は唇をかみしめ、彼のとどめの台詞を待った。
「俺は友達よりも後藤さんと行きたいかなー・・・なんて。」
私は目を丸くした。
体中が熱くなり、耳まで真っ赤になっているであろうということが自分でわかる。
「そ、それって・・・つまり・・・。」
彼は照れたように頭を掻くとダメ?と小さく聞いてきた。
「いいよ。行く。」
一日どころか一ヶ月でも構わない、私は本気でそう思った。

         to be continue


2003/09/24(Wed)00:50:58 公開 / 青井 空加羅
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■作者からのメッセージ
二作目でもう長作書こうとしている私って・・・(自殺行為)。やっぱり、長作は短編よりもムズイナーなんてことを実感しながら書きました。果たして最後まで読んでくださる方はいらっしゃるのか・・!?たとえ読者が自分だけになろうとも取り合えず最後まで書こう・・・と思ったのでした。感想・批評おまちしてます^^
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