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『「隣の殺人者・序章」』 作者:うさぎ あゆみ / 未分類 未分類
全角1829文字
容量3658 bytes
原稿用紙約7.35枚
「あっ、ああ・・・!!」

た、助けてくれ!

「違うっ!!!!オレが殺ったんじゃないんだーーーーーーーっ!!」

オレは、目の前の警官に叫んだ。「違うっ!オレじゃないんだよ!!!」

すぐさま、他の警官たちがオレを取り押さえる。
その警官は一瞬オレの目を見たが、再び自分の目の前にある、肉の塊へと視線を移した。

ここは、6号室。「あの男」の部屋だ。

オレは気がついたら、この部屋に寝かされていた。そして・・・目の前には・・・、
男か女かも分からないような、腐乱死体が転がっていたのだ。
密室で、しかもアリバイのは自分だけ。

オレはあっさり逮捕された。

そう・・・すべてはアイツに仕組まれていたことなのに。

成木という、あの狂気殺人者によって―――。





***************************


―――それから、数ヵ月後。



警察が殺害現場の住人、成木を追っている間、オレは警察のどっかの施設に入れられていた。

まるで牢獄のような、その施設は窮屈でたまらない。 早く成木が捕まるのを祈るばかりだ。
「くそ!警察め、何やってんだよ!」

なんで、何もしていないオレが、こんな犯罪者扱いされるんだ!
日に日に、オレのストレスは溜まっていった。




そんなある日・・・・、オレになんと面会者が現れたのだ。




「斎藤 秋星くんだね。はじめまして。私は 矢代という者です」
家族かと思って期待したのに、実際は全く知らない男だった。

どうやら白衣を着ているこの男は、何かの専門家らしい。

「実は、君に良い知らせを持ってきたんだよ」
そう言うと、矢代という初老の男はニッコリと笑った。

「良いしらせ?」
「ええ。実は、昨日・・・事件の真犯人、成木の居場所を突き止めたんです」
「えぇっ!?」

オレは驚いて、イスを蹴飛ばして立ち上がった。
「本当ですか!?」

「ええ、本当ですよ。もはや、逮捕まで時間の問題でしょう」
矢代は、静かに言った。

「そうなんですか。良かった」
「今まで、こんな所に閉じ込めてしまい、本当に申し訳なかった」

彼は、オレに向かって頭を下げた。

「いや・・・。もう忘れる、ってわけにはいかないけど・・・、とにかくオレの容疑が晴れればいいですよ」
オレは、ほっと胸をなでおろした。これで、やっと普通の生活に戻れるんだ・・・。

「そうですか。ありがとうございます」

矢代は、それを聞くとゆっくり微笑んだ。そして、

「しかし、成木を逮捕するのも・・・どうやら、一筋縄ではいかない可能性も出て来ましてね」
緩めていた口元を元に戻して言った。

「え?どうしてですか?」

「彼のような、冷酷で、しかも今までに例のない容疑者は初めてなんですよ」
今までの穏やかだった矢代の顔に、影がさす。

成木の残忍さは、オレが一番知っている。
だから、警察が焦る理由も、なんとなくわかった。

「我々も、全力で成木の逮捕に努めますが・・・」
矢代が、持っていたペンのキャップを抜いた。―――そして、一呼吸おいてから、

「そこで、君の協力がいるのですよ。斎藤 秋星くん」

オレの目を見据えながら、彼は言った。

「え、オレの?なんでですか?」
理解できなくて、オレは聞き返す。

「ええ、そうです。今までの事件のいきさつを、もう一度だけ明白に記録したいんです」
矢代はふところから、テープレコーダーを出した。

「そんなに、緊張しなくても結構ですよ。成木が、君の隣の部屋に越してきた時からのいきさつを、もう一度だけ話してください」



その時、彼の瞳の奥が、キラリと光ったような気がした。


正直言って、オレはあの事件をあまり思い出したくはない。
しかし―――、

「・・・・・分かりました。できる限り協力します」
短い沈黙の後、オレは答えた。




そうだ、オレの人生を崩した成木を、絶対に逮捕させてやるのだ。
・・・・オレはただ、殺人者の隣人ってだけなんだから。


「話し始めていいですか?」
オレは、決意したように拳を握り、椅子に座りなおした。

「どうぞ。協力に感謝します」

静かに矢代が答えた。



穏やかな、目の前の男・・・・、四角い部屋。

             

「カチッ」


真っ白で、殺風景な面会部屋にテープレコーダーの音が響いた。


              








             「あの事件の始まりは――――――――――――、」





                                 《続く》
2003/08/29(Fri)20:44:06 公開 / うさぎ あゆみ
■この作品の著作権はうさぎ あゆみさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
現代独特の狂気を小説にしてみようかな〜、と。
苦手な方、ごめんなさい!できれば、コメントをくれるとありがたいです。
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