- 『自然発火』 作者:しありす / リアル・現代 恋愛小説
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原稿用紙約4.9枚
自然に、私の心は動いていた。初めから、手遅れだったんだ。
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ある偉人は言った。
”人には、どんなことがあっても、乗り切らねばならないといけないときがある。どんなにそれが、つらいときであったとしても。人には、誰にでも穏やかで、他者を大切にする義務がある。どんなにそれが、憎き相手でも。それが、人間の定めだから。”、と。
憎い相手には、復讐心や憎悪を抱く人は絶対にいるだろう。でも、それが何になる? 誰かを恨んでも、自分のためにはならない。相手の思い通りになるだけだ。
第一唱 射られた心
静岡の、とある喫茶。ここに一人の少年がいた。見た目からして、中学二年生やそこらである。
私はなぜか、彼から目が離せない。だってその子は、いじめられてるかのような体つきをしていたし、彼の顔には大胆にも青いアザができていたのだったから。
しばらくすると、彼は席を立った。何かを急いでるようにも見えて、どうしても気になった。そして彼が会計を済ませて喫茶から出ようとした時、私も自然に会計を済ましていた。
__そう、そのときは気付いていなかった。自分の過ちに。
喫茶を出ると、彼は駆け足で路地裏に入る。私もそれに追いつこう、と駆け足で路地裏に入る。
だが彼は途中で私に気付いたのか、足を止めた。そして携帯電話を取り出し、彼は誰かと話をし始めた。
「もしもし。鷹羽田くん?」
「あぁ、そうだ」
「例の金の事なんだけど、少しいい?」
「なんだよ。金を安くすることはできないぞ」
「僕ってあいつにいじめられてるじゃん。だから、五千円を明日までに渡さなきゃならないんだよ。それで、お願いがあるんだ。解決するまで待ってくれないかな…」
ここまで来たところで私は思った。彼が今会話している少年は、彼をいじめているわけではない。彼は他の誰かから、金銭を要求されているようだ。
「じゃ、それまで立て替えておいてやる。それまでに解決しろよな」
「うん、ありがとう! 」
「ま、いいってことよ。じゃ、切るぜ」
「うん」
こうして通話は終了し、彼は振り返った。私は突然のことに驚き、彼に見つかってしまった。
「あ…。す、すまない。聞くつもりはなかったんだ。ただ、気になってしまってね」
「何が、気になりましたか…」
「喫茶に入った時から、君は顔にアザがあって、それが心配だったんだ。同級生にいじめられてるのかい?」
「…関わらないでください」
「え? 」
「あなたは『まだ』僕につけ込む気ですか? そうやって偽善者ぶるのやめてください! 僕の友人に罪をなすりつけないでくださいよ! 」
意味が分からなかった。彼とは初対面だし、本当に私は心配していた。罪をなすりつける?偽善者ぶる?まるで、私がバカみたいじゃないか。そのとき、どこからやってきたのかは不明だが、彼は一人の男に首を掴まれる。私は突然のことに驚いた。が、緊迫のなかで、必死に言葉を見つけて言った。
「彼が苦しそうじゃないか。その手を放しなさい! 」
でも、男から反応はない。私は携帯を取り通報しようとしたが、なぜか手が動かない。そして、次の瞬間、彼は言うのだった。
「あ…あなたはな、何を言ってるの…ですか? 苦しいです、やめ…てっ…」
彼の言ってる意味が分からない。彼は何を言いたいのだろう。そう考えていると、男はもう私の目の前にはいなかった。そして、私の目の前で、彼は苦しそうにしながら言うのだった。
「はぁ、はぁ。あなたは何がやりたいのですか? 僕をここまで追いつめて、何が目的なのですか?」
「君こそ何を言っているんだい? 私は君には何もしてないぞ? もう男はいなくなった。安心したまえ」
そう言うと、一分ほどの間があり、彼は言ったのだった。
「警察、呼びますよ」
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2016/01/05(Tue)10:02:09 公開 / しありす
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■作者からのメッセージ
原稿は提出してしまったのでありませんが、一応私の応募作品です。