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『呪羅颯記』 作者:土門 / ファンタジー 未分類
全角6137.5文字
容量12275 bytes
原稿用紙約19.55枚
 教師達の「帰りなさーい」の声に押されるように、その学校からは沢山の生徒が下校を始めていた。校庭に人が溢れ帰り、校舎に戻ろうとしても人の波に飲まれてしまうようである。敷地面積の割にはやや生徒数が多いのだろう。そんな大勢の生徒達の中の一人に明空颯という少年がいた。
「はやてー!置いていくなん……」
その少年に対して必死に追いつこうとしている少女がいたが、人ごみに押されて彼には追いつかない。
「はや…、は…、はやてー!」
自分よりも背の高い人たちのせいで遂に彼女は颯を見失った。だがその声はどうにか少年に届いたようで、彼は後ろを振り返り、一度その場に立ち止まって自分を呼ぶ少女のことを探そうとしたが彼もやはり人ごみに押され、数秒も止まることができずに校門へと無理矢理流されていく。

 「はぁ……。」
生徒の混雑から一転、ものの十分で校庭にいた生徒達は皆帰路につき、学校の傍も静かに変わった。そんな寂しさを伴う校門には二人の子供が残っていた。
「全く、はぁ、颯は早いんだから、…、はぁ。」
その場にいたのは先ほどの明空颯と、彼を探していた少女、桜木ゆずの二人だった。
「ごめんごめん。途中で止まろうとしたんだけど人ごみに押されて立ち止まれなくて…。」
ひゅうっと風が吹き、ゆずの髪の毛がたなびく。颯から見えるゆずは少し怖げだった。夕日を背にして仁王立ち。赤く照らされた彼女は明らかに怒っていた。
「ごめんって。明日こそは昇降口で待つからさ。」
「それ、昨日も聞いた。」
颯は必死に彼女に謝るも淡々と返されてしまう。毎日毎日お決まりのように行われる会話。別にそこまでゆずは怒ってないし、颯もそこまで反省していない。昇降口で待つなんて結局人混みのせいで不可能だし、今まで一度も校庭を歩けたことなんかない。それでも毎回ゆずが颯に怒った振りをするのは、どうしても聞きたいい言葉があったからだった。
「どうしたら許してくれるんだよ〜。」
そう、彼女が怒った振りをしていると颯は必ずそう聞く。答えは分かっているがそれでもそう聞く。
「そうだなあ。」
もったいぶるようにゆずは上を見る。しかしもちろん答えは決まっている。
「私の言う約束を一つ、守っててくれるならそれで許す。」
毎日のことだ。そしてその約束は毎日同じ。
「私のことを一生守って。」
「勿論、ゆずのことは一生俺が守るよ。」
毎日だ。毎日同じ約束・同じ台詞を交わしている。
「ありがと、さ、帰ろうか。」
決して颯とゆずは恋人同士ではない。ただの友人、せいぜい親友と言ったところだろう。小さい頃から二人で過ごしてきて、家も近所で一緒に下校する仲である。俗に言う幼馴染という奴だ。
「なんだかいつもいつも同じやり取りだねえ。そろそろ違う約束にすればいいのに。」
颯はいつも疑問に思う。ゆずにそんなに危険なことがあるわけではないだろう。明日死ぬような人が言うのならストーリーになりそうなものだが、平凡な高校生が言うことでもないだろう。
「いいの。私は一生颯に守ってもらえればいいの。」
「はいはい。」
ゆずも颯もにこやかに笑っていた。これが二人の日常であった。それから二人は和やかに世間話をはじめ、お互いの自宅へと帰っていった。

 「あー疲れたー。」
無事放課後の部活を終え、颯は帰宅しようと下駄箱から靴を取り出した。この時間の学校はとてもにぎやかで、皆が帰宅する為にやたらと人で混雑するのである。颯は本来ゆずを待たなくてはならない、と言っても待てない話は既に話したとおりだ。いつものようにまた颯は人ごみに流され、片耳でゆずの叫ぶ声を聞きながらもやはり人混みには打ち勝てなかった。結局彼は校門まで流され、ゆずが校門まで来るのを待ち、いつもの会話を始めながら二人の自宅へと歩き出した。
「全く、結局今日も待ってくれなかったじゃん。」
別にゆずは怒っていなかった。むしろ笑顔で颯に話しかけていた。
「ごめんごめん。途中で止まろうとしたけどさ……。人混みに押されちゃって。明日こそは昇降口で待つから。」
「それは昨日も聞いた〜。」
「どうしたら許してくれるんだよ。」
ほのぼのとした会話がお決まりで続く。颯は次の言葉を直面して聞くことができず下を向いている。
「一個私の言う約束を守ってくれれば許す。約束は、……そうだなあ。」
ゆずはもったいぶるように上を見る。…。沈黙が流れる。いつもより長く言葉が流れない。
「そんなにもったいぶらないでもいいじゃないか。」
颯が顔を上げて横を見ると、そこにゆずはいなかった。
「え?ゆず?」
颯が後ろを振り返るとそこに見えたのはゆうに2mを超えるであろう怪物とそれに腕を掴まれて顔をゆがめるゆずの姿だった。
「ゆず!!」
大きくそびえ立つその怪物の姿は颯に恐怖を与えた。しかし、怖がってあとずさりをするような少年ではない。人ごみで踏ん張ろうとはあまりしないが、当たり前だが幼馴染を助けようとはする。ただ『助ける』の度合いが大きすぎるのだが。
「今、助けるぞ!」
約束を守るとき――自分はゆずのことを守る、まさかここまで約束を果たす機会が訪れるとは。颯はそう考えていた。勢い良く怪物に向かって走りだした彼は、怪物に接近すると怪物の足を蹴りつけ、そのまま腹部に殴りを入れて見せた。
「は、はやて…。」
ゆずが苦しそうに呻く。右腕がつぶされかけている。そして颯の攻撃は全くダメージを与えていない。
「くそっ……。何なんだこいつは…。」
さすがに分の悪すぎる相手だったが、颯は危険を省みず再び怪物に接近し,何度も拳を突きつけた。
「はやて、……。に、逃げて!颯だけでも、…。」
ゆずは顔をゆがめている。颯は正直怖かった。当たり前だ。目の前にいるのはツノを生やし、一つ目で高く立ちふさがる怪物だ。皮膚の色は青。一つだけくっついている眼は不気味に颯を見つめている。
「でも、でも、僕は約束したんだ。」
颯はギュッと自らの拳を握り締める。決意する、今こそ男を見せる時。
「約束なんていいから!」
ゆずは颯を心配してか必死に逃げるよう、促す。しかし颯は既に決めていた。
「僕はゆずを助ける。」
颯は深呼吸すると、再び怪物へと向かって走り出した。
「うおおりゃああ!」
全力で颯は怪物のことを殴りつけた。怪物は颯を見向きもしなかった。まるで、痛くもかゆくもないと言っているかのようだ。
「くっそ。なんのこれしき!」
颯はもう一度怪物に立ち向かっていく。
「颯さん!STOP!」
颯が足を踏み出した瞬間、後ろから彼を呼び止める声が聞こえた。颯が後ろを振り返ると、そこには小さな生き物が宙に浮いていた。
「敵の援軍、か……。たとえ何人で来ようと俺がゆずを守る!」
颯はそこにいる生物をにらみつけた。しかし、その生物は怪物とは違ってどう見ても脅威ではなかった。身長が50cm程度。小さな羽で浮いていて、童顔で彼を見つめていたのだ。
「ち、ちがいます。間に合わなかったことは謝りますから、敵だなんて勘違いしないで下さい。僕はある意味で味方です。」
その小さな生き物は慌てていた。にらみつけられる、とは思っていなかったのだろう。
「お前、赤子か?だったらうせろ。ここにいると危ないぞ。」
颯は今にも泣きそうなその子を見て既に関心がなくなっているようだった。危険でない、と判断したのだろう。
「い、いや、ま、待ってください。そいつは異世から来た邪鬼という化け物です。き、危険です!人間一人じゃ勝てませんよ!!」
羽をパタパタさせながら颯を止める。
「お前、あいつを知っているのか。早く、早くあいつのことを教えろ!じゃないと、ゆずが、ゆずが、……。」
颯は掴みかかり、興奮しながら問う。
「お前じゃなくてオリオンです。緊急事態ですから、倒す方法だけお伝えします。この呪札というお札を腕に巻くだけで力がみなぎるはずです。そしてここに『氷羅天晶』と唱えれば氷の力が使えるはずです。詳しい話は後にしますが、一つだけデメリットを伝えて……。」
オリオンがデメリットの説明を始めようとした瞬間、颯はオリオンの持つ『呪札』と呼ばれた札をつかみとり、自らの腕に巻きつけた。
「え、は、はやてさん、デメリット、が……。」
オリオンは話を聞かない颯に対して慌てている。そう、羽をパタパタさせて。
「デメリットも後で聞くよ。今はゆずを助けなくちゃな。」
颯はデメリットを聞かないまま、邪鬼といわれた怪物へと突進していく。そして怪物のことを再び殴りつけた。
「すげえ!」
颯も力の増加を実感していた。札のおかげか、先ほどまでよりも力が溢れてきている。怪物も痛みを感じたようで、颯の方を振り返った。
「もう一発!」
再び怪物の足を叩くと、怪物はものすごい重低音のうめき声をあげながら、ゆずを掴んでいた手を開いた。そのままゆずは落下し、地面へと落ちていった。落ちたといってもたかが2mなのでゆずは腕を痛めながらもどうにか立ち上がることができた。
「ゆず!大丈夫か!」
颯は立ち上がったゆずに駆け寄る。
「うん、颯こそあんな怪物と戦って大丈夫なの?怪我、してない?」
ゆずもまた颯のことを心配していた。
「おいおい、ゆずは自分の心配をしろよ。」
颯はゆずの肩に手を置き、優しく言葉をかける。
「颯さん!後ろ!」
言い感じの雰囲気ではあったが、そこにはさまれた声はオリオンの叫ぶ声だった。颯は急いで後ろを振り返る。するとそこには青い顔を真っ赤にしている怪物がそびえ立っていた。
ウォオオオオオオ!
すさまじい轟音が響く。そのまま怪物はコンクリートの道路に向かって拳を突き出してきた。颯はそれを避け、怪物の足を蹴りつける。
ウォオオ!
颯の力が増えているからか、怪物は相当痛がっているようだった。
ウォオオオオ!
怪物は怒り狂って何発も殴りつけてくるが、全て颯は交わしていた。怪物の動きは遅く、颯のスピードは札のおかげか上がっていた。隙を見つけては怪物の足に打撃を加える。怪物が倒れるのも時間の問題、といったところだ。
「怪物とやらもこのお札には勝てないんだな!」
またも怪物の拳骨から逃げながら颯は叫ぶ。そして少し跳び上がって怪物の腹を強く殴りつけた。
ウォォオオオオオオ!
怪物はまたも呻いている。そしてそのまま倒れていく。
「颯さん、氷羅天晶で氷の刃を作って止めを刺してください!奴は眼をつぶせば死にます!」
オリオンがゆずの隣でパタパタと叫んでいる。
「氷羅天晶!」
颯がそう叫ぶと彼の周りを直径5cmくらいの氷の粒がいくつも回り始めた。颯は静かに右手を肩の高さまで上げる。すると周りを漂っていた氷の粒はそこに次第に集まっていき、一つのよく尖った刃となった。それをしっかりと掴むと、颯は怪物の顔のところまで行き、一思いに目を突き刺した。ややグロテスクな音がし、その怪物は微塵も動かなくなった。
「颯!」
そのまま刃から手を離し、歩いて戻ってきた颯にゆずは飛びついた。
「ゆず、無事だったか。」
颯はやさしくゆずのことを抱きしめる。
「ありがと、颯。本当に私のことを守ってくれたね…。」
「当たり前だろ。これからもずっと俺がゆずを守る。」
颯はやさしくゆずの頭をなでていた。
「颯さん、……。すみません。それはちょっと無理かと……。」
甘いムードに脇から口を出したのはオリオンだった。
「これから、怪物のこと、呪札のこと、僕のことについて説明します。よく聞いて下さい。」
――
 世界は二つの世とその間の壁とで成り立っている。一つは現世。無論、地球も宇宙もこの中。もう一つは異世。現世には現者、通称生物がいる。対して異世には異者と呼ばれる者達がいる。人間からすれば異者は皆、「怪物」と呼ばれるような輩達だ。先ほどの『邪鬼』というのもこの異者の中の一つだ。本来、異者と生物は交わらない。出会うことは決してない。もし出会ってしまえば、異者が生物を絶滅させ、世界を独占することは当然だからだ。だから二つの世を隔てているのが世界を仕切り分ける界壁。界壁の周辺にはオリオンのような「守人」と呼ばれる番人がいて、界壁のサポートをしている。ではなぜ、今回のように異者が現世に現れてしまったのか。実は、何者かによって界壁が破壊されてしまったのだ。正確に言えば謎のグループだな。界壁をやるなんて複数犯に決まっている。その影響で、たくさんの異者が現世に流れ込んでしまった。そこで守人は、太古の時代に作られた呪札を使って、異者を人間に討伐させることを決定したのだった。
――
「なるほどな。世界って壮大だな。まあ、頑張れオリオン。よし、ゆず帰るか。」
「うん、そうしようか。」
颯とゆずは立ちあがり、自分たちは関係ないとばかりに帰ろうとしていた。
「待って颯さん!あなたも戦ううちの一人ですよ!」
――
 呪札とは、異者の中の一つ、悪魔との契約をする札である。契約内容は
  1.契約する悪魔か生物は寿命死しなくなる代わりに、一方が他の原因で死んだ場合、もう一方も死ぬ。
  2.生物は異者に並ぶほどの力を手に入れる。
 というものである。そしてこの契約の厄介なところは、一度契約すると破棄はできないところだ。
――
「面倒くさい話に巻き込まれちったな。」
颯は髪の毛を掻きながら困っていた。
「呪札は昔作られたものだから枚数に限度があるんだよ!異者と戦える数少ないメンバーなんだから絶対戦ってよね!」
オリオンは颯に急接近して精一杯の怖い顔で脅す。
「といわれても俺はゆずを守らなきゃいけないし……。」
颯は救いを求めるようにゆずを見る。ゆずの痛みはオリオンに治してもらい、とても元気になっていた。
「うーん。でも世界が消えたら私も終わりよね……。いっそ、私もついていくっていうのは?」
「「え?」」
颯とオリオンがハモる。
「確かに、それならありかも……。」
オリオンはゆずの案にうなずきながら何気なく一枚のお札を取り出した。
「おいおい、ゆずにも悪魔とやらと契約させる気か!?そんな危ない……。」
「別に私はいいよ。むしろその方がいいかな。」
颯はオリオンを止めようとしたが、本人が乗ってしまった為どうしようもない。
「これなら君も異者討伐に力を貸してくれるかい?はやてさん。」
オリオンはその幼い顔で颯を見つめてくる。断れない。
「わかったよ、……。でも家族にはどうするんだ?」
颯はあきらめたように返事をする。
「家族は、家族は、……。家出ってことで。」
「「え」」
今度は颯とゆずがハモる。
「え?本当に家出?」
「うん、それしかなくない?」
どうやらオリオンはそんなことはよく考えていないようだった。
「でさあ、言いにくいんだけどさ……。」
「なに?」
「この近くに異者がいる。討伐に行かないと。」
「「今すぐ!?」」
オリオンはさりげなく話題を変えて、一気に戦いのムードに持っていこうとしていた。
「仕方ないじゃない。いるんだから。よし、行くぞー!」
「まじかよ……。」
「嘘でしょ、……。」
オリオンは先ほどの道を飛んでいく。その後ろを颯とゆずが駆けていった。こうして颯とゆずとオリオンの異者討伐が始まっていくのであった。

(完)
2015/12/31(Thu)13:29:32 公開 / 土門
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