- 『alone』 作者:レボリューション Y 田中 / リアル・現代 リアル・現代
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全角1181.5文字
容量2363 bytes
原稿用紙約3.65枚
予備校時代を思い出しながら描きました。
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胸に電流が走ったような痛みが走る。俺は病気に侵されていた。一日一回のその感覚が徐々に蝕むその事実を示していた。普段は予備校に通い何気ない日々を過ごしている。予備校のチューターさんは決まりきった挨拶を返し俺の一日は始まる。でも予備校では友達を作っていなかった。「let alone まして〜」
単語帳を開いて脳内で口ずさみながら俺は心底この予備校生活に飽き飽きとしていた。早く大学に行きたいなあ、と何度考えたことか。
俺の部屋には相棒みたいなやつがいる。名前は「化物」。というか俺が命名しただけなのだが。目は数百を数え、体は竜で人間大。太い尻尾をいつも床に寝そべらしたり、床にたたきつけたりしている。背中には朽ち果てたような翼が四つついている。そいつは竜に似ているが、本当は悪魔だと思っている。俺が憂鬱な時俺の部屋にボーと現れては床にどっかりと腰を据えている。
「さようなら」
いつもの予備校のチューターが決まりきった挨拶をする。俺は彼女、つまりそのチューターに好意を抱いていた。いつも白のフリースの上から黒のスーツを着て、足は黒のタイツに足がぴちぴちなぐらいに見える黒のスカートをはいている。周りの男のチューターが俺に何気ない返事を返す中彼女の挨拶だけは決まりきったものであろうと、いつも笑顔でまるで俺に人間的興味を抱いているかのようだった。塾から出ると俺は彼女の太ももあたりの足について考えていた。いつもきれいだなあと。駅に入ると帰りの電車がいつも通り停車している。
「福永」と書かれた名札を付けた駅員が電車の最後部で大きな声で「ヨシッ」と何度も確認をとっている。近くの高校生の四人組が声をあげて笑っていた。俺もニヤッとしてしまう。
家に着くと階段を上がる。真黒な闇のんかひときわ黒い何かがいた、「化物」だ。こいつさえいなければといつも思う。だが、消そうとしてもなぜか存在するそいつは、俺と運命を共にしたいらしい。
就寝時間に俺はまた溜息をつく。
「痛むんだよなあ」
と一言言って、 とっとと布団にもぐりこんだ。
いいことをもっと考えよう。またあいつが現れる。
俺は予備校の俺が好意を抱いているチューターを考えた。あの一人だ。黒いスカートで、細身を覆い、こつこつと黒のハイヒールを鳴らす彼女で俺はエクスタシーに達した。
「まずは、友達を作らなきゃいけないのに、チューターを愛してしまうとは」
と独り言ちた。
眠りが深まったとき胸に痛みがはしった。未明である。いつも未明にこうやって胸が痛み不快な思いを続けるのだ。おれは「化物」をにらんだ。机の上に転がっていたシャープペンシルをさらうと、その勢いで俺は「化物」に襲い掛かった。
鈍い痛みが俺の手に走った。俺は自分で自分の手を射止めいていた。
「くそっ」
そう吐き捨てると俺は悲しみの底に沈んだ。
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2015/02/12(Thu)18:26:11 公開 / レボリューション Y 田中
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