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『小さいカスミとじーちゃんの梨』 作者:結 麻月 / 童話 ショート*2
全角1559文字
容量3118 bytes
原稿用紙約5.55枚
とおくとおく低く広がる梨の木。やさしい秋のおじいちゃんのみどりの日傘それは、あつい太陽をやさしくかえた。



題:【小さいカスミとじーちゃんの梨】 作者:結 麻月 



まだまだちいさいカスミはおじいちゃんがだいすき。
なんでもしってるおじいちゃん。

「じーちゃん」
「どうしたぃ? カスミ」
「どーしてナシの木は、実があるのにナシって言うの?」
「中が白いからじゃよ」

とおくとおく広がる梨の木の下。
小さく広げてベンチにすわる。
もらったダイコンとトマトがいっしょに笑うちっちゃいベンチ。

「じーちゃん」
「なんだぃ?」

おっきくおっきく広がる梨の木の下で
カスミはおじいちゃんに聞きました。

「どーしてじーちゃんは、ナシをつくってるの?」

おじいちゃんは笑顔でカスミにいいました。

「木の下はすずしいじゃろぅ。これはな、じいちゃんのおっきな日傘」
「日傘?」
「そうじゃとも。じいちゃんの大切な日傘じゃよ」


とおくとおく低く広がる梨の木。
やさしい秋のおじいちゃんのみどりの日傘
それは、あつい太陽をやさしくかえた。

おじいちゃんのまがったせなか。
ちょうど歩けるおじいちゃんの高さの低めの日傘

まだちいさいカスミはおじいちゃんに聞きたいことがたくさんあります。

「ねぇ、じいちゃん!」
「なんじゃぃ?」
「なんで、わたしはカスミなの?」

おじいちゃんは少し考えていいました。

「ナシの花をみたことあるかい?」

カスミはナシの花をみたことがありません。
そこでカスミはおじいちゃんにいいました。

「どんなお花なの?」
「カスミがおっきくなったようなきれいな花じゃよ」

おじいちゃんはカスミにそういうと。
おっきいナシをカゴいっぱいにくれました。

カスミはおじいちゃんが言ったことがわかりませんでした。
家にかえるまでのカゴのナシはおっきくゴロゴロ
カスミにとってすごいおもたくずしずしと。 
おみやげのおじいちゃんのナシ。
すごくあまくておいしいだいすきなおじいちゃんのナシ。

おうちにかえったカスミはママに聞きます。

「なんで、わたしの名前はカスミなの?」
「前にも言ったでしょ? おじいちゃんが好きな花の名前だからよ」

おじいちゃんの好きなカスミ草のお花。
でもおじいちゃんは、ナシがだいすき。
ナシにも花があるのになんで、カスミなんだろう。

「なんで、ナシの花じゃないのかな?」
「なんでだろうね〜。おじいちゃんに聞いてごらんなさい」

またおじいちゃんのナシの下。
おじいちゃんはいつもここ。
雨の日もあつい日もおじいちゃんは傘の中。

「じぃーちゃん!」
「またきたのかい」
「なんで、カスミはナシじゃないの?」

おじいちゃんは、カスミがそういうと。

「がっはっは。それを聞きにきたのか」

と声に出して笑って、カスミにいいました。

「ナシの花はそれはそれはきれいでな、じいちゃんのいちばん大好きな花」

風にそよぐ満開の真っ白な花。

「ナシの花は、春に咲くのじゃよ」

すずしい春に綿毛のように白く多く咲くお花。

「でな、カスミの、カスミ草の花はな……」

カスミが生まれた日に、おじいちゃんは俳句を書いた。

「カスミは夏咲くじゃよ。秋にナシがおいしいく実る“実りの秋”まで長くながーく咲いてくれるのじゃよ」

ママは、その俳句が好きになり、カスミと名付けた。
おおきくなってカスミが何気なく開いたおじいちゃんの部屋の花のずかん。
貼られたふせんがふたつ
だいじにだいじにカスミとナシ。

大好きだったおじいちゃんとナシ。
カスミとおじいちゃんがずっとつながってるみたいだねって笑って近く。

毎年変わらずおじいちゃんの日傘は秋においしい実をつける。
おじいちゃんのお墓にそっと大好きなナシを添えて

「ほんとにナシの花は、おっきくなった私みたいだね、じいちゃん」

と大きくなったカスミは言った。




初孫感嘆に一生の幸せを願う俳句

――春咲いて 霞繋ぎし 秋の梨
2011/10/18(Tue)06:33:19 公開 / 結 麻月
http://koriasa.blog.fc2.com/
■この作品の著作権は結 麻月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ぜひ読んでもらいたいなとおもいます。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして、読ませていただきました。牧歌的な作風で、いい味が出ているな、と感じました。シンプルな筆致ですが、ちいさな起承転結があって読みやすかったです。ただちょっとだけ。これは良い悪いとかの問題ではなくて、個人的には童話にしてももう少し描写が欲しい、とは思いました。あと、文頭の字下げはした方がいいと思いますよ。楽しませて頂きました。それでは。
2011/10/18(Tue)18:52:300点赤月 水織
はじめまして。木の葉と申します。感想書かさせていただきます。
全体的にふんわりしていて、童話のような雰囲気がとてもいいなと思いました。こういう書き方がすごく好きなので、楽しませていただきました。カスミとおじいちゃんの会話の中に優しさのようなものを感じました。
2011/11/02(Wed)17:04:550点木の葉のぶ
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