オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『透き通った光に身を沈めて、 【第二章】』 作者:梨音 / リアル・現代 恋愛小説
全角4117文字
容量8234 bytes
原稿用紙約12.2枚
ぼくと彼女が知り合いと呼べる仲になるまでに                             ぼくはどれほどの時間を費やしたろう。
 翌日、今日こそはちゃんと勉強をしようと、漢文と水の入ったペットボトルをリュックに詰めた。初めぼくの手によって無造作に突っ込まれているだけだったそれらは、あまりにもぼくの心の中の様子にそっくりで。ぼくはそれが耐えられなくて綺麗に詰めなおしてみたのだけど、当然のことながら何も変わらなかった――もちろん、ぼくの心の中が、だ。
 家を出て鍵をかけた瞬間――ぼくは小学校一年生のときから鍵っ子だ――ふいに右のポケットがぶるぶると震えだした。メールかと思ったらやたらにバイブが長い。電話だ。
 ケータイを開いてみると、画面には『山下一』と表示されていた。名前を書くときに、ひらがなで書くよりも漢字で書くほうが早いという、驚きの名前を持った奴。こんなときに、なんの用事だろう。ぼくは首をかしげながら通話ボタンを押す。
「もしもし?」
「あっもしもし佐藤さんのお宅ですか。ぼく大樹くんと学校で仲良くさせて頂いてる山下ですけど……」
 ぼくは思わず噴出した。こいつ、ぼくの家に掛けた気になってる。
「一、ケータイ、これケータイ」
「え、嘘っまじで?」
 彼は向こう側で大げさに慌ててみせる。一瞬声が遠くなった。電話番号を確認してるんだろう。すぐにまた一の声がした。
「うーわっさっきの俺やたらとかっこ悪くねぇ?」
「かなりかっこ悪かった」
 とぼくは笑うと、「で、なんなの」幾分か真面目な声でこう聞いた。ああ、と一は言いだす。
「あのさぁお前今から暇? 何人か暇な奴らでどっか遊びに行こうっつってんだけど」
 一たちと遊びに行くといったら、行き先は多分カラオケだろう。前に一度誘われたときはそうだったのだけど、あの時、音痴なぼくはひどく恥ずかしい思いをした。そんなことを三秒ほどかけて考えて、ぼくはゆっくりと口を開く。
「いや、いい。……行かない」
一の返事は速攻で、そして綺麗に的を射ていた。
「まじで? えーっお前なら絶対空いてると思ったのに」
「ごめん、今日は用事あるから」
「だから用事ってなんなわけよ、さっきも言ったけど俺お前は常にフリーだと思ってたんだけど」
「いやあのさ、宿題、宿題やってなかったから、夏休みの」
 そう、昨日は結局あの女の子が隣に座ってから十分もしないうちにいたたまれなくなって、図書館を飛び出してきてしまったのだ。要するに、せっかく図書館まで遠出をして宿題を終わらせてしまおうとしたけど、ほとんど出来ていないということ。だから、今日こそはちゃんと勉強しなくちゃいけないわけで……。
 一は、どうやら電話の向こう側で本気で驚いているようだった。しばらく沈黙してから、「ヒロから宿題という言葉を聴くとは」とぼそっと呟く。ぼくはまた笑ってしまった。こいつといると、本当にいつも笑いが止まらない。なかなかそれを収められなくて、もういいやと笑いながら謝ると、一はいつの間にか普段の調子を取り戻していて、
「いや、許さん。一生恨んだるからな、ヒロ」
 そう捨て台詞を残して、電話を切ってしまった。プー、プーと電子音が鳴る。ぼくはケータイをふたつにたたんで元の右ポケットのしまうと、昨日と同じように自転車に跨った。
 ――さあ、今日は何処に行こう?

          * 

 一週間が経った。ぼくはあの日からずっと、図書館に通いつめている。
 ときどき考えてみる。なんでぼくは毎日図書館に行ってるんだろう、どうしてわざわざ通っているのだろうと。本当は、ちゃんと答えを知っている。それなのに、わざとそれに気づいていないふりをするのは――認めるのが怖いから、なんだろうな。
 彼女と出くわしたところで、別に挨拶したりするわけじゃない。ましてやまた隣に座るなんて、とんでもないし、有り得ない。彼女はいつも違う表紙の分厚い本を読み、ぼくは少し離れたところからそれをちらちらと眺めながら、学校の宿題を片付ける。ただそれだけ。ぼくはそれをするためだけに毎日毎日図書館に通っているのだ。そう考えてみると、今ぼくのやっていることは、とても馬.鹿らしい。きっと一が知ったら、「馬.鹿じゃねえのお前」と一言で済ませてしまうだろう。そう、これはそれほど馬.鹿らしいことなのだ。
 ベッドに寝転びながら、長々とそんなことを考えてみたりもする。これも、最近の日課。いつも、結局は「馬.鹿らしい馬.鹿らしい」と繰り返している自分自身が馬鹿らしく思えてきて、「いいじゃないか、どうせぼくは馬鹿なんだから」と開き直って終わる。自嘲するような笑いをひっそりと付け加えてみることもある。誰にも見えないように、でも自分自身にはしっかりと見せ付けるように。
 ――でも、でも、それでも、ぼくは図書館通いをやめられないのだ。

          *

 そうして、なんとか宿題を終わらせて迎えた始業式。
 ぼくが起きたときには、もう母は仕事に行く用意を済ませていて、久しぶりの早起きに身体がついていかないぼくにてきぱきと朝ごはんの内容を伝えて、そのままさっさと出て行ってしまった。言われたとおりにテーブルの上の食パンを焼いて食べる。食べながら窓を開けると、朝から元気な蝉の鳴き声がなだれ込んできた。なんの蝉かは分からないけれど、ずいぶんうるさい。もう九月に入ったというのに。
 いつものとおりドアに鍵をかけた。鍵をしまいながら、通りかかった近所のおばさんに挨拶する。おばさんはぼくに挨拶を返したあと、ああそういえば今日から九月だったわねというようなことを呟いて、そそくさと通り過ぎて行った。
 蝉の声はさっきよりもさらにうるさく、耳に纏わりつくように響く。ぼくはそれを振り払おうとゆるゆると頭を振って、最寄のバス停までの道を歩き出した。
「ヒロおひさー宿題終わってるー?」
 バスを降りてしばらく歩いていると、不意に後ろから声がして、きしきしと音をたてる自転車がぼくの横に並んだ。一だ。
「気づいたら終わってた」
「なにそれ、俺に対するイヤミ? 俺昨日徹夜で頑張ったけど、まだ数学の問題集終わってないわけ、だから写させて」
 一は足をペダルから離して、スピードが出ないようにブレーキをかけながら言う。ここから学校までは下り坂だ。
「数学はぼくに頼るなよ、間違いだらけだったんだから」
 ぼくはそう言って、ぼくのスピードに合わせていた自転車が、「あ、ちょ、あ、あ」という効果音と共にゆっくりと傾いていくのを、ただ黙って見守る。
「まじお前って酷いよな。冷たいっつーかなんつーか」
 よろけた自転車を支えながら、一は女の子みたいにぷうっと頬を膨らませた。
 その日は久しぶりに学校というもののだらだらした感覚を思い出し、夏休みに何度となく遊んだ一や他の帰宅部のやつらと教室で盛り上がって、鬼教師に新学期早々怒鳴られてしまった。ぼくらは、怒られている数分間こそおとなしくしていたものの、鬼教師が教室を出て行ったとたんに大爆笑。生徒指導の会長であるその教師は、夏休みの間どこに行っていたのだろう、白かった肌を真っ黒に焼いて、禿げかけた頭をますます光らせていた。
 そういうことの余韻をまだ残したまま家に帰ってからも、ぼくはいつもどおり例の図書館へと向かった。昼食をのんびりととったあと――面倒だったので朝の残りの食パンを焼いて食べた――流れるように図書館に行く準備を進める自分に半ば呆れながらも、家の鍵をかちりとかける。自転車に跨ってふと顔をあげると、斜向かいの家で飼われている柴犬が、舌をだらんとさせて寝そべっているのが見えた。
 ――やっぱ皆バテてるなあ。
 そんな思いでしばらく犬を見つめていると、敵だと思われたのか、元気のない声でわん、とひとつ吠えられた。
 空は相変わらず雲ひとつなく晴れ渡っていて、蝉の声はいつまでも止む気配を見せない。全くもう、雨、いつから降ってないだろう。

           *

 自転車を駐輪場に停めて、水分補給をしているときだった。視界の隅っこに、図書館の入り口に向かう制服姿が目に入った。ふたつに結んだ長い髪に、膝丈のスカート。この辺りではよく見かける紺色のブレザーに、紺色の靴下。
 ――彼女かもしれない。
 直感がぼくを突き動かした。ぼくはペットボトルを急いでしまって、その子の後について図書館へ向かう。するとその子は、ぼくをストーカーか何かかと思ったのか、図書館の自動ドアのほんの少し前で振り返った。
 そして、
「あ、こんにちは」
 急に恥ずかしくなって、赤く染まってしまった頬を隠すように俯こうとするぼくに、
 じん。
 聞き覚えのあるあの声、諦めきれなかったその声が響いた。
 ぼくは頬に差した赤みも忘れて顔をあげる。彼女の姿はもう、自動ドアの向こうに消えていた。

 ――心臓が、どきん、と大きな音を立てて、ひっくり返った気がした。

 彼女が。
 彼女が。
 彼女が。
 ぼくのことを覚えていてくれていた。
 忘れられていたって当然のこのぼくを。
 しかも挨拶してくれた。
 ぼくに。
 ぼくに。
 こんなぼくに。

 夢だったらどうしようと、何度も指に爪を立ててみた。恥ずかしいけど、一度だけ頬もつねった。火照った頬も、汗ばんだ手のひらも、きちんと痛くて。ほとんど我を忘れたような状態で、図書館に入りもせずに自転車のもとに逆戻りした。鍵をかけていることも忘れて自転車を出そうとしたり、勢いあまってあちこちに前輪をぶつけたり、周囲からみれば、さぞかしおかしな光景だったことだろう。でもそれさえも気にならないほどに、ぼくは有頂天になっていた。
 すぐにそのまま家に帰って、さっきの出来事を何度もリピートした。こんにちは。こんにちは。こんにちは。彼女の声も何度も何度も繰り返した。繰り返せば繰り返すほどテープが擦り切れてゆくように、ぼくの記憶も曖昧になっていく。とうとう輪郭しかたどれないようになったころに、ぼくは決心した。
 次に出会ったときには、ぼくから話しかけてみよう、と。
 あのときのような思いは――もう、二度と味わいたくない。
2010/07/12(Mon)11:33:33 公開 / 梨音
■この作品の著作権は梨音さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
前作第一章から間が開きすぎましたね、申し訳ないです。
以前ご指摘いただきました改行などをすこし改善してみたのですがどうでしょうか´`
字数も足りているかどうか少し不安です´`

酷評大歓迎なので、読んでくださった方はぜひ感想、評価を残していってください!!
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして、梨音様。せんだいかわらばんと申します。御作を読ませていただきました。
中学生か高校生だと思うのですが、年頃の少年の心理描写をよく描かれていると思います。良かったですよ。
ただ、いくつか気付いた点がありますので、箇条書きにしてみました。参考になれば幸いです。

1)人物設定について
 小説は文章でストーリーや人物像を伝えるものです。ヒロインの少女や山下一など、どのような容姿なのか伝わってきません。もう少し人物描写をされた方がよいかと思います。
御作の場合、恋愛をテーマにされているので、登場人物の人物像や行動の描写から滲み出る心理描写などが生命線になると思いますので、しっかり追求したほうがより良い作品になると思います。
2)情景描写について
 舞台となる季節は「夏」ですよね? 冒頭部分では季節感を感じられず、途中から「今って夏なんだ」とわかりました。恐らくペットボトルで夏を表現しているのでしょうが、描写不足のように感じられます。せめて冒頭部や場面の切り替わりなどではもう少し詳しく情景を盛り込んだ方が良いと思います。
3)場面の描写について
ストーリーというのは基本的にテーマに沿った内容にすべき、というのが私の考えです。構成上、無関係な部分も描写せざるをえない場合もありますが、関係のない場面を描写しすぎのように感じました。特に始業式当日の投稿描写から帰宅後、図書館へと向うまでの場面。この描写をするよりも少女に対する主人公の想いや馴れ初めなどを深く掘り下げて描写するとか、視点を図書館の少女に切り替えてみるとかした方が物語に深みが出ると思います。尤も、この場合は構成を練り直さなければなりませんが。
4)推敲してください。
 文脈上、明らかにおかしい箇所が何箇所かありました。恐らく読んでみればわかります。投稿前に何度も自分で読み返してみて修正しましょう。

以上、酷評歓迎ということでしたので、かなり厳しいことを書き立てました。申し訳ないです。主人公の淡い思いはヒシヒシと伝わってきますので、良い作品に仕上げて頂くことを期待しています。頑張ってください。
2010/07/14(Wed)19:46:120点せんだいかわらばん
初めまして、海里と申します。
恋愛小説は読むのも描くのも大好きで、
先ほどこちらのサイトを見つけて早速投稿させていただきました。
たくさんの方が恋愛小説を書いていて、しかも恋愛と言っても細かいテーマが違う。

梨音さんの場合は、中高生の淡い恋、がテーマでしょうか。
主人公の、曖昧なままの気持ちにやきもきする様子がかわいらしい作品だと感じました。
せんだいかわらばん様も指摘なさっている通り、少し、余計な描写があるかなぁと。
学校の場面をせっかく描くなら、授業も友達も上の空になってしまう主人公、
なんて表現があれば、淡い思いが強くなっていく過程がよりわかりやすいし、
その後の再開シーンの感動も引き立てやすいんじゃないかなと思いました。 

改行なども読みやすかったです。
これからも応援しています。頑張ってください。
2010/07/14(Wed)20:48:530点海里
*せんだいかわらばん様
はじめまして、読んで下さってありがとうございます^^
わたしは中学生です、そしてこの作品内の登場人物は(第一章のほうに書いてありますが)高校生です。よかっただなんて光栄です、ありがとうございます!
そして非常にためになる評価をありがとうございます。
描写について問題が多いみたいですね、それから人物の作りこみが甘い。
申し訳ないだなんてとんでもないです! こういう評価はほんとうにためになります^^
頑張ります、ありがとうございました!

*海里さん
はじめまして、読んで下さってありがとうございます*
そうなんですか^^

そうですね、テーマはそんな感じです。
ありがとうございます!
なるほど……参考になる意見をありがとうございます。

本当ですか、よかったです。
頑張ります、ありがとうございました!!
2010/07/15(Thu)10:54:160点梨音
合計0点
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除