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『-T R T 2 - 紅の人形師 4話其の4』 作者:湖悠 / リアル・現代 ファンタジー
全角20443文字
容量40886 bytes
原稿用紙約63枚
――二人の少年。木のように成長していく少年は過去に目を向け、自分を見つめていく。黒を纏った少年は戦いを望み、危険な任務に身を投じる。――二人の少年。しかし、彼らは糸に縛られている事を知らない……。
 
 第2部


 

 ◆クレナイノニンギョウシ




 少年は舞う。力を手に入れる為に。

 少年は模索する。真実を手に入れる為に。


 しかし彼らは目を逸らしている。

 そのゴールの先には、何一つ光がないという事実から――。


 
 ◇アカイイトA

 

  
  
 The Red Thread 2 

  - T R T 2 -

 『紅の人形師 〜クレナイノニンギョウシ〜』


 

 ダイ ヨン ワ



 [懐古-旅行]
 
  

 1

 竹刀を握り、俺は対する者の行方を追った。全身の感覚を研ぎ澄まさせる。もう既に五度目の訓練だ。何度も何度も打ち負けた。しかしその中で、俺はある一つの答えを見つけた。つまり――身体を制御すること、である。俺は今まで怒りによる興奮に身を任せ、力を藪から棒に奮っていた。しかし、大切なのはそんな事じゃなかったのだ。
 気付いたのは四度目の訓練である。厳しい特訓の甲斐あり、攻撃法は身に着けていたのだが、どうしても迫りくる賢治副隊長の斬撃をかわす事も防ぐ事もできなかった。砂嵐で視界は最悪で、攻撃しようにも避けようにも、肉眼で辺りを察知しようとしている間にはほぼ無理な話だったのだ。パニック状態に陥った俺だったが、副隊長の攻撃を受け、頭が冷やされて、思考が安定してくると、自分の身体が風の流れをより鋭く察知できることに気付いた。どうやら冷静になりさえすれば、この身体は殺気を放つ相手のある程度の位置を感知できるようだ。だが、そうするには今まで以上の集中力が必要なわけで。四度目の訓練では感知できたものの、攻撃の速さの方が俺の思考より上をいっており、気付けばぶっとばされていた。
 五度目の今回。そんな失態を見せるわけにはいかない。今度こそ、俺は追いつくんだ。色んな強い奴らに追いつくんだ……っ。
 背後の風の軌道が、ほんの少し変わった。振り向き、竹刀を構える。――捉えたっ。
「そこだぁぁぁっ!」
 そして数十回目の斬撃を放つ――。
 




 ダイ ヨン ワ



 [懐古−旅行] 


 1
 
「いひひひひ」
 甲高い笑い声が救護室内に響く。ベッドの上で、俺は顔をしかめながら、傍の椅子に座るその笑い声の主を見つめていた。
「いやぁ、お前中々動きよかったなぁ。びっくりしたぜまったく……いひひひひ」
 その笑いを止めて欲しいんですが……くっそぉ、悔しいなぁ。
 あの時、俺は確かに賢治副隊長の動きを読んでいた。俺の判断は正しかった。だが一つ誤算があったのだ。それは、賢治副隊長が"速すぎる"ことである。イケるっ、という俺のほほ笑みを一瞬にして散らせたのは、想像を遥かに超す、超特急の突きだった。クソォ、大人げない。大人げなすぎるぞ賢治副隊長!
「あの時のお前の顔っつったら……くひひひひ、青い、青すぎるぜ」
「むぐぐぐ……」
 悔しい。素直に思う。あの時、確実に隊長の動きを捉えたと思った。ようやく斬撃をくわえる事ができるとそう確信し、喜んだのに。この人の実力は、俺の想像を遥かに超え過ぎている。いつになっても超せなそうな壁だ。まぁだから副隊長なんだろうけど。
「悔しいかぁ? まぁそうだろうなぁ。あの時のお前は自身に満ち溢れた顔をしてたし」賢治副隊長の声からようやく震えが無くなった。「ま、俺みてぇな力の持ち主じゃなかったらアレは避けきれねぇな。普通の殺喰との戦闘だったなら、お前は勝ってるだろうよ」
 俺の心に光が灯る。「えっマジっすか!」
「ああ。ま、あくまでも"普通"の殺喰の場合だけどな。つえぇ殺喰だったら見抜かれて身体貫かれてるだろうよ」
 俺の胸に人差し指を押しつけて賢治副隊長は言った。熱くなっていた胸の鼓動が、しゅんと冷めきる。あの時の記憶が脳裏によぎったからだ。旧友を殺され、憎しみだけで立ち向かったあの時……もし記章が来なかったら俺は、賢治副隊長が言うように殺喰に胸を貫かれていただろう。そう、記章が来なかったら――。
『大丈夫だ、カズ。お前は一人じゃねぇ』
 …………ッ。
 違う、違うんだ、俺は……。 
「おい、和弘ってば。聞いてんのか?」
 賢治副隊長が心配そうに俺を見下ろしている。「あ、すいません。少しぼうっとしていました」
 胸が痛い。何だろう、この痛みは。何だろう、この悲しさと虚しさは。俺は、ずっと前にもこんな感覚を覚えた気がする。いつだ? そしてそれはどうしてだった? クソ、思い出せねぇ。すっきりしねぇなチクショウ。
「あんま自分が死ぬ事を考えんなよ。ビビって戦えなくなるぞ」賢治副隊長はそう言い、席を立った。が、何かを思い出したようでまた椅子に座りこむ。「そういやお前、木幡 和弘つったよな?」
「え? あ、はいそうですけど」
 何だ? 俺ちゃんと自己紹介したよな? 聞いてなかったのかな、この人。
「もしかしてお前って、下崎中学校の三バカの一人か?」
 ギクッという擬音が心臓から飛び出そうだった。バレたらまずい。俺の危険察知能力がビンビンに働いた。ばれれば絶対に危ないチームに入れられる。今まで何とか正体を隠してきたっつーのに、こんなとこでバレたら全部水の泡だ。俺のささやかな平和に溢れる学校生活が崩れさっちまう。バイクで暴れまくる日常なんて……そんなのイヤじゃぁぁぁぁ!
「あー、いやー、人違いじゃ……」汗が吹きだした。
「そんなはずねーだろ。隊の奴らも言ってたぜ? あのふてぶてしい顔を忘れはしねぇってよ」
 やっべ、昔お世話になった方々がこの隊にもいるのかよ。うわぁ〜、聞きたくなかった。何で覚えられてんだよチクショー。俺は全く覚えてないのに。
「安心しろよ。第3討隊なんてそんな奴らばっかだぜ。学校から見離された奴。親から見離された奴。社会から見離された奴……そんなんばっかだ。喧嘩でしか物事を解決できない……そんな奴ばっかりさ。気に入らねぇ奴をかったぱしぶっ飛ばしまくる。お前だってそうだったろ?」
 ほとんどの部分に、自分は該当していた。
「……ええ」素直に頷いた。
 思い返せば、意味もなくあの頃は抵抗したな。親にも、教師にも……。誰彼構わず殴ってたわけじゃない。言ってる事とやってる事が矛盾してる奴や、理不尽な事を言う奴。そういう奴らが気に入らなくて、でもどうすることもできなくて、ただただ殴っていた。ずっとそうしてたら、いつの間にか不良のレッテルを貼られてたんだっけ。
「俺もそうだった」遠い目をして賢治副隊長は言う。「中学の頃から暴れててよ。まぁ高校にはいけたけど、つまらねぇ毎日で、全然やりたいことがが見つからねぇでな。ぐずぐずして、迷って、苛々して……そんな時に族の奴らに絡まれたから、ついついキレちまった。気の済むまで殴り続けたよ。んで、気がついたら俺しか立ってなかった。
 ……化け物だと思ったよ、我ながら。気絶してる奴らの上に座って、なんでこうなっちまったんだろうって考えた。んでわかった。喧嘩しすぎて罰が当たったんだ、ってよ。毎日毎日、喧嘩しかしてなかった。だから、俺は化け物になっちまった。ひたすら人を殴ってる内に、神様って奴から罰を受けて、俺は人間じゃなくなっちまったって思ったんだ。珍しく落ちこんじまったぜ」
 そしてポケットから煙草を取り出し、それを咥えた。今、救護のおばさんは薬をとりに行ってるようで不在だった。
「自分で自分が怖くなった。俺には喧嘩しかなかったから、他に抜き出でてるとこはねぇ。つまり、俺は喧嘩をするために生まれてきたようなもんなんだって、その時思った。俺は、人を傷つけるだけの存在なんだろうか。俺は、これからもずっと人を殴っていくんだろうか。そう思うと身震いがした」
 煙草に火がともされ、鼻を刺激する煙が天井に浮かんだ。
「路頭に迷って、夜道をぶらぶらしてたら、殺喰に出くわした。ハハ、びっくりしたぜ。俺よりおっかねぇ化け物が目の前に現れたからな。久しぶりに恐怖ってもんを感じた。久しぶりに、俺は逃げた。ずっとずっと、逃げ続けた。だけど奴は追ってくるのさ。ずっとずっと、しつこくな。煙草吸ってたもんで体力がなくてよ。力尽きて倒れちまったんだ。
 あの時の事、俺は忘れねぇ。汗がみっともねぇくらい出て、何もできなくて……赤い歯が近付くのを目を閉じて待っていることしかできなかった。そんな時、あの人が現れたんだ」
「あの人?」
「一樹さんだよ。一瞬だった。閉じた目を開いたら、化け物は血を吹きだして真っ二つになってやがった。ただでさえ化け物の存在に驚いたっつーのに、それよりも強い人間の登場にもう驚きまくりよ。よくわからねぇ単語を並べられて、今目の前に起こっている事象を説明されて、気がつけばビルの地下に連れてかれてた。そこで、色々な事を教えられたな。化け物の存在、そして、それを狩る人間の存在。とても信じられねぇ事ばっかだったけど、でも疑問はわかなかった。実際に化け物を見て、実際にそれを狩る人間を見ちまったから。唖然としたよ。俺よりつえぇ奴ばっかだって。
 その時気付いたんだ。俺は化け物なんかじゃねぇ。ただの人間だった、ってな」
 まぁ、ぶっちゃけ暴走族を一人で潰すというのは化け物級の荒技なんだが……。まぁ、確かに喰討士とか殺喰とかには負けるよな。
「検査を受けて、喰討士の素養があるって分かった。俺は、迷わなかった。これ以上強くなることには少し恐ろしさってもんも感じたけど、この力を、良い事に生かせるなら文句はなかった。ハズレ者だった俺だけど、ようやく居場所が出来たのさ。一樹さんの、第3討隊っていうスウィートルーム並みに居心地のいい場所がな。
 色んな奴らを見てきたけど、皆俺やお前みたいにハズレ者ばっかだったよ。最初は皆ツンツンしてた。だけど、互いの力を見ている内に、互いに協力して大きな敵を倒す内に、互いの境遇に自分を重ねる内に、皆丸くなってったよ。――だから安心しろ。お前の過去なんて関係ねぇ。皆同じ過去背負ってんだ。昔の事は水に流してよ、目の前に居る敵をボコす為に仲良くしようや」
 手を差し伸べられた。それは、とてもごつごつして豆だらけの不格好な手だった。でも、それはとても頼もしく見えて、温かく見えて……俺はその手をぎゅっと握った。
「改めてよろしく頼むぜ。下崎中伝説の三バカの一人、木幡 和弘」
 そ、そう言われると複雑なんですが……ま、いっか。
「はいっ」
 俺がそう返事をすると、賢治副隊長は輝かしい笑顔を浮かべて、救護室を後にした――のだが、
「ケンちゃんっまた煙草吸ってるのっ? 未成年はやめなさいって言ったでしょ」おばさんの叫び声。
「ゲッ、クソババァ、室内に居ねぇと思ったらんなとこにっ。ずらかるぜっ」賢治副隊長の大きな声。
「こ、こらっまちなさぁぁぁい」
 どたばたと騒がしい音がしばらく響き渡った。
 ……おいおい。

 家に戻り、ベッドに入った時、賢治副隊長の言葉が蘇ってきた。あの人も色々とあったんだなぁ。何も考えずに生きているんだと思ってた。でも、やっぱ違うんだ。皆考えてる。後の事を気にしてる。……俺は? どうなんだろう。あの時も、どうだったんだろう。
 俺は、賢治副隊長のように強くなかった。ただ暴れてただけだ。いつもいつも俺は助けられてばっかだった。……そう、昔から。
 まどろむ中で、セピアの世界が視界を覆う。
 ――やがて眠りに落ちた時、俺は昔のフィルムの中に居た。

 
 それは桜が舞う季節だった。春の心地よい気温がよく俺の起床を妨げていた。この日もそうだった。そもそも学校に行く気だってそこまでないっていうのに、この陽気だ。今日もサボろうか……。
 寝がえりをうった時、下の方で何かを叩く音が聞こえた。そうかと思えば聞き覚えのある叫び声。「かぁぁずぅぅぅひぃぃぃろぉぉぉっ」
 溜息が出た。まだあいつは俺の家に来るのか。いい加減解放してもらいたいもんだ。
 
 この時俺は中学二年生。
 学校につまらなさを感じ、ふてくされ始めていた時だった。

  2

 毎日が適当に過ぎて行く。中二の時、俺はずっとそう思いながら過ごしていた。毎日がつまらなかった。部活にも入ってなかった。テニス部に入っていたが、上下関係が嫌になり、辞めた。それからというもの、友達とどこかに遊びにいく機会がめっきり無くなっていった。それどころか、学校で友達と話す事さえ少なくなっている。なんだか、すべてがつまらなくなり、面倒になった。何で俺は学校に行くんだろう。目的が見つからない。別に将来の夢がある訳でもないから、勉強する意味もない。俺には、何もない。
 だから、本当なら学校サボりまくりの毎日のはずなんだが……俺を学校に行かせる唯一の要素がある。それが――。
「かずひろぉぉぉっ。でてこぉぉい、でてこないと私から行っちゃうぞぉぉ」
 人の家の前で騒がしくしている、幼馴染の朱省 零夏だ。登校日の全ての朝に、彼女が俺を起こしにくる。俺がサボりたくて布団に引きこもろうとする時だってなんだって構わず、布団をひっぺ返しにきやがる困った奴だ。こいつさえいなけりゃ俺は学校になんていかないんだが……。
 ……よし、決めた。今日という今日は放置プレイだ。ずっと寝続けてやる。今まではあの騒音に俺か親が負けていたから、結局学校に行かされる羽目になったんだ。でも今日は親は仕事で朝早くから居ない。つまり、俺だけな訳だ。しかも玄関のカギは親が閉めて行った。つまり、籠城作戦の成功率は99%。ほぼ確実に成功するのだ。
 俺は布団を顔まで被り、籠城を開始した。
「かずひろぉっ」
 ふふふ、いくら叫んでも無駄だ。この鉄壁の砦が破られる事などないっ。
「かずひろ?」
 ははは、なんか声がいくらか近くなった気がするが、99%との防御率を誇る我が砦を破ることなど不可能なのだっ。
「和弘くん?」
 あれ? おかしいな、何か真上から声がするような……。
「何無視してるんじゃぁっ」
 零夏の叫びと同時に、痛い程明るい光が俺の顔を照らした。眩しくて最初は訳がわからなかったが、慣れてくると零夏が俺を覗きこんでいる姿が黙認できた。
 あ、あれ? お、おかしいぞっ。俺の限りなく100に近い99%の防御率は一体どうなったっていうんだっ。
「お、おまえ、何で入ってこれたんだっ。ま、まさかドアを破壊したんじゃ」
「なわけないでしょっ。これをおばさんにもらったの」
 その白い手には見覚えのある形の鍵。ま、まさか合い鍵か。あのクソババァはなんてものを渡してんだっ。
「おばさん言ってたよ? 『あの子は私が居なくなったら絶対に寝過ごすから』って。やっぱ母ってすごいよね。息子の考えている事がすぐわかっちゃうんだから」
「息子は全然母親の思考パターンを読めないんだけど……どすりゃいいんだ?」
「どうすることもできないと思うなぁ、それは」
 そ、そんな……。俺は一生あの魔性の女に縛られ続けなければならないのかぁっ。
「ほら、もう時間がないんだから早く着替えて着替えて」零夏が勝手に俺の押し入れを物色し始め、衣類をベッドの脇に置いた。「学校さぼろうって思っても、私とおばさんがそうさせないんだからね」
 母さんとよく似た表情で睨みつけられてしまった。もうちょっと前はもっと可愛いやつだったってのに……時間って残酷なものよね。
 
「ふぇっくしょいっ」
 外に出ると大きなくしゃみが出た。春という季節は、心地よい温かさだけでなく、鼻と目を苦しめる小悪魔達まで連れてくる。嫌な季節だ。良い季節でもあるのだが……負の側面が強すぎて、どうも俺は春を好きになれない。とりあえず花粉症さえなければ、春は何にも代えがたい最高の季節になりうるんだろうけど。
 北にそびえる大きな山を見つめた。あの山は、夏には綺麗な全身を見せ、秋には美しい紅葉で人々を歓喜させ、冬には雪化粧で人を魅了する。一見俺達を温かく見守る女神のような山である。しかし、全てが完璧な物などこの世には存在しない。あの山は、春には女神から地獄の使い魔へ変貌するのだ。きっと春には女神が実家に帰ってしまうのだろうな。そして実家に帰っている間、強力である地獄の使い魔に留守を任せているのだろう。女神よ、どうかいつまでも俺達を見守り続けてくれ……。地獄の使い魔は俺達を見下すことしかしやがらねぇんだ……。
 ……いや、まぁ、途中から意味不明になったけど、要するに杉が憎いんだ。杉が多く生えたあの山が、この季節は憎くてたまらないんだ。
「何で山をそんな目で見てるの?」
 零夏が不思議そうに覗きこんできた。
「何でって、憎いからだよ。日本人に花粉症っつう重荷を背負わせた杉達が」
「そっか、和弘って花粉症だったよね。大変そうだよねぇ、花粉症」
「そういえばお前は花粉症じゃなかったんだよな」
 うん、と頷く零夏が、この時ばかりは憎らしい。俺が鼻水や涙をまき散らしている隣で何食わぬ顔をして歩く零夏が憎らしくてたまらない。こいつの目からじゃ、あの山はただの山なんだろうなぁ。羨ましいこと限りないばかりだ。
「私って身体強いからさ。どんな病気にも負けないよ」
 太陽と並びそうな笑顔を浮かべて、零夏は俺にブイサインを送った。
 そういえばこいつ、今まで風邪ひいたなんて事はひとっつも聞いたことないな。おたふく風邪とか風疹とかも掛かってないみたいだし。ありえないくらい健康体だよなぁ、ほんと。
 しばらく足早に歩いていると、美しい薄桃色に包まれた桜並木が迎えた。学校まで、あともう少しだ。
「綺麗だね」零夏が感慨深そうに呟く。
「そうだな」
 特に返す言葉も見つからず、適当に相槌を打った。
「でも、今年の桜ももう終わりだね。結構散っちゃってる」
「残念だな」
「この道の桜を見るのも、来年で終わりだね」
 とても寂しそうな顔で、彼女は桜を眺めていた。その顔に続いて、散りゆく桜を凝視する。所々新芽の緑が出始めている。もうすぐ薄桃色は死に、緑の目覚めが始まる。そんな事普通なのに、零夏の顔を見た後だと、何故か途方もない切なさを覚えてしまう。何でだろう。来ようとすればこんな道、いつでも来れる。また春に来ればいい。俺はこれから多くの春を体験するのだ。そう自分に言い聞かすのに、胸が締め付けられる悲しい感情を消す事が出来なかった。


 3

 学校のほとんどの時間、俺はシャーペンを回している。友人に教えてもらってから、どうにも俺はペン回しから離れる事ができない。くだらないとわかってはいるのだが、何故かハマってしまう。ペン回しと一口に言っても、種類は多種多様。難易度の幅も広い。俺が今やっている回し方は中級と言った所か。指の間にペンを行き来させ、最終的に文字を書く姿勢まで持っていく。これが中々難しく、いつも途中で詰まってしまう。失敗を何度も重ねた後の成功は、何とも言えない快感を味わえる。その快楽を求めている内に、大体の授業はいつの間にか終わってしまっている。今日もどうやらそのようだ。
 いつの間にか太陽は朝とは逆の所に居て、いつの間にか教室には誰もいない。ああ、孤独。皆部活に励んでいるんだろうな。こういう時部活入っていないと損だ。どこか疎外感があるからな。
 規定のバッグを背負い、教室を出た。廊下は昼頃と比べるとなんとも寂し気だ。ちょくちょく数人が通るくらいで、人気は疎らである。
 階段を下りて一階に出ると、突然誰かに衝突された。その勢いで俺の身体は窓際へと倒れて行く。
 待て、と文句を付けようとした所に、激しい音。あら、とその場から一歩歩み出て音の方を見る。ああ、やはりそうだった。先程の勢いでガラスが割れてしまったようだ。よく考えてみると肩が少し痛い。ウィンドウにショルダータックルしちまったってわけか。あぁ、これは面倒くさいことになったぞ。オゥマイガァ。
 逃げようにも先程の音を聞きつけて人が来ちまうだろうな。ま、俺のせいじゃあない。これはタックルした奴が一番悪い。先生もわかってくれるだろう。
「おい」
 廊下に轟く低い声。
 しまった――。俺は顔を手で覆った。
「何だこれは。お前がやったのか」
 声の元へ向く。そこには頭に黒の無い、がっちりとした体形の中年男教師が立っていた。首を振った。「いえ、押されたんすよ」
「押されて、お前が割ったんだろうが。全く、しょうがないやつだな、お前は」
 しょうがないやつ、だって? それはあんたのことだろ、全く……。
 それにしても面倒くさいやつに掴まったもんだ。剛田に見つかるとはな。主観でしか物事を判断しない頑固頭のこいつじゃ、必ず俺を犯人にするはずだ。何せ、俺はこいつに嫌われまくりだからなぁ。
 あれは何時だったか。理科の時にライトを剛田の頭に向けて反射させて……あれはめっちゃ怒られたな。あれから何かと俺の行動に難癖を付けてき始めた気がする。以外とハゲという事を気にしていたのか。悪い事をしてしまったものだ。
 でも、これはないだろう。俺は第三者に押されたのであって、故意に割ったわけじゃない。
「ちょっと来い。お前のたるんでる心を引き締めてやる」
 乱暴に腕を掴まれた。「離せよっ。俺じゃないって言ってるだろ」
「何だその言葉遣いは」剛田の耳を劈く大きな声が、廊下中に轟く。「やはりお前は絞らねばならん。ガラスを割った上にその態度。まったく、朱省とは雲泥の差だな」
「零夏は関係ないだろう」幼馴染の名を出され、不快感がより増した。苛立ちが募り、冷静さを失っていく。「それにガラスが割れたのはぶつけられたからだ。怒る相手間違ってんだろうが」
「間違ってなどない。私は見たぞ、お前がガラスを割る瞬間を」
 糞、物分かりの悪いやつだなっ。
「だ、か、ら、それは誰かがぶつかってきたからだって何回も言ってんじゃねえか。あんたには耳がないのか? ああ?」
 思わず俺も大きな声を出していた。廊下を歩く数人の生徒が、物珍し気な顔でこちらを見つめている。
「そんな嘘を吐いても無駄だ。むしゃくしゃしたからガラスを割ったんだろう? お前ならやりかねんことだ」
 こいつは俺の何を知ってるってんだ。発言がいちいちムカつく奴だなぁ……。
「動悸がないでしょうが」
「動悸ならあるぞぉ。お前、この前街中で喧嘩したそうだな」
 剛田がしてやったという顔を浮かべる。喧嘩、か。確かにした。零夏が不良に絡まれてたから、それを救おうとしたんだ。
「しかも、その喧嘩で負けたそうじゃないか。自業自得というわけだ。自分からふっかけて、返り討ちにあうなんてな」
 数が多かった。こっちは一人。あっちは5人。そんな圧倒的な戦力差で勝てるわけがない。確かに負けたのは悔しかった。だが、零夏を逃がせて、しかも4人をノックダウンにさせたのだ。翌々日にまでわたってふてるほどじゃない。まぁ、関係もない教師達に怒られた事は今思いだしても胸がむかむかとするが。
「関係ない。そんな事」
 そう言うしかなかった。他に何を言っても、こいつが聞き入れる訳がない。俺の話など、きっと信用なんてしてくれないだろうな。
「確かに俺の身体でガラスは割れたけど、原因は他の生徒が廊下を凄い勢いで走っていたからだ。教師なら物事の良し悪しをもっと的確に見抜くべきなんじゃないか――と思います」
 語尾に丁寧語を加えて説得させようとしたが、やはり無理だった。
「な、何だと……。私に教師がなんたるかを説くというのかお前は」
 こんな石頭に、俺の柔軟な考えが通じるわけがない。こいつにとってはきっと、自分の意見こそが物事の全てなのだろう。他の意見など関係もない。自分が思った事だけが全てなんだろう。
 不幸な、中年男だ。――自分の爆発しそうな怒りを抑え込む為には、こう思うしかない。ここで怒りにまかせて行動してしまっては、剛田に有利な流れになる。だけど……。
「ロクに部活にも入らず、ぷらぷらとしおって……。まぁ、お前みたいな奴は部活になど到底耐えきれんか。協調性も、責任感も持っておらん。人の話は聞かんし自分が一番だと思っている輩だ。だからガラスを割っても平気でいるのだろうな。だから教師に歯向かうのだろうな、お前は」
 ……念の為に言っておくが、先程の発言は剛田の口から発せられたものだ。俺が剛田に言ったわけじゃない。あの剛田の口から、"人の話は聞かんし自分が一番だと思っている輩"という言葉が出たのだ。こいつは何と言うか、救いようがないと言うか……。自己嫌悪に襲われない所は凄いと思うが。
 ただ、今までの剛田の言葉に苛立ちしか覚えなかったのだが、今回の言葉には、少し堪えるものがあった。協調性、責任感……言い返せない。反発したいものの、上手い言葉が見つからない。
「さあ来い」握られる強さが増す。「今回は親御さんを呼ばせてもらうぞ。もうお前の暴挙には私も耐えられないからな」
「だからやってねぇって言ってんだろうがっ」
「うるさい。お前はやったんだよ」剛田の額により一層深い皺が現れる。「今回の処分はどうなるだろうな。厳しい処分を先生方には考えていただかなければ。朱省の為にもならんしな」
「何っ――?」
 怒りがこの一時、ぴたりと止まった。どういうことだ、と剛田を睨む。
「朱省に限った事でもないがな。お前の行動は、他の生徒に悪影響を及ぼす。朱省は優秀な生徒だ。あの子なら県一の高校だって狙えるやもしれん。いや、県に限らず、他の県の優秀な高校にだって行くことは夢ではない」
「俺がその邪魔をしているっていうのかっ」
「する可能性があると言っているのだ」
 怒りはもう、抑えられないものとなっていた。挙句の果てにこの野郎は零夏を使いやがった。俺を抑え込むために、零夏を言い訳にしやがった。
 あいつに悪影響? あいつの邪魔? そんな、そんな訳……。
 しかし、何故か一概にそうだとは言いきれなかった。そうだと思いたいのに、本心から思えなくて、より苛立ちが募った。
「人が黙っていれば」剛田の手を振りほどき、強く睨んで対峙する。「好き勝手言いやがって……」
「なんだ、やるのか?」皺だらけの顔に、胸糞悪い笑みが浮かぶ。「私を殴るのか? 本当に仕様のないやつだ」
「この――」
 殴りかかろうとした時、急に誰かが割って入ってきた。
「お前、何を……」
 その誰かがゆっくりと振り向く。そいつは、見たことのない男子生徒だった。髪がとても長く、眉毛や目を過ぎて鼻の付け根あたりまで掛かっている。襟足は肩に掛かっており、遠くから見ると女子と勘違いしてしまうかもしれない。背は俺より少し高いくらいなのだが、下げパンをしているため、脚の長さを感じることはできなかった。
「お前は……」
 その男子生徒が現れた途端、剛田の顔から覇気が消えた。
「剛田先生。さっきガラスが割れたのはこいつの言う通りですよ」
 ロン毛な男子生徒がぼそぼそと小さな声で呟く。ってか初対面なのにこいつて。
「あ? いや、だが確かに私は……」
 どうも剛田の様子がおかしい。俺に対する態度とは180度一変して、どこか控えめな感じだ。このロン毛を恐れているような……そんな気がする。
「証拠に連れてきましたよ。――おい」
 ロン毛が後方すぐにある曲がり角に向かって呼びかけた。すると、そこから俺にぶつかったあの男子生徒がおずおずと歩いてくる。
「おい」ロン毛が今度は俺に向く。「お前にぶつかったのは、こいつか?」
 どことなくそのロン毛の態度が気に喰わなかった俺だったが、この機を逃すわけにもいかなかった。藁にもすがる思いってやつだ。
「ああ」俺は、できるだけ力強く肯定した。「そう、間違いない。こいつだ」
 剛田の方へ向く。その顔は赤く染まっていた。自分の非をあくまでも認めたくないようだ。「し、しかしっ、私は確かに……」
 しつこい野郎だ、と思っていると、ロン毛が俺にぶつかった男子生徒に何かを促していた。それに男子生徒は一時戸惑いながらも、何かを耳打ちされ、やがて嫌そうに剛田の前へ歩み寄った。
「俺が、廊下を走ってたんす。んで、ぶつかっちゃって……その、別に悪気があったわけじゃなくて、その……怖くなって、そのまま逃げ出しちゃって……」
 剛田は「言うな、それ以上言うな」とでも言わんばかりに唇を噛みながら聞いていた。が、やがて思い立ったように表情を変える。
「そうか、お前か。人に濡れ衣を着せるとは性根がねじ曲がった奴だ」それはあんただろ、と言いたかったが、何とか堪えて続きを聞く。「来いっ。そのねじ曲がった心、改心させてやる」
 今までの間違いをごまかすためか、間違ったことの恥を隠すためか、剛田は今までの数倍声を張り上げて、荒々しくその生徒の腕を掴み、こちらを一瞥することもなく去って行った。性根ねじ曲がり過ぎだろ、あのオッサン。教師として、いや人間としてあれはどうよ。
「剛田信夫。下崎中学校に何度も寄生する教師としては下位の男だ」
 ロン毛は剛田が去った方を見つめ、小さく漏らした。
「あ、さっきはサンキュな」
「別にお前の為ってんじゃないしな。全然構わないよ」
 あ、あらそうですか。
「俺の為じゃないって……じゃあ誰の為?」
「俺自身の自己満の為と、朱省の為……いや、朱省の名が変な風に使われたのが許せなかった為、かな」
「零夏を知ってるのか」
「まぁね」
「へぇ……でも許せないって何で? あ、ってかその前に名前は?」
「俺は――」
 この時、俺は知らなかった。
 この出会いが、後にある事件を巻き起こすことになる事を。
「東一 始(あずまいち はじめ)」
 この出会いが、既に運命づけられていた事を。
 この出会いが、未来に深く痕を残し続けることも。
「朱省に惚れてるから、許せなかった。それだけだ」
「へぇ、そうか。零夏にねぇ……――ん、え? えぇぇぇぇっ!?」
 そして、絶対にこの時は知ることなんてなかった。
 この出会いによって起こる全ての出来事が、ある物語のほんの一部の余興にしか過ぎないことを。


 4
 
 あの衝撃の出会いから早一ヶ月。俺達はほぼ毎日顔を合わせる関係になった。どうやら零夏をどう落とせばよいかを俺から聞き出したいようで、昼休み、放課後などにしょっちゅう会いに来ては色々と質問してきた。零夏オンリーの用件で俺に会いに来る事が多かったので、言う事をほとんど言えば来ることもないだろう、なんて思っていたのだが、最近は零夏の事と関係なく会いに来るようになった。東一の習慣になってしまったのだろうか。いや、"東一の"というか、俺の習慣にもなってしまっている。朝は零夏に起こされ、昼と放課後は東一に連れて行かれる。休日以外は決まって二人と顔を合わせる事になってしまったわけである。
 一ヶ月東一に付き合っていてわかった事が幾つかある。
 まず、東一が根っからの不良ということだ。街を二人で歩くと必ずと言って良い程絡まれる。どうやら不良の方々には知れた顔らしく、一人に絡まれると続々と他の方々もやってくるのだ。こいつは一体過去に何をしたんだろう、と毎回毎回思う。思いながら、毎回毎回東一と一緒にその場から猛ダッシュで逃れるのだ。これも習慣になってしまっているかもしれない。おかげさまで逃げ足がかなり鍛えられた。
 二つ目に、東一の顔が広いと言う事だ。先程述べた事もそうであるが、街中を歩いていると何らかの形で話しかけられる。俺は全然知らなかったのだが、ここいらじゃ中々の有名人のようだ。と言っても、知人のほとんどが危うい雰囲気を漂わせているわけなのだが。
 最後に、剛田が東一に怯えた態度をとっていた理由である。それは、東一が"現場"を見せてくれた。
 東一と放課後にぷらぷらとしていた時だった。街を歩く剛田を見つけたのだ。俺は絡まれるのも嫌だし避けようとしたのだが、東一は不敵な笑みを浮かべ、俺に「カズ、面白いものが見れるぜ」と言って剛田の後をつけていった。ついでに、“カズ”というのは東一が勝手につけた俺のあだ名だ。名前を教えた時、何のためらいもなくそう呼ばれた。無遠慮というかなんというか……。
 話を戻そう。その時正直乗り気ではなかったのだが、東一の楽しそうな顔を見るとついて行かない訳にもいかず、俺は胸に不安をよぎらせながらその背を追って行く。段々と道は細くなり、住宅街へと突入した。俺達は電柱に身を隠しながら、だんだんと歩みがぎこちなくなる剛田の後に続く。
 やがて、彼はとある家の前で立ち止まる。東一が鼻で笑っていた。
「どうしたんだ」と聞くと、自慢げに親指を立て、「あれ俺ん家なんだ」と答えた。
「東一の家……」
 そんなところにどうして剛田が来ているんだろうか。とても緊張しているみたいだし、一体何があるのだろう。
 やがて白髪の男性が剛田を出迎える。その顔は威厳に満ちており、幾度も修羅場をくぐりぬけてきたのだろうと推測できた。剛田はその男性に何度も何度も頭を下げていた。一体あの人物は何者なんだ……?
「あれは俺の親父さ」
 東一がぼそっと呟く。あの強面の男性が、東一の父親……。今はこんなちゃらんぽらんな東一でも、成長すればあの父のように虎の如く鋭い眼光を携えた顔つきになるのだろうか。
 それはともかく、何故剛田はあそこまで恐縮しているのだろう。保護者の前で教師がかしこまるのは至極当然の事に思えるが、あれはあまりにも縮こまりすぎだ。あの人物、一体何者なのだろう……?
 気になった俺は早速質問をした。しかし、東一は「言ったらつまらないだろ」と小さく言うだけで、その答えを教えてくれることはなかった。だが、あの人物が子供の東一にまで控えた態度をとらなければならない程の大人物だということだけはわかる。そうなると、職業も限られてくるが……。
 その場では結論に至ることはできなかった。
 

 五月も半ば。近付く夏が俺達を苦しめる。だがあと二ヶ月経つと更に暑くなるのだ。この暑さに負けていては、後の暑さの前にひれ伏してしまうだろう。かぁ……きついぜ。ようやく花粉も収まってきたっていうのに。
「なんか、複雑な表情してるね」
 昼休みの屋上。今日東一は学校を休んでいるらしかった。思わぬスケジュール変更が起き、一人で寂しく昼飯を食べる事になることになった俺だったが、同じくいつも昼飯を共にする人が欠席して、一人で昼飯をたべなければいけない零夏を見つけ、合流した。こうして二人で昼飯を共にするのも久しぶりだ。
「俺はいつでも様々な物事を考えているからな」
「いつもは能天気な顔をしてるけどね」
「失礼なやつだなぁ」返してやらないと気が済まなくなった。「お前だってあれだぞ、あれだ、何か妄想してる顔してる」
「そんな顔してません」即答である。
 流石に考えなさすぎたな。「じゃあちょっと真面目にコメントしてみる」
「別にコメントが欲しいわけじゃないんだけど」苦笑いを浮かべて零夏は弁当に箸を進める。
 じっと零夏を観察することにした。こいつにも何らかの弱点があるはずだ。何か、何か……。
 その時、零夏と目が合う。その瞬間、俺は思い出した。
「そう言えばお前、何か顔向けると大体目が合うような気がするなぁ」
 別に弱点でも何でもなかったが、思いついたので言ってみることにした。すると零夏は頬を紅潮させ、俺からすぐさま目を逸らし、スピードを上げて箸を走らせた。
「そ、それは偶然だよ。いつも、その、毎回何となく和弘見ると、あの、和弘もこっち向いてるっていうか……」
「何を慌ててんだ?」首を傾げると、零夏にキッと睨まれた。「あ、いや、お、怒るなよ……」
「だって、そんな事言ったら和弘だって同じじゃない。私が見れば目が合うし。なんか、その言い方だとまるで私が和弘を――あ、でも……」
 ん? 後半はごにょごにょしてて何言っているかわからなった。だけど確かに言われてみると零夏の言う通りかもしれないなぁ。じゃあタイミングが合っているのか? たまたま? 毎回? なぁんか腑に落ちないな。でもこれ以上言っても零夏の怒りの炎に油を注ぐだけか。追及するのは止めておこう。
 しばらく俺達は、鬱陶しさを覚える程温かい空気の中で時折吹く、心地よい涼しい風を楽しみながら、弁当を食していた。
「昔から思ってたけど、和弘ってよく食べるよねぇ」零夏は自身の三倍近くはある俺の弁当箱をまじまじ見つめ、感嘆の声を漏らした。
「そうだなぁ。何か食べないと力がみなぎらない感じがしてさ」
「特に肉が多いよね。よくこんな食べて太らないなぁ」
「俺の消化器官は他のやつに比べて働きもんなんだよ。――さ、食べ終わったしどっか遊び行こうぜ」
 弁当箱をしまい、俺は立ち上がった。
「え、ちょ、待ってよぉ。私まだ食べ終えてないんだけどっ」
 零夏の弁当を見ると、確かにいくつかおかずが余っている。おいおい、こんなに小さいってのにまだ食べ終わらないのか。
「そういやお前陸上部でがんがん走ってるのに全然食べないな。栄養足りるのか?」
「一度にはそんな食べれないんだよ。だから間食が多いかなぁ――て、何にやにやしてるの?」
「いや、なんでもないさ」
 とてもじゃないが、太るぞ、だなんて言えない。言ったらどうなることか……。こいつは普段はおとなしいが、怒ると何するかわからないからな。
 零夏の隣に腰掛けて彼女が食べ終わるのを待つ事にした。それにしてものろいペースだ。そういえば昔からこんなんだったっけ。
 ゆっくりと空間が広がって行く弁当箱を眺めていると、屋上のドアが開いた。誰だ、と注意深く睨んでいると、ツンツン頭で眉毛の薄い輩が三人屋上へ出てくる。どうやら三年生のようだ。
「あんれぇ、駄目だよボクたちぃ」明らかにこちらをバカにした口調。「ここは俺達が昼飯食べるとこってきまってんだよねぇ」
 ムカつくが、逆らって得はない。「すんません、すぐ出ていきますんで」
 顔を青ざめる零夏の腕を掴み、引っ張っていく。しかし屋内へ入ろうとした時、彼女が立ち止まった。どうしたのだろう、と振り向くと、先輩連中に肩を掴まれていた。
「君さぁ、陸上部の朱省 零夏だよねぇ」
 いやらしい笑みを浮かべ、そいつは零夏に問いかける。彼女は酷く恐縮し、全身を硬直させながらも小さく頷いた。
「あぁ、やっぱりなぁ。へぇ、君が朱省 零夏……」
 三人が零夏を囲み、品定めするようにまじまじと見つめる。それが何故だか不快で、とても胸が苦しめられて、俺は零夏の腕を強く引き、先輩の手を彼女から引き離した。
「行くぞ零夏」かける声も、どこか荒々しくなってしまう。
「おいおい、何だよそれ」ツンツン頭の一人が睨みつけてくる。「俺達はまだこの子に用があるんだけど」
「俺も零夏に用があるんですよ」気付かぬうちに、その声に敵意がこもってしまう。「行くぞ、零夏っ」
「おい、待てよテメェ」
 俺の手が零夏の腕から離れた。三年の一人に胸倉を掴まれたのだ。その顔は鬼の形相である。「調子ずいてんじゃねぇぞ……っ」
 睨みあう。視線と視線がぶつかり合う。俺は目を逸らさなかった。意地がそうさせた。
「和弘っ」
 今にも泣き出しそうな声で零夏が叫ぶ。
 先輩の腕が振りあげられた――。
 肉と肉がぶつかり合う音。ミットにボールが収まった時のような、潔い音。目をつむっていたので、何が起こったのかわからなかった。だが、一つだけ分かる事がある。俺は、殴られていない。
 目を開ける。すると、二つの手がそこにはあった。大きく開かれた手と、その手に包みこまれた丸まった手。
「おい、てめぇ……!」すぐ後ろから、聞き覚えのあるぼそぼそ声が聞こえた。「俺のダチに手ェだしてんじゃねぇよ」
「な、なんだお前……」
 三年が後ずさりする。その後を、その少年がゆっくりと追った。少年の長いロン毛を見た時、すぐにわかった。その人物が東一であるということが。
「ただじゃすまさねぇ。最初の獲物はテメェだっ!」
 東一が雄叫びをあげる。俺は目を疑った。耳を疑った。東一がこれほどに激しい感情を露わにする事など、想像できなかった。いつもの気だるい雰囲気は全く見受けられない。今あいつから感じるのは辺りの空気を押しつぶす程の怒気。凄い……あいつ、どんな人生送ってきてるんだ。
「舐めやがってっ」
 東一に威圧されながらも、上級生としてのプライドがあるのか、一人が殴りかかった。零夏も俺も、目を逸らす、が――。目を開けると、殴りかかった三年は東一の横で、仰向けで痛みにあえぎながら倒れていた。な、何をしたんだ?
「お前、よくもっ!」
 もう一人が殴りかかる。東一は拳を握りしめてぼーっとその様子を眺めている。そのままじゃ危ない、と思いきや、振り下ろされた腕を受け流し、その背中に強い蹴りを加えた。背中を押さえ、その三年は地面で身悶えしている。
「な、何だよお前」最後に残った三年が、声を震わせて東一に問いかける。「テメェは一体……」
 その時、彼は目を見開かせた。そして震える指を東一に向ける。「お、お前、東一 始……あ、あの"極東"――」
 彼の言葉はそこで消えた。
「糞野郎が……」
 脚を高々に上げている東一。その横に先程の三年が倒れている。蹴った、のか? なんて速さだ。脚の動きにまるでついていけなかったぞ。
 目を疑う光景というのはこういうことなのか。それにしても映画のワンシーンのように綺麗な喧嘩だった。見苦しい喧嘩ではなく、一手で全てが決まってしまう。なるほど、不良に知り合いが多いのも合点がいく。恐らく幾人も倒されているんだろうな、こいつに。極東……誰かがそう漏らしていた。単純なネーミングだが、決して合っていないとは言えない。むしろ合い過ぎているくらいだ。はは、全く凄い奴と知り合いになっちまったな、俺は。
 零夏が泣きついてくるまで、俺はただ立ち尽くしていた。
「――零夏」ようやく自分の胸元で泣きじゃくる彼女に気付く。「お、おいおい、泣くなって……」 
 重苦しい空気がだんだんと消えていく。倒れていた三年生達は、東一に恐れをなしたようで、それぞれ痛めた部位を押さえつつ恨み言を吐いて、屋上を後にしていった。
「大丈夫か、カズ」
 東一がこちらを向いた。優しい笑み――は突然一転し、口を大きく開けて石のように固まってしまった。何おかしな事やってんだと思っていたのだが、やがて東一との出会いを思い出し、俺は冷や汗を垂れ流した。そうだった、こいつ、零夏の事好きって言ってたよな。
「えぐっ、ぅぅぅ、こ、怖かったんだからぁ」何も知らない零夏が俺の胸元で泣きじゃくる。「バカッ、バカッ、バカァァァッ!」
 容赦なく胸を叩かれる。痛い、痛い、痛い。
「へっへっへ、カズゥ……」狼のうなり声のような恐ろしい低音が、東一の口から漏れる。その口元は不自然につり上がっていた。「最後の獲物がきまったぜぇぇ……」
 容赦なく心を絞られる。怖い、怖い、怖い。
「カズヒロゥッ!」
「カズゥッ!」
 同時に木霊する大声。
 叩かれる胸。泣きじゃくり、周りが見えなくなっている幼馴染。手を付けられない。
 絞られる心。怒り狂い、憎しみしか見えなくなっている友達H。殺される。
 何もできない俺。
 そして、今日も不幸な時を迎える――。
  

 

 
 ◆◇◆◇人物・重要語確認◆◇◆◇

 
 木幡 和弘:キハタ カズヒロ
 主人公。幼馴染や個性的な友人達など、いわゆるギャルゲー主人公のような立ち位置に居る。
 西が嫌い。零夏に複雑な感情を抱いている。観察力が鋭い。
 中学の頃は不良だったが、零夏によって強制的に勉強を強いられ、彼女の指導の下死ぬ気で勉強させられた。その甲斐あって更生(というより精も根も尽き果てた)し、高校では緩やかな日々を送っていた。 
 記章に複雑な感情を抱いている。

 
 朱省 零夏:アケショウ レイカ
 和弘の幼馴染。髪は栗色で、長さは肩につくかつかないかくらいのショートヘアー。目はぱっちりとしており、綺麗、というよりはかわいい系の顔。典型的な幼馴染キャラ。
 生徒会副会長の西と付き合っている。
 西と付き合ってから、いつものメンバーとの間に壁が生じつつある。

 
 石田 利恵:イシダ リエ
 和弘らと仲の良い女子の一人で、異常なまでのコスプレマニア。髪は二つ結び。かなりの童顔で、見た目では歳を想像できない。背も低く、胸もぺったんこ。危なっかしいロリキャラ。
 自分の事を私などではなく「利恵」と呼ぶ。また、他の人の名前も勝手に呼びやすいように呼ぶ。那岐に懐き始めた。柔らかい物が大好き。
  
 
 
 些棟 巳柚:サトウ ミユ
 和弘達と仲の良い女子の一人。男っぽい性格をしており、サバサバ系である。かなりドSで、キツイことしか考えない。お団子を頭に作っており、目が少しつりあがっている。見た目ではとてもじゃないが性格は想像できない。一応美人ではある。
 自分の事を「オレ」と呼ぶ。
 不審な行動が……?

 
 木島 桜:キジマ サクラ
 和弘達と仲の良い女子の一人。生真面目。眼鏡をかけており、髪はロングストレート。クラス委員長で、頭もよく、運動神経もいいので皆に慕われている。記章とはライバルであり、絶対に交わらない(下ネタな意味ではなく)存在だという。
 時事ネタに弱い。
 意外と空気が読める。 


 佐坂 庵:ササカ イオリ
 和弘達と仲の良い男子の一人。口うるさい。ドM。いじられ担当。モテない。(一行で十分)

 
 矢高 記章:ヤタカ キショウ 
 和弘達と仲の良い男子の一人。髪は短く、オールバックでまさにスポーツマンという風貌。負けず嫌いで、桜とはいっつも張り合っている。巳柚に劣らずSである。
 陸上で世界を目指している。
 中学の頃は和弘同様不良だったが、零夏によって強制的に勉強を強いられ、彼女の指導の下死ぬ気で勉強させられた。現在はまぁまぁ頭が良い。
 人間守護機関所属の喰討士。死を恐れない特攻的な戦闘スタイル。

 
 那岐 杏:ナギ アンナ
 転校生。頭のてっぺんから腰まで伸びたポニーテール、そして背が低く、童顔なのが特徴。その容姿に、クラスメイト達は目を奪われた。和弘が戦った謎の女に容姿がそっくり。
 小動物のようにおどおどとしており、かなりの天然である。
 最近利恵に懐き始めている。


 白銀 道弘:シロガネ ミチヒロ
 那岐のストーカー。長い髪と太い体、細い目と濃く刻まれた皺が特徴的。寒がりで、真夏でもブレザーを着る。謎が多い。
 文芸部の部長でもある。
 


 九頭原 黒斗:クズハラ クロト
 謎の少年。前作の主人公浩一郎と紗枝香の息子。父を激しく憎んでいる。
 見えざる敵を追っている。
 とある討隊の隊長を(軽く)憎んでいる。
 あまり人を寄せ付けない性格である。いわゆる一匹狼。それは初恋の相手が死んでしまったショックからであり、他人との間に壁を作るようになったから。

 
 九頭原 紗枝香:クズハラ サエカ
 黒斗の母。前作のヒロイン。
 見えざる敵を追っており、現在行方不明。


 実村 一樹:サネムラ カズキ
 前作の主人公、コーイチの親友であり、紗枝香とも親しい友。基本的に皆に好かれる人物で、友人がかなり多い。眼鏡をかけている。
 コーイチの死後、力に目覚めて喰討士となる。紗枝香と同じく速さに特化した戦闘で殺喰を翻弄する。第3討隊隊長。使用武器は小刀。和弘をスカウトし、成長を見守っていく。
 飄々としていて、不良に囲まれていても全く動じない。
 
 
 ジョーン・トーリス
 人間守護機関第6討隊の隊長。医療専門の隊に所属しているが、医療専門チームの長とは思えない威圧感を持っている。非常に厳しい人物で、人間守護機関所属員の些細な行動でも見逃さない。何者にもまず疑いの目をもって向き合う姿勢をしている。その為か人間守護機関内では恐れられる人物。また見た目と年齢が一致せず、大人の魅力を兼ね備えている為、実はファンクラブまで存在する(作中では語られていない)。現在の年齢は63歳。
 ある事件によって変わったらしいが、その事件は今は不明。喰討士同士の争いだったらしい。
 

 伊藤 賢治:イトウ ケンジ
 人間守護機関第3討隊副隊長。金髪、ツンツン、ピアスつけまくりと、中々人を寄せ付けない風貌をしているが、面倒見がよく、悪態をつきながらも最後まで付き合ってやる性格。
 風貌とは真逆に冷静な戦闘スタイル。状況を判断し、的確な攻撃を加える。


 東一 始:アズマイチ ハジメ
 中学の頃の戦友。顔が広く、謎が多いが……。
 

 殺喰:サツクイ:キラーイート
 世間を騒がす猟奇的殺人や事故の犯人。主食は、唯一消化できる人間の肉。人を殺し、喰らう。
 たまに髪を長く生やし、風貌が人間に似ている者もいるが、それは特殊例。前作のラフィーゼのような存在などがその特殊例に当たる。普通の殺喰は、毛髪が薄く、片方か、もしくは両方の目がつぶれており、歯と爪が鋭利の尖り、身体は熊のように大きく、岩のようにごつごつとして硬い。心臓以外の箇所を攻撃してもすぐに再生する。ついでに、斬り取られた腕などはすぐに腐敗して気体のようになり、斬られた箇所に戻って行くことで再生する(本編ではあまり説明する必要もないので語ってはいない)。また血はとても粘り気がある。悪気と呼ばれる臭気を発しており、喰討士にはそれによって居場所が知れる。
 殺喰の存在にはまだ多くの疑問が残っている。

 
 喰討士:クイトウシ:イートハンター
 殺喰を殺せる程の怪力を持つ者の事。殺喰に対抗できるのは彼らしかいない。殺喰の出す悪気に触れると、素質のある人間のみが覚醒する。しかし最初はコントロールが図りにくく、力と感情を暴走させてしまう場合が多い。和弘は唯一初戦で生き残った喰討士である。
 殺喰同様に、存在には多くの疑問が残っている。

 
 悪気:アクキ
 殺喰から発せられる臭気。素質をもつ者に不快感を与え、そして覚醒させる。

 
 人間守護機関:ニンゲンシュゴキカン:ディフェンダー
 和弘達が所属している、喰討士の機関。一国の軍隊レベルの力を持つ。全部で10の討隊がある。
 
 第1討隊:長:???
 第2討隊:長:???
 第3討隊:長:実村 一樹
     :副:伊藤 賢治
 第4討隊:長:???
 第5討隊:長:???
 第6討隊:長:ジョーン・トーリス
 第7討隊:長:光 軍頭
     :副:ボルドー・ガーデス
 第8討隊:長:???
 第9討隊:長:???
 第10討隊:長:???
2010/03/15(Mon)20:25:33 公開 / 湖悠
■この作品の著作権は湖悠さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 どうも、湖悠です。
 
 ブラッディバレンタイン更新できませんでした(汗
 3月中には更新しますので、お待ちを^^;
 
 今まではあまりなかった零夏と和弘のほのぼの絡みシーン&東一活躍シーンを書かせていただきました。ちょいちょい伏線が貼られ始めましたね。次回はその他大勢が登場! の、予定ですが、みずうみの調子が最近悪いので、どうなるかはわかりません。

 亀更新で申し訳ありません。全ては花粉と課題のせい……。
 

 1月23日:連載再開
 2月14日:修正。
 3月6日:その3追加。
 3月15日:その4追加。
この作品に対する感想 - 昇順
はじめまして
pinkです^^
小説読ませてもらいました
とてもおもしろいです^^
続きの更新楽しみにしてます^^
2010/01/23(Sat)23:07:242pink
こんにちは! 羽堕です♪
 訓練を通して、和弘の戦闘での成長が見れて良かったです。普通のだって、倒せれば十分な進歩だって思いますw そして、ここから中学時代の和弘ですね。どんな展開が待っているのか期待しています。
であ続きを楽しみにしています♪
2010/01/24(Sun)12:56:580点羽堕
pinkさん>>
 初めまして^^ご感想ありがとうございます。
 面白いなんて! しかも得点を二ポイントも加算していただけるなんて! もったいないお言葉&ポイントですよ。めちゃくちゃ嬉しいですがw
 次回はもっと詳しい感想を是非聞かせてください!

羽堕さん>>
 訓練は本当はもう少し色々書こうと思ったのですが、あまりダラダラ訓練を書いてもなぁ、と思い、短くまとめてみました^^ 成長が描けていたなら嬉しい限りです。
 中学時代。意外と苦労してます。自分の思い出も交えながら、何とか今月中には更新できたら、と思ってます。

 ご感想ありがとうございました!!
2010/02/01(Mon)19:50:070点湖悠
こんにちは! 羽堕です♪
 零夏と和弘の幼馴染としての雰囲気って、中学時代から変わらなくて本当に姉弟みたいな感じだったんだなって思いました。それと花粉症に悩む和弘の気持ちは分かります。
 学校でのトラブルから知り合う事になって東一と、どう物語が展開していくか期待しています。剛田のような決め付けで物を言う先生は、やっぱり嫌ですね。和弘自身は突っ張ってる様な所もなくて、どちらかといえば素直な感じなのかと思いました。
であ続きを楽しみにしています♪
2010/03/08(Mon)18:08:470点羽堕
羽堕さん>>
 なるほど、姉弟ですか。そういう観点で見ると確かに……こ、これは新しいアイデアの予感……! 現在進行形で俺も花粉に苦しめられてます。悪魔ですね、悪魔。
 剛田みたいな先生が中学校に居て、友達が散々苦しめられていました。まぁ、あそこまで酷くはありませんでしたが^^; ああいう人は嫌ですよね。和弘はこれからデビューしていく感じになると思います。
 ご感想ありがとうございました^^
2010/03/09(Tue)20:56:480点湖悠
どうも、鋏屋でございます。
何だろう、第4話以降、すこし雰囲気が変わったように思うのですが気のせいかな? 
剛田教諭のような人間性が好みかどうかは別にして、物語的には良いアクセントだったような気がします。ただ、彼のアクの強さが周りを少しぼやけさせている印象を受けました。なんて言うんだろう、東一くんが微妙に印象が薄い感じがするのです。彼はまあこれからなんでしょうけど、彼はこれから先重要な役になっていきそうな予感がするので、髪が長い以上のキャラの個性が合った方がインパクトがあっても良いかなって思いました。
さてさて、和宏が微妙な立場になってきましたなw そのあたりも楽しみの一つです。次回更新お待ちしておりますね。
鋏屋でした。
2010/03/10(Wed)12:48:080点鋏屋
 鋏屋さん>>
 感嘆符を少なくしたからでしょうか。前の雰囲気の方がよかったですかね?
 剛田濃すぎましたかね^^; 東一君のこれからのキャラ付けが目前の課題、ですな。
 学生時代の人間関係、もうこれは頑張って複雑にしなければっ!!
 ご感想ありがとうございましたっ^^
2010/03/13(Sat)21:48:520点湖悠
こんにちは! 羽堕です♪
 剛田が東一の登場で態度変えたのって父親の影響とかあってなのか……和弘には態度デカかっただけに余計に溜息がでてしまう感じです。東一は、きっと和弘の事は知ってたのかな、零夏の周りをうろちょろする奴として喧嘩になる前に、仲良くなれて良かったなw 東一の家構えなどの描写があったら良かったなと、豪邸なのか普通の家なのかなど。
 昼食を好きな所でとれる中学校っていいなぁと思ってしまいました。うちの中学は先生と一緒に各教室だったので。展開としては、よくみる形なのかもですが東一という人物が、ちょっと分かりましたw 最後は本当に殴り殺されるんじゃないかという終わり方で、ちょっと和弘が心配になってしまいました。
であ続きを楽しみにしています♪
2010/03/16(Tue)17:22:350点羽堕
レス遅れてすいません!

 東一の家構えの描写を追加しておきます! すいませんっ;;
 たまたま中学が給食式というのを忘れての描写だったのですが、調べてみると弁当式の中学も少数ながらあるらしく、ホッとしております。まぁ、本来弁当は教室で食べるんでしょうけどね^^; そこは和弘達が不良だから、という形で言い訳していただきます。
 メンバーが増えて、更に不憫になっていく和弘にご期待くださいw
 それでは。
2010/03/28(Sun)11:52:560点湖悠
合計2
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