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『虚像少女』 作者:鋏屋 / 未分類 ショート*2
全角1068文字
容量2136 bytes
原稿用紙約3.75枚
 ふと気づいたことがある。

 私は今まで一度も鏡を見たことがない。そう、生まれてから一度も……
 女として生まれ、今年で十七歳になる。なのに私はまだ一度も自分の顔をこの目で見たことはない。
 何故って?
 それは見る必要性を感じなかったから……
 私に会う人は皆声をそろえて私の容姿を褒め称える。

 可愛い
 綺麗
 美しい

 私はその言葉で満たされる。他者からの評価が不快なものでないのなら、鏡は必要ない。わざわざ自分で確認しなくても、その顔に様々な手を加え化粧を施さなくとも、私を見る全ての人が、私の容姿を褒め称えるのなら、自ら鏡を覗き込む必要がない。
 先日、鏡は女にとって大事な道具だと聞いた。皆、小さくても必ず携帯しているのだという。
 私はそれを聞いて不思議に思った。
 なら私は女ではない? 
 だって一度も鏡を見たことのない私は、一度も鏡を重要な道具だと思ったことがないもの……
 私はそのことを母に聞いた。すると母はこう言った。

 皆、自分に自信がないのよ。だから鏡を見て自分の姿を確認するの。お化粧をして、鏡に映るその顔が、他人が見ても同じに見えると思うと少しだけ安心するの。決して満足している訳ではないのだけれど、そう思うことで自分を納得させているだけ。

 そう言ってクスリと笑う母。少し自嘲気味に。

 母も?

 私はそう聞いた。

 ええ、そうよ。私も同じ。
 でもあなたは違うでしょ? だってあなたはそんなにも可愛くて、綺麗で、美しいんだもの……

 母のその言葉に、私は口元がほころびるのを感じた。可愛くて、綺麗で、美しいという言葉に、私は喜びを感じているから。

 ほら、笑った顔がまたとても可愛い。その喜びが女である証拠……

 私は母の言葉でその全てを納得する。やはり私には鏡など必要ない。私はとても可愛くて、綺麗で、美しいのだから……
 私が嫌うあの人も
 私を嫌うあの人も
 私を愛するあの人も
 私が愛するあなたも
 化粧などしなくても、私に出会う人全てがそう思うのなら。


 私は寝る前に瞼を閉じ、脳裏に浮かび上がる自分の顔をみる。

 肩まで伸びるつややかな黒髪
 すうっと通った鼻梁と、切れ長の二重瞼
 その奥に佇むオニキスのような瞳
 ぷっくりとした愛くるしい唇
 その微笑みからこぼれる健康的な白い歯
 
 私を褒め称える人達から貰った、私を形容した言葉全てを総合して組み立てた私の顔……
 可愛くて、綺麗で、美しい私の顔……

 でも、私はその顔を少しも想像出来なかった。
 まだ一度も人の顔を見たことのない私には…… 

2009/10/30(Fri)20:29:02 公開 / 鋏屋
■この作品の著作権は鋏屋さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
甘木殿とお犬さまのコラボを読み、私も書いてみようかなどと思ったのが運の尽きか……スイマセン、やっちまった感バリバリです。最初で最後かも……
やはり私にはショート×2はハードルが高かったようです。初めて挑戦しましたが凄い難しい。かける方はホント羨ましいです(涙
朝の揺れる通勤電車の中で鏡を見ながら器用にお化粧している女性を見て思いついたネタでした。
鋏屋でした。
この作品に対する感想 - 昇順
拝読しました。水芭蕉猫です。にゃあ。
なんだかとってもホラーなお話でした。えぇ、人とであったことが無いのなら、どうして嫌いな人が出来ようか、どうして愛する人ができようか? という疑問はあるものの、最後の最後のどんでん返しは予想出来ませんでした。うん。
鏡は持ち歩かない主義ですが、一応鏡があれば顔のチェックはしますね。とりあえず変なところから毛が出てないかとか、歯に何かついてないかとか。
ショートショートは難しいですよね。上手な人が羨ましいくらいです。
2009/10/30(Fri)20:51:480点水芭蕉猫
 電車の中で化粧をするという行為は、某国ではばいs……どうも、湖悠です(汗)
 最後に驚きですね。ああ、そういうことか、と。確かに人の顔を見てなければ、何もわかりません。人の顔は記号性を持っている、という文を読んだ事があるのですが、記号も見なければ意味を読み取れないし、書くことができない。なるほど、それと同じなのか、と一人で勝手に納得している自分が居ました。
 髪型を整える時は鏡使うんですが、べったべたです。整髪剤やらなんやらでべったべた。とてもじゃないけど持ち歩ける類じゃないですねw
 どんでん返しが面白かったです。俺もショートショートに挑戦したくなりました^^
 それではっ。
2009/10/30(Fri)21:39:040点湖悠
 こんにちは。
 はじめまして、じゃないと思います。そうですよね?

 おお、三人目が参戦! と興味深く読ませていただきました。なんかサイコスリラーみたいな感じで怖かったです。
 ただ、人と会ったことが無いわけでもなさそうだし、視力が無いわけでもなさそうなのに、「人の顔を見たことが無い」というのはいったいどんな状況なんだろう? とちょっと首を傾げました。意外なオチ、というのがショート・ショートには必須なのかもしれませんが(そのへんが、僕がショート・ショートを好まない理由でもあるのですが)、意外ならばこそ納得したいなあ、とも思うのです。

 ともあれ、最初のお二人意外が参戦なさったのはうれしいなあ。なんかお祭みたいになってきましたね。
2009/10/31(Sat)06:46:530点中村ケイタロウ
》水芭蕉猫殿(にゃあってのなんかイイ…)
良かった〜 投稿してから『帰ればかちんがっ!』とかなじられるんじゃないかとドキドキしてました。ですが基本Mなのでそれでもいいや、え〜い! と洒落でやっちまいました。(いやまだ安心は出来ませんけど)お犬様と甘木殿のやりとりを見てたらやってみたくなっちゃったんです。あのお二人みたく上手な物ではありませんがお目汚しにならなくて何よりでした。そうか、猫殿はコレを『怖い』と感じたのか…… 感じ方は人それぞれなんですね。いや、ホントショートは難しかったです。読んでくださってありがとうございました。

》湖悠殿
いやはや、感想どうもです。
〉電車の中で化粧をするという行為は、某国ではばいs……
某国ではなんですかっ? やばい本気でわからない…… 凄い気になる。後でコソ〜リ耳打ちしてくださいw
あえてアウフヘーベンを読み手に任す文章は面白いなぁ…… お犬様をまねてみたのだけれど、色々発見があって楽しいです。自分ではどんでん返しのつもりで書いてはいなかったんですが、確かに言われて読み返すとそうとれるかもしれませんね。
『人の顔は記号性を持っている』というのを聞いて、真っ先に『へのへのもへじ』を思い浮かべるような単純な思考で、良くこんな無謀なことをやったもんだと今にして思いますよw 湖悠殿も書いてみてはいかがです? 難しいけど発見も多いですよ。
読んでくださってありがとうございました。

》中村ケイタロウ殿
はい、ご無沙汰しております。御作『真夜中の図書館』は読ませていただきましたw
ケイタロウ殿にまでコメントいただけるとは思っていなかったのでちょっと緊張気味です。
ケイタロウ殿もこれを怖いと感じましたか…… う〜ん、私の感性はやはり少々ずれているのかもしれません。ですがその辺りを見る実験的要素も目的の一つだったので収穫でした。私の表現力ではあの2人には遠く及びませんが、これも経験と思い恥を忍んで投稿しました。こんな事が出来るのもここの魅力だと愚考しております。読んでいただき感謝いたします。

お三方ともこんな拙い作品(つーか小説かどうかも微妙)を読んでいただき、あまつさえコメントまでくださってありがとうございました……(イイヒト達……)←爽子風w
他にどんな感想(嘲笑)が来るかドキドキですが、色々発見も多く勉強させていただきました。もう少し経験を重ね、今よりも多少読める物が書けるようになりましたらまた挑戦してみたいです。
鋏屋でした。
2009/10/31(Sat)09:53:170点鋏屋
こんにちは! 羽堕です♪
 鏡を見て安心するというのは、すごく分かる気がします。自分に自信があるからでは、もちろんなくて自分の中で大丈夫だって思いたいんだと。逆に自信がある人程、じっくり見るのかもなってw
 だから少女が鏡をみようとしなかった理由は、容姿に自信があるわけでも、かといって不安を感じる事もないから、見なかっただけなのかと。でも最後まで読んで、そういう事だったのかと思いつつ、そうじゃなくても少女なら鏡を見なかったかもなって少し思いました。あまり関係ないかもですが色々な所に顔のきく実力者の父親も、イメージとして湧いてきました。
であ、あちらの続きと次回作を楽しみにしています♪
2009/10/31(Sat)10:31:250点羽堕
》羽堕殿
感想どうもです。羽堕殿もこんな拙い作品を読んでくれてありがとうございます。
おお、新しい解釈だ。それも一理ありますね。
しかし女の人ってどうなんだろ? 素ですべての人に等しく賛美されたら化粧なんてしなくなるのだろうか? 他人から見た自分が、鏡で見る自分の姿と同じに見えるとは限らないんじゃないかと思う。なのに何故そうも頻繁に鏡を見るのだろう? って疑問がネタですよ。
実力者の父ってのも面白い考え方です。なんだろ、王様みたいな絶対権力者で、娘に何らかの理由で自分の容姿が映り込んでしまう物をすべて娘の目の見えないところに追いやるってな感じですかね。この考え方で合ってます? それも面白いなぁ
ホント、読んでくださってありがとうございました。とても貴重なご意見です。
鋏屋でした。
2009/10/31(Sat)16:39:560点鋏屋
 アウフヘーベンってとってもおいしいですよね。
 鏡を見たことがない。○の○を見たことがない。この【見たことがない】というのは意識して見たことがないのであって、たまたまであれば見たことがあるのだろうと解いた。非常に観念的だ。読み手に任すというが、鋏屋さんの解釈は全文を通してひとつにまとまっている。少女の正体自体はなんだって構わないし、テーマには無意味だろう。
2009/10/31(Sat)17:34:050点模造の冠を被ったお犬さま
どもです。
祭りでは型抜き屋にぼられまくったのを思い出します。というわけで、読みました。
うーむ、すいません、始まってすぐに眼が見えないことに気づいてしまいました。その所為か、あまり驚きが無かったというのが正直な感想です。
全体的に読みやすく、テンポが良くてすらすらと読めました。もう一捻りあれば……。

ではでは〜
2009/11/01(Sun)22:15:380点rathi
≫クラウン殿
そうそう、あの何重にも重なった層のクリームがまたこう…… って何言わせるんですかっ!w
読んでくださって光栄です。クラウン殿の真似をしてみました。色々と面白いコメントを頂き恥を忍んで投稿したかいがあったです。テーマはまさにその通りです。多面体的な物語を書いてみたかったってだけの話なんですよね。人様を使って実験なんて失礼な話なんですけどね(汗 きっかけを下さり、ホントありがとうございました。
鋏屋でした。

≫rathi殿

でしょう? バレバレですもんねw どんでん返しのつもりで書いていた訳じゃないんですよ。でも見方によってはそうとれる。そう感じる方が居るのが面白くて読み手のの感じ方を考えるいい経験になりました。自分の頭の中にあるイメージを活字で伝える難しさも改めて確認で出来た気がします。もう一捻りですか…… 今の私では限界に近い物がありますが…… でも今回の経験を少しでも生かせるようがんばってみますね。ホントこんな拙い作品につきあっていただき感謝です。
鋏屋でした。
2009/11/02(Mon)11:00:300点鋏屋
二度レス失礼。

 あのう、それでは、「眼が見えない」っていうのが正解だったのでしょうか?
 しかし、そうだとしたら、冒頭で「見る必要が無い」「見なくていい」を連発しているのは不自然だと思います。ある種の強がりとして言っているのだろうけど、それにしても……。
 視力の無い人なのだ、と思って読み返すと、僕にはとても不自然に感じられます。真相が分かって、「ああ、なるほど」と思えるのならばいいですが、真相が分かると余計不自然に見えるというのは、うーん。そう思うのは僕だけでしょうか? いかが思われますか。
2009/11/02(Mon)13:10:060点中村ケイタロウ
》中村ケイタロウ殿
ごめんなさーい!! ゲロしますとこれね、ホントのところケイタロウ殿の考えるとおり、目が見えないことを前提にして書いたんですよ。『ある種の強がり』ってまさにその通りなんです。単純でスイマセン。だから『恥ずかしかった』のです。バレバレなんで(恥!
いやコレね、電車の中でお化粧してる女性を見て『すっぴんでも綺麗なのになぁ』って思ったのがきっかけだったんです。でね、単純に鏡を見ないで化粧って出来るのかなぁ?って思ってたら、『そもそもなんで鏡を見るんだ?』って考え初めて、『見れない状況』を考えながら色々選択肢を消していったら普通に『目が見えない』ってことになっちゃって…… ブログで甘木殿の『誰か他に書けばいいのに』のコメントに答えてあげたかったのもあったし。そんなみなさんみたく捻れなかったんだよぉぉぉぅ……涙

それを書かずに投稿したらどんなコメントが帰ってくるんだろうって実験的な作品だったんです。いやもう笑ってやってください。
鋏屋でした。
2009/11/02(Mon)18:17:250点鋏屋
作品を読ませていただきました。初めは盲目者なのかなぁと思って読んでいましたが、何だか違うような雰囲気もあるし、だったらなぜ自分の姿を見たことがないかが疑問として残るし……色などを表現しているから盲人じゃないよなぁ。盲人ならば色の表現は難しいだろうし。なんだか考えさせられるなぁ。これが鏡に映る自分の顔が醜くしか見えないと言うのなら精神的なものと解釈できるけど。でも、たぶん盲人なんだろうな……だったら色の表現にひとひねり欲しかったなぁ。色々と推理できて面白かったです。では、次回作品を期待しています。
2009/11/02(Mon)20:54:530点甘木
 こんばんは、鋏屋様。上野文です。
 御作を読みました。
 どうして見えないのだろう? と考えさせられました。
 心が美しさを理解できないから? 『顔』を認識できないから?
 顔って、考えてみれば、重要な意味、ありますよね…。
 色々と思うことが多くて、たいへん興味深かったです!
2009/11/09(Mon)21:43:490点上野文
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