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『suddleny everything has changed』 作者:しろねこ / リアル・現代 サスペンス
全角9554文字
容量19108 bytes
原稿用紙約28.25枚
俺はしがない30過ぎた貧乏探偵だ。そんな俺に一つの依頼が舞い込んでくる。それは命の恩人を捜し出して欲しいというもの。しかし情報は名前と一つの猫のキーホルダーだけ。そんな情報じゃさがしだせねえよ。本当全く。愚痴と日差しとバイオレンスとサスペンスにまみれた推理は全くない探偵小説。


 人間、死っちゅうもんを目の当たりにした時、何をするのか。いや、何ができるのか。
 昔からある言葉で火事場のくそ力とか言うのがあるが、実際そんなものがあるのか、俺にはわからない。
 神様ってのはこの世界を不平等に作りなさったが、どうやら全ての生き物は平等に死が訪れるようにできてるらしい。まったく、神様というのは残酷な奴みたいだ。
 俺は時々思う、こんな仕事をしているせいかわからないが時々この人間というのが嫌になる。別に俺は人間嫌いでも何でもない。むしろ俺は人は好きだ。人と触れあわずにはやってられない日の方が多い。それでも、時々俺は人間が嫌になる。時々、人の欲望の奥深さには驚かされるものがある。全く。底なし沼のようなそれに。
 人は自分で底なし沼を作り、そしてはまっていく。まるでそう思う。そしてその底なし沼は周りの人間をも飲み込んでいく。全くはた迷惑だ。


 俺は息を吐いた。自分でも驚く程びびってるのがわかる。笑えるよ全く。
 服の内側にじっとりと汗を掻いているのを感じた。ここ数日の激務でスーツはボロボロになった。気に入っていたスーツだったのにな。
 ずっとあげてる手が段々痛くなってくる。
 俺はここで一つ演説を打つ事にした。
「なあ、どうだ、こんな30超えたおっさんを相手して、楽しいか?正直言うよ、俺なんて殺したって何の価値の無い男だ。借金もあるし、飲んだくれだし、探偵って言ってるが、正直フリーターとかニートと変わらない。…そんな人間のくずを一人殺した所でなんになる?たのむよ見逃してくれ。なあ。いいだろう。お前にもし良心があるなら、それに従ってくれ」
 俺は名演説を打った。オスカー受賞間違い無しだねこれは。女子供を泣かせれるよ。
 後頭部を再び押される感覚。まだ銃口は俺の後頭部に狙いを定めてる。
 ここでミスれば俺は目ん玉飛び出す事になる。昔のギャグ漫画みたいだなおい。
「お前は知りすぎた」
 冷たい声。交渉決裂。
 カチリと音がした。本格的に始末にかかろうとしてるみたいだ。
 畜生。俺はもう一度ため息をついた。
 神様ってのは本当に残酷みたいだ。 


第一章 

 キャットフードってのは美味しいんだろうか。俺はキャットフードを貪るように喰う、ペットの「先生」を見ていたらそう思ってきた。本当にこいつ旨そうにがっつく。ここのところのもやしばかりの生活にももう飽き飽きしていた。
 この窓から見える風景にも飽き飽きだ。ビルビルビルビル。通りには車が行き交っている。
 俺はしがない探偵をしている32歳のおっさんだ。俺は認めたくないが、世間的に言えばもう俺はおっさんらしい。ここは男はいつもまでも少年だと胸張って言いたい所だが、少年といえるほど無垢ではない。もう俺は汚い世界を見過ぎた。おかげで俺のイノセントでピュアだったこの心は今じゃダーティでエロでよくわかんねえ汚らしいものになってしまった。
 探偵稼業ははっきり言って儲からない。俺は事務所を街のよくある雑居ビルの5階に構えている。立地条件は悪くはないはずだ、だけどもあんまり客は来ない。来たとしてもここのところはしかもずっと浮気調査だった。
 俺はぐるりとこの事務所を見渡す。年期が入ってセピア色になった壁。これまた年季の入った正面入り口。立て付けが悪く、近々業者に直してもらうつもりだ。場にそぐわないような真っ赤なソファー。これは依頼者ようだ。因みにこれは拾った奴だ。拾った奴にしてはなかなかな座り心地だ。まあ、なんどファブリーズしてもとれない匂いが難点だが。今の話は全部秘密だ。 
 そしてテーブル。これはニトリで買った。だから普通のテーブル。1980円だった。その上にはやけにおもそうなガラスの灰皿。その中はタバコの吸い殻がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。畜生、また片づけていなかった。そろそろ禁煙しなきゃいけないな。俺は灰皿の中の吸い殻をすべてゴミ箱に捨てた。接客商売だからこういう所をしっかりしないと。
 そして黒色のソファー。これは俺用だ。ニトリで買った。なんでいい方が俺のかと言うと、それは俺はいいものに座りたいからだ。上質なものは心を上質にする。それが俺の座右の銘だ。その後ろにはデスク。これは事務作業全般だ。ある意味ここが心臓部と言ってもいい。その心臓部も、まるで爆破テロの後のような惨状になってるが。ここも片付けなければいけない。
 とにかく、俺はこんな所で探偵をやっている。
 俺だって、メガネをかけた小学生や髪を後ろでくくった孫とかトレンチコート着た男とかそんな探偵になりたかった。現実はそうなれない。しっかりと受け止めているけれども、しっかし時々悲しい気持ちになる事がある。一度でいいから、俺はドラマチックな事件に出会いたい。それが俺のささやかな願いだった。
 しかしここのところついに、不景気かなんなのかわからないが全く客足が途絶えてしまった。そのせいで俺はここ5日ほど朝昼晩もやし、もやし、もやしばかりだった。もう、もやしはうんざりだ。味付けってのも5日になったらつきるもんだ。今、冷蔵庫の中には大量の調味料でいっぱいだ。
「先生、キャットフードってのはそんなに美味しいもんなのかい?」
 俺は窓枠に寝ころぶ先生に問いかける。先生はにゃーと欠伸を一度し、キャットフードがてんこもりになっている皿が置かれている床にまた向かった。
 キャットフードか…。。俺はキャットフードの缶詰をじっと見た。何て言うか見た目的にはご飯にかけられそうだよな。少しくらいなら食べても何も言われないよな。誰も見てないし。先生黙っておいてくれ、俺は人と猫の垣根を越える。
 俺がキャットフードの缶詰を開け、一口つまもうとしたその時。
 コンコンと久しく聞いていなかったノックの音が事務所に響き渡った。
 俺は書類や、本やらでぐちゃぐちゃになっている机に向かい、そこにある小さなテレビを見た。そこにはドアの所につけてある監視カメラの映像が流れている。俺が今よりも借金があったころ借金取り対策に取り付けたものだ。今でも時々来なさる借金取りへの警戒のためこの扉がノックされると俺はこのテレビを見るようにしている。
 今日の所は、女の人が一人。借金取りじゃない。って事は。
「先生、特別に今日はおかわりだ」といって食べようとしたキャットフードを先生のお皿に継ぎ足してやった。
 女性か、大方浮気調査だな。まったくこの世界は金とエロばっかりだ。
 OK。俺は顔をパシンとたたき、気合いを入れる。そして鏡を見て人前に出る時の顔を作る。
「どうぞ、入ってください」
 俺は久しぶりの来訪者を歓迎した。ようこそ我が探偵事務所へ。汚いけど、楽にしてくれ。汚いけど。





 日差しが強い。もう夏が近づいてきている。俺はこの街の青空が好きだ。カリフォルニアの青空のようにはっきりして無くて淀んだ青空だが、それでも俺は好きだ。ちなみに俺はカリフォルニアには行った事はない。だって高いじゃん。値段。
 俺は事務所の前の通りを2,3分ほど歩き、いつもの喫茶店に入った。
 マルホランド・ドライブと言う名の喫茶店は同名の映画から名付けられている。その映画をモチーフにしているせいか、店内は薄暗く、言い方を変えれば気味が悪い。しかし妙な居心地のよさがあり、俺は良く通っている。俺と同じようにここに居心地のよさを感じた客は多くいるようで、常連さんは多い。ついでに俺はここのマスターに薦められ、そのマルホランド・ドライブという映画を見たが、はっきりいってわけがわからない映画だった。が、マスターの言う通り引き込まれる妙な映画だった。俺はこの喫茶店に引き込まれているのかもしれない。因みにここのコーヒーは絶品だ。俺はここ以上のコーヒーを飲んだ事は無い。
 いつものように薄暗いその喫茶店の中には昼時も過ぎた頃だったのか客は俺の他に二人ほどしかいなかった。カウンターを見るとマスターが赤いエプロンをつけ、突っ立っていた。いつものことながら不気味な雰囲気を醸し出している。俺はマスターに会釈をする
 壁際の席を一つとると、マスターがすたすたと歩いてきた。
「お決まりですか」
 俺はオレンジ・ジュースを一杯、それとパンケーキを頼んだ。
 ここ俺は依頼を受けるといつもここでまとめ、そして次に何をするかを考える。その時には俺はオレンジ・ジュースを飲む。オレンジ・ジュースの酸味は俺の脳に刺激を与える気がする。気がするだけかもしれんが。俺はオレンジ・ジュースが好きだ。コーヒーとかそんなのは美味しいかもしれないが。直球で旨いのはオレンジ・ジュースだと思う。そして俺はこの店以上のオレンジ・ジュースを飲んだ事は無い。この店のオレンジ・ジュースは、絶品だ。
「どうぞ」
 こんと重い音がしてオレンジ・ジュースが木のテーブルの上に置かれた。もちろんコップの下にはコースターがある。コップには水滴が幾つもついている、そして黄色いオレンジ・ジュース。俺はストローのふうの先をちぎる。そして取り出し差し込む。かららん。氷の音。まるで天国の音。日差しの強いこんな日にはこの音が一番だ。俺は一口飲む。すーっと喉に潤いで満たされる。酸味が口を癒す。絶品だ。
 そろそろ、仕事に取りかかるか。俺はメモ帳とICレコーダーを愛用のメッセンジャーバッグから取り出すと、先程の事務所の会話をもう一度再生した。
 ぴ。と電子音。ちょうど自己紹介から始まっていた。


入ってきた女は、こう言うと変だがとても上品そうな女だった。育ちが良さそうな、生まれついての品のよさを醸し出していた。そして何より端整な顔立ちをしていた。すっとした鼻。きりっとしたクールな目。畜生。俺のタイプだ。
『加藤清美、25歳、OLです』
―今日はどのようなご用件で。
『え、まあ、あの…ちょっとなんていったらいいかわかんないんですけど、』
―ゆっくりでいいですからね
『ありがとうございます…。あのですね……探して欲しい男性がいるんですけど…』
―探して欲しい男性?
『はい。えーとすいません。この男性なんですけど』
俺はメモ帳に挟んだ写真を見る。証明写真の一枚か、そこには目つきの悪い25前後のスーツを着た男がうつっていた。まるで狐みたいだ。
―名前は?
『サヤマスグルです』
メモ帳にメモる。サヤマスグル。
―年齢は?
『…すいませんわからないんです』
―いいですよ。どこに勤務しているとかも…
『…すいません。わからないんです…』
―そうですか…
『すいません!本当にわからないずくしで』
―いえいえ!!とんでもない。これくらいわからない方が探偵冥利につきるってもんですよ。
 アホか。相変わらずどうしようもないバカだ。
―すいませんが…どうしてこの男性を捜されたいと?
『実は…私の思い出の人なんです』
―思い出の人?
『はい。私にとって恩人なんです。』
―恩人?
『恩人。…昔、暴漢に襲われてる私を助けてくれたんです。あの人、自分の身の危険も顧みずに私を助けてくれたんです。…でもそれなのに私はその時、お礼が言えなかった。だから…言いたいんです。お礼を言いたいんです。それでサヤマさんその時この写真を落としてしまって、この写真はそうなんですけど。』
―そうですか…。わかりました。そのサヤマさんと知り合った場所ってのは…
『あのビルです。あそこで私は助けられたのです。』
 加藤さんはその時、窓の外を指さした。その先にはこの街で一番大きなビルがあった。俺は空中庭園と呼んでいる。
―そうですか。他には…
『後、これです。これ』
 そう言って加藤さんはフードをかぶった猫のキーホルダーをテーブルに置いた。
―…なんですかこれ?
『サヤマさんが…落としていったんです…何かの手がかりになるかなって思って』
―…わかりました。一応参考にしておきます。でその他には…


 
 その後の会話は特にいい情報は無かった。その後俺は料金説明をする。一週間20万〜と言った。正直、彼女には高いと思うが、しかたないこっちも商売だから。
 とりあえずキーワードだけを抜き出した。サヤマスグル。空中庭園で出会った男。サラリーマン。狐目の男。そしてフードをかぶった猫のキーホルダー。
 正直、どうしたらいいかわからなかった。情報が少なすぎる。とにかくそれにつきた。
 俺はじっと写真の男とにらめっこした。狐目の男さんよ。あんたどこにいる?
 コンとパンケーキの乗った皿がテーブルの上に置かれた。マスターはにこりと笑い、戻っていった。マスターはそう、いつもジャストタイミングで持ってくる。俺は今ちょうど甘いものが食べたかった。
 

『3』
 「あっ探偵さん!」
 俺がカフェ・マルホランドドライブから出てくると、ちょうどその通りの真向かいから俺を呼びかける声が聞こえた。俺がそっちに目をやると、そこには学校帰りなのか制服姿の黒川がいた。黒川とは一年前に知り合った。当時黒川はまだ高一で、いなくなったペットの猫を探して欲しいと頼まれたのだ。俺の驚異的な勘のおかげでたった一日で見つけて以来俺と黒川はなんていうか仲が良くなった。もちろん、恋愛的なもんじゃない。ダチっていうのか、まあそんなもんだ。
「おー黒川。どうした、学校帰りか?」
 俺は大声で言う。
「ふふー。ちょうど今帰りなのー」
 いつものようにクラゲのようなふにゃふにゃとした声で黒川は答えた。そして柔らかい笑顔つきで。いつもこんな感じだ。黒川といると、まるで背骨を取られたような気持ちになる。だれーんとなってしまう。
「どうした。なんかいい事でもあったのか?」
「ちょっとまってねー」
そう言って黒川は車の往来が無いのを見計らって、道路を横断して、俺の元まで走ってやって来た。
「ひゃー、意外とこんだけの距離でもあついもんだねー」
「黒川、またお前身長のびたのか?」
「ふふ。3pくらいかなー」
「前会ったの二ヶ月くらい前だろ?」
「まあ、今の子は成長が早いんだよ」
そう言って黒川は俺の肩をぽんぽんと叩いた。
「そんなものかねえ。」
「そんなもんよ」
 俺もふと、年をとったなあ、と思ってしまった。いかんいかん。若者はどうしてこんなにも年寄りを悲しくするかねえ。
「それより、どうした何か嬉しい事でもあったのか?」
「ふふふー。実は…告白されちゃってー」
 黒川はそう言うとセミロングの髪を揺らしながら天真爛漫な笑顔を浮かべた。まるで、マイナスイオンが出ているような笑顔。
「お前についに彼氏?すぐに別れるんじゃねえの?」
 俺はなんとなく悪態をついてみた。すると、黒川はむっとした表情を浮かべた後に腹に向かって一つパンチを繰り出した。鋭い痛みが腹に突き刺さっり、おうっと声が出た。
「なんでそう言う事言うかなー。人が幸せの絶頂なのにー」
「冗談だよ、冗談」
「で、探偵さんはこれから何する所?」
「人捜しだよ、人捜し。」
「人捜しとか不倫調査とかばっかやー」
「しかたねえだろ現実は、シビアで厳しいんだよ」
「そうなの?」
「そうだよ」
 そう言うと黒川はうんうん。とオーバーリアクションで納得の演技をした。
「わかった。探偵さん、頑張って」
 黒川はそう言うと何故か敬礼した。
「頑張ってくるよ、じゃあな」
 俺は手をふり、別れた。そして、小さくなっていくその後ろ姿に向かって俺は叫んだ。

「彼氏の浮気調査は俺にまかせろよ」
 黒川は立ち止まって俺に向かって叫ぶ。
「大丈夫!頼む前に殺すからー」
 黒川は手を大きく振った。


『4』


 俺はとりあえず空中庭園まで向かう事にした。歩いていける距離だと思い俺は歩いていく事にした。さっきも少し触れたが俺の事務所からもその空中庭園は見える。俺の事務所から見える空中庭園はまるで2001年宇宙の旅に出てきたモノリスのように厚く黒い壁だった。それが地面に突き刺さっているようで、全景が見えるほど遠くにいても妙な圧倒感があったのだ。
 空中庭園は俺の事務所から歩いて15分ほどの場所にある。少し街の中心部から、離れた場所にある。そこに行こうとすれば俺は中心部を通り抜けなければいけない。めんどくさい事に。人通りの多いデパートの建ち並ぶ繁華街、バカに長い時間待たされる信号。そして、すべての人の流れを作り出している駅の中を通る。ジャムの瓶詰めじゃないけど、この人の塊は俺にそれを連想させる。そして絶えず耳に入り込んでくる雑音の数々は知らず知らずのうちに俺を疲れさせていった。俺は雑音が嫌いだ。何て言ってるか分からないその音はぐちゃぐちゃに描いた黒板を連想させる。その駅はまるで迷路のようで、何年も通っているはずなのに時々知らない通路があったりして気を抜くと迷っていたりする。俺はこの駅を通る時、わざわざあえてこの駅の地下街に入る。それはここにバカみたいに旨いパン屋があるからだ。今日もさっきパンケーキを食べたが、俺はそれでもここのパンの味が忘れられず今日も通う。結局今日もあんパン一つ買った。
 それから駅を抜けると、日差しが目に飛び込んできた。俺は目を細める。目の前にはこれまた威圧感のあるばかでかい建物があった。そしてその建物からは数秒間の間だけでも何十人もの人々が出入りを繰り返していた。全く今日は平日だってのになんでこんなに人が多いんだ?
 俺は、妙にいらいらしてきたので、周りを見渡し、バス停用のベンチがあるのを確認してそこに行き腰掛けた。そしてポケットからタバコの箱とライター。一本のタバコ。火をつけ煙を吸い込む。俺はやめられないこの習慣が自分に居心地の良さを与えるのを確認した。煙を吐き出す。赤いスカーフをした、いいものを食べてそうなおばさんが通り過ぎさまに俺を嫌悪感一杯の目で見てきた。そんな怒るなよたかが一本じゃねえか。
 空中庭園に行くには、ここから後10分ほど、地下道を歩く。
 俺は改めて結構距離あるなって思い、ipodでも持ってこりゃ良かったと思った。


 薄暗い地下道を抜けると、白い日差しが目に飛び込んだ。思わず目を細める。目の前に空に突き刺さっているみたいな大きなビルが視界に入りきらないくらいに広がっていた。 現代のバベルの塔だな。とカッコつけた。バベルの塔ってのはこのビルよりも大きかったんだろうか?言語が別れるくらいだ。大きかったんだろう。俺はとりとめもない事を考える癖がある。
 サラリーマン、OL、学生服、カップル。大勢の人が平日だというのに行き交っている。ここで人探しか、全く嫌になるよ。
 ここで彼女は助けられたと言っていた。だからといって、そいつがこの近辺で働いていることになるだろうか?と言っても、その他に情報はない。全く。
 ちょっと愚痴るけど俺は正直、素人に毛が生えたようなもんだ。そんな俺に依頼してくるって事自体申し訳ない気持ちで一杯になる。俺がせいぜい似合ってるのはペット探偵ってもんだ。それすらまともに出来るのかわからないが。黒川のは奇跡だ。
 
  俺は、妙にいらいらしてきたので、辺りを見渡し、ベンチを見つけて、そこへ座った。そしてポケットからタバコの箱とライター。一本のタバコを取りだした。
 火をつける。煙がゆらゆらと立ち上っていく。火をつけ煙を吸い込む。俺はやめられないこの習慣が自分に居心地の良さを与えるのを確認した。煙を吐き出す。赤いスカーフをした、いいものを食べてそうなおばさんが通り過ぎさまに俺を嫌悪感一杯の目で見てきた。そんな怒るなよたかが一本じゃねえか。
 不意にそう煙の先に目をやる。煙の先には先端が雲で隠れて見えないビルがあった。


 俺は唯一の証拠である、キーホルダーを取り出した。黄色のフードを被った猫。俺はつくづく猫に縁があるみたいだ。どんぐりまなこの猫は俺をじっと見ている。何か変わったとこはないかと思ったが特に変わったとこは無かった。ただ猫が黄色のフードを被っているだけだ。早くも手詰まりか?この近辺の会社員のリストでも貰うとするか。また痛い出費だが、仕方ない。 せっかくここまで来たんだ。 映画でも見て帰ろう。このビルには小さな映画館が入っている。俺は若いときよくここに通っていた。 今でも暇があれば映画を見に行っている。あの暗闇が好きだ。年甲斐もなく俺はまるで初めて映画館にきた子供のように興奮する。
 俺はタバコを携帯灰皿の中に押し込み、背伸びをした。ああ、いい天気だ。こんな日はプールにでも入りたい。こんな日はプールでも入って、猫とじゃれるのが一番だ。
 俺は早くも挫折しかかっていた。と言っても俺は仕事はしっかりとする男だ。そして情にも熱い男だ。
 ただ打たれ弱い。
 『自分を助けた人にもう一度会ってお礼が言いたい』か。
 ドラマチックだなおい。
 ふと、ビルを見上げた。太陽がガラスに反射して、白く光り眩しい。
 俺は手を目の前にかざす。
 ふと、何か声が空から聞こえた気がした。
 それは一瞬の事だった。そしてそれは並列して起こった。
 叫び声が聞こえた。声は男。まるでディストーションギターのノイズみたいな叫び声だった。そして、黒い影が落ちてきた。「あっ落ちてきた」と気が付いた次の瞬間、影は地面に叩きつけられた。バン!!と30メートル先でも聞こえるんじゃないかってくらいの衝突音。そして何かが潰れる音。みずみずしく、何かが割れて潰れた。何かが。そして、血が飛び散った。
 雑音が一瞬にして消えた。まるで世界が止まったみたいだった。
 俺は恐る恐る音のした方に目を向ける。
 そこには赤く血に染まった肉の塊としか言いようのない物が転がっていた。歩いていた人は一様に足を止めた。サラリーマンもOLも学生もカップルも。そして、皆、状況を判断するのに時間がかかった。肉の塊からは血がしみ出していた。白い正方形の高そうな石のパネルに血が広がっていく。内蔵的な物も転がっていた。的な物っていうのはまるで現実感がわかなかったからだ。よくわからなかったが、どうやら頭が体にめり込んでいるらしく、それがより一層、さっきまで人間だった体を肉の塊に見せているのだなと思った。…と冷静に俺は語っている。が、本音を言えば俺はこの時腰を抜かしていた。
 ゆっくりゆっくりとその肉の塊を中心としてじわじわと人々が離れていく。
 妙な緊張感が辺りを支配していた。
「いやああ!!」と突然OLの一人が叫びだしたのを皮切りに、時間が止まっていたその空間は動き始め、阿鼻叫喚の地獄絵図になった。人々は何かに逃れるように走り逃げた。
 俺は、ベンチにへたりこんだ。タバコを取りだし、吸おうとしたが、手が震えてなかなかとれなかった。そして、シャツに返り血が付いているのに気が付いた。
 俺は途端に吐き気を催して、ベンチの隣のゴミ箱に吐いた。畜生。
 目の前で髪の長いスーツを着た女性が泣きながらふらふらと歩いていた。
 彼女はぶつぶつと「音が耳から離れないよう」と繰り返していた。
 そして彼女は目の前で吐き、倒れた。
 吐き気と頭痛が俺を襲った。死体を見るのは、慣れるもんじゃない。世界がぐにゃりと歪む。
 朦朧とする頭。
 この阿鼻叫喚の地獄絵図の中、ふと俺はビルから出てくる背の高いサングラスをした角刈り男が目についた。この状況にもかかわらず、男は顔色変えずのすのすと歩き、そしてどこかへ消えていった。
 妙な違和感が俺を襲った。が、関係ない事になってしまった。
 さっきの彼女が俺の靴に吐いたのだ。
 畜生。何だってこんな目に。
2009/05/30(Sat)04:09:51 公開 / しろねこ
■この作品の著作権はしろねこさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
読んで頂いて本当にありがとうございます。
初の探偵小説。といいつつも推理は書けないので自分の好きなテイストをバンバン放り込んだ話にしようと思っています。
とりあえず、遅筆なので、後になるかもしれませんががんばってかきますのでよろしくお願いします。


5月30日。
二回目投稿。とりあえず、やっと話を動かせるとこまで来たので一安心。パニックシーンを書くのは難しいです…後、グロは書いてる自分もしんどくなる事が解りました。
ほのぼのした話が書きたいです。
この作品に対する感想 - 昇順
こんにちは! 読ませて頂きました♪
 雰囲気は好きだなって思いました。主人公の探偵のやる気があるようでないような所が良かったです。
 まだ物語の冒頭ですので、これからどんな事に巻き込まれていくのか楽しみです。
 外見に関わる情報が、ほとんどなく登場人物のイメージがしずらいなと思いました。年齢や性別だけでは、逆に想像しずらいなと。
では続きも期待しています♪
2009/05/23(Sat)10:00:390点羽堕
羽堕さん読んで頂き本当にありがとうございます。
昔からこんな愚痴っぽくてやる気の無さそうなキャラが好きだったので今はそれが書けて嬉しいのと、そこを良いと言って頂いて本当嬉しく思います。
描写不足ですか…。一番の弱点をつかれた気分です笑
頑張って直していきたいと思います。
楽しんで読んでもらうように次回も頑張っていきたいと思います。
本当に読んで頂きありがとうございます
2009/05/24(Sun)00:22:580点しろねこ
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