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『人形』 作者:マサ / リアル・現代 ホラー
全角7349.5文字
容量14699 bytes
原稿用紙約25.5枚
工場の廃墟に肝試しに来た五人の主人公たち。そこで主人公たちは何を見るのだろうか。
 静かな夜道。暗闇の中、一台の車が林の中を滑走する。
 深夜になると林の中の道は月明かりも木に遮られ、暗い夜道は更に暗くなっている。
 ――対向車とすれ違った。林に入ってからは1台目だ。
 この先の道は山に続いており、長い山道となっている。
 対向車はどこから来たのだろうか。どうでもいいことが頭に浮かぶ。
 よく怖い話で、深夜の道路の一角で白い服を着た女性が立っている話を聞く。
 この道路のどこかにも女性が立っているんではないかと思うと急に寒気がした。
 横目で助手席の方に目を向ける。隣にいるのは恋人のマユミだ。
 マユミの顔は先ほどから強張っている。拒否したのに無理に連れて来てしまった所為もあるが他にも原因があった――。
 バックミラーを覗くと後部座席には三人乗っている。
「まだ着かないのか?」
 声を掛けてきたのはタクヤだ。
「おう、あと少しだ」
 目的地はおよそ三十分ほど離れたところにあった。
「俺、怖いの嫌いなんだけど……タクヤが行くって言うからね、俺も来たんだ」
「ヒロキ、無理すんなよ。なんでいっつも俺に対抗しようとするんだよ」
 ヒロキは大のホラー嫌いだったが、なぜかいつもタクヤに対抗心を燃やしていた。
「まあいいでしょ。俺はタクヤが好きなんだよー」
「それ、まじ言ってんじゃねえだろうな……気持ち悪いぜ」
「まあいいでしょ」
 タクヤは怖いもの好きで、肝試しの話をしたらすぐ飛びついてきた。
 もう一人、無口な男が後部座席に乗っている。
「おい、エイジよく来てくれたな。何で来る気になったんだ?」
 バックミラーでエイジの方を覗きながら聞いてみる。
「心霊現象というのが本当にあるのか少し興味を持ったんだ。なければそれまでだな」
 エイジは普段、非現実的なことには無関心だったので一緒に来ると言い出したときは驚いた。
 現在向かっている所はインターネットで見つけた工場の廃墟だ。
 その工場はいわくつきだという話だ。若い女性が人形を持ったまま機械に引き込まれたと記載がされていた。
 真実か否か、それにどういう状況でそのようになったのかは分からない。
「……私怖いよ」
 マユミはこちらを見て体を震わせている。マユミには霊感があった。
 霊感があるといっても幽霊が見えたり話したりは出来ないが、いる気配を少し感じることができるらしい。
 肝試しをしたいという興味も少しあったが、マユミの霊感を実際に見てみたいという興味の方が強かった。
「マユミ、俺が付いてるから大丈夫だ」
「うん、ちゃんと守ってね」
 俺はマユミの肩に手を回した。
「やだ、事故らないでね」
「大丈夫だよ」
「あらまあ、俺たちがいても関係ないのね。堂々とまあ……」
 ヒロキが後ろから愚痴をこぼす。
「はは、悪いなヒロキ」
 俺は一つ笑いをいれ軽く受け流す。
「ヒロキ焼いてるのか?」
「そ、そんなんじゃないよ!」
 ヒロキとタクヤが狭い後部座席でバタバタ騒ぎ出す。
「ふう、少しは静かにしてくれないか」
 一番右に座っているエイジが迷惑そうに口出しをする。
「わ、悪いなエイジ」
「お、見えてきたぜ」
「おお、やっと着いたかー。あれか!」
 暗闇の林の中に建っている工場は月明かりに照らされて何か不気味だ。外形は結構大きい。ひび割れがあちこちにあり、壁は黒ずみが目立っていた。
 全員が車から降りた。
「マジで……マジで怖いよ……こんなところ入るのか?」
「情けねえなーヒロキは、エイジを見てみろよ。見てて怖いくらいに落ち着いてるぜ」
「エ、エイジはいつも落ち着いてるね。尊敬するよ」
 エイジは普段から冷静で無口だ。この場に来てもそれは変わらない。
「ヒロキが怖がりなだけだろ。俺はどのような心霊的現象が起こるのか楽しみなくらいだ」
「そうそ、お前以外そんな怖がってねえぞ」
「わ、私は怖いわ……」
 マユミが体を震わせながら俺にしがみ付いてくる。
「おい、懐中電灯持ってきたよな?」
 トランクの中から取り出しながら皆に話し掛ける。
「あ、俺持ってきてないぜ」
「え、タクヤもないの? 俺も持ってきてないよ」
「何だよ、タクヤはあんなに肝試し楽しみにしてたくせに持ってきてないのかよ」
 タクヤには持ってくるように言っていたので呆れてしまった。
 エイジを見るとカバンから懐中電灯を出していた。
「何も人数分なくていいだろ。二つあれば十分だ」
 そういうとエイジが工場の扉を開いた。
「怖いなー……こなきゃ良かったよ」
「じゃあ一人でここで待ってるか? それはそれで楽しいと思うぞ」
 タクヤが一番で工場の中に入っていく。
「そ、そんな冗談じゃないよ! 待って、俺も行くよ!」
 ヒロキもそれに続き入っていく。エイジも無言でそれに続いた。
「マユミ、行くぞ」
 行こうと歩を進めようとすると、マユミの手が俺の腕を後ろに引っ張った。
「どうした? ……おい、顔色が悪いぞ」
「ちょっと車酔いしただけ……」
 マユミの顔が蒼白だ。血の気が全て抜けたような真っ白だった。
「だ、大丈夫か?」
「うん……大丈夫だから」
「お前がそう言うなら……」
 マユミは車酔いをしない。嘘を言っている。これも霊感と関係があるのだろうか?
「じゃあ、行こ……うわあ!」
「ど、どうしたの?」
「……え?今のは……気のせいか」 
 今、マユミの全身が血だらけに見えた。
 頭から血を流し、腕を下に垂らしている指の先から血が滴り落ちていた。
「大丈夫?」
「あ、ああ、行こうぜ」
 ただの幻覚だったのか、今のマユミはいつものマユミに戻っていた――。

 工場へ入るとエイジが懐中電灯の光をこちらへ向けてきた。
「遅い」
 一言だけ言い放つとエイジを先頭に奥へと入っていく。
「悪い、お待たせ」
 周りを見渡すとドアが閉まったことで月明かりが消え、窓もないため暗闇に包まれていた。
 俺は懐中電灯の光りをつけた。
 そのときマユミが掴んでいる腕の力を強めた。
「マユミ、俺がいるから大丈夫だって」
「んーん、怖いの……ずっと腕掴まさせて……」
「ああ」
 懐中電灯で周りを照らしてみる。
 何に使われていたか分からないたくさんの機械がおいてある。
 若い女性が人形を持ったまま機械に引き込まれる――。
 いわくつきの話を思い出した。このどれかに引き込まれたのだろうか。
「これ、いきなり動き出したりしないよね……何の機械だよー……」
「怖がりすぎだって」
 機械をある程度見た後、懐中電灯の光りを奥へと差した。
 廊下が見える。
「あっち行ってみようぜ」
 今度は俺が先頭で奥へと歩を進める。
「ここ何の廊下だろう」
 壁に光りを当てると、暗闇でも判断できるくらい汚れが目立っている。汚れの一部が人の形に見える。
「怖い……怖いよ」
「うるせー! じゃあ帰れよ!」
「そ、そんな怒鳴らないでよ。びっくりするでしょ」
 奥から風の音が響いて聞こえる。静寂な工場に風の音と俺たちの声だけが響く。
 ゆっくりと歩を進める。
 俺の横にはマユミ、後ろにはタクヤ、ヒロキ、エイジと続く。
「この廊下一本道だな。途中にドアもないぜ」
 ドアもない廊下はどこまで続いているか分からないほど長い。
 ドアこそないが奥へと歩を進めれば進めるほど戻れなくなるのではないかと、闇に引き込まれる感じになる。
 両壁に光りを当てながら奥へと進む。途中まで来ると、スプレーで誰かが書いたであろう落書きが壁一面に書かれていた。
 「死」、「殺」、「呪」。それがどこまで書かれているのか、懐中電灯の光りを壁沿いに奥まで差していくと廊下が突き当たりになっている。よく見るとその横に道が繋がっている。
「長いな」
 奥には何があるのか分からないが興味を引き立てられる。
 さて、そろそろあの話を皆にしておこうと思う。
「ここまで黙ってたけど、この工場っていわくつきなんだぜ」
「お、おいおい、な、何でそんなこと黙ってたのさ! ま、ますます怖くなるよ……」
「いわくつきね、少しは期待できるわけか」
 エイジは不敵な笑みを浮かべる。
「な、何期待してるんだよー……」
「心霊現象とやらをこの目で拝んでみたいからな」
「え、エイジはすげえな。この状況でも笑えるなんてさ。俺でも少し怖くなってきたのにさ」
 ホラーに強いタクヤですら恐怖を感じ始めてきた。いい雰囲気になってきた。
「……ねえねえやめてよー、ほんとに怖いよー」
 マユミが涙声になりながら首を横に振る。
「ずっと一緒いてやるから、俺の腕を離すなよ」
 マユミの頭を撫でながら語りかける。
「うん、お願いだから離れないでね」
「ああ」
 工場に入るときはマユミの幻覚を見たが、それ以外はマユミに変化はない。
 やっぱりさっきの血だらけの姿は気のせいだったのだろう。
 廊下の突き当たりまで行くと右の通路すぐに階段がある。
「ほんとに一本道だな。階段しかないぜ」
 みんなが静まってしまった。やはりいわくつきの話をしたのは正解だった。
 まるで自分一人だけが工場にいるような、俺の声だけが工場に響いていた。
「…………し……ね……」
「……え、誰か何か言ったか?」
「俺は何も言ってないぜ」
「や、やめてくれよ。誰もしゃべってないよ……わざわざ怖がらせないでくれよ」
 今確かに人の声が聞こえた気がしたが――。
「あれ?」
「ん、どうしたタクヤ」
 後ろを振り向くとタクヤが周りを見回している。
「誰かいなくねえか?」
「え……あ、エイジがいないよ!」
「お、おいおい。嘘はやめろよ……」
 途中までは懐中電灯の光りが二本あったが、今は一本に減っている。
「嘘じゃない。一番後ろにいたエイジがいないぜ……」
「おいおい……懐中電灯は二つしかないんだよ。これじゃ暗いよ、どこ行ったのさ」
「まさかあいつに限ってないことだと思うが車に引き返したんじゃねえか?」
 タクヤが軽く両手を上に上げ呆れた顔になる。
「まさか! エイジは怖気ずくガラじゃないぜ」
 俺はそう言ったが、突然背中に悪寒が走った。嫌な予感がしてきた。
「や、やっぱ引き返すか? 何か怖くなってきちまった」
「何だよ、言いだしっぺじゃねえか。俺は行くぜ。帰るなら一人で帰れよ」
「いや、エイジもいなくなったしさ。既に戻ってるかもしれねえからな」
 マユミを見るとただただ俺にしがみついて震えていた。こいつのためにも帰るべきかもしれない。
「…………し……ね……」
「おい、また何か聞こえなかったか?」
 背筋に鳥肌が立つ。今、何かが聞こえた。
「またって、俺はさっきも聞こえなかったし、今も何も聞こえなかったぜ」
 キヤアアアアアア――。
 廊下の奥から聞こえてくる風の音は女の声にも似た悲鳴に聞こえてくる。
 数秒の沈黙が、その場に数分もいるような感覚にさせる。この場にいる全員、何かを感じているに違いない。
 場の空気が明らかに凍り付いていた。
 嫌な空気を打ち破るため、何かを喋らなければならないと思ったそのときだった。
「……う、うわ……うわあああ! お、女!」
「ヒ、ヒロキ!?」
 ヒロキが急に叫び声を上げると、暗闇の階段の上へ走り去っていった。
「お、おい、ヒロキの奴どうしたんだ?」
「なあ今、女って言ってなかったか?」
 タクヤはそういうが俺は驚きで聞く余裕がなかった。
「タ、タクヤ。お前までいなくなるなよ」
「あ、当たり前だろ。どこにもいかねえよ」
 三人になってしまった。マユミは無言のまま俺にしがみついている。
「…………あ」
 タクヤがこっちを凝視し、口を開け微動だにしない。
「お、おい……お前の後ろに……」
「何だよ、俺の後ろ?」
 俺の全身の毛が総立ちした。俺の背後に誰かがいることが気配で分かった。体全体で恐怖を感じている。誰が俺の後ろにいるというのか。
 ゆっくりと後ろを振り向く。
「…………」
 そこには誰もいなかった。
「おい、こんなときに冗談はよせよ。何もねえじゃんか」
「いや、確かに誰かがいたんだ、暗くて見にくかったが白いワンピースだったように見える……」
「…………」
 言葉は出てこなかった。明らかにこの工場には何かがある。いわくつきというのは本当だったのかもしれない。
 もはや鳥肌が治まることはなかった。
「ヒロキが上の階に行ったからさ、上行こうぜ」
「そ、そうだな……それにしてもマユミちゃんは大丈夫なのか?」
「うん……」
 弱弱しく頷いた。今更だが、マユミを連れてきたことを後悔した。
 
 ――二階の階段を上りきると再び一本の廊下になっている。
「あのな、いわくつきの話なんだが」
 ふと、俺の口が勝手に動き出したように俺は喋りだした。
「な、その話はもうやめろよ」
「いいから。いつかは分からないけど、若い女性が人形を持ったまま機械に巻き込まれたらしいぜ」
「若い女性って……」
 さっき、タクヤが見たのは女性だったのか。噂のいわくつきの亡霊が現れたとでもいうのか。
「お、おい、もしさっきのワンピースがその女性なら、人形はどうしたんだ?」
「そんなの知るわけないじゃねえか。とにかくだ、ヒロキは捜すが危なくなったら引き返そう。そうじゃないと……やばそうだ」
「も、もう戻りたいくらいだぜ」
 俺たちは一本の廊下を奥へと進む。この廊下の壁に落書きはないが、赤いものが見える。
「何だこれ」
 光りを当ててみた。
「うわ! これ血じゃねえか」
 壁に血しぶきが飛び散った跡があった。ここで何があったのであろうか、そう思い床に光りを当ててみると何かが置かれていた形跡があった。
「これ、何の跡だろうな」
「お、俺が知るわけないだろ」
 長い間、物が置かれた跡だ。もしここに機械が置いてあったなら女性が引き込まれたときに壁に血しぶきが飛んだと考えられなくもない。
 ――行き止まりになった。そこには一つの扉がある。
「結局ヒロキはいなかったな……この中にいるのか?」
「…………」
 そのとき、タクヤの様子がおかしくなった。
「う、うわ……」
「タクヤ?」
 急に胸を押さえ、もがき始めた。
「うわあああ」
 タクヤの方に光りを当てるがその姿は跡形もなく消えていた。
「嘘だろ、タクヤまで…………」
 俺の頭の中は絶望と恐怖の文字で埋め尽くされた。
「…………」
 ど、どうしてタクヤまで。どうしたらいいんだ。
 急に嫌な予感がした。
「マユミ!?」
 マユミまで消えてしまっていないか、俺にしがみ付いているマユミを見た。
「……どうしたの?」
「良かった。お前までいなくなったらどうしようかと思ったよ……」
 安堵したそのとき、マユミはいきなり首を下に下げた。
「マユミ?」
 マユミは体を振るわせ始める。
 今まで掴んでいた腕を急に離し、首を下げたまま長い髪で顔を覆う。
「マ、マユミ……? どうした?」
 顔を隠したままの状態で喋り出した。
「…………し……ね……」
「うわあ!」
 そのマユミの声はさっき空耳で聞こえた声と同じ声だった。
 俺はマユミから離れようとしたとき、マユミが俺の腕を掴もうとしてきた。
「マ、マユミ?!」
 咄嗟に目の前にある扉を開き、中へ入った。
「ハア、ハア……な、何が、何が起こったんだ……」
 ドアにもたれ掛かり、マユミが入って来れないようにする。
「さっきの、あのマユミは……」
 マユミの姿を思い返すだけで恐ろしくなる。あんなマユミの姿は見たことがない。
「何だったんだ……あれは」
 まるで何かに取り憑かれたように俺の腕を掴もうとしてきた――。
 若い女性が取り憑いたのかそうでないのか分からないが、あれはマユミではなかった。
 息が切れたまま部屋の中を見回す。
 何もない。
「この部屋は何だ?」
 光りを部屋中照らしていくと部屋の中央に何かが置かれていた。
「あれは、なんだ?」
 少しずつ近づいていき、それが何かを確認する。
 ――人形だ。
「に、人形?!」
 いわくつきの話が頭によぎる。
 若い女性が人形を持ったまま機械に巻き込まれる。――人形。
 人形をよく見ると首がひしゃげている。
 そのとき――。
「…………し……ね……」
「ひ、ひい…………」
 ひしゃげた人形の首の口から言葉が発せられた。ただ一言「しね」、と。
 言葉が出ない。腰が抜け、この場から動くことが出来ない。
「…………」
 ひしゃげた首がこちらを見ている。
 そのとき、人形の胴体がこちらに向かって動き出した。
「う、うわああああああ!!」
 カタ、カタ、と一歩一歩、人形が前進してくる。
 そのとき――。
「ガチャ」
 ――後方の扉が開いた。
 必死に後ろを振り向く。そこに立っていたのはマユミだった。
「マユミ!」
 マユミは首を下げたまま髪で顔を覆ったままだった。
 マユミの後方に何かが見える。
「何だ……あれは?」
 懐中電灯の光りを奥の廊下へ当てる。
「あ、あ…………」
 そこにあったのは「三人」の死体の山だった。
「タクヤ……ヒロキ……エイジ……」
 その三人の死体はマユミの後ろに並ぶように倒れている。三人とも体中が血だらけで首がひしゃげている。
 見るに堪えないその姿は前方から迫ってくる人形の姿そのままだった。
 俺の体は恐怖に支配され動くことが出来ない。
 人形が少しずつ迫ってくる。
「…………」
 マユミをよく見ると体中血だらけだった。垂らした腕の指の先から血を滴り落としている。
 まるで工場に入る前のマユミの姿そのままだった。
 服装はワンピースに変わっていた――。
「マユミ……まさか、お前」
 俺は腰が抜けたまま後ずさる。
「……マユミ」
 マユミが俺の前に立った。
「お前にも……シを……」
 マユミはそう言うと、いきなり俺の左胸を爪を突き立てて鷲掴みしてきた。
「う、うわあああ」
 心臓が苦しくなる。これほどの力は女の力ではない。
「…………し……ね……」
 人形は俺の目の前まで来ていた。
「や、やめ、やめ……ろ」
 辛うじて一言だけ発することができた。ふと、俺の横に何かがあることに気が付いた。
 これは機械?
 今まではなかったそこに機械がある。
 マユミが手を上にかざすと、何かが俺の首に向かって落ちてきた。
 ――。
2008/10/01(Wed)15:15:27 公開 / マサ
■この作品の著作権はマサさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうも、マサです。投稿二作品目になります。この人形という作品は以前書いた作品で、手を加えて修正したものです。ホラーには初挑戦の作品で、皆様にどう受け入れられるか心配でなりません。よろしければ、感想やアドバイスをもらえたら嬉しいです。まだまだ未熟者ですので日々精進していけるよう頑張りたいです。
ここまで読んでくれた方は本当に有難うございます。
一作品目の鬼潜の時の続きは十月中旬になると思います。

※08/09/29 16:52 修正
※08/10/01 15:12 修正
この作品に対する感想 - 昇順
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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