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『トイレは飯を食う場所じゃない』 作者:うぃ / リアル・現代 ホラー
全角3635.5文字
容量7271 bytes
原稿用紙約11.9枚

 テロリストが現れれば良い。
 贅沢を言うのなら総勢二百人を超える大組織で、その中で一人か二人位は超能力染みた特殊能力を持ってたら最高だ。
 そんな有り得ない可能性を求めていた高校二年の五月初頭。クラスでは大まかな派閥分けが済まされており、この時期休み時間を自分の机に突っ伏して過ごしていると言う事は、詰まり新しいクラスでのスタートダッシュで盛大にずっこけたと言う事に他ならない。
 テロリストが現れれば良い。
 そうして、クラスの人間は全員死んでしまえば良い。
 幾ら願っても春の麗らかな日差しに守られた平和が崩れる事はない。聞こえてくるのは銃声や人々の泣き叫ぶ声でなく、水に浮かんでいる油の様にこのクラスに混ざり合えない俺に向けられる嘲笑だけだった。


     ■


 便所で飯を食うという都市伝説が有るらしい。
 俺は今まで、それは桜の下に死体が埋まっているとか、鏡の向こうの自分とジャンケンすると偶に勝つとか、そういうレベルのお伽話だと思っていた。だって、皆と話しながら飯食わないと楽しくないし、何て言ったってトイレって臭いし。
 トイレで食う意味が無い。もしも一つでも意味があるとすれば、精々食った後すぐに出せる準備が整っていると言う程度だろう。
 なら考えるまでも無く答えは出る。トイレで飯を食うだなんてそんな残念な風潮は無く、お昼時にトイレで悪戯をしたって出てくるのは百歩譲って花子さんという事だ。
 じゃぁ、便器に座って、膝の上に彩り鮮やかな、いかにも時間をかけて作りましたと言う様な弁当を乗っけているコイツは一体誰だ。

「あー……わっちゅぁねーむ?」
「帰れ。もしくは隣のトイレに移って用を足せ」

 質問は無視された。

「いや、まさかここで大きい排出物を出す気はねーんだけど……。
 あのさ、お前こんな所で何やってんの?」
「見りゃ判るだろ。弁当食ってんだ」

 どうやら、目の前には伝説を体現している人間がいるらしい。
 しかも当の本人は自分が現代に生きる妖怪並みに珍しい人間だなんて言う自覚は無いらしく、さも当然だと言わんばかりの無表情で、取るべきリアクションが見当たらず頭を抱えている俺の事を見上げてくる。
 会話が続かない。出すべき言葉は一つ残らず敵に背を向け走り去っていき、残されたのは戦う力が残されていない丸裸の自分だけだ。

「あー、えっと、なんだ。お前クラスどこ?」
「三組」
「そう。えっと、じゃぁさ、何でこんな所で飯食ってんの?」
「ぼっちだから」
「ぼっち?」
「一人ぼっちって事だ」

 ピアノ線で首を絞められているみたいだ。じわじわと死へと向かわせる何で生易しい物じゃなくて、隙あらば一気に胴と首を切り離してしまう程凄絶な痛みの声。
 なのに、淡々とした言葉に悲壮感や怒気なんて物は含まれていない。彼はそれがさも当然の事みたいに堂々と、一人ぼっちの自分を認めてしまっている。
 変な奴だな、と言うのが第一印象。
 助けてやりたいな、と言うのが上っ面の自分。

「……あー、まぁお前がこんな事になった経路なんて知らないし、知りたくもないけど、」
「知りたくないなら話しかけんな」

 その上っ面の自分がぶち壊された。自分が被ろうとした偽善の皮が自分を覆う前に、奪い取られて焚火の火種にされてしまった。
 偽善の皮の代わりに残ったのは、燃え盛る炎だけ。
 沸々と燃え盛る、怒りの炎。

「……死ね、キモ男。
 お前さ、俺にこんな事言って、明日からここでのんびり飯食えると思うんじゃねーぞ?」

 個室のドアを蹴飛ばしてトイレから出た。ドアは不必要に付いた勢いに任されて、一度閉まった後に大袈裟な音を響かせてからまた開いた。
 彼は最後まで何も感じない無色な瞳で、俺を見もせず飯を食っていた。


     ■


 テロリストが現れれば良い。
 彼らは総勢三百人を超える大軍で、この学校のお偉いさん方にこう宣戦布告するのだ。

『お前等の学校は臭すぎる。まずは、トイレをきれいにしろ。
 トイレの防音性は完璧に、冷暖房を快調にする為エアコンを付けて、他の人に誰がいるか判らないように完全個室制にするが良い。
 なに、臭いと関係ないだ? 違うのだよ。我々が臭いと言っているのは、その思いやりの無い生臭い君達の心の香りの事を言っているのだよ!』

 完璧だ。
 そんな事を言っている筋骨隆々の黒人男性がいれば、俺は喜んで尻を差し出すことだろう。
 クラスに馴染むとか友達が欲しいとか、そんな贅沢な望みは口にしない。そんなのはもう諦めた事だし、そもそも油は一度水に溶け込んだところで少し間を置けば分離してしまうのは目に見えている。
 俺が望むのは唯一つだけ。せめて、静かに暮らしたいだけなのだ。


     ■

 夏のトイレは臭かった。
 夏じゃなくても臭いけど、夏は輪をかけて臭かった。

「おい、まだお前そこにいんのか?」

 堅く閉ざされた扉の向こうから返事の声は聞こえてこない。しかし俺の言葉何て聞こえてすらいないとでも言うかのように、返事の代わりに普段通りの箸を動かすカチャカチャという音が聞こえてくる。
 一度突き放してきた俺とはもう話をしたくないらしい。そもそも、コイツは誰かと話したい何て思う事があるのだろうか。

「あの時は悪かった。俺だって反省してる。だから、もう一度話をしてくれないか?」

 まるで壁に話しかけているようだ。文字通り俺の目の前には壁しか見えていないのだから、あながち間違いとも言えないのかもしれないが。

「お前だって、一人は寂しいだろ? 俺は、そんな奴の存在を知っちまった以上は見てないふりも出来ない性質なんだ。
 だから、そんな臭いトイレに引きこもってないで、俺と一緒に外で飯食ってみようぜ?」

 箸のカチャカチャという淀みない音と、呻き声にも似た蝉の鳴き声だけが聞こえてくる。
 まるで世界の人間は一人残らず死に絶えて、俺だけが生前の罰で臭いトイレに閉じ込められているようだった。

「……なぁ、せめて何か言ってくれよ」

 泣きそうな声を出すと、カチャカチャと言う音が止まった。
 もしかするとと言う希望に瞳が輝く。久し振り、こんにちわ、普段何やってんの、どんな映画とか音楽とか好きなの。なのに飛び出そうとした言葉よりも早く聞こえてきた音は、パチパチという何かを閉じる音だった。
 ジッパーが開く音が聞こえる。何かを乱暴に詰め込む重い音が聞こえた。もう一度ジッパーの音が聞こえた。ドアが開く。彼は何も感じ取れない無色の瞳で、

「ごちそうさま」

 一人呟くように口にして、手を洗って外に出ていってしまった。
 残された俺は何もできず、ただ去ってゆく彼の後姿を見つめるだけだった。


     ■


 テロリストが来れば良い。
 たった一人で良いから、毎日のようにやってくるアイツを殺してくれれば、他に俺は何も望まない。


     ■


 どうやら、最近ではうちの学年で新しい都市伝説が流行っているらしい。
 そいつは昼休みになると他の何を捨ててもトイレに駆け込んで、誰もいない個室に向かって一人で話しかけているらしいのだ。
 判っている。俺だってそんなにバカじゃない。俺はどうやら、新しい苛めの対象になりつつあるらしい。

「……なぁ、いるんだろ?」

 毎日聞こえてくるカチャカチャという箸の音。無機質で、無感情で、人の温かさが欠片も感じられない音だった。
 毎日聞こえてくるクスクスと言う忍び笑いの声。人間的で、感情的で、人の温かさが欠片も感じられない音だった。
 壁の向こうでは一人で飯を食っている彼がいる。その壁を経て、返事の返ってこない扉に向かって話しかけている俺がいる。そのトイレの入り口で、見つからないように身を屈めながら寒気がするほど冷たく笑っている誰かがいる。
 狂っているのは誰だ。
 一番おかしいのは、俺なのか。

「……なぁ、いるんだろ!?」

 泣き出してしまいそうな心の痛みを、叫びに変えて彼に吐き出した。
 それでも箸の音は止まらない。笑い声は勢いをます。心のささくれは、いい加減薄皮どころか肉毎えぐり取ってしまっている。
 彼の心が判らない。
 彼と同じようにすれば、少しは判るのだろうか。


     ■


 テロリストは来なくて良い。
 毎日のようにやってくるアイツは消えた。ただ、一人だけ友達が出来たんだ。


     ■


 カチャカチャと言う二つの箸の音が、まるで協奏曲の様に鳴り響いている。
 こうやって過ごして早二ヶ月。ここで時間を過ごして判った事が二つあって、判らなくなった事が一つある。
 判った事の一つは、慣れてしまえばこのトイレの臭いが気にならなくなったと言う事。
 もう一つは、誰とも話さなくとも慣れてしまえばどうとも思わないと言う事。
 判らなくなった事は一つだけ。

「俺は――――」

 俺は、何処で道を間違えてしまったのだろうか――――?
2008/04/20(Sun)23:50:09 公開 / うぃ
■この作品の著作権はうぃさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回の個人的課題は 『コンディション最悪の状態でどの程度の物を書く事ができるか』 と言うものでして、もし文章が前のと比べて気持ち悪かったりしたら、恐らくそのせいかと思います。
とりあえず今回のでわかった事は、コンディションが悪いと集中力が続かなくてお話が悪い方向へ向かっていくと言う物でした。
因みに書きたかった事は、中途半端な覚悟で人に助けの手を差し伸べるな、という物でした。本々は半端な覚悟じゃなくて本気で便所飯少年を助け出す爽快なお話を書く予定だったんですがねぇ……
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