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『FogFly』 作者:泣き虫ジャック / 恋愛小説 ファンタジー
全角2455.5文字
容量4911 bytes
原稿用紙約8.35枚
知名度最低ランクの奏に一通のラブレターが!北校生の様々な個性人と奇妙な関係を描いた、甘酸っぱすぎてよく分からない恋愛ファンタジー、ココに解禁!
*プロローグ*
彼の名は薊奏(あざみかなで)。十六歳。
この北校の中で最も知名度が低い。断言しても過言ではない彼にも、一応知人というものが存在しており、
しかし又その数も、誰もが目を細めるような乏しい数であった。俺は神武吟(じんむあきら)。同じく十六歳。
唯一奏が友と呼べる存在。奏は自分で十分だったのだろう。俺以外に友意識を示したことはないし、俺も奏が友という概念を自分にしか向けてない事を理解していたように思える。
HRで教師が遅れた為に、少しの間、室内は騒がしかった。
「あきらぁ。二組のさ、だれだっけ、あいつ……」
 クラスメートからの突然の曖昧質問。こういうときは大体……
「奏か?」
「は? 誰だよそいつ。上上。苗字は?」
「あ・ざ・み」
「それそれ。そいつがさぁ」
 ココまで来ると致命的だなぁ。ちょっとかわいそうに思えてきた。
穂積和(ほづみのどか)からラブレもらったってよ。お前あいつと仲いいだろ。先越されたな」
「は? どっちの」
「あっそうか……てっきり……ん〜そこまで知るかよ。あいつと接点零だし」
 そう。この学校には穂積和という名の人物が二人いるのだ。しかも困ったことに、一人は文句の付けようのないどえらい美人で最近メガネをかけだし、男子からの人気を博しているが、もう一方は寞々とした表情が顔面に張り付き、耳元で蚊が飛ぼうと、虫が鼻に止まろうと微動だにしない、無感慨女であった。
どちらも考えにくい、いや考えられない者達である。Why? 何故よりにもよってあいつなんだ? 何故俺じゃないんだ!?
奏+αの二乗ぐらいの物語は、一通のラブレターによって始まった。

〜一章 じゃすてぃすみー〜
「奏! お前さぁ……」
「あっごめん。用事あるんだ」
「おい! 待てって」
 お前昼休みから無視しすぎだろ。どんだけ嬉しかったんだよ。どうせ帰りも一緒に帰らないだろうし、帰ってメールでもしてみるか。
向こうの携帯が鳴ったのは九時三二分のことだった。どうせ朝までこないと思っていた発信直後、思いもよらぬ早業で返ってきた文章に呆れ尽くした。
「それよりも今日のHRで先生が遅れてきた理由知ってる?」
 知るかそんなもん。そんなことは聞いとらん。推理するに、小テストを刷っていたら紙が詰まり、予想以上に時間がかかったために仕方なく断念し、教室に来た。そんな感じだろう。
「三年の穂積に告られたらしいな」
「小テストを刷っていたら紙が詰まり、予想以上に時間がかかったために仕方なく断念し、教室に来たらしいよ」
 おぉ当たった。いや違う。コイツ俺と話する気ないな……。
To.の欄に北校のスパイ・キッズこと天王寺宙(てんのうじそら)のアドレスを打ち込んだ。
「穂積先輩のアドレス教えてくれ」
 この返信も早かった。皆暇だな。
「どれの?」
「一応全部」
「報酬は?」
(メイ)ちゃん(美少女アニメキャラ)マウスパッド」
「乗った。ちょっとまって」
 実力行使に移った俺に待つほどの余裕はない。宙の言ったちょっとが異様に長く感じて仕方がなく、とりあえずノートパソコンを立ち上げてベッドに寝そべっていた。
ネットサーフィンも一段落付いたころ、返信が来ていたことに気付く。ちゃんと中身が入っていた。といっても只今十時十三分。相手は受験生だし、今日のところはやめておこう。
――ちょっと待て。
俺はもう一度、宙からのメールを確かめた。一、二、……三!?
「三年 穂積和:enjoy_schoollife@clocomo.ne.jp
  々   々:cometster@clocomo.ne.jp
 一年   々:eonnadane_aisan@clocomo.ne.jp」
 は?穂積和って北校に3人居んの?
翌日、昼食後、一年の名簿を確認した。無い。穂積和などどこにも無い。宙が言うに、東校にその人物は存在するらしい。
つまり、他校の俺がアドレスを知っており、相手にコンタクトを図るには、友人への好意の有無の確認という理由では少な過ぎ、
又、相手が後輩ならば尚難しいだろう。
ココで活躍するのは、やはり女友だろう。早瀬匝(はやせめぐる)。十六歳。俺のたった一人の女友だ。同じ中学だったというわけでもないし、従姉妹、ましてや知人でもない。
ただ、同じ美術部で、二人ともお互いのデザイン性が気に入ったのだ。手先が器用で、入学してわずか半年で
彼女の切り絵は全国を飛んだ。
「匝。東校にも穂積和っているらしいんだよ。で、奏にラブレ渡した奴が知りたいわけ。協力してくんね?」
「無理。」
「なんで?」
「変なことに巻き込まれたくないし。」
「そうか。わぁったよ。」
 希望の扉が、閉じる前に叩き潰された感じだった。無念。
――女装するか……否、変態か。いや、思い当たる節が一つある!宙の姉だ!彼女は東校に通っている。はず。
昔、といっても5年ほど前だが、当校と東校は学力で競い合っていた時期があった。しかしその戦中、ウチの学校長が
遠方の学校に赴任することとなり、東校の校長は学力向上の努めを怠らなかった。そのため近年では
進学校として選択する人が増えてきたのだ。その一人が宙の姉、天王寺ュ(てんのうじれい)だ。宙の家に出向いた時に見たことがある。
「ども」
「いらっしゃい」
会話というには粗末なものだが、確かに目を見て交わした言葉は、記憶にハッキリと残っている。向こうはどうか知らないけど。頭上に影を創ったとんびが、これから起こることを必死で詠っていたように見えた。
2007/07/25(Wed)22:46:09 公開 / 泣き虫ジャック
■この作品の著作権は泣き虫ジャックさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
登場人物の名前が全て一文字です。穂積和なんて名前、そう近所に集まらないと思いますけど大目に見てください。
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