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『ララバイ.mp3』 作者:松葉 / ホラー 未分類
全角4768文字
容量9536 bytes
原稿用紙約15.45枚
目を開けると、そこは真っ暗な部屋だった。
 周囲を見渡したが何も見えない。
 立ち上がろうとしたが動けない。どうやら椅子にしっかりと固定されているようだ。
 口の中に錆びた鉄の味がした。口には鎖のついた猿轡がされていた。
「んんんん、んんんん……」
 助けを呼ぼうともがいていると、部屋の向こう側から男が歩いてきた。どのような姿かはっきりとは見えない。わかることは、腕に無数の釘を刺し、片手にハンマーをもっていた。
「んんんん! んんんん!」
 私は、その男に対して必死に救いを求めたが、男は聞こえていないようだった。男は、腕に刺してある釘を徐に抜くと、私の額にそれを打ちつけ始めた。
「んんんんんんんんんんんんん! んんんんんんんんんんんん!」
 筆舌に尽くし難い激痛が、全身を駆け抜けた。
 男は、お構いなしに次々と釘を打ち付けていく。
 やがて、額には釘がびっしりと突き刺さった。通常なら痛みで失神し、すでに絶命しているはずなのだが、私の意識ははっきりしていた。そのうえ、猛烈な痛みが私を苦しめていた。
 私は、消えそうで消えない意識の中、男を見た。男は、またもや釘を引き抜くと今度は目に照準を合わせ打ちつけ始めた。
「んんんんんんんんんんんんぶううううううううんんんんん!」
 この世のものとも思えない激痛だった。さらに、ぐちゃぐちゃという眼球のつぶれる音がうるさいくらいに耳についた。
 男は、目に打ち終えると耳、鼻、口と次々と釘をうった。私の意識はすでに混濁していたが、決して消えることはなく、痛みを感覚もはっきりとあった。
 もう見えない目から生暖かい液体がドロドロと流れ出ているのを感じる。
「んん……。んん……」
 私は、意識が早く消えてなくなることを願った。
 そのとき、首の鎖がじゃらじゃらと音を立てるやいなや、ぐちゃという音と共に私の頭部は体から引き離された。この時、一瞬の激痛と共に私の意識は途切れた。

 目を開けると、そこは自分の部屋のベッドの上だった。窓からは朝日が差し込んでいる。
「夢か。それにしても変な夢だったなあ」
 時間を確認すると、出社時刻の2時間前だった。しかも、あんな悪夢を見たにも関らず、目覚めは最高によかった。それどころか今まで経験したことのないほどの爽快感があったのだ。
 私は、昨日の出来事を冷静に整理してみた。
 私は、昨日の夜、インターネットのサイトから癒し系音楽をダウンロードしていた。私は、パソコンに向かった。パソコンの電源はつけっぱなしだった。
「あ! この曲だ」
 曲名:ララバイ.Mp3
「この曲のおかげで久しぶりに寝られたのかな。でもあの悪夢は……」
 私は、悪夢の内容を思い出そうとしたがうまく思い出せなかった。釘を刺される悪夢くらいにしか覚えていない。無論、あの痛みも。
「ま、いっか。どうせ夢だし。あー、なんて気持ちがいいんだ! やる気が出てきた!」
 私は、スーツに着替えると会社に行くため、家を出た。

 会社に着くと、同僚の中本が声をかけてきた。
「よお、韮山くん。今日はえらく機嫌がいいじゃないか」
「おうよ。聞いてくれよ。昨日は、久しぶりにぐっすり寝れたのさ」
「へー、でもお前、睡眠薬でも3時間が最高だって言ってなかった? しかも寝覚めは最悪」
「昨日、すごい音楽見つけたんだよ。まだそれのおかげって決まったわけじゃないんだけど」
「ストレス解消にお前が集めてる癒し系音楽か? そりゃすごいな、今度聴かせてくれよ」
「いいよ」
 私の気分は、この上ないほど晴れやかだった。なにせ3時間以上寝たのは数週間ぶりだったのだ。その上、寝覚めは最高だ。
 私は、ストレスからくる不眠症で悩まされていた。それがまさに今日、改善されたのである。
 私は今日という日を祝して、中本に晩飯をおごってやった。

 私は家に帰ると、さっそく「ララバイ」を聴いた。幻想的な調べが室内にこだまする。
 私は、すぐに眠りに落ちた。それは、睡眠薬から来る不快感を伴う眠りではなく、最愛の人の膝枕で眠る様な、最高の心地よさを伴う眠りだった。

 目を開けると、そこはごく普通の町中だった。
「今日は普通の夢だ」
 私は、その町をひたすらに歩いていた。
 ところが、すれちがった婦人がいきなり出刃包丁で私を刺し、何事もなかったように歩いていった。
「え?」
 私は、刺された箇所を手で触ってみた。真っ赤な血が手についた。
 呆然とその場に立ちすくしていると、頭に激痛を感じた。鈍器のようなもので殴られたようだ。
「逃げるんだ」
 私は自分に言い聞かせたが、体はその場から動かなかった。
「ぎゃあ!」
 こめかみにボールペンを刺し込まれた。だが、それで終わったわけではなかった。すれ違っていくサラリーマンは、みんな私にボールペンやシャーペンを突き刺していった。
「ぐあああ。ううう、あああああああああああああ!」
 私は、自分の頭や顔を触ってみると無数のペンが刺さっているのがわかる。すでに、眼球にも刺し込まれ、視力はなかった。
「なんで、なんで、なんで死なないんだ! なんで目が覚めないんだ!」
 私は、想像を絶する激痛を味わい続けた。私は、身悶えているとなにか液体をかけられたのを感じた。
「なんだ? これは、ガソリン?」
 次の瞬間、体に火をつけられた。一瞬のうちに体は黒焦げになる。しかし、意識はなくならないし、夢も覚めない。
 「あああああ! 熱い! 熱い! あああああああああ!」
 私は、火達磨になりながら走った。そのうち、体の皮膚が焼け爛れてきた。
「ああああ、え?」
 私は、皮膚が焼け爛れた部分が元のきれいな皮膚にもどっているのを確認した。
「ま、まさか」
 私は、激痛に耐えながら皮膚をはがしていった。すると、元の自分の姿にもどった。
「やった。夢に勝った!」
 だが、喜びもつかの間だった。鈍い重厚音と共に、私の下半身は吹き飛んだ。
 私は、あまりのことで言葉を発することができなかった。
 この後、私は三回以上殺された。

「わあああああ!」
 私は、布団から飛び起きた。さっきまで全身をピアノ線で切り刻まれていたはずだ。しかし、その実感は全くなく、当初と同じようにこれ以上ないほどの爽快感があった。
「ふわああ。今日もよく寝たぞっと」
 
 私は、会社に着くと「ララバイ」の入ったMDを中本に渡した。
「やっぱりこれのおかげだったよ。昨日もぐっすりさ! ストレスなんか吹き飛んじゃうよ!」
「そうか。じゃあ、僕も今日聴いてみるよ」
「ああ、でも気をつけて。悪夢を見るから」
「悪夢? どんな?」
「それが、よく覚えてないんだよ。あやふやで」
「ふーん、ま、聴いてみるよ」
 私は、悪夢の内容については一切いわなかった。はっきりと覚えていない事もあったが、あの夢の内容はあまりに語れるような代物ではないからが正しい理由だった。
 
 私は、この日も「ララバイ」を聴いた。
 やはり、悪夢を見たが、目が覚めたときに悪夢の後味はほとんどなかったし、快適な眠りと最高の爽快感が得られるのならば我慢できた。

 次の日、会社で私は、中本に感想を聞いてみた。
「どうだった? 「ララバイ」、よかったでしょ?」
「ああ! 最高だね! なんだい、この爽快感は!」
 中本のテンションは、異常に高かった。やはり、「ララバイ」の効果はすごい。
「でもさ……」
 中本は、急に深刻な口調になった。
「聴くのやめたほうがいいと思う」
 私には意味がわからなかった。なぜ、こんなにもいいものを聴いてはならないのだろうか。
「なんでだよ」
「絶対になんかなるよ。すごい悪夢を見たはずなのに実感がなくて、でも爽快感があるなんてなんか変だ。いいか、韮山。もう聴くのやめろよ」
「もし、聴いたら」
「縁を切らせてもらう」
 私は、その日は「ララバイ」を聴かなかった。おかげで、また寝不足の日々が続いたが、自分の事をもっとも心配してくれる中本との絶交は嫌だった。
「韮山、聴いてないだろうね」
「もちろんだよ、見ろこの顔を」
 私は、寝不足でくまだらけの顔を見せた。中本は、うれしそうに親指を立てた。
 
 私が「ララバイ」を聴かなくなって一週間がすぎた。
 状況は、「ララバイ」を聴く前より悪化していた。「ララバイ」を聴きたい欲求とストレスが、仕事でのストレスや寝不足での疲れに追い討ちをかけていた。
 私は、その日の通勤電車内でとうとう「ララバイ」を聴いてしまった。心地よい眠り、電車の座席とは思えないほどの快適さを感じていた。
 私は、眠りに落ち、そして長い長い残酷な悪夢を見た。
 私は、目を覚ますとそこは私が降りる駅の一つ前だった。
「こ、これはすごい。すっかり何時間も寝てると思ってたのに」
 私は信じられなかった。わずか20分程度の睡眠にも関らず、5,6時間眠っていたほどの爽快感があった。さらに、自分の望む時間に起きることもできる。
「やはりすごいものなんだ」
 私は、中本には内緒で「ララバイ」を聴き続けた。仕事でストレスを感じたとき、「ララバイ」を聴き、三分ほど眠ればストレスは吹き飛んでいた。
 もちろん、三分であろうとも数時間眠ったのと同様の長さの悪夢は見る。だが、私はその悪夢を何回も見るうちに慣れてきた。そして、いつしか私は、悪夢に対してスリルを感じるようになってきた。

 それから、数ヶ月が過ぎた。
 私は、「ララバイ」を今でも聴き続けている。
 「ララバイ」のおかげで仕事は順調に進み、ストレスをためることはない。悪夢もすでに慣れてしまい、私にとっては一般人が見る様な普通の夢と変わらなくなってしまった。

「韮山君! 何度いったらわかるんだ! この馬鹿が!」
 上司の罵声や仕事のミスなどでストレスを感じるとすぐに「ララバイ」を聴くことは、すでに習慣になっていた。三分の眠りで何もかも忘れられるのだから癖になるのは当然だった。
 この日もいつもと同じようにイヤホンを耳につけ、聴こうとしていた。
「おい! 韮山! なにやってるんだ!」
 耳からイヤホンが取り外された。振り向くとそこには中本が立っていた。
「約束破りやがって。聴くなって言っただろう!」
 中本はそう言うと私のMDプレーヤーを奪い取った。
「なにすんだ。返せよ」
 私は、中本に迫った。
 その時だった。中本は、小走りで窓際までいくとMDプレーヤーを投げ捨ててしまった。
「このほうがお前のためなんだ。わかってくれ。あれに頼ってるときっとだめになると思う。悪い予感がするんだよ」
 私は、窓に駆け寄り、外を見下ろした。下ではMDプレーヤーがこなごなになっているのが見えた。
「わかったよ。もう聴くの我慢する。」
 私は、中本に秘密で「ララバイ」を聴いていた事を後悔した。中本の行動は、本当に自分のことを思ってくれているのだと気づいた。
「わかってくれたか、韮山」
 中本は、微笑んでいる。
「ああ、悪かった。お前がそこまでしてくれてるのに。ほんとにごめんな」
「まあ、今日飲もうぜ! な、韮山」
「ああ。でも、中本。お前壊れたMDは弁償してくれるんだろうな?」
「えー、やだ」
「なんでやねん」
 僕は、そう言うとつっこみがてら中本の眼球にボールペンを突き刺した。
 途端に中本は、絶叫し、地面を転がりまわった。
 僕は、なんでそこまで大げさになっているのかわからなかった。
「中本、それネタ? つまらないからやめろよ」
 だが、中本は叫び続け、助けを求めている。
 僕は、そんな中本にうんざりした。
「中本、つまらないネタひっぱるなよ。それにうるさいからさ。もうやめろって」
 僕は、そう言うと転げまわっている中本を担ぎ上げ、窓から外に放り投げた。
2006/10/22(Sun)01:53:40 公開 / 松葉
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■作者からのメッセージ
ヘルレイザーという映画から悪夢シーンは参考にしています。
改行などくふうしました
評価おねがいします。
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