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『白いハト -その1-』 作者:黒猫 / 未分類 未分類
全角2887.5文字
容量5775 bytes
原稿用紙約9.65枚
 いいかい、絶対に守らないといけない約束が三つあるよ。
 まず、高く飛ばない事。
 もう一つ、どんな時でも逃げられる体勢でいる。
 最後は……『シロ』以外のハトを信じてはいけない。
 生きていれば本当に何があるか分からないからね。
 この三つを守らないと傷つく事になるよ。体も、心も。




 僕は、茶色っぽい屋根の上で体を休めていた。そして、ため息と一緒にいつもの口癖。
「明日は生きていられないだろうな」
 弱音とため息は、静かに空に吸い込まれていった。さあっと夏の風がふき、傷だらけの体がひりひりと痛んだ。そうだ、さっき猫に襲われたんだっけ。
 ……空は憎いほど、青い。
 少し勢いをつけてから、僕は青空に飛び立った。一瞬よろめいたが、それでも何とか立て直して羽を動かした。
 羽はひりひり痛いが、仕方ない。飛ばないとネコに殺されるか、空腹で死んでしまうからだ。生きるために毎日僕は、飛ぶ。

 よろよろばたばたしていたが、それでもしっかりと低空飛行を心がけながら飛んでいた。高く飛んではいけないのだ。
『……この三つを守らないと傷つく事になるよ。体も、心も』
 父さんが生きていた頃、毎日のように繰り返していた約束事。幼い頃はその意味も分からなかったが、今ならはっきり分かる。
 一つ、高く飛ぶと、白い体が余計に目立ってカラスに狙われるから。二つ目の、どんな時でも逃げられる体勢でいるのは説明するまでもなく基本の事。三つ目は……同じ白いハト以外はみんな敵って意味。
「白いから白いからって……ねぇ?」
 僕は、羽を動かしながらくるくると小さく、悲しく笑った。
「白いハトばっかり狙わなくていいじゃないか、ネコ野郎め」

 ばたばたと下品に羽を動かしながら(大体ハトの飛び方って上品ではないだろ?)また小さくため息をついた。
 今日はどこに行こう。敵に見つからない手ごろな寝床……その前に水と食べ物だ。ああ、嫌になる。

 はぁ……
「キキキッ!」
 小さくため息をつくと同時に、甲高い何かの鳴き声が聞こえた。
 びっくりしてキョトキョトと辺りを見回すと、二匹のカラス……と、小さなスズメが一匹。遠くの方で空中でこぜりあっている。
「……スズメが、襲われている?」
 カラスはガアガアと汚く鳴き、スズメをつっつき回す。スズメは死に物狂いで逃げようともがく。
 ……助けようといったって、僕がケガをするだけで何も解決しないだろうな。申し訳ないが、僕は初めから助ける気などさらさらなかった。
 逃げ回るスズメが一瞬こちらをちらと見た。タスケテ……その小さな鳥の目がそう訴えていた。
 すぐに僕は回れ右をしてその場を飛び去った。少しだけ良心がズキンとしたが、仕方のない事だ。

 アイツは強くて僕は弱い。
 弱い者は弱い者なりの生き方をしなくては。

 遠くでガアガアいう声が聞こえたが、聞こえないフリをして全力で飛んでいった。
 僕は悪くない。当たり前の選択……
 ちょうど良く小さな広場を見つけたので、慌てて着地した。ドキドキした体を落ち着かせるため、深く深呼吸した。
「これでよかったんだ。これでよかったんだ。今日の事はもう、忘れよう」
 何もかも忘れたくてふるふると首をふった。辺りを見回すと、自分以外の生き物は全くいない、さびれた公園だった。食べ物なんて全くなかったが、身を隠す場所と、水だけはちゃんとあった。
 さっきのスズメの事を考えないように、水のみ場からこぼれた水をゆっくりゆっくり飲んだ。

 ふぅ……と、お得意のため息。今日だけで何回ため息をついただろうか。
 ため息をつくと本当に幸せが逃げるのならば、僕は絶対幸せになれないだろう。
「もう日が暮れるから、寝よう」
 小さな茂みに身を隠して、羽を伸ばした。ぐっと目をつむっても、さっきのスズメの事ばかり思い出してしまう。
 本当、嫌になってしまうよ。

 うとうとしているうちに、すぐに眠りにおちた。随分体が疲れていたらしい。

 夢の中というのは、寝ているんじゃなくて別世界だと僕は思う。
 悪い夢、なんていうのもあるらしいが、僕は幸せにもそんなところ行った事がない。
 そう。
 体の傷も治っていて、ふわふわ泳ぐように僕は飛んでいて。
 どんなに高く飛んだって誰にも狙われない。
 毎日食べ物や寝床を探して目をギラギラさせなくても良い。
 ただ、ふわふわはたはた飛んでいる。
 気持ちいいな。
「ねえ」
 これが幸せって言うのか。
「ねえってば、ハト!」

 間近で聞こえる甲高い声に、ひっと現実に引き戻された。
 目をあけると、目の前には一羽のスズメがこっちを睨んでいた。
「な……なに……」
「何ビビってるの?」
「これは……夢?」
「バカ!」
 突然の出来事に、僕の頭はついていっていなかった。確かにここは誰にも見つかるハズのない茂みの中で、そこにスズメがいて、僕に話しかけて、えーと……
 パチクリしている僕の頭を、スズメはコツンとつっついた。
「アタシを忘れたとは言わせないわよ」
「だ、だって」
「はぁ?あんたはさっきの事も覚えてない訳?」
「さっき?」
 さっきの出来事?僕はスズメなんかに知り合い(スズメに限らず仲間はいないが)はいない。
 が、一つだけ思い当たる……
「もしかして……」
 僕は小さな声で言った。
「さっきカラスに襲われてたスズメ……?」
「思い出すの遅い!」
 スズメはまたコツンと僕の頭をつついた。ちっちゃいのに横暴なヤツだ。

「で、でも何でここが分かったんですか?」
「はぁ?」
 スズメは鋭い目つきでこっちを睨んだ。
「ただ逃げてここに来たら、ちょうどアンタがいただけ。アンタって白いハトで珍しいから覚えてた」
「は、はぁ……そうですか」
 随分と気の強いスズメだなあ。僕はびくびくとスズメを見つめた。さっきの襲われてたトリとは別人、いや、別鳥のようだ。
 スズメは、冷たい目でジロジロと僕を見回した。僕の事を弱いヤツだと見下しているのだろうか。どっちにしてもビクビクな雰囲気に耐えられなかった。
 ふと、スズメは思い出したように言った。
「ねぇ、アンタさっき逃げ出したよね?」
「う……」
 痛い所をつかれて、僕は目をそらした。スズメは何やらニヤニヤして、歌うように言った。
「さっきアタシ死にそうだったんだけどなあ〜」
「ご、ごめん」
「じゃ、許してあげてもいいかなあ。その代わりに」
 スズメはニヤリと笑った。
「これからアタシの事守るのよ、いい?」

「分かった……って、ええ?!」
 一瞬視界が揺らいだ。
「守る……?」
「そ。さっきの償いとしてアタシの気が済むまでね、真っ白のナイト様」
 スズメはあくまで楽しそうにチチチと鳴いた。こ、このちびっこ、僕の事を完全に見下している
「何?嫌なの?アタシ傷ついてるんだけど」
「ま、守ります……」

 強引な訳の分からない展開に、僕はただ呆然とするしかなかった。

『生きていれば本当に何があるか分からないからね』
 ……ふいに、父さんの言葉蘇ってきた。
 父さん、僕はどうしたらいいんでしょう……



<続>
2006/08/04(Fri)23:32:00 公開 / 黒猫
■この作品の著作権は黒猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。
そういえば最近白いハトみかけませんよね〜……
やっぱり白いハトってネコやカラスに狙われるため、数が減っているみたいですよ^^;可哀想に
何はともあれ、ゆるりゆるりと見守ってやってください
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