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『通り雨がすぎるまで』 作者:ライラック / リアル・現代 ファンタジー
全角2402文字
容量4804 bytes
原稿用紙約7.45枚
いつか見た、どこにもない場所へ。行ってみたい。そこは、大切なあの人と出会える場所。どこへ行ったかわからない、もう会えない人と出逢える場所。その場所で、あの人とどんな会話を交わそうか。愛の言葉をかたることのできるたった一つの場所。愛の言葉を語りたいたった一人の人。そんな夢のような物語を。
ある夏の冷えた夜空の下でした、たたずむ僕と響く雨音。
うつむいて、歩く人波ながめつつ、待つとしようかしずく雨音。
舞い落ちる木の葉が触れた僕の頬、きっとあなたが今頬笑んだ。
めぐり逢う、いつもその日を夢見てる、あなたの影をどこか探してる。
分かってる、あなたはここにもう来ない、忘れられない儚き日々よ。
この雨が思い出させるはしゃぐ声、大きな傘に入ってきてた。
迎えてた新しい朝、飽きないで夢を見ていたあの日の僕ら。
目に入る松の枝が露むすぶ、秋よ来ないで袖が濡れてる。
ゴロゴロとふいにうなる雷に、駆ける人波ぶつかるあなた。
そうあなた、謝るあなた何言おう、ごめんありがと今もあなたを。
言えないよ、資格が僕にあるのかな、その瞳今何映してる。
この夏の冷えた夜空の下で。響く雨音の中で

「あなたと一緒に居たい」
口をついて出たこの言の葉は、あなたの頬を赤くした。濡れた袖を雨のせいにして、僕は続ける。
「今日はあの大きな傘を忘れたんだ。はしゃぐあなたの声が聞けないのが残念さ」
「もう、そんな子どもじゃない」
そうか。そうだった。もうこんなにも時は流れている。
一人では、大きすぎるあの傘も、ずっとずうっと眠っているんだ。
時とめる魔法があればいいのにな、年重ねても願い続ける。
そんな子どもみたいなことを僕は考えてしまう。あなたはもう大人になってしまったの?
「時計をとめても、時間は過ぎてく。周りのすべてがいじわる、そんな話をしたのを覚えてる?」
「そんな昔のこと……」
その瞳、今映るのは、過去? 未来? それとも僕を映しているの? 
分からない、何を話せばいいのかな、たくさんあるよ、話したいこと。
「ねえ? いつまでこうしていられるの?」
「通り雨が過ぎるまで」
そうか。そうだった。今は雨宿りをしていたのだ。この通り雨がすぎるまで。僕とあなたの時間。空白の過去をうめる時間。思い出にひたる時間。未来への希望を結ぶ時間。ねえ? あなたにとって、通り雨が過ぎるまで。どんな時間なのでしょう。どうか雨よ止まないで。できれば永久に夢の雫を降り注いでいて。僕にとって、あなたが、かけがえのない時間だから。大切な人だから。いつかきっと、またあえる日を信じて、生きてきたのだから。

「今もあなたを……」
身勝手な僕の唇、その動き、留めてくれたの、あなたの唇。
驚いた僕の頬へと手を伸ばし、照れくさそうにつま先立てた。
つぶやいた、あなたの口から愛してる、夢を見ているこの瞬間(とき)僕ら。
 
 僕らは部活で知り合った。手芸部で。
そりゃ体育会系への憧れはあった。でも僕にはどうしても無理だった。部室の窓から見える、少年の活躍と歓声は、遠い世界のように見えた。部室にあなたは居た。今考えれば、よくそれほどの話題があったものだ。毎日放課後、暗くなるまで話していた。本当にたわいもないことを。その時僕はまだ気づいていなかったんだ。あなたの生きる毎日がどんなものか。それに気づいたのは、あなたがずぶ濡れで、部室に入ってきた日。
「たすけて」
と一言つぶやき、泣き崩れてしまった日。いじめられていたんだ。あなたは。
 なぜ? 僕の前では、そんなそぶりを少しも見せなかった。ずっと、楽しそうに笑っていた。その向こうにある悲しみに僕はずっと、気付けなかったんだ。僕は自分を責めた。そして誓った。助けなきゃ。
 
それから僕はずっと、あなたと一緒にいた。そのせいなのか、僕の周りから友達がいなくなる。あんなのと一緒にいるなんて、とささやく声が耳に入る。そのことがまたあなたを悩ませた。あなたのせいで僕も一人になる。そんな状況に耐えられないで居た。
「一緒に居ない方がいいよ。」
「もしも世界中敵に回しても、いつも二人で、醜い嫌われ者で居ようね。」
こんなうすっぺらな言葉が人を掬う、と本気で信じていた、あの頃。状況は一向にかわらなかった。ただ、あの時以来、一度も涙を見せていない彼女の強さに僕は敬服した。いじめから掬うだなんて、本当にできるんだろうか。とくにできることもなく、ただいつも隣に居ることだけで、お互いの心の穴が満たされていたのかもしれない。          

月日は流れた。卒業を意識し始める頃。時間が形を変える頃。助けるだなんて誓いは、果たされることはなかった。ただ、月日が流れるのを待ち続けてた。生きることに意味なんて要らない。そんな気休めを抱きながら。
 二人ぼっち。帰り道。僕は話しかけた。
「ずっと、言いたかったことがあるんだ」
「うん」
「何もできなくて、ごめんね。一緒にいたときは楽しかった、ありがとう。知らない名前の町に行くんだね、さようなら。」
 二人ぼっち。帰り道。あなたが話した。
「ずっと、言いたかったことがあるんだ」
「うん」
「好きだった」
「僕も同じ気持ちでいたんだ。でももう会えなくなるね。寂しいよ。次の場所では、うまくやりなよ」
「うん」
「人波の中、偶然、いつか出会える日が来たら、その時は笑って話をしようね」
 小さくなっていく、あなたの後ろ姿を目に焼きつけていた。橙にそまる街の景色の中に、それは溶けていった。

 驚いた、まさかあなたが口づけを、愛の言葉をつぶやくなんて。
あの頃の、あなたではもうないんだね、大人になってしまったんだね。
いつまでも子どもみたいな僕の事、どういう風に思っているの。
また今も愛の言葉はあなたから、でも今ならば約束できる。
あなたの手、離しはしないもう二度と、かけて誓うよ、あなたを守る。
夢も未来も、あなたとここから。

通り雨が過ぎていった。あなたはいなくなっていた。僕は歩き出した。そうやってあなたは、まるで通り雨のように、僕の前に度々現れるては、消える。その時僕は、いつも思うんだ。
「はじめまして、お久しぶりです」ってね。

ある夏の朝日の照らす部屋でした、まどろむ僕と鳥のさえずり
2006/08/04(Fri)15:19:52 公開 / ライラック
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■作者からのメッセージ
はじめまして。普段は作詞をしている大学一回生男子です。
はじめて、小説らしきものに挑戦しました。
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