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『正悪記』 作者:文矢 / SF ファンタジー
全角6282文字
容量12564 bytes
原稿用紙約19枚
正義とは何だ、悪とは何だ。誰が正義だ、誰が悪だ。魔物を倒す魔物、これは正義か?魔物は悪だからこれは悪か?一人の青年の、復讐の物語――
 
序章

「何で……?」
 玄関に着いた時、すぐにそう呟いていた。
 足と手が同時にガタガタと震えていた。「今すぐ逃げろ」体はその命令を出していたが、足は動かない。体中を伝っていく汗。
 家の中に、二人の人が倒れていた。
 もう、人とは言えないその状況。顔もグチャグチャになっていてしかも遠めなのに、それが誰だか、はっきりと分かった。母さんと父さんだ。
 そして、その二人にかぶさるようにしている黒い男。そこから聞こえてくる何かを食べるかのような音。不快になるような、気持ち悪くなるような――
 そして、その男は何かを食べている途中でこちら側を向いた。その男の醜い形相よりも、俺が見たのは男の食べているものの正体の方が大きく見えた。
 母さんと父さんを、食べている。
「うわあああ!」
 嘘だ。嘘だ。嘘だ。そう信じたかった。夢であってほしかった。もう一度、頭の中で繰り返す。嘘だ。嘘だ。嘘だ。
 男は血のこびり付いた歯をこちらに向けながら近づいてくる。父さんか母さんの目玉が男の足元に転がっている。悲しみよりも吐き気の方が先に感じた。
 震えて動かなかった体が吐く瞬間だけ動いた。膝をつき、床へと向けながら嘔吐をする。
 しかし、そんな事も構わず、男は歩きよってくる。顔を上げた時にはもう目の前へと来ていた。
「あ……ああ」
 口から出てきたのはその小さな言葉だけであった。頭の中でも自分が何を言おうとするのかすら分からない。
 その時、男が俺の顔に手を付けた。生暖かい血が俺の顔に付く。
「合格だ」
 その男がその言葉を口にした途端、俺の頭の中を何かが走った。断片的な記憶達――
 父さんと母さんの笑顔。その真ん中で手をつないでいる俺。そして、男に殺された父さんと母さん。目が腫れ上がった男の醜い顔。
 体にも何かが走り、激痛が襲う。体の中が消え去っていき、何かへ変わっていく。そんな感覚。
「やめ……く」
 男は俺の顔に手を付けているだけ。そして俺の体の中でもまだ激痛が走る。
「やめて……く」
 体の中に何か力が湧き出てきたような気がする。感覚ではなく、本当に俺の体は「何か」へと変わったらしい。その力が俺を助ける。
「やめてくれ!」
精一杯の力を出し、俺は男の手を弾いた。急に痛みが無くなり、床に何かが転がる音がする。
「貴様……」
 その声を聞いた時にはもう、俺は全力で逃げていた。男が追いかけてくる気配は、無い。それでも、俺は止まらなかった。
 街の近くにある森の入り口を過ぎた時、やっと止まっていた。家の方を見ても、誰も追いかけては来ない。
 俺は落ち着き、手で額の汗を拭こうと……
「うわあああ!」
 俺の腕が、青い。手の部分も何やら硬く、爪は大きくなっている。そう、まるで怪物の手の様に。
 近くの水溜りで俺の顔を見た。そこには、俺の顔は無かった。ただ、存在したのは怪物の顔。怪物の体。怪物の姿。
「うわあああああああ!」
 俺は、もう人間ではなかった。



「助けて!」
 無我夢中で、私は狭い路地の中を走っていた。後ろから追い駆けてくるのはあいつ。あの水色の化け物。ゼリーみたいで、無表情で気持ちが悪いあの化け物。
 何処からか聞こえてくる悲鳴。悲鳴の大きさからして、街の中だ。また、誰か一人が私を追っている化け物と同じような化け物に襲われたんだ。街中に、この化け物は発生しているんだ。そう考えると、逃げていてもムダに思える。
 目から涙が流れてきた。私もすぐに追いつかれ、殺されるんじゃないか。怖い。怖い。怖い。怖い。誰か助けて――
 走っている内に、靴が片方すっぽぬけた。地面の冷たさが足を伝ってくる。そして石を踏んだ時の痛み。普通の状態ならほとんど何でもないことで済んだそれらの出来事がやけに不気味に、気持ち悪く思えてしまう。
 そんな時、目の前に最悪の光景が見えた。……行き止まり。
 近くに抜け道は見当たらない。途中で、その抜け道に入ればよかったといまさら後悔する。私の馬鹿。こういう時こそ落ち着くべきだっていうのに。
 行き止まりの壁の前で、私は振り返った。化け物は段々、私へと近づいてくる。後二分も経てば、私はこの化け物に、殺される。いや、食べられる。
 見れば見る程、不気味な化け物に見える。水色の体で、ゼリーみたいな形。そして、剣の様に尖っている腕と私を食べようとスタンバイしている口。嫌だよ。こんな化け物なんかに食べられて、私の人生が終わるなんて。
 まだ、彼氏も出来ていないのに。好きな人もまだ出来ていないのに。まだ、私は十八歳なのに。嫌だよ、嫌だ。私の頬を涙が伝っていく。
「ゲバリ……バギャギャ」
 化け物が何か言い始めた。嬉しそうな声の感じを見ると、私を食べることが出来ると感じたらしい。化け物は私の目の前にもう来ていた。とうとう、食べられる。壁の冷たさが私の運命を現しているような気もした。
 お父さん、お母さん、今までありがとう―― そう思うと、涙が大量に目から出てきた。化け物は剣の様な右手を振り上げている。後、どれ位で振り落としてくるのかな。
 化け物の気持ち悪い笑い声がまた聞こえると、化け物が手を振り落とす音を聞いた。その一瞬の間に、私が生まれてからの記憶が私の頭の中を走った。お母さんの優しい笑顔、お父さんの笑い声。友達との会話。凄い、長い時間に感じられた。幾つもの懐かしい記憶。忘れていたような事さえも思い出せた。
 さようなら。頭の中が、真っ白になる。
「ゲバア!」
 化け物の声だった。笑い声じゃない、苦しんでいるような声。そう、例えるなら人が出す悲鳴。いつの間にかつぶっていた目を開く。また聞こえてくる化け物の悲鳴。悲鳴まで気持ち悪い。
 化け物が切り裂かれている。丁度、私に腕を振り落とす直前に。
「誰……?」
 化け物の後ろに誰かがいるのが見える。化け物の体に突き刺さっているナイフを持っているのを見ると、この人が化け物を切り裂いたらしい。やった、私は助かったんだ。その実感がじわじわと私の心にしみてくる。やった。やった。
 化け物の後ろにいた人は、ナイフを引き抜き立ち上がった。コートを着ていて、帽子を被っている。髪の色は、珍しい黒色。真っ黒だった。
「スライムか……ここまで被害を出すのも珍しい」
 その人はそう呟く。スライム。多分、私を襲おうとしたこの化け物のことだ。化け物、いやスライムの死体は静かに私の方へ倒れていった。私は慌ててそれを避ける。死体になっても、この化け物は気持ちが悪い。
 そうしている内に、あの人はもう歩き出していた。汚れたコートの後姿がやけに頼もしそうに見えた。「頼もしい」なんて思ったことも無いのに。
「すいません! 私、アーヤ=デルス=スルダムって言います。あなたの名前は?」
 命の恩人の名前ぐらい知っておかなければ。そう思って、私は思わずそう叫んでいた。あの人はその言葉を聞くと、ゆっくりと私の方を向き、口を開く。
「神谷=将だ」



 怪物。
 24世紀前期、空想だったその生物が何故か実際の物となった。東洋の方から発生し、アジアの国全体に住みつくようになる。人はそれを絶滅させようと、あらゆる手を尽くしたが、怪物はなくならなかった。
 どうして怪物が現れたのか。人々はそれを考え、研究してきたが「東洋に原因がある」というところまでしか分からなかった。どんな人にも、それが何故か分からなかったのだ。
 そして、怪物発生から一世紀が経つと怪物は世界全体に出現する。怪物は、ライオンと同じように「恐ろしい食肉生物」と人々は感じるようになる。
 モンスターハンターの様な職業は出てきたが、怪物を滅ぼすと考えようとする者はいなくなっていた――


 カミヤ=ショウ。おかしな名前というのが第一印象。ミドルネームが無い名前なんて私は聞いたこと無い。それに、名前の言い方も何かおかしい。何なの、この人は。
 カミヤは路地を出ようと歩いていく。また、私みたいに襲われている人を助けにいくのかな。それとも、これで街から出て行くのかな。そんな疑問が沸いてきたけど、腰が抜けて立ち上がれない。
 あの化け物、いやスライムの死骸が目に入った。気持ちが悪い。溶けそうな感じもしないし、ずっとそのままみたい。少し触ってみると、やはりゼリーみたいな感じがする。
 それを少し不気味に思いながら、路地の壁を触って立ち上がっていく。冷たさが何故か私が生きているという事を実感させた。さっきは、あんなに怖がっていたのに。私っておかしい。
 路地を進んで行き、路地の他の道を曲がる。確か、ここのところを曲がれば、町長さんの家の前に出る。小学生の頃、スーザンと一緒にかくれんぼをして見つけたんだ。スーザン、大丈夫かなぁ……。
「臭い!」
 曲がって少し進んだ途端、変な臭いが流れてきた。何かが腐っていくような、異臭。嗅いだこともないような、悪臭。一度は止まった涙がもう一度でてきた。恐怖ではなく、臭さで。嫌だ、こんな臭い。
 歩くの止めようかな―― こんな事も思ったけどそれは思い留める。ここから出たら、次の抜け道までは結構ある。ここを進んどいた方がラクだ。
 その抜け道を歩けば歩くほど、異臭は強くなっていく。鼻をつまんでも、その臭いがしてくる。何なの、この臭い……?
 そして、やっと路地道から出た。でも、そこには私があると思っていた安堵感は無かった。最悪。
「キャアアア!」
 さっきから流れてきたあの臭いがそこら中に広がっている。
 私を襲ったスライムにやらている。たくさんの人が倒れていて、その人はズタズタに切り裂かれてる。スライムのあの刀の様な腕で、きっとこの人達は切り裂かれたんだ。悲鳴を上げながら、「誰か助けて」と思いながら。
 ゆっくり近づいていくと、全ての人の腹の部分にかじられたような感じの痕。見たくも無い、グロテスクな光景。その場に膝をついて私は嘔吐する。こんなのに、なりたくない。
 さっきから流れてきた臭いはきっと、この臭いだったんだ。日に当たって、腐り始めている。さらに嘔吐する。気持ちが悪い。
 お父さんは、お母さんは、スーザンは、友達は――? さっきまで結構、楽に思っていたことが急に不安に感じる。私がカミヤに助けられたように、他の人も助けられたんだと思っていた。でも、違う。この人たちの様に……
 咄嗟に立ち上がり、私は走り出した。
 速く、速く。急げ私。私の家へ。お父さんとお母さんのところへ。もっと、もっと速く行かなきゃ。周りの景色が一瞬にして過ぎていく。
 曲がり角を急いで曲がる。この先をずっと走ったら私の家だ。私が出かける前に聞いたら、一日中家にいるって言っていた。あの時のお父さんとお母さんの笑顔が頭の中に浮かんだ。
 この通りも、何人か倒れている。近所のおばさんの姿もあった。怖い。怖い。怖い。お父さん、お母さん!
「ゲバハ、ドルカ!」
 怪物の、悲鳴。
 あの時、カミヤがあのスライムを切り裂いた時に響いていた悲鳴。それなら、もしかしてカミヤが私の家に。カミヤが、あのスライムを倒している。そうだ、きっと。
 急に安心感が出てきた。そうだ、大丈夫だ。走るのを止め、ゆっくりと家へと近づいていく。扉は開いている。開いていても、不思議じゃない。大丈夫、大丈夫。
 家の中をこっそりと覗く。きっと、大丈夫だよね。
「よくも、よくもぉ!」
 え……?
「お父さん!」
 包丁を構えたお父さん。
 その目の前には一体のスライムが倒れていた。でも、まだ二体もスライムがいる。さっきの悲鳴は、あのスライムの悲鳴だ。そして、そして、お父さんの後ろには。後ろには。
 足がガクガクと震えている。嘘だ。嘘だ。カミヤがいるんじゃないの? どうして、どうして。嘘だ。嘘だ。嘘だ。
 お父さんの後ろにあったのは、お母さんだった。
 さっきまで見ていた死体の様に、切り裂かれて、その切り口が見えて。そして、そして、腹がかじられていて。お母さんは、死んでいて。嘘と信じることすらもできなかった。
「アーヤ!」
 お父さんがこっちを見る。駄目だよ。こっちを見ちゃ。
 お父さん、前―― そう叫びたかった。でも、体中が固まっているみたいで。口すらも開けなかった。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
「ゲバリ、バギャギャ!」
 二つのスライムの笑い声が重なり合い、私の頭の中で響いた。スライムがお父さんに飛び掛り、片方が父さんのナイフをはたき落とす。お父さんは急いでそっちを向いた。
 お父さんは、切り裂かれた。
 飛び掛ってきたスライムが腕を振りぬく。空気が揺れ、それと共にお父さんの首は静かに落ちた。死体を見てきたけど、首が落とされたのはお父さんが初めてだった。
 スライム。笑っている。お父さんの死体に近づいて、かじり始める。水風船が割れたかの様に、お父さんの血が飛び散った。部屋の壁にべっとりと付く。私はただ震えていて、何もすることができない。ただ、その光景をじっと見ていた。
 そして、呟く。
 嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。……真実だ。



 お父さんとお母さんがコロサレタ。
 受け入れたくなかった。そんな事。今日の朝に出て行く時は、あんなに元気で明るかったのに。どうして、どうして化け物に殺されなきゃいけないの? 嫌だよ。嫌だよ。そんなの。
 体の中の何かが熱くなっていった気がした。幼稚園の頃、違うクラスの男の子に馬鹿にされた時も同じ感覚だった。いや、それよりも激しいこの感覚。私は拳を握り締める。
 スライムの方を睨みつける。よくも、よくもお父さんを。お母さんを。
「うわああああ!」
 何故か、そう叫びながら、スライムへ突進する。お父さんを殺した片方のスライムを思いっきり、蹴飛ばした。スライムは壁に叩きつけられた。何だ、弱い。私は包丁を拾い上げる。お父さんが、スライムと戦った包丁。これで、お父さんは一匹スライムを倒したんだ。
 蹴飛ばした感触が足に残る。弾力があって、一瞬、弾き飛ばされるかと思った。何とか、踏ん張りをきかせて普通の状態に戻る。スライムは何とか立ち上がろうとしている。
 もう一匹。いるんだ。私はそう思い、倒す為に振り向いた。
 その時、スライムの片手が、猛スピードで振り落とされたのに気づいた。
 スライムの手についていた血が飛び散り、その血が私の目に直撃する。そして、スライムの手はその内に私を切り裂こうとしている。私が見てきた殺された人の様に。
 その一瞬が、何故かとてつもなく長く思えた。でも、体は動かない。動こうとしない。上から振り落とされる剣の様な腕。これで、このスライムは何人か殺したんだろうな。そして、私もこのスライムに殺され、食べられるんだ。
 路地の時と同じ様に、今までの記憶が一気に浮かんできた。生まれてから、今になるまで、ずっと。忘れていたような事まで思い出せる。たくさん、たくさん。
「嫌だ、死にたくないよ」
 そう呟いても、何の意味もなかった。分かってる。でも、これだけは言いたかったんだ。スライムの腕はもう、すぐそこまで来ていた。
 私の鮮血が、静かに空に舞う。記憶が途切れていった。
 バイバイ。

 アーヤ=デルス=スルダム。今、死んだ者の名である。
 果たして、この子は正義だろうか、悪だろうか。親にとって、この子が生き残るのと、戦って死ぬのどちらが良かったのであろうか。この子は正義? それとも悪?
 正義は誰だ。悪は誰だ。
2006/07/22(Sat)06:30:31 公開 / 文矢
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■作者からのメッセージ
自分が書きたいことが伝わるか、不安ですが書いて行こうと思います。これから、よろしくお願いします。
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