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『ヤセ馬ロバート』 作者:えびすかぼちゃ / ファンタジー 童話
全角3496.5文字
容量6993 bytes
原稿用紙約10.75枚
つらい環境にいるお馬さんが、新たな環境に向けて一歩を踏み出すお話です。4000字程度ですぐに読めると思います★よかったら読んでみてください★
馬のロバートはひどくやせていました。脚には重い、鉛の鎖をはめられています。

「やい、働け!」

飼い主のルドルフは姿をあらわすなり、いつものようにロバートをむちで打ちました。お酒の入った樽を何十も載せた荷馬車をひいて、ロバートは朝から晩まで働きます。けれどももらえるごはんときたら、ひとつかみの牧草だけ。ひどい日はそれすらもらえません。仕事が終わってぐったりとしたロバートを見たルドルフは言うのです。

「役立たずの醜い馬め。こんなろくでなしを雇ってやっている俺に感謝しろ。」

それだけではありません。ルドルフは機嫌が悪いと、理由もなくロバートを打ちます。

「かわいそうに、なんとかにげだせないのかい。」

道を行く親切な辻馬車の馬がロバートに声をかけます。でもロバートは言うのでした。

「にげ出すなんてとんでもない。この鉛のくさりはとてもはずせません。それに、私のようなろくでなしの醜い馬は、ここを出たらきっと雇ってくれる人などないでしょう。」

そうして話していると決まって、ルドルフがききつけて、すごいけんまくで辻馬車の馬たちを追い払います。

「かわいそうだが、あれでは近づけない。」



ある日の夜、ルドルフがひどく酔っ払って馬小屋にやってきました。また八つ当たりされるんだ、とロバートは覚悟を決めます。が、ルドルフが振り上げた手を見てロバートは震え上がりました。いつものむちではない、金棒です。

「殺される!」

ロバートは必死でもがきました。ルドルフの顔をひづめで蹴り上げました。それから鉛の鎖も力いっぱい引っぱりました。すると、鉛の鎖は雨でさびた部分から、いとも簡単にちぎれたのです。傷の痛(みにうずくまるルドルフを横目に、ロバートはちぎれた鎖をしげしげと眺めました。

「やってみれば、たやすいことだったんだ。」

けれどもぐずぐずしてはいられません。ロバートは大急ぎで、町にむかって走りました。



あたりがうっすらと白(しら)んできたころです。

「あら、ロバートじゃないの!」

声のするほうを見ると、それはあの、親切な辻馬車の馬でした。

「よくにげてきたね。さあ、お入り。」

辻馬車の馬は自分たちの食事をロバートに分け与えました。

「これから、どうするの」

「ここでもたもたしていては、追っ手が来て、またもとのもくあみ、それどころか前よりもっとひどい目にあわされるかもしれません。

私だけでなく、あなたたちも。」

「なら、西の市場に行きなさい。私の弟のフレッドを訪ねるといい。きっと力になれるわ。」



市場についたのはもう夕方で、人々は店じまいをはじめていました。辻馬車の馬の弟フレッドは駅馬車の会社に勤めていました。

「仕事ならたんとあるぜ。辻馬車、駅馬車、乗合(のりあい)馬車…。面接にいくといいよ。」

「私のような醜(みにく)い馬がお客をのせて走るなんてとんでもない。荷馬車で十分です。」

荷馬車の面接に行くと面接官が言いました。

「食事一日三回、週休二日。楽に暮らせるぜ。」

がはは、と笑う面接官の目を見て、ロバートの背筋(せすじ)が凍(こお)りつきました。ぎらっと光るその目が、ルドルフにそっくりだとロバートには思えたのです。

「うまいことを言って、私を飼いだしたらまたひどい目にあわせる気じゃないだろうか。」

ロバートは仕事を自分から断(ことわ)って、とぼとぼ、夜の市場を歩きました。



もうすっかり人も少なくなった市場で、ロバートは大きな荷車(にぐるま)を引く女の子に出会いました。この荷車は女の子には大きすぎて、しょっちゅうバランスが崩(くず)れては荷物がこぼれ落ちるので、女の子はなかなか前に進めないのでした。ロバートは思わず声をかけました。

「もし…よかったら私が運びましょうか。」

「ほんとですか。でも…すごく重いのよ。」

「だから、私が運ぶのです。これくらい、わけない。さあ、私にお乗りなさい。」

「私、スー。市場の西の村、トリヤで畑を営(いとな)んでいるの。あっちよ。」



スーの家に着くと、スーの半分くらいの身長の男の子が走りよってきました。

「おかえりなさい。わあ、お馬さん」

「母は弟が生まれてすぐ、亡くなったんです。父も去年疫病(えきびょう)で倒れて、今は弟と二人なの。」

スーが淡々(たんたん)と説明しました。ロバートはじっときいていましたが、隣人の声がするたににびくっと震え上がりました。

「まあ、なにもおびえることはないのよ。かわいそうに、よほどひどい目にあわされてきたのね。」

その夜、ロバートは人目を避け、民家を少し離(はな)れた裏山(うらやま)で眠りました。朝になると、スーの畑仕事を手伝いました。夜になると、また裏山に戻っていきました。スーはそんなロバートに何も言いません。ただやさしくたてがみをといてくれたり、からだを洗ってくれたり。そんなスーの気持ちにこたえたいと、ロバートはますます一生けんめいスーの仕事を手伝いました。



こうして秋になりました。スーとロバートはいつものように市場にでかけました。一生けんめい働いたかいあって、小麦はいつもの二倍採(と)れました。ロバートは市場でもできる限りの愛嬌(あいきょう)をふりまき、売れ行きにも一役(ひとやく)買っていたので、スーは両親を失って以来初めて、十分なお金を手にしていました。

「ああ、ありがとう、ロバート。あなたのおかげよ。これでやっと、うちの軒(のき)に大きな屋根を作ってあなたを雨から守ってあげられる。それから…一着だけ、一着だけ、私、自分のドレスを買っていいかしら。そんなもの、私に似合わないかしら。」

「似合いますとも。貴族(きぞく)のおじょうさんのように綺麗(きれい)になれますよ。」

ロバートはスーを乗せて、仕立て屋の並ぶ通りへ向かいました。



そのときです。

「やい、金をよこせ!」

四人の男たちが、ロバートとスーを囲みました。手にはナイフを握っています。

「よこさないと命はないぜ。」

体格のよい男たちににらまれて、スーは泣きながらお金を差し出そうとしました。ロバートの胸に、激(はげ)しい怒りがこみあげてきました。相手は四人、しかも武器ももっています。でも、ロバートはあの、ルドルフと闘(たたか)ったときのことを思い出していました。やってみれば、できるかもしれない。

「スー、しっかりつかまって!」

ロバートは思いっきり暴れだしました。



気がつくと、四人の盗賊(とうぞく)はすっかり気を失っていました。

「今のうちよ、警察(けいさつ)に知らせましょう。」



「なんてことだ、それは有名な盗賊、ハーシムの一行だよ。盗みのプロ中のプロ。君たちがお金を手にするのを市場で見て、つけてきたにちがいない。いや、よくやってくれた。」

なんと、ロバートは国王さえも悩ませていた盗賊たちを退治(たいじ)したのです。警察はハーシムたちを逮捕(たいほ)に走りました。そしてロバートとスーは王の宮殿(きゅうでん)に呼ばれました。



「きみは自分の大切な人を守るために危険をかえりみず戦える、勇敢な馬だ。ぜひ、王宮の馬として働いてもらいたい。」

王を前に、ロバートはもう、人間を恐れたりはしません。

「ありがとうございます。しかし、お願いがございます。スーと弟を私の世話係りに、王宮に呼んでもらえないでしょうか。」

「よかろう。」



ロバートの宮殿初仕事の日、ロバートは公爵こうしゃく夫人を乗せて、三頭立ての馬車を引くことになりました。

「公爵夫人を私のような醜い馬が…。」

ロバートが言いかけると、王は庭の池のほうにロバートをいざないました。王に導みちびかれるままに、池をのぞいたロバート驚きました。そこにはたくましく、ふさふさのたてがみをもった馬が映っていたのです。

「そなたは、ただやせすぎていたのだ。」

今ではロバートは王宮の馬として立派に働いています。そんなロバートの一番の楽しみは、ドレスを身にまとった世話係のスーを乗せて、朝の散歩にでかけることです。



宮殿へ帰るみちすがら、ロバートは一度だけ、あのルドルフを見かけたことがあります。相変わらず酔っ払って、貧乏で、いらいらしています。あの男を恐れていた日々を思い出すと、なんだかおかしくなってしまいました。このすばらしい三頭立ての馬車をひく馬があのやせ馬ロバートだなんて、ルドルフは気づきもしません。いつか仕返しを、と思っていたロバートの気持ちはすっかり消えてしまいました。、

「もう、過去のことだ。」

ロバートはきらびやかな宮殿にむかって、駈けていきました。


2006/07/07(Fri)01:27:50 公開 / えびすかぼちゃ
http://www.geocities.jp/melodies730 (
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環境を変えることを怖がっている友人に、応援のつもりで書きました。
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