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『くものはなし』 作者:黒猫 / ショート*2 未分類
全角2129文字
容量4258 bytes
原稿用紙約8.2枚
そう。オイラは雲。真っ白な雲さ!

 いつものように、オイラは空をふかふか泳いでた。
 青い空をのびのび泳ぐのは、すごく気持ちがいい。

 そう。オイラは雲。真っ白な雲さ!

 今日の空は青くてスッキリして、泳ぎやすい。
 一緒に泳がないか?

 ね、泳ごうって。
 なんだよ、ヤなのか?

 ……あっ、ニンゲンは空を泳げないんだっけ!
 シマッタシマッタ。アハハ、ごめんね。


 ……何だよ、怒ってるのか?ごめんってば。
 え?『雲は気楽でいいな』?

 なんだよ、それ!
 オイラだっていつも、ただ空を泳いでるだけじゃないぞ。

 『じゃあ何してるのか』って?

 ん〜聞きたい〜?聞きたい〜?
 どうしよっかな〜クフフフ〜ン。

 ……もうっ!怒んなって。
 話してあげるに決まってるだろ!
 ニンゲンはいつもカリカリしてるんだから。
 こーんな青くて綺麗な空なのに!


 ……分かった分かった。
 話せばいいんでしょ〜だ。

 じゃ、ケイタイデンワの電源を切って、そこに座って、座って! 



**



 その日の空は、白い空だった。

 オイラの仲間たちが、固まって空で昼寝してたからね。

 オイラは昼寝する気分じゃなかったから、みんなと離れて低めに泳いでたんだ。
 あんまり低く泳ぐと、木にひっかかっちゃうからね。

 そう!ずっと前ひっかかった時大変だったよ!
 葉っぱが体にからまっちゃってさ。
 とるのに二時間もかかっちゃって。

 ……あれ、話がそれたな。
 まあオイラは一人で泳いでた訳さ。


 そうしたら、どこからか赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたんだ。
 雲の赤ちゃんじゃない(雲の赤ちゃんは泣くと雨を降らせちゃうんだ)
 ニンゲンの赤ちゃんの泣き声だ。

 それも、全然泣き止まない……悲しそうにワアワア泣くんだ。

 あんまり悲しい泣き声だから、オイラ、ほおっておけなくなっちゃったんだ。

 だってそうだろ?
 大人は嬉しくても泣く場合があるけど、
 赤ちゃんが泣くのは悲しいからなんだから。


 オイラは、泣き声の方へふわふわ泳いでいった。
 どうやらその声は、赤い屋根の家から聞こえてくるようだ。


 ひゅうひゅうと、すぐにオイラはその家に向かって降りていった。

 降りれば降りるほど、その子の泣き声が大きくなってくる……


 その家の窓をそおっと覗くと、やっぱり赤ちゃんは泣き続けていた。
 赤ちゃん用の小さなベットは、なんだかその子を閉じ込めているようにも見えた。

 オイラは、少しだけあいた窓のすきまから、スルリとその部屋に入った。


 オイラを見ると、赤ちゃんは一瞬泣き止んだ。びっくりしたのかもしれない。
 そりゃあそうだ。
 わたあめみたいなオイラが浮かんでるんだもんな。

「大丈夫。怖くないよ」

 オイラはそう言って、ふわわと赤ちゃんに近寄っていった。
 怖かったのか、赤ちゃんはまた、ワアアと泣き出してしまった。

「大丈夫、大丈夫だから」

 優しく呼びかけて、その子の手をふわりとにぎった。

 初めての感触に、赤ちゃんは一瞬びくっとおびえた。
 その怖さをほぐすように、オイラはもう片方の小さな手も包んであげた。
 やっと安心する感触って分かったのか、その子はオイラをぎゅうってにぎったんだ。

 やっと、その子が泣き止んでくれた。

「ね、オイラの体、やわらかいでしょ」

 そう言って、オイラ、赤ちゃんの体全部を包み込んだ。
 雲の布団って、どんな布団よりも気持ちいいんだよ。

 初めての雲の布団に、赤ちゃんは気持ちよさそうに目をつむった。
 気にいったのか、オイラの体を何度も何度もにぎった。

「二度と雲布団なんて体験できないんだから、いっぱい触っときな」

 そう言ったら、赤ちゃんはキャッキャと笑うんだ。
 何てヤツだ!
 ……でも可愛いから許すけどね。


 しばらくオイラで遊んでいると思ったら、トロトロとその子、眠そうになってた。

「早く寝ちゃいなよ」

 オイラがそういうのと同時くらいに、スースーと寝息を立てていた。
 赤ちゃんって泣いたり笑ったり眠ったり、忙しいんだな……


 オイラの体をぎゅっと握ったまま寝ちゃったから、
 その部分のオイラの体をプレゼントする事にした。

 ふわりと体を切り離して(雲って体を切り離しても痛くないんだよ)
 その子に、小さな雲を持たせてあげた。


「さて、そろそろオイラ退散するか」

 可愛らしい寝顔にバイバイして、また窓のすきまをスウと抜けた。

「またね」

 窓の外から、もう一度呼びかける。
 赤ちゃんは幸せそうに眠っていた。

 フワリと空に向かって泳ぐと、さっきとは違う、平和で静かな空だった。
 仲間の雲たちも、みんなで固まって幸せそうに眠っていた。

 オイラは、ぐにっと猫のような伸びをひとつして、また、散歩に出かけた。

 木にひっかからないように、低空飛行。


「みんな、良い夢見なね」

 って笑顔で泳ぎながらね……



**



 って訳で、オイラも毎日頑張ってる訳。

 ……あれ、なんだか君、眠そうだね?
 せっかくこんな青空なんだから、昼寝しちゃいなよ!


 もし昼寝するんなら、ちょっとだけ窓をあけて昼寝してね。




 そしたらオイラ、君の布団になってあげるから!
2006/07/06(Thu)00:28:40 公開 / 黒猫
■この作品の著作権は黒猫さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。黒猫です。
ずっと前にもこの手の雲の話を書いたような気もしますが……
ま、いいでしょう(笑

時々、空を見上げてください。
雲を見つけたら手をふってあげてください。(とても喜びます。
あと、もし木にひっかかった雲がいたら助けてあげてください。

窓を開けて昼寝をしたら
布団のかわりに雲がいるかもしれません…

黒猫でした。
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