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『時間よ止まれ』 作者:ネヴァーマン / 未分類 未分類
全角4634文字
容量9268 bytes
原稿用紙約15.4枚
   つまらない。
実に詰らない毎日だ。と、彼は憂鬱そうな顔を浮かべいつものようにそう思っている。
 彼の名前は佐藤謙吾。十六歳の高校二年生。只今の時間は十二時十五分、丁度四限目の最中だ。
季節は夏に入りかけた頃。蒸し風呂状態の教室の窓側、一番後ろの席に腰掛けている。
謙吾は手に持っているだけで全く活躍しないシャーペンをくるくると回しながら、開いた窓から覗く青々とした木々を見つめている。
彼は運動ができるわけでもなければ、秀才というわけでもない。特技はと聞かれれば「どこでも寝れる事です」と答えてしまうような青年だ。
 そんな青年が唯一学校に来るための原動力となっている物がある。それは……
「じゃあ、ここ……松本。答えてみろ」
ふと、前に立っている教師に指された、謙吾の隣の席に座っていた可愛らしい女子が静かに立ち上がる。
彼女の名前は松本ひとみ。黒髪で目がぱっちりとしている、割とモテる部類の女生徒だ。
そう、彼女こそが謙吾が学校に来るための「原動力」なのである。
要するに、謙吾は今恋をしているわけだ。しかし彼の彼女との接点は、同じクラスの隣の席であるというだけで、彼女自身、謙吾を認知しているかも怪しい。一方的な片思いというのはまさにこの事だ。
ガタッと椅子を引く音で謙吾は外から自分の隣へ目を向けた。
もう問題を解き終わって丁度椅子に腰掛けるところだった。
そんな彼女を見る度、謙吾の心は意味なく揺れた。
こんな子が彼女だったらなぁとか、誰か彼氏はいるのかなぁとか、無駄に色んな考えをめぐらせるのだ。そして、これこそが恋の病だ! なんてくだらない事を毎回考えている。

キーンコーンカーンコーン……

 そんな事を考えていた時、チャイムが授業の終わりを告げた。
「きょーつけーれい」
現代の子供ならではのやる気のない、もはやどういう意味かもわかって言っていないのであろう号令とともに、クラスの全員が散った。
 もう昼休みか。
時の流れは速いなぁなんて事を一人心の中で呟くと、机の横にかかっている鞄から、登校途中に買ってきた惣菜パンの入ったビニールを机に広げた。
すると、呼んでもいないのに、決まった友達が一緒に昼飯を食べようと他クラスや色んな所からやってくる。
謙吾は友達だけは多いほうであった。
いつも昼飯時のこのクラスには、オタクっぽい女子と自分たちのグループしかいない。もちろん、大好きな松本さんはどこへやらである。
 くだらない話を繰り返す友達。正直全然楽しくなかった。
そんなこんなであっと言う間にランチタイムが終わる。すると、友達はそれぞれの場所に戻っていく。
そして五限目が始まった……
毎日が淡々としている。実につまらない毎日だ。
そう思いながら、またペンを回す。
よし、寝よう。
そうすれば「暇」を感じなくて済む。起きたら授業が終わってたらいいなーなんて思いつつ、前で講義をしている先生を尻目に、机に伏せて目を閉じてみた。
 そんな時、ふと「アラジン」という映画の内容を思い出した。
主人公が古びたランプを擦ると魔人が現れ、「願いを三つ叶えてあげましょう」といわれるのだが、もし三つ願いが叶うなら……と意味なく考えてみた。
(……もし願いが叶うなら……松本さんを彼女に……あ、他人の感情はいじれないんだったっけか……それなら……)
悩みに悩んだ結果、謙吾が導いた願い事は、
(……俺と松本さん以外の時間を止めてくれ!)
この程度であった。
もちろん、真面目にそんな事を思っているわけではない。
おそらく、誰もが考えた事があるだろう。
(顔を上げたら時間が止まってるぞー! よし! 今止まった!)
そう思って謙吾が顔を上げる。そしてその目はすぐに時計へ向けられた。
もちろん時計の針は動いている……
(……あ)
……いや、止まっていた。確かに時計の秒針が止まっている。
時計が壊れている、なんて事は思いもしなかった。
何故なら、全てが止まっているからだ。
前に立っている教員はこちらに背中を向けたままピクリとも動かないし、回りの生徒も同様だ。
辺りの風景も動いていないし、何より静か過ぎる。
まさかと思い、ほっぺたを抓ってみた。真実かどうかを確かめる方法で一番にこれが浮かんだ。
(痛い……現実だ……!!)
驚きと恐怖、どちらかわからないが体中の皮膚がザワッと鳥肌を立てた。
その後、三十秒程何もできなかった。立ち上がることすらできなかった。
「え……? 何これ……?」
その時、隣から震えた声が聞こえた。
まさか……
その時、恐怖などは一瞬で消え去った。嬉しささえ沸いて来るほどに。
「ね……何だこれ……みんな固まってね?」
初めて謙吾が松本さんに投げかけた言葉だ。
嬉し笑いをかみ殺しながら、わざと……というのも可笑しい話だが、びっくりしている風に喋り掛けた。
「あ! びっくりした! 佐藤君も動けるんだ! よかったぁ!」
その言葉に思わず笑みがこぼれてしまう。
まず自分の名前を覚えててくれた事に感激してしまった。
 言うと、彼女は身を謙吾の近くに寄せてきた。
それに少し動揺しつつ、会話を続けた。
「他に動ける人いないかな?」
そんな奴絶対いない。謙吾には変な自信があった。
今の状況を見る限り、自分の願った事が叶ったという非現実的な線で考えるしかない。だとすると、自分たち二人以外に動ける人なんかいるわけがないのだ。
「……ちょっと探してくる!」
そういうと謙吾は立ち上がる。すると
「だめ! ……今私を一人にしないで……めっちゃ怖い……」
彼女はそういうと謙吾の制服のズボンをキュッと握った。
謙吾はもう完全に浮かれモードだ。
ほんの数分前……といっても時間は進んでいないが、全く話もしなかった大好きな女の子が、今現在怖いと言って自分から離れようとしないでいる。
まるで漫画の世界だ。
「じゃぁ一緒に行こう」
謙吾は笑みを浮かべ、座ったままの彼女に手を差し伸べた。
「……うん」
彼女は手を取り立ち上がる。
その手は小刻みに震えていた。
そんな事にも気づかない程浮かれきっている謙吾は、もう絶対こいつは物にできる! なんてどこかのホストみたいな事を考えていた。
そしてその手を握ると、謙吾が引っ張るような形で、廊下に向かって歩く。
 それにしても周りの生徒は見事に固まっていた。
凄いリアルな人形、と言われればきっと誰もが信じてしまうだろう。
今にも動き出しそうだ。
そんな事を考えるとぎょっとした。
きっと、今自分の手の先にいる彼女も同じこと考えているのだろう。
そんな事を思いつつ、自分の教室を後にした。
 そして数分後……
「だめだ。どのクラスのやつらもみんな止まってんな……」
謙吾が途方に暮れた感じで言った。
何が吹っ切れたのか、もうすっかり話慣れている様子だ。
「そうみたいだね……これからどうする?」
「そうだな……とりあえず、ここは気味悪ぃから、とりあえず外に出て他に動ける奴いないか探してみよう」
彼女が頷くのを見ると謙吾とひとみは階段へ歩みを進めた。
松本ひとみは不安を。
佐藤謙吾は期待に胸を躍らせながら。
 

 外に出ると、すぐ校庭が広がっている。
そこには全く予想範疇の光景があった。
校庭で体育の授業をしてる生徒がサッカーの最中で止まっているのだ。
ボールが宙に浮いたままそこで静止している。
謙吾はあはっと思わず笑いをこぼし、その宙で止まったままのボールへ駆けていく。
「おぉっとごめんよっとぉ……」
まだボールをゴールへ入れようと必死な顔で試合に望み続けている生徒達をかわしながら、ボールが浮いている所へ向かった。
「ははっ! 見てみこれ! 宙に浮いてるよ〜」
馬鹿にしたような笑いを見せながら浮いたままのボールを手にとって、ひとみに見せようと振り返る。
「ほら! 手に取れ……」
しかし、その先にはひとみはいなかった。
あれっと思い、謙吾は視線を校門の方へ向けるとそこに向かって歩いているひとみの姿があった。
「お、おい〜! シカトかよ〜」
「何してんの! そんな事してないで早く他に動ける人探そうよ!」
「……ちぇっ」
謙吾は少しむくれてボールを後ろに放ると、少し駆け足でひとみを追いかけた。
 二人は校門を出ると、その道沿いの家々のインターホンを押して回った。
しかし、案の定出てきてくれる人はいなかった。
外に出て見える人はもちろん固まっている。
公園で学校をサボっている不良学生、買い物帰りで自転車をこぐおばちゃん、誰もが固まっていた。
……それからもう一時間が経っただろうか。
「……なぁ、もういないんじゃないか?」
謙吾が諦めたような口調でひとみに話しかけた。
「……」
するとひとみはそれに答えず立ち止まった。
謙吾もそれを見て立ち止まった。
「どうしよう……これから。一人でどこへ行こう……お母さん……」
ひとみは涙ぐみながら、うつむいたまま小さく呟く。
「……あ! お母さんは!? 私の家族は……」
今思えば、動いている人を探すのに夢中でお互いの自宅はまだ調べていなかった。
言うと、ひとみは自宅の方向へ走り出そうとする。
しかし、謙吾は走り出したひとみの腕をガシッと掴んだ。
なぜだろう、とっさに止めてしまった。
「……無駄だって……残念だけど、わかるっしょ? また辛くなるだけだよ」
こんな言葉が口から勝手に出た。
……嘘だ。
そんな事微塵も思ってない。自分でもわからないが、多分面倒なのだろう。
もう謙吾はどうでもいいのだ。今、この現状があってくれるというだけで嬉しいのだから。
むしろ謙吾はこの状況に感謝している、望んでいるのだ。
「……うっく……どうしよう!!」
ひとみも無駄だという事はわかっていたのだろう。
しかし、認めたくなかったのだ。
ひとみは泣きながら、自分の腕を掴んでいる謙吾の腕にすがって泣いた。
謙吾はフッと笑いを軽くこぼしそうになって、それをこらえた。
そして、ひとみの肩をポンと叩き
「うち……くるか?」
言ってしまった……そんな感じだった。
謙吾は言ってから恥ずかしさに気づき、そしてすぐに不安が襲ってくる。
断られたらどうしよう?いや、まさか。今の彼女は断るはずがない。……はずだ。
「え……」
彼女が涙目で自分の顔を見上げた。
え? 「え……」って何だ? 引いたか?まずい、フォローしないと……
「いや! 嫌なら別に……」
「いいの……?」
謙吾の言葉を打ち消すような形でひとみが割って入ってきた。
その言葉が何という意味を成しているのか、YESという意味かNOという意味なのか、一瞬わからなかったが、すぐに嬉しさが込み上げてきた。
「……え? うん……いい……いいよ……?」
声が震えてしまった。
「あ! やっぱり迷惑だよね! 私家帰るよ!」
「いや! いやいや!!! 迷惑なんかじゃないよ!」
一度あやふやな返事をしてしまった自分を悔やみ、すぐに否定した。
「ほんと……? やっぱり一人じゃ不安だし……じゃぁお邪魔させてもらおうかな」
信じられない。
謙吾は信じられなかった。
その瞬間、今まで片思いをし続けてきた、松本ひとみを見つめるだけだった過去の自分が走馬灯のように蘇った。

全てはこの日に繋がってたんだ!

 謙吾は嬉しさでいっぱいだった。
周りで固まっている人なんか目にも入らない。
謙吾はそのままひとみの腕を引いて自宅へ歩みを進めた。
 空は変わらず太陽だけが照りつける昼時。音一つないままだ。
2006/06/29(Thu)21:54:06 公開 / ネヴァーマン
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■作者からのメッセージ
初投稿です。
文章の表現力や、文法、いろいろな点で赤ん坊レベルだと思います。
感想を貰えるほどの物かわかりませんが、がんばって書いてみました。読んでいただければ光栄です。
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