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『猫』 作者:色灯二位式 / ショート*2 リアル・現代
全角1004文字
容量2008 bytes
原稿用紙約3.05枚
ものすごく短いショートショートの中にシュールな世界を盛り込んだ作品です。肩の力を抜いて、読んでください。
僕は猫が好きだ。何故かって?それは…


ある日、僕の家の近くのゴミ捨て場に、ちょっと目を引くものがあった。何だと思う?猫さ。段ボールに入ってて、ミャーミャーとかわいい泣き声で、次々と前を通る人達に、声をかけていた。だけど、みんながみんな、そいつを無視するんだ。可哀想だと思わないかい?確かに、こんなのに同情して、拾ったりしたら、餌代やら躾代やらで大変な目に合うのは判っているが。…う〜ん。どう言ったもんかな。まぁせめて、撫でたりとかはしてやろうよ。うん。そうだな。まぁとりあえず、猫がいたんだ。子猫だ。しかも1匹。僕は10分位、そいつを見てた。するとどこから来たか小僧の群れが、子猫を囲み、唾をかけたりしていじめ始めた。僕は家から飛び出した。そしていざ、声を掛けようとしたその時、一人の男の子が脇に飛びのいた。手首を押さえて、顔を歪めている。どうやら子猫が引っ掻いたらしい。それを合図に、男の子たちの猛攻が始まった。最初のうちは、猫の悲鳴が聞こえていたが、やがて、声はしなくなった。男の子たちも、はぁはぁと息を切らして、やがて男の子たちは、ちりちりばらばらになって逃げ出した。僕は今のうちに段ボールの中を見てみた。
家に帰って、僕はご飯を食べ、早めに寝た。おそらく、今日は今までで一番恐ろしい日だっただろう…

次の日、雨が降った。僕は子猫を思い出し、それからまた寝た。

次の次の日、雨は止んだ。子猫のいたところへ行くと、すでにそこには段ボールはなかった。僕はしょんぼりし、しばらくその辺りをうろついた。すると、1匹の猫に出会った。向こうは明らかにこっちを警戒している。そりゃそうだ。なんせ相手が僕なんだから。でも僕は心が優しいから、その猫に話しかけてみた。
「こんにちは」
…返事はない。
「今日はいい天気ですね」
すると、相手は答えた。
「あんただろう?この前、幼い猫を段ボールの中で殺したのは…」
僕は激しく首を横に振る。
「違います。僕じゃない…」
「嘘つき!犬の言うことなんて全部嘘っぱちさ!ちゃんと見てたんだよ!あんたがあの子猫を食べたとこを…」
「う…だって、可哀想だったから…」
「何が可哀想よ!馬鹿!ろくでなし!死んじゃえ!」
…いくら心の優しい僕でも、これにはカチンと来た。僕は次の瞬間、人間も驚くような速さで、相手を捕らえた…


僕は猫が好きだ。何故かって?それはあの時食べた肉が、僕の心を打ったからさ…
2006/06/30(Fri)15:26:40 公開 / 色灯二位式
■この作品の著作権は色灯二位式さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
短いけど、がんばりました。
この世界観が認められたらいいなと思っています。
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