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『漆黒の語り部のおはなし・8【前編】』 作者:夜天深月 / 未分類 未分類
全角6061文字
容量12122 bytes
原稿用紙約17.55枚
どのくらいの距離を空けて見ればいいか解らない。そう思ったことは皆様はありませんでしたか?
 御機嫌よう。またお会いしましたね。先に言っておきますが、今質問をするのはダメですよ。前にちゃんと約束をしましたからね。特に、そこの貴女。貴女は、前回いきなり質問をしてきましたからね。その上、隙あらば直ぐに質問をしようなんて考えていたのでしょう? はははは、どうやら図星だったみたいですね。まったく、本当に油断もすきもありませんねぇ。
 さて、いきなりですけど皆様に一つ質問をさせて頂きま―――え? ははあ、私が質問をするなら、貴方達にも質問をさせろということですか……。しかし、貴女凄い執念ですねぇ。さっきも、隙あらば質問をしようとしていたし、今度は私に要求を突き付けてくるとは……。まあ、今回は質問するのは無しにしますか。そうすれば、貴女は質問が出来ないでしょう?
 そろそろ今回の世の中について少しお話ししましょうか。
 今回の世の中は、似て非なる間違いをした二人が会った世の中、と言いましょうか。
 そして、今回の世の中のキーワードとなるのは『距離』。ただの距離と思ってはいけませんよ。今回のキーワードとなる見方は、自分と相手の心の間にある距離。おや? お決まりのように、浮かばない表情をしてらっしゃる方々が大半ですね……。いいでしょう、説明をしましょうか
 まず、対象の間にある距離で見えてくる物が違うということを教えましょう。例えば対象の間にある距離が長ければ、その対象の全体を見ることが出来ます。ですが、細部は見ることは出来ない。そして、対象の間にある距離が短ければ、その対象の細部を見ることが出来る。ですが、全体を見ることは出来ない。
 つまり、これは自分と相手の心の間にある距離についても同じです。自分と相手の心の間にある距離が長ければ、その人の心の全体を見ることが出来る。ですが、細部は見ることは出来ない。そして、対象の間にある距離が短ければ、その対象の細部を見ることが出来る。ですが、全体を見ることは出来ない。
 そして、似て非なる間違いをした二人がした間違いとは―――自分と相手の心の間にある距離に確執したことです。
 さて、そろそろおはなしを始めましょう。
 おはなしの始まり、始まりぃ。

第八の世の中『立ち間違い』

 二月下旬だというのに、寒さは全く感じられない小春日和の土曜だった。空は澄み渡り青色がどこまでも広がっている。雲一つ無い見事な晴天だ。
 こんな温かな日には、公園で微笑ましく遊ぶ親子連れが似合うのだろう。
 そんなことを彼女―――川奈 綾乃は川沿いある土手に仰向けになりながら思った。
―――なんでここに来たんだっけ?
 綾乃はふと思う。
 だが、解っていた。此処に来た理由ぐらい解っていた。迷った時以外この土手でぼんやりとしないことぐらい解っていた。そして今自分が、川のせせらぐ音をぼんやりと聴覚で感じ、遙か上に存在する青をぼんやりと視覚を通して感じ、自分を囲む深緑の草花が手や頬をくすぐることもぼんやりと触覚で感じていることがどういうことなのか解っている。自分がふと思ったことが現実逃避だと言うことぐらい十分解っていた。
―――俺が何をやろうと俺の勝手だろ!
 つい二時間前に弟から言われた言葉が頭の中で再生してみる。
―――俺が何をやろうと俺の勝手だろ!
 もう一度再生。
―――俺が何をやろうと俺の勝手だろ!
 再生。
 溜息しか出てこなかった。深い溜息しか、綾乃の口からは吐き出されなかった。
 どうしようか? いっそのこと、忘れてしまおうか? そう考えてから、綾乃は苦笑する。二五にもなって現実から逃げるなんて情けない。
 暖かなそよ風が吹く。自分の周りにある草花が揺れ、頬をくすぐる。そして、そよ風で草花同士が触れあいさわさわという心地よい音が川沿い一帯を満たす。
 それを綾乃は聴覚でぼんやりと感じていたが、急に眠気に似た心地よさを覚えてなんとなしに腕を伸ばしてみる。右手の甲が、草花ではない硬い何かに触れた。直ぐに右手を引っ込める。誰も此処にはいなかったのに。驚きで眼を見開きながら、そう思う。
 石だったのかも知れない、と思いながら上半身を起こして綾乃はその『硬い何か』を確認する。『硬い何か』は白いスニーカーだった。だがその白いスニーカーは捨てられた物ではなく、誰かにキチンと履かれていた。真新しく、清潔感も感じられる。
 その『誰か』を確かめようと肩までかかる黒髪を掻き上げて、スッと見上げたところに歳は十二、三ぐらいの綾乃を不思議そうな目で見下げている少年が立っていた。
「こんにちは」
 軽く頭を下げて少年は挨拶をした。綾乃も「こんにちは」と軽く頭を下げた。
「隣、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
 少年の問いかけに、綾乃は自分の右横に手を差し出して承諾する。承諾するや否や、少年は落ち着いた様子でスッと綾乃の右横に腰掛けて空を仰いだ。
 それを確認すると、綾乃は少年をチラチラと見ながら観察し始める。少年を一言で例えるなら「白い人」だった。白いワイシャツに白いズボン。黒と白のボーダーの服に黒いジーパンという黒を基調にした綾乃の服装に対抗しているかのようだった。さすがに髪の毛は白ではなく黒だったが。目鼻は整っていて、美少年といっても過言ではない。身長は綾乃と同じぐらいなので、一六〇p前後なのだろう。
 チラチラと自分を見てくる綾乃に、少年は気付いたのかニッコリと綾乃に微笑む。綾乃は慌てて、少年から視線を外す。だが、少年はそんなこと構わず
「ここにはよく来るんですか?」
 何気ない口調で話しかけてきた。まるで、当たり前のように。
「……ううん。四歳頃からここは知ってたけど、ここに来るのはこれで十五、六回ぐらい」
 綾乃は初対面のくせに話しかけてきた少年に面食らったが、少しくだけた口調で答えた。見知らぬ人とはいえ、所詮子供だ。何も不安になることなど無いはずだ。
「へー……。僕は最近この場所を知りましたけど、僕もあまり来ませんね」
 少年はそう言って、空を仰いだ。南中に差し掛かろうとする陽射しが眼を射たのか、目を細める。そして、さも自然な動作のようにそのまま仰向けに寝転がる。突拍子な行動に綾乃は目を丸くさせるが、少年はぼんやりと空を仰ぐばかりだった。
 綾乃はそんな少年を見ていたが、自分もフッと空を仰ぐ。今さっきと変わりない青が広がっていた。雲一つ無い、まっさら青が広がっている。
「僕ね、迷った時にここに来る習慣―――って言うのかな? とにかく迷った時にここに来るですよ。例えば、大事な分岐点に迫られたりした時とか」
 少年が空を仰いで二、三分といったところだろうか。唐突に話を切り出した。
 綾乃は、少年と同じく自分もその落ち込んだ時にここに来るという習慣のようなものがあることに驚いた。偶然だろうか? そう、偶然なのだろう。綾乃は自分に言い聞かせた。
「へー、そうなの。私も君と同じで、迷った時にここに来るよ」
 ぼんやりと空を仰ぎながら喋ったからか、声もまたぼんやりとしたものになっていた。嗚呼、初対面の人の前なのに何という声を自分は出してるんだ……。そんな風に綾乃が思ってる中、少年の溜息に似た吐息の音が聞こえた。
「……ということは、その迷う原因の何か嫌なことでもでもあったんですか?」
「…………」
「まあ、僕もそうなんですけどね」
 綾乃の無言を聞いて、青年は思わず苦笑する。そして、話を続けた。
「僕、孤児院が家なんです。捨て子だったみたいで物心ついた時から施設にいました。汚いもの結構見てきましたよ。十歳ぐらいの子は学校で親がいないことを馬鹿にされたのか、年少者を虐げて鬱憤を晴らすところを何度も見ましたよ。そして、孤児院の外も汚い物ばかりだった」
 独白は続く。静かに、ゆっくりと。
 綾乃は大声で嘲笑ってやりたかった。どうせ、本か何かでそんな台詞を覚えたんでしょ? こう嘲笑ってやりたかった。でも、少年の哀愁に満ちた眼を見たらそうすることが出来なかった。
「そんな風に育ってきたからか、なんか見る物全部汚く見えるんです。でも―――」
「でも?」
 綾乃は促す。すると、少年は驚きの感情が含まれた眼で一瞬綾乃を見つめるが続けた。
「でも、綺麗な物見つけたんです。凄く綺麗な物。純潔で、汚れのない綺麗な物。ですけど、今まで見る物全部汚く見えてましたから、それは黒の中にある一粒の白という感じにしか見えないんです。そして、今まで通り汚い世界を見続けるか、その世界の一部である綺麗な物を見るか……。それを迷っていたんです」
「君、その歳でよくそんなこと考えられるね」
 直ぐ脳に浮かんだ、素直な一言だった。言ってから、頭に浮かんだ言葉を迷わず言うなんて子供みたいだ、と綾乃は思う。
 少年はさも面白そうに微笑んでから、口を開いた。
「汚い物を嫌なほど見てきたんです。これぐらい当たり前ですよ」
 そう、と綾乃は納得する。そして、自分もこの子と同じような境遇にいたんだよな、としみじみ思う。ま、たった四年前の話なのだが。遠い昔のことではない。
 ザッ、と草が触れあう音がした。少年の方からだ。見ると少年は立ち上がっていて、パンパンとズボンをはたいていた。視線に気付いたのか少年は綾乃に視線を向ける。
「それでは、僕はこれで」
「え……?」
 その一言しか出なかった。そして綾乃は、咄嗟に少年の手首を気付けば掴んでいだ。当たり前のように、少年は目を丸くさせた。
「……なんですか?」
「ちょっと、待ってよ。君の話聞いてあげたんだから、私の話も聞いて欲しいんだけど」
 落ち着き払って訊ねる少年。表面は穏やかだが、内面は必死に縋る女性。眼を狩人のようにギラつかせ、しっかりと手首を掴んでいるのが必死な証拠だ。
 このような構図だと私はかなり惨めなのだろうな、と綾乃は自嘲的に思う。でも、そんなことどうでもいい。聞いて欲しい。共感して欲しい。吐き出させて。一時でいいから
「いやです」
 少年はきっぱりと言う。そして、少年の眼には、人を突き放すような冷たさがあった。
「なんで? 聞いてあげたんだから、自分も聞くのが筋でしょうよ?」
 綾乃は子供のような戯けた口調で言った。だが、戯けた口調の割に口元は笑っているのに眼は笑ってなかった。
「そんなの知りません。とにかくこれで」
「ちょっと……!」
 綾乃は手を振り払おうとする少年を見て、手首を掴んだ手にさらに力を入れる。さっきまで気付かなかったが、少年の手首は華奢で女性のようだった。子供とはいえ、些か細い。
 すると、少年は諦めたような溜息を吐いて綾乃を見つめる。
「僕が何をしようと勝手でしょう?」
 穏やかでな口調で、静かに発せられた言葉だった。怒気も含まれていない声だった。
 なのに、その言葉は綾乃の此処に鈍い衝撃を与えて重くのし掛かった。無機質な鉄塊の重みなどではない。意志を持ったかのような生きた重みだ。ゆっくり、ゆっくりと重みが増しに胸の奥が圧迫されていった。その重さが増すごとに、反比例するように少年の手首を掴んだ手の力はゆっくりと抜けていった。
 少年は綾乃の手を簡単に振り払うと、ザッザッと草を踏み歩いていった。
 綾乃は、呆然と立ち尽くしていた。だが、暫くすると綾乃の口からは微かに震えた声が発せられた。
「……どう、して、よ……? どう、して? どうして、私の言うことが聞けないの?」
 答えは返ってこない。まだ少年は、綾乃の口から発せられた声を聞こえる距離にいるだろう。でも、答えは返ってこない。どれだけ待っても、返ってこない。
「どうして、私の言うことが聞けないの!」
 振り向きながら叫ぶ。振り向いた先にいるであろう、少年に向かって叫ぶ。
 振り向いた先には、そよ風で揺れる草しかなかった。


 十畳のリビング。食卓テーブルがキッチンの手前にあって、その食卓テーブルの手前にソファがあるという普通なリビング。そんな普通なリビングなのに、そこに入るのに綾乃は億劫だった。ただ、そこにいるであろう弟―――川奈 浩二に会いたくなかっただけだ。
 綾乃は軽く息を吸い込んで、ドアノブを倒して扉を押す。視界の左端で、キッチンで昼食を用意している浩二を捉える。手慣れた手付きで、昨日残った生姜焼きを電子レンジにかけているところだった。そして、綾乃に気付いたらしく顔を上げる。実年齢の十八歳よりもやや幼く見える顔立ちだ。
「姉貴、おかえりー。昼食は昨日の生姜焼きでいいよな?」
「……うん、それでいいわ」
 綾乃は少し面食らってから答える。きっと浩二の様子は冷たい感じなのだろうな、と思っていたが、実際はいつもと同じ温和な様子だ。今朝の出来事をまるでなかったかのように振る舞っている。
 綾乃は少し呆けてから、自分も昼食の支度を、と思いキッチンに向かった。キッチンの手前―――食卓テーブルの直ぐ後ろにある食器棚から紺色の茶碗と黒色の茶碗を出して、電子レンジの左横にある炊飯器を開ける。
 ギリギリ大丈夫かな? そう思いつつ炊飯器の横に置かれているしゃもじを手に取る。
 と、その時ふと綾乃は少年のことを思い出す。急に消えてしまった白い少年だ。絶対にあれは歩いて去っていったのではない。消えてしまったんだ。
「ねえ、浩二。あんた、幽霊とかって信じる?」
「は?」
「……ごめん。忘れて」
 そう言って綾乃は、紺色の茶碗に白米を盛り付ける。その様子を浩二は見てたが、ふと
「姉貴」
 口を開く。何処か真剣味を帯びた声に違和感を抱きつつも、綾乃は言葉を返す。
「なに? あ、ご飯は少なめだから。我慢してね」
「俺、諦めてないから」
 電子レンジの稼動音だけが響く。そんな状況が何秒続いたのだろう? そんな状況が破られたのは、電子レンジの稼動音だけが響く状況が始まって何秒ぐらいだったろうか?
「ふざけ―――」
「俺が何をやろうと俺の勝手だろ」
 電子レンジの、ピーピーという稼動終了音が響く。


 さて、今回はこんなところです。おっと、皆様何か言いたいようですが何が言いたいかは察しがついてますのでお静かに。今説明します。えー、実は今回のおはなしは前後編と別れてるんです。という訳で今回はこれでおしまい。結末は今度お話しします。楽しみにしていて下さい。
 え? ……前後編に別れているということが予想出来ていたのなら、何故ザワザワと喋りあっていたのですか? ……ああ、なるほど。質問ですか。そのことについては、最初話したとおり質問は無しです。まあ、皆様そう気を落とさずに。次、このおはなしの続きを話す時に質問をさせてあげますよ。まあ、答えれる範囲内でしか答えることは出来ませんですけどね。そのかわり、いつもより少しだけ多く質問させてあげますよ。ですが、本当に少しというのをお忘れ無いように。期待しすぎて落胆しても知りませんよ?
 それでは、さようなら。また会いましょう。
2006/04/23(Sun)21:49:47 公開 / 夜天深月
■この作品の著作権は夜天深月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
フ、フフフフ、アハ、アハハハハハ、アーッハハハハハハ! ……やってしまった。ついに前編後編に分けてしまうと言うことをやってしまった。ヤベェ、やってはならない最大の禁忌を犯したのかもしれない。コロッケに醤油を掛けてしまうというような最大の禁忌犯したのかもしれない。嗚呼、ヤベェ。本気で足震えてきた。
というわけで、漆黒の語り部のおはなし・8【前編】を投稿させて頂きました。ちなみに、上記の最大の禁忌云々が書かれている物はスルーして下さると嬉しいです。それはもう、バク転宙返りを連続してしまうほど嬉しいです。
さて、本当に意味の解らない文はこれで終わりにして本題へ行きましょう。今回は題にもあったとおり前編です。その為、何が何だか解らない。感情移入が出来ない。こういった問題があると思われます。ですが、どんなに辛口でも感想がもらえること自体嬉しいことですので、そう言った前編云々だということを全く気にせずドンドン辛口に批評して下さっても構いません。批評、感想、アドバイスは随時お待ちしております。
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