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『夜光--ヤコウ--(前編)』 作者:陸 / 異世界 ホラー
全角1388文字
容量2776 bytes
原稿用紙約4.85枚
----夜の世界は終わりが無く、ただ闇だけが広がる世界。そしてこの孤独な世界には、今日も独りの少女が空を見上げて寂しくたたずんでいる-----
 「光は一体何処にあるの?」

それはいつも少女が思っていること。

この[++夜の世界++]は、現実の世界から逃げてきた、孤独な者達が集まる場所。

朝も昼も無くただ漆黒の闇と青白い月だけが空に広がり、周りには廃虚が至る所に散らばっている。

「こんなに暗い世界だなんて知らなかった…」

そう寂しげに嘆く少女の瞳にも光は無かった。

「コウ、今更そんなこと言っても遅いよ。あんたも、現実が嫌になってここまで逃げて来たんだろ」

『コウ』と呼ばれたその少女は、声をかけてきた相手も見ず、空だけを見上げたまま口を開いた。

「レイ。だって、私が行きたかったのはこんな場所じゃない。確かに私は現実が嫌になって此処に来た。

あそこは苦しくて、辛くて、クダラナイことだらけの世界だったから…。けど、、、」

「この世界の方が、もっと辛くて退屈な世界だった、でしょ?」

コウの隣に立っている女性、レイが先に言った。

(コクン)とコウは頷く。

「(そうか。この子……、コウにもそんな思いが出てきたか)」

レイは光のない空を見渡しながら、何かを考えていた。

そして、空から目を放し、立ち尽くすコウへ視線を向けて問い掛けた。

「じゃあ、現実の世界に戻りたいのかい?」

「そりゃ、もう一回やり直すことができるんだったら‥」

コウもやっと空から目を放し、レイを見つめて言った。

「新しい自分となって、まったく別の人生を送れるのなら…」

コウがそう言いかけた時、レイが囁いた。

「戻してあげようか?」

「えっ……」

と、言って振り返ったコウの瞳には、真っ白な長い着物に身を包んだレイが映っていた。

「私は[++夜の世界++]の長(おさ)、『レイ』だ。今まで長いこと此の世界を見ていたが、どいつも

完然に希望を失い光を求めない者ばかりだった。まあ、此処がそういう者達を受け入れる世界だから仕方

ないんだけどね。」

そう語るレイを、コウはただただ見ていることしか出来なかった。

「そんな中、独り変わった少女が居た。現実が嫌になって逃げて来たのにも関わらず、いつも光を探し続

けていた。それがあんた、、、」

漠然としているコウを見据えて言い放った。

「コウだよ」

「わ、私…?」

コウも驚きを露にしながら問いかけた。

「私はあんたが気になったんだよ。暗闇の中を、それもまぁ毎日毎日飽きることなく光を探し廻っていた

あんたをねぇ。だからしばらく様子を見ていたんだよ。」

「それで‥‥?」

レイは答えた。

「でも、ようやく答えが出たみたいだ… ホラ、あっちを見てみなコウ。」

レイが指差した先には、コウが久しぶりに見た、白い光の穴が口を開けていた。

「ひ、光だ……」

コウはその光の穴へとゆっくり歩み寄っていった。

「あんたが本当に現実へと戻りたいのなら、その穴へ飛び込むんだね。」

レイがコウに言う。

「(なんだかよく分からないけど、とにかくこの穴に飛び込めば現実でやりなおせる…けど、また同じ運

命を辿ってしまったら…)」

心の中でそんな問答をくり返しているコウを後押しするように、

「どうするんだい?」

とレイが声をかけた。

そしてコウは決心したように言った。

「私、現実に戻りたい」

「じゃあ、私とはここでお別れだね。さぁ、その穴に早く飛び込みな」

コウは黙って頷く。そして…

(バッ!!)コウの姿は白い穴へと消えた。




2006/01/29(Sun)19:34:27 公開 /
■この作品の著作権は陸さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どうもこんにちは、陸です。
小説初投稿でかなり下手ですが、読んで下さった方に感謝ですWW
これからもがんばって書いていくつもりなので、どうぞよろしくお願いします。
(ちなみに、「」=セリフ 『』=人物名 []=場所、世界等の名前
()=効果音や心の声  となっています)
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