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『ソルジャー』 作者:愛 / ファンタジー 未分類
全角8733.5文字
容量17467 bytes
原稿用紙約27.5枚
ごく普通の女子中学生・如月哉真都と美男子・メイ。哉真都はメイと出会うことにより、人生が変わる。キーパーとドール…契約で結ばれたソルジャー達によるドームバトルが、今はじまる。
第一話 出会い

 人生は突然変わる。
 特に道を間違ったわけでもなく、人としての人生を踏み外したわけでもない。
 音も無く近寄る出会いが…人生を変える。

 思わず顔をしかめてしまいそうな眩しい夏の光が、朝から差し込んでくる。
 だけど、それと共に耳に入る鳥の声や道路を走る車の音を聞けば、不思議と心が温まる。
 如月哉真都、15歳。
 腰まで伸びた真っ黒い髪、白い肌、大きい瞳、整った顔。なんとも可愛らしい中学三年生だ。
 ググッと背伸びをして、大きく口を開けあくびをした。きれいな白い歯には少しとがった歯が上下二本ずつ。
 もぞもぞとベットから降り、一階の食卓へと向かう。
「おはよう、兄ちゃん」
 台所にはスラリと背の高い男性が一人。如月都茂哉、大学2年生。哉真都の兄だ。
 左手にフライパンを持ち、右手だけで卵をわった。
 外見はジャニーズにでも入ってそうな…俗に言う【いけめん】というのだろうか。
 哉真都とは違い、目は青く、髪は赤茶、少し黒いサーファー肌。
「おはよう、哉真都。今日は父兄参観日だよな? 兄ちゃん、大学のちょっと…模試があってな……」
 申し訳なさそうに顔を暗くさせ、口をにごらせた都茂哉に対し、哉真都は満開の笑みで答えた。
「だいじょぶ。うち以外にも来ない家は沢山あるんだよ。りっちゃんちも、山野んちも来ないんだよ」
 都茂哉は、キリリと上がった眉を少し下げ、何も言わず笑顔を哉真都に向けた。哉真都も笑ってみせた。
 この家庭は、哉真都と都茂哉の二人暮らしらしい。仏壇には母と父らしき人の白黒の写真が飾ってあった。
 その写真の前には火のついた線香が一本。たぶん都茂哉が供えたものだろう。この兄妹は毎朝必ず線香を供える。微笑みかけながら。
 ガチャガチャと乱雑に朝食をたいらげ、荒々しく席をたった哉真都。
 哉真都は兄の前にも関わらずパジャマを脱ぎ捨て、即行で制服に着替えた。
 両親に線香をあげ、いってきます、と一言笑いかけた。
「兄ちゃん! 行ってきます! 今日から部活が夏時間になるからちょっと遅くなるよ」
 哉真都は玄関で靴をはきながらリビングに向かい叫んだ。
 リビングからは、都茂哉の低い返事が聞こえた。

「哉真都ぉ? なんか今日テンション低めー。何かあったぁ?」
 中学校に着き、二時間目の授業が終わったところで、哉真都は親友の玲に声をかけられた。
 玲は幼稚園からの親友で、ティーン雑誌のモデルをやっていた。背は少し低めだが、スタイルも顔もよく、髪が緑色だった。
「え? やっヤダなぁもう! そんな事ないよ! それより玲ってば髪の色…!」
 玲はニッコリと笑い、彼氏の男を呼んだ。
「洋ー、コッチ向いてぇ」
 玲の声に反応した洋こと玲の彼氏の髪も色が黒くなかった。
「ちょ…まさか玲…洋と…!?」
「いえーい! やっちゃいましたー! 私、緑色だったんだぁー」
 顔を赤くしながら幸せそうに笑う玲を哉真都は半分軽蔑するような目で見つめた。
 この世界で黒髪が違う色に変わるということは処女・童貞を卒業したということに値する。つまり、経験済みかとうか、一発でわかってしまうのだ。
 そのため、この世界では髪を染めたりしない。染める人もたまにいるが、髪を染めるだけで罰金とプラス一億円程はかかってしまうのだ。
「よりによって父兄参観の前日に髪の色とるなんて…軽蔑されるよ、玲」
「いいじゃん、いいじゃん! 塁だって桃子だって美月だって色取れてるし!」
 あっそ、と軽く哉真都は流した。
『玲のこと大好きだけど…ああいう軽いところが嫌だ』
 深くため息をつき、そのまま窓から外を見つめていた。

「本日は忙しい中、父兄参観にご参加いただきありがとうございます。本日の授業は…」
 哉真都のクラスの担任が長々と父兄に対してあいさつをしている中、哉真都はだるそうに外を見ていた。
 自分の家の父兄は参加してないうえに、親友が昨晩色を取ってしまった。哉真都はやるせなさを隠せずにいた。
 ガラガラ…
 教室のドアが開く度に生徒の数名がドアの方を向く。そして、来た父兄の子供をからかったりするのだ。
 普段、明るく元気な哉真都はこういう事に参加していたが、今日は気分が乗らず、ドアが開いた音がしても振り向きもしなかった。
 しかし、しばらくして、再度ドアが開く音と共に教室がざわめき始めた。
 哉真都も今回は気になり、ゆっくりとドアの方に顔を向けた。

 入ってきた男に誰もが驚いた。

 誰も知り合いではない。あんな美男子は見た時が無い。黒い長いコートを着た銀髪の大学生くらいの美男子が髪をいじりながら教室に入ってきた。
 生徒達は誰の知り合いか解き明かそうとしていたが、それらしい生徒は一人もいない。
 肩くらいまでのサラサラ銀髪を後ろにしばり、その男は哉真都と目が合った。
 哉真都はぞわっっとした。こんな人がこの世にいたのか。大袈裟かも知れないが、誰もがそう思うような美男子だった。
 すると、さらに驚くことに、その男は哉真都に向かって手を振った。
 一斉に生徒の視線が哉真都に向いた。生徒だけではなく、先生の目も、父兄の目も哉真都にむいた。
 哉真都が困惑し、首をかしげると、先生は我に戻ったかのように授業を再開し始めた。
 哉真都は胸のドキドキが止まらなかった。
 知り合いだろうか、いやあんな人一度みたら忘れられない、知り合いではない。では何故手を振った?
 哉真都は全く授業に集中できなかった。

 そしてやけに長く感じた50分の授業が終わり、急いで後ろを振り返ってみるが、あの美男子はそこにはいなかった。
 一体誰だ!と友達に質問攻めにあったが、もちろん哉真都は知らない、と正直に答えた。

「ちょっと哉真都! どこ行くつもり? 今日は部活ないでしょー」
 玲にジャージを引っ張られ、哉真都はよろめいた。
「え、部活ないの? やったね、早く帰れるじゃん。帰り何処寄る? 久しぶりにマルキューでも行こうか?」
 朝はあんなに軽蔑していたが、やはり哉真都は玲が好きだった。玲の全てを受け入れたかのように、笑って話していた。
 余裕そうにしていた玲も、やはり親友からの軽蔑の視線が気になっていたようで、安心したかのように付き合うよ、と返事をした。
 しかし二人は結局世間話が止まらず、普段の部活終了時刻と変わらない時間まで学校にたむろっていた。
「如月さん、横田さん! 何時だと思っているの? 今日は部活ないはずよ! 早く帰りなさい」
 見回りに来た担任に怒鳴られ、外を見ると真っ暗だった。二人は笑いながら歩き、学校を出た。
 すると、昼間の美男子が――――校門のところで待っていた。
 哉真都はドキッとして、足が止まってしまった。玲は二・三歩哉真都より先を歩いてしまったが、哉真都に合わせて止まった。
 美男子は、哉真都のところにゆっくり近寄り、ニッコリと微笑んだ。
「いつまで待たせるのさ。夏でも夜は寒いでしょ」
 思わずうっとりしてしまうような声だった。
 しかし玲は、軽くその男に話しかけた。
「あのー、アンタ哉真都の何々ですかぁ?」
 男はクスリと笑った。
「君、髪の色ないね。軽い女だ。まだ中学生だろ?もう少し自分を大事にしなくちゃ。親が悲しむよ」
 玲は顔が真っ赤になった。そして、哉真都の手をぎゅうっと握った。
『あーあ、玲泣きそう』
 玲が泣きそうになると必ず誰かに触れる。哉真都は、それをきちんと受け入れ、玲の手を握り返した。
「玲、今日はいいよ、明日買い物行こう。帰りな」
 哉真都は優しく玲に言った。玲は深く何回もうなずき、走って帰っていった。
 深呼吸とため息をまぜたような息を吐き、自分より背の高い男を見上げた。
「あなた…誰ですか? 本当に私の知り合い?」
 男はニッコリ笑った。
「ずっと探してたんだよ。俺の名前はメイ。女みたいな名前でしょう?結構気に入ってるけど」
 哉真都は目の前がクラクラしていた。
 なんて格好いい男なんだろう。―――触ってみたい。
 恋をしたときのない哉真都は胸のドキドキと、顔が赤くなるのを抑えられなかった。

「俺は、君のドールだよ。そして君は俺のキーパーだ」

 哉真都は首をかしげた。相手が何を言っているのかわからない。意味不明だった。
「わけわかんない、って顔してるね」
 さっきから心を読まれているようで気持ちが悪い。
 だいたい、初対面の相手に対してなんでこんなに馴れ馴れしいのか。哉真都はだんだんイライラしてきた。
「あの…ドールとキーパーって…?どういう意味ですか?」

「説明してあげてるヒマはなさそうだね」

 いきなりメイの顔が背筋がゾッとするような顔になった。
 哉真都は驚き、メイの視線の先を見た。
 そこには――――二人の男が立っていた。
 どちらも中学生くらいだろう。二人とも髪は黒で、じっとこっちを見ていた。
「ねぇ二人とも、何そんなに殺気立ってるのさ。そんなに俺を殺したいならこっちへおいで」
 メイが右手をゆっくり上げ、手のひらを上向けにした。そして人差し指をクイッと一回曲げた。
 するとどうだろう、50メートルは離れていた二人の男子の体がグイっと引っ張られ、あっという間に目の前に来た。
 哉真都はビクッとしたが、メイは冷静に腕をおろした。
 二人の男子は眉間にしわをよせ、メイを睨みつけていた。
「お前、メイだろ! マスターの命令でお前のハートをもらいにきた!」
 ハート?マスター?命令?
 哉真都は頭が混乱していた。
「こっちはこの子にベールをかけるよ。完全ベールをかける。お前らみたいなガキ相手に俺にベールをかけるだけ無意味だからね」
 ベール?
「なめたまねしやがって…!」
「伸、だめだよ、落ち着いて。普段どうり五十:五十でベールかけて」
 もう一人の男子が片方の男子をなだめた。
 哉真都はイライラが頂点に達したのか、やっと口を出した。
「ちょっと! あんた達何やってるのかわけわからないんだけど! しかも君達誰よ?」
 メイはクスッと笑った。
「…ってうちのキーパーが言ってるんで、自己紹介しよっか。俺はメイだよ。君達は?」
 哉真都は呆れた顔でメイを見上げていた。
「余裕だな、メイ!」
「なーまーえーはー?」
 完全になめきったように笑いながらメイは言った。
「こっちが伸」
「んで、こっちが蓮」
 二人が交互に言った。黒髪が長い方が伸。髪が短い方が蓮。
 言い終わると、ペッとつばを吐き、伸が叫んだ。
「スタンバイ!?」
 メイは左腕をスッと前に出し、こぶしを握った。
「アクセプトっ」
 まるで語尾にハートがつくかのような返事をメイは返した。メイの返事と同時に、巨大なドームのようなもので四人の周りが覆われた。
「ねぇ君、説明するの面倒くさいから、体で覚えて。君の初戦くらい無傷で終わらせてあげるからさ」
 
 バトルが始まった。
「キーパーに対し100の完全防御…ベールをかけます」
 メイの言葉と同時に、哉真都の体は宙に浮き、哉真都の体はシャボン玉のような透明なバリアに囲まれた。
『これが…ベール…』
 哉真都はメイの言ったとうり、冷静に状況を把握していった。
「同じくベールかけます! こちらはキーパー五十、ドール五十で!」
 伸が叫んだ。必死な伸をあざ笑うかのようにメイが言う。
「攻撃、先にそっちがかけていいよ」
「なっ…なにぃ!」
「伸!落ち着きなって! こっちに先攻させたこと後悔させてやろうぜ。 じゃあ地割れでいこう」
 蓮が伸をなだめ、二人が向き合った。そして、片手どうしをしっかりと組み、いきおいよくもう片方の手どうしを合わせた。
 パンッという音と共に地響きがくる。
「100の完全攻撃! 大地を揺らせ! 地割れ……地割れだぁ!! 地面に相手を引きずりこめ!」
 伸が叫ぶ。しかしやはりメイは冷静だった。
「20で浮きます。残り40で地割れを返し、残り40で相手の足を植物のつるで固定」
 哉真都は頭が混乱していた。
 だがしかし、ただ一つわかることは、目の前で起きていることは現実だという事だった。
「なッ…! 伸! くそっ…足が固定されてる…!」
 宙に浮いている哉真都にも大地の揺れが伝わってくるようだった。
 大地は割れ、すごい速さでメイに地割れが向かう。しかし、メイの後攻の言葉どうり、メイの直前で地割れは止まり、逆に伸達に向かってさらにわれ始まった。
 伸と蓮の足首には気持ち悪いくらいニョロニョロとした植物のつるが巻きつき、身動きとれなくなっていた。
「くっそ…! キーパーの五十ベール解除! 100でドールを完全防御!!」
「なっ…!? 伸! 何やって…!! 俺の事は放っとけ!」
 蓮はそう叫んだが、蓮の体は浮き、哉真都と同じようなベールに包まれた。
「ぐわぁぁぁああ!」
 メイからの攻撃をモロに受けた伸は、倒れこんだ。
「しーんっ!!!」
 蓮が叫ぶ。しかし、防御は解かれない。
 哉真都は息を呑んだ。そして、メイは冷静に左腕を天高く伸ばした。
「耳を割るような雷鳴とともに100の電撃」
 にっこりと笑いながらそう言い放ったメイに、哉真都は恐怖心を抱いていた。
「そっちのターンだけど? パスする? 俺も防御したいんだよねー、この雷鳴結構耳にくるからさぁー」
 こんな事を言いながらも大笑いしているメイ。
 蓮は歯をくいしばったが、伸はうずくまったままだった。
「おい! メイ! 天才だかなんだか知らねぇけど、フェアじゃねぇだろ! まだこっちのキーパーが…!」
 蓮がメイに向かって泣きながら叫んだ。
 哉真都はじっと三人のやり取りをみていた。
 すると、ものすごい雷鳴が鳴り響いた。完全防御されている蓮と哉真都にはまるで効果はないが、伸の耳から血が流れた。
「うっわー耳いてぇ。やっぱ多少はこっちにも被害あるかー。失敗失敗。ま、いっか」
 メイは耳をふさいで笑っていたが蓮は伸の名を叫びながらベールをどんどんと叩いていた。
 雷鳴が鳴り終わると同時に、ドームの頂点から何本もの稲妻が伸に向かって落ちた。
 思わず目をおおいたくなるような…なんとも卑劣な戦い方だった。
 伸の体はボロボロになり、伸の意識はなかった。
 そして、自然と蓮の防御ベールが外され、蓮は地面におりた。急いで伸のもとに駆け寄り、伸を抱きしめた。
「どーしたの?またパスするならそれでもいいけど。あぁ!パスっていうか、もう戦えないよねーキーパーがそんなんじゃあ」
 哉真都は我慢できなくなり、メイに叫んだ。
「馬鹿! あんたやりすぎだよ! 仏の心はないのかよ! 下ろせ! 早く私を下ろせよ!」
「あららー折角助けてあげたのに。ま、いっか。防御解除します」
 いきなりベールが解かれ、哉真都は地面に強くしりもちをついた。
「鈍くさいね。下りるときくらい、きちんと着地しなよ」
 哉真都はキッとメイを睨み、伸達のもとに駆け寄った。
「来るなよ!」
 蓮にそう言い放たれた哉真都。
「その子…大丈夫?」
「は?ふざけてんのかよ。大丈夫なわけねぇだろ!! 他のドールならともかくメイだぞっ!? お前嫌味か!? お前だってわかってんだろ!」
哉真都は目を見開いた。
「その子はホントに何も知らないよ。余計な話はいいでしょ。戦闘放棄する?」
 メイはしゃがみこんでいる二人にそっと近づき、見下すように言った。
「……アバンダンメント」
 蓮がつぶやいた。
 すると、周りのドームがなくなり、もとの学校前の景色に戻った。
 メイは哉真都の手を握り、すたすたと帰ろうとした。しかし、ふと足を止めた。
「マスターに伝えといて」
 蓮は泣きながら顔を上げた。
「俺を殺したいのはわかるけど、あんたんとこのソルジャー達じゃ100ペア来ても足りないって」
 メイはとても冷たい目線を蓮に向け、哉真都の手を引っ張りそのまま歩いていった。
 哉真都は聞きたい事がたくさんあったが、声に出すことが出来なかった…。


第二話 ソルジャー


 哉真都とメイは暗い道をとぼとぼと歩いていた。
 ずっと沈黙が続いていたが、我慢できなくなった哉真都がメイに問いかけた。
「あのー…」
 なんともか細い声だった。だいたい、メイの事を何て呼んだらいいのか哉真都は困っていた。
「なーに?」
 不安そうな哉真都をよそに、メイはとても明るく声を返した。
「説明…してくれませんか…」
 哉真都の質問に、メイはふぅとため息をついた。
「明日は日曜日ー?」
 メイはいきなり哉真都に尋ねた。哉真都は目をパチパチさせたが、コクリとうなずいた。
「そっか。じゃあ明日午後二時に駅前のマック集合ー! 時間厳守ー!」
 メイはからかうかのように哉真都にこう告げた。
 哉真都は、少し不安があったが、何故か自然と笑っていた。
 ふと気がつくと、もう哉真都の家の前についていて、少し哉真都はさみしくなった。
 今日会ったばっかりの人に、こんな風に感じるのは変だろうか、と哉真都は思った。
 顔が格好いいから?助けてもらったから?
 そんな単純な理由ではなく、哉真都は心の奥が熱くなった。もっと深いところでメイに惹かれているようだった。
 するとメイは、哉真都の気持ちを察したかのように話し出した。
「君さぁ、駄目だよ、知らないお兄さんに付いてったりしちゃ」
 メイは笑いながら言った。
 しかし、確信は確かになかったけど、哉真都は何故かメイに対して安心していたのだ。哉真都は不思議な気持ちだった。
「まあ、俺は悪い子じゃないけどね」
 哉真都も一緒に笑った。
 するとメイは、哉真都の腕を引っ張り、哉真都を優しく抱きしめた。
「また明日」
 一言こういって、メイは返っていってしまった。
 メイが見えなくなってからも、しばらく哉真都は顔が熱く、家の中に入ろうとしなかった。

 次の日。
「あっれー? 早いじゃん」
 駅前のマック午後二時。時間厳守。そういったのはメイの方だったが今は午後三時すぎ。もうすぐ半になろうとしていた。
「ちゃんと二時に来てましたよ。私は」
 嫌味っぽくそう言った哉真都に軽くあやまりながら、メイは哉真都の頭をクシャっとなでた。そして、哉真都の前の席に座った。自然と哉真都は姿勢を正した。
「どーぞ。なんでも答えるよ」
 哉真都はしっかり家で質問を考えてきていたので、少し緊張しながらも、まず最初の質問をした。

「まず、あなたは何者ですか?」
「敬語じゃなくていいよー。俺らキーパーとドールでしょ」
「キーパーとドールって?」
「…面倒くさいな。まぁ、いいや」

 メイは話し始まった。

 この世界のちょっと隠れたところに違う世界がもう一つあるんだ。そこでは、ソルジャーというものが存在する。ドールとキーパーの事をソルジャーっていうのよ。その世界はカーニバル側かサーカス側か……カーニバルとサーカスってのは人の名前ね。この二つに完全にわかれてて、戦争している。ソルジャー同士による戦争だ。そしてどちらにも属してない俺みたいなのをダストっていう。ゴミって意味だけどね。で、次にソルジャーについてね。ソルジャーは二人で一つ。つまりキーパーとドールで一つ。ソルジャーの二人はとても特別なんだ。あっちの世界の奴らはそれぞれ心臓の形がさまざま。心臓の形が同じ者どうし惹かれあい、一つのソルジャーになるんだ。ソルジャーはドームバトルっていうのをする。これがまぁ戦闘だね。「アクセプト」って言葉でバトル開始。バトルが始まるとソルジャー達はドームに包まれるんだ。その中で戦闘をするんだよ。んで、攻撃するのがドール。指定されない以外、たいてい攻撃を受けるのがキーパー。ちなみに君はキーパーだから。二人が戦闘不能になったり、「アバンダンメント」っていう言葉でバトル終了。攻撃は交互に。相手が動けない場合は連続で攻撃もできる。一回のターンで使える力は100まで。つまり、%ってことかな?ベール100って言ったら100パーセントの絶対防御がかけられる。雷撃50って言ったら50パーセントの雷撃が相手に当たる。でも、二人で攻撃・防御合わせて100だから考えて使わないといけないんだ。自分にベール100をかけてしまったら、そのターンでペアのことを防御できないし、攻撃もできない。そしてバトルに勝ったら自分のマスター…つまりサーカスかカーニバルのどちらかにご奉仕できたってことになる。バトルに負ければ、マスターの指示に従わなければならない。力を奪われ、もとの普通の生活に戻ることもあるし、そのまま何もないこともある。マスターの機嫌しだいだ。あとはやってくうちに教えるよ。はい終了。

 考えていた質問の答えを全て言われ、しかも非現実的な話をづらづらと語られたので、哉真都は混乱していた。それだけ言うと、メイは席を立ち、帰ろうとした。
「ちょ…ちょっと待ってよ! 私はそっちの世界の人でもないし、戦う理由もない!」
 哉真都はメイに向かって叫んだ。
「それは俺もわからないけど、俺の心臓とアンタの心臓がシンクロしたことは確かだねー。俺間違えないし。それと…」
 哉真都は首をかしげた。
「それと?」

「ごめんね、巻き込んで。きっと戦う理由は俺だけだよ。だって普通はダストの連中は戦争に巻き込まれないもの。俺に理由がある」

 いつも明るく話しているメイがあまりにも暗い顔をしたので哉真都はあせった。まだまだ理不尽で信じられないし、知らないこともきっとたくさんある。
 だけど哉真都は、メイの力になりたいと思った。
2005/12/19(Mon)16:53:27 公開 /
■この作品の著作権は愛さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はじめまして。愛です。
ファンタジックな小説を書きたいと思っていますが、戦闘シーンがとても難しく、苦戦しました…。しかし、これから頑張って勉強しつつ続きを書いていこうと思うのでアドバイス等よろしくお願いします。
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