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『I am here』 作者:Cano / 未分類 未分類
全角3080.5文字
容量6161 bytes
原稿用紙約10.35枚
生きていれば、何度となく体験するこえることが困難な壁や、悩みや悲しみ。その谷のど真ん中にいる女子高生・アヤの混ざり合う感情。思春期の気持ちを描いた作品です。
部屋の天井の小さな窓から見える、かすかな星の輝きを見つめながら、あたしは涙をながす。
どうして泣いているのかはわからない。
あたしが、こんな風に泣いている事はあの星は知らない。
あの果てしない空から見れば、あたしの涙なんかちっぽけで、
あたしの悲しみなんかもすごく小さくて、とてもとても見えないだろう。
そう思うことで、あたしは、今の自分が自分であることを忘れて、現実から逃げていた。

月曜日の朝の、憂鬱感なんか気にも留めないような
空の青さや、心地よい風があたしの心を余計に腹立たせる。
布団の中で、あと5分、5分、と目を閉じると
もうこの世にはいないママの声が、なぜか、あたしを起こす。
もういないのに、どうして声がするの。
涙をこらえながら、重たい身体を起こして階段をおりる。

あたしが目覚めると既に、食卓に朝食が用意されていて、キッチンにはいつものエプロンをつけた、いつものママがいて
そんな日常が、いっきにあたしの目の前から手品みたいに消えてしまった。

重たい制服に袖を通し、戸締りをして家をでる。
あたしが 
「もう学校を辞めたい」
そう言った時 ママは、
「まだ、高校1年生じゃない、馬鹿なこといわないで。それに、せっかく入学できたのに、もったいないじゃない。」
とだけ言った。
その時あたしは、母はあたしの気持ちなんて何にも考えていないと、怒って大泣きしたっけ…。
だけど、次の日、いつもは、可愛くもなくて、栄養だけがつまってます。
みたいなお弁当が、色鮮やかであたしが大好きなものばかりが入っていた。
「どうして? 」と聞くと
「がんばって学校行く気になれるかな…と思って」とママは少し照れて言った。
そんな事だけで、あたしはこの地獄からは逃げられないのに、と少し母に苛立った。

だけど、もうそんな風に、母に腹を立てたり心配させたりすることもできなくなった。
1週間前の8月10日、母は、買い物の帰り道でトラックに跳ねられて死んだ。
即死だった。
お通夜の日、親戚の中の誰かが言った。
“苦しまずに逝けてまだよかったじゃない”
今思うと、彼女には悪気は無かったかもしれない。
だけど、そのときあたしには、初めて殺意というものが生まれて
「一突きで殺してやるから、ママの痛みを味わってよ」
そう言ってしまった。
誰かがこの世からいなくなっても、残った人の人生はそんなに変わりはしない。
現に、あたしは今こうしていつもの学校にいつもの電車で通っている。
ママが仲良かった隣のおばちゃんも、ママがいつも通っていた美容院の店長さんも、
豆腐屋さんも、
みんなママがいなくても、こうして1日1日を前と変わらないように生きてる。

そんな風な事を考えているうちに、電車はいつもの駅に到着した。
あたしは、一度深呼吸をしてから、電車を降りる。
「アヤ!おはよっ」

「おはよぉー」
あたしは、さっきまでのあたしとは違う。
そんな風に呪文を唱えて、とびきりの笑顔で返す。
「もう、昨日最悪でさぁ――」
麗奈の言葉がすぅーっと頭を通り過ぎていって、
あたしは、自分でも意識しないうちに、相槌をうち、顔の表情を七変化させる。
毎日、毎日、そんな風に自分を作る事しかできない。
分かっていても今更変える事なんてできない。
「そういえばさぁー、アヤ、何で先週休んでたの?」
もうすでに、真っ黒く塗られたマスカラを更に重ねながら、麗奈は言う。
「なんか、親戚の葬式だったんだ 」
「ふーん」
あたしの事なんかより、メイクやブランドの服しか、興味がないくせに。
上辺だけの付き合いはもう沢山。
そんな風に、いつものひねくれたあたしが、麗奈を冷えた目で見つめていると、
ふと、誰かの視線を感じて、あたりを見回した。
「どうしたの? アヤ、やめてよ、何かいるの?!」
「ううん、違う。なんでもない」
そういったけど、本当は、クラスメイトの西野の睨むような視線を確かに感じていた。
西野は背も高くて、顔もかっこいいし、スポーツ万能で、極めつけに頭もいいし
麗奈も最初はきゃーきゃー騒いでいたけど
あたしは、冷えた目つきがどうしても怖くて喋る事ができなかった。

あたし、何かしたかな…。
この戦場では、すぐ誰かの視線を気にしてしまう。
いつだれが、誰にターゲットにされるか分からないのだ。
クラス替えをして3ヶ月で、クラスの標的にされ辞めてしまった子なんて、もう珍しくも無い。

その日の授業は、西野のあの恐ろしい目つきで、全部うわの空だった。
こんなことになるなら、サボればよかった。
家にいても、もう文句を言ってくれる人もいないし。
父は、東京に単身赴任中で、ママが居なくなったって言うのに
葬式と通夜だけすませてさっさとあっちに帰ってしまった。
もう2人の愛が冷めてる事ぐらい、ずいぶん前から知っていたけど
こんなにも、仲が悪化しているなんて知らなかった。

いろんな事を考えていると、また視線が気になって
ママの事を思い出して、泣きたくなる気持ちも治まった。

放課後、靴箱で1人麗奈を待っていると、
西野がこっちに向かって歩いてきた。
あたしは、逃げるように急いで、その場から逃げようとした。
どうして、あたしばかりこんな目にあうの。
後ろを振り返ると、彼はまた、こっちを見ていた。

「どうして逃げんだよ」
低くて、大きい声があたしの心臓をまたびくつかせる。
うつむいたまま止まっていると。
「お前、俺のこと嫌いなの?」
あれ?あたしの事嫌ってるんじゃないの??
そんな風に聞き返すこともできなかった。
中学の時、男子にいじめられて以来、まともに男の人と話した事がなかったから。
「なぁ、ちょっと喋んない?」
「でも、塾があるから」
「お前の母さん、死んじゃったんだろ?」
「どうして知ってるの?」
「どうして、そんなに普通でいられるんだ?」
彼の、睨んだような目の意味がようやく分かった気がした。
「どうして、西野にそんなこと言われなくちゃいけないのよ」
朝のように、冷静なあたしに戻るんだ。
また呪文をとなえる。
「俺ら、同士じゃないかなーと思って」
「同士??」
「俺も、おふくろ死んじゃったの。病気だけどね。
おれんちの親父、医者だから、お前んちの母さんが運ばれてきたの知ってるんだ 」
「どうでもいいよ」
あたしは、既に息耐えて、顔は青ざめて、身体は、血で朱色にそまったママを思い出していた。
すると、やっぱり、我慢してた涙が音も立てずにほほを伝って、床にぽたぽた落ちる。
「我慢するなよ。誰だって、一番身近にいる人がいなくなったら、寂しいんだから」
西野はあたしの頭を、軽くぽんぽん叩いて、あたしの頬をつたう涙を
細くて綺麗な指でなぞった。
「一緒に帰っちゃう?」
あたしは何にも言わずにうなずいた。
どうしてか、彼と一緒にいたかった。
初めて、あたしの苦しみをわかってくれた人がいた。
砂漠でカラカラに乾いた喉に、一滴の水滴がはいってくるみたいに、
あたしの心は、少し落ち着いたんだ。

西野と帰った帰り道は、会話もなくて、ただあたしがすすり泣いているだけだった。
彼は、何にも言わずにただあたしの頭をなでていてくれた。
あたしは、最後にありがとう。と一言だけ言って駅で別れた。
今思うと、自分はなんて事をしたのだろう。
あんなにも苦手だった男子と喋ったり、一緒に帰ったり、あげくの果てには慰めてもらっちゃったりなんかしちゃって…。調子くるっちゃうよ…。
あたしは、真っ赤になって腫れた目を氷で冷やしながらベッドに横になった。
明日は、変な事が起きませんように。そんな風に目を瞑っていると、いつのまにか眠ってしまっていた。

---続く
2005/12/18(Sun)01:54:48 公開 / Cano
■この作品の著作権はCanoさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今回は、ご指摘頂いた分を反省し、できるだけ修正しました。
あと、ほんの少し追加しました。
体調不良気味で、更新はなかなかできませんが
ちょくちょく書いていきたいと思いますので、
どうぞ応援のほどよろしくお願いいたします。

誤字・脱字など、見つけて下さいましたら、ご指摘願います。

感想を書いてくれた方々、読んでくださった方々、本当にありがとうございます。

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