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『ドロシーの魔法辞典』 作者:諸星 崇 / リアル・現代 アクション
全角2748文字
容量5496 bytes
原稿用紙約9.15枚
涙モノの不幸を背負う貧乏少女。自分の無力さに生きる意志を失いかけていた日常の中に、非日常の片鱗が見えたとき、少女の日常は壊れてゆく。それは唐突に、そして畏怖と憐憫と博愛と憎悪と羨望と哀愁と、そして――。それは、少女の織り成す非日常の始まり。




 Prologue     赦されざる少女の不幸





 残金、八千円。

 七月一日。梅雨も終わり、猛暑へまっしぐらの今日この頃。クーラー全開でカキ氷かっ込んで頭痛に悩んだりビニールプールに冷水入れて両足突っ込んだり期間限定のアイスを求めてコンビニ巡りしたり究極的には水着で海に泳ぎたいとか思っても許されるだろう外観気温三十度越えを記録する七月一日現在。
 だがクーラーには電気費が掛かりカキ氷には維持費が掛かりプールには水道費が掛かりアイスには食料費が掛かり、水着どうするとか移動費どうするとか『人生を楽しむには金が掛かる』の方程式からは逃れられないのだ。
 しかし一介の高校生なら普通は一度二度誕生日を生唾飲んで我慢するだけでなんとかなるものだ。さらにクリスマスとバレンタインもスルーすれば、その年の夏休みはもはやブルジョワジーの領域と化す。
 だからというわけではないが、せめて熱中症対策にクーラーの一つぐらい導入したい。
 なので、誕生日十回、クリスマス五回、バレンタイン非活動=年齢、という女の子としては涙も滲む生活を過ごしてきた。生活の維持も含め、家計簿を見れば大概の主婦は土下座をすることだろう。
 ベランダでモヤシを育て、増えるワカメの真意を極め、ゴキブリ瞬殺術を習得したマンション生活。
 苦節に苦節を重ねて、中学時代の生徒に素でお弁当のおかずを分けてもらう三年間。高校受験の面接で『苦手なものはなんですか?』と訊かれて、思わず『工事の騒音と隙間風です』と答えてしまった冬の日。
 中学生活を丸ごと犠牲にした高校生活。三ヶ月が過ぎた今、真面な夏を過ごせると信じていた。
 なのに、

 残金、八千円。

 いや、
 いやいやいやいやいや、
 冷静に考えてみよう。こと金が絡めば彼女の頭脳はさらなる高みへ上るシステム付きなので、速い速い。
 通帳に描かれた数字を確認しつつ、考える。
 その数字は、これから七月いっぱいの維持費をまだ抜いていない。食料費や電気ガス水道その他もろもろをまだ削ってないのに、この背筋を奔る戦慄はいったいなんなのだろうか。夏風邪だろうか。
 いやだとしても、これはまずい。本当に。夏風邪に逃避している場合ではない。
 通帳から、視線を外す。
 青々とした空を見上げ、ゆっくりと肺に酸素を染み渡らせて、目を閉じて精神統一。
 やがて、眼帯による隻眼で、手元を見下ろした。

 残金、八千円。

 どう見ても、彼女の右眼にはこの本当に中学生活を代償にした割にエンジョイできるのか疑念が消えてくれない金額が最後の数字として記されている。むしろいつもどおりの生活も危険極まりない気がする。
 どうしたのだろう。
 これは、一体。どうしたものか。
 何が起きたのだろう。
 第一、先月まであった十五万はどこにいったのだろうか。
 暑さのせいか、眩暈が起きそうだ。





 朝河結依(あすがわ ゆえ)は全力疾走で銀行からマンションに戻った。
 荒げた息もなんのその、それ以上汗掻いたってあまり水分補給は許されませんよとか思うわけだけども、今更消えた十五万円の行方を確認しない限りは和んでいられない。滑り込むように中に入った。
 家に帰ったらまずはモヤシの確認をするのだが、結依はもの凄く旧式の電話の受話器をぶん取った。
 壁にピンで留めた電話番号の控えを確認してボタンを押した。
 コール音を耳に、上がりきった息を深呼吸で整えながら待つ。
 三回、四回、五回、六回目が鳴る頃にはもう息は正常に戻っていた。
 九回目のコールの途中で、かちゃりと鳴った。
『はいもしもし、宮島ですけど』
 男性の声。結依の知る親戚の子で、彼女の義理の兄にあたる。
「もしもしっ、朝河です」
 思わず緊張の混じった声が誰なのかを知った青年は、溜息を吐いた。安堵ではなく、落胆だった。
『……あんたかよ。気安く電話しないでくんない? こっちは今勉強してたんだよ』
 侮蔑の声色に心のどこかが痛んだが、とりあえずは現状をなんとかしなければ。
「御免なさい……あの、おばさん居らっしゃいませんか?」
『母さん? 居るよ。おい母さん、電話!』
 いくらか遠ざかった声は、まるでわざと結依に聴かせているようだ。
『誰から?』
『あいつだよ、朝河の』
『なぁに、あの娘からなの? これから出掛けるから切っちゃいなさい』
『出てくれよ。また掛けてこられたら迷惑だろ』
『……、………もしもし?』
 女性の声。親戚の家族。元々結依は孤児だったが、血は繋がらずとも親戚の枠内に居た宮島の家に住んでいた。だが、過去形なのは中学に入った際に結依がマンションで独り生活をする旨を言うと、無言で応えた。
 あの時の空気が、そして今も女性の声は刺々しいを通り越して冷たすぎる。
『なによ、今更こっちに来られたって困るのよ』
 随分とはっきり言うものだ。まあ、馴れたけど。
「あの、さっき銀行に行ったら、十五万ほど引き抜かれてるんすが」
 すると、思案の気配のあと、納得の声が漏れた。
『あれねぇ、悪いけど引き抜かせてもらったわよ』
 凍りついた。何も言わないだけならまだしも、よりによって下四桁だけしか残さないなんてキツすぎる。
「でも、何も十五万も持っていかなくてもいいじゃないですかっ……!」
『はあ? あんたなに勘違いしてんの? 中学までの教育費とマンションの費用は誰が払ってると思ってるのよ』
「それは、マンション費用ぐらいは払ってやると言ったのはそちらで……」
『いくらかお金残しといたでしょうが』
「八千円じゃ無理ですよ! この間バイト先が潰れたから、次探すまでお金減らせられないのに……!」
『うっさいわねぇ、全額取らなかっただけ我慢しなさいよね。それじゃあたし出掛けるから、電話してこないで』
「あ、ちょっと待――」
 制止も虚しく、叩きつけられるようなけたたましい音が耳元で炸裂した。
 ツー、ツー、と流れる電子音を耳に、結依は虚無感を覚えて人形のような動きで受話器を置いた。
 結依の両親は居ない。
 正確には、亡くなったのだ。それも、結依の記憶にすら無い頃の話。
 孤児院から宮島の家に渡り、狂ってしまいそうなほどに精神を傷つけられ、マンション生活を選んだ。
 辛かった。
 だから独りでも生きていくと強く願ったのに、
 結依には、幸せを求めることも許されないまま、のろのろと玄関を出た。
 せめて、あの八千円だけでも引き落とすために。
 革靴を履き、掴もうとしたドアノブが歪んでいるのを見て、目頭が熱くなっているのに気付いた。
 結局は、これが結依の生き方だった。
 ドアの開く音に紛らせるように、結依はぽつりと呟いた。
「……、不幸だなぁ………」





 ――序章――
2005/12/04(Sun)22:35:59 公開 / 諸星 崇
■この作品の著作権は諸星 崇さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
どもです。
現代アクションということで書かせていただきますが、心配です。アクションにすると余計なまでに(作者本人が)暴走を繰り返すので、凄いアクションになること受けあいかと。
魔法、というタイトルですが実際は魔術ですね。何かを等価に術を組み、善にも悪にもなるという何か純粋な力というものをテーマ的なものにしたいと思ってます。まあ、ぶっちゃけるなら『まほーでバトル』ですね。文だけを見るとかなりふざけていますが。
読んでいただけると幸いです。そして結依ちゃんの不幸っぷりにも。
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