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『夕方色な道』 作者:灯瑠 / リアル・現代 未分類
全角2367文字
容量4734 bytes
原稿用紙約9枚
「夕方の色」に染まった道にあなたは何を考えますか?
…立てない

 突然視界がゆがんで、気づいたら私は道で座り込んでいた。
 足に力が入らない。体が震える。

 何故だろう?

 友達と一緒に通った時は平気だった。
 でも、一人でここを通るとどうしても動けなくなってしまう。
 よく分からないけど、怖いな

 物心ついた時から、私にとってこの道は「呪いの道」になっていた


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 朝のホームルームも終わりに近づいていた。

 「おはよーございまーす」
 のぺっと挨拶をして、教室のドアを開ける。先生がギロリとにらんできた。
「戸口。今日はどうした」
「どうもしませんが」
 さらっと返す。
「戸口!遅刻しといて、何だ、その態度は!ふざけるな!!」
 汚い先生の怒鳴り声が教室中に響く。クラスメイト達はシーンと顔をうなだれていた。

 先生が顔を真っ赤にさせて怒っている。
(…タコみたいだな)
 タコという表現に我ながらふっと笑ってしまった。
 私の「ふっ」に腹を立ててか、タコは怒りを倍増させてしまったようだった。
「戸口。答えろ」
「いやあ。『呪いの道』を通ったもので」
「なんだそれは」

 ヘラヘラと自分の席に逃げる。遅刻くらいいいじゃない。先生の舌打が聞こえたので、とりあえず私も舌打を返した。
 どうもこの担任は好かん。私、こういう熱血タコが一番嫌いなんだよなあ。遅刻してしまったもんはしてしまったんだよ。終わったことをウダウダと。男らしくない。

「はぁーあ」

 それにしても…だるい。
 私は机につっぷした。『呪いの道』を通った後はいつもこうだ。体がだるくて重くて、勉強どころじゃない。
 通らなきゃ良かったな…
 もう遅いか。

 だるだるの私と裏腹に、熱血タコはツバを撒き散らしながらマシンガントークしている。
「いいか、お前らはもう高校2年だ。将来のコトも真剣に考えなきゃいけない年である。なのにノコノコ遅刻してくる奴がいるって事自体大きな問題だ。小さな乱れも大きな乱れ。将来の夢もあーだこーだ…」

 熱血の話(聞いちゃいられない)も終わりに近づいたころ、背中をツンツンとつつかれた。
 だるだると振り向くと、後ろの席の池内さんが目を輝かせている。
 
「…何か用?」
 池内さんは目をキラキラ、こっちをチロチロ見ている。
「…何?」
「アイ・コンタクト送ってるんだ」
「通じないから口で言って」
 天然バカ子…さすが池内さんだ
「分かった。口で言う。ね戸口さん今日もカッコイイね!」
「いや…かっこよくないし」
「前から思ってたもん。かっこよくないなんて…それって謙遜って言うんだよ」
「知ってるよ」
「ほらほらほらほら!カッコイイ!なんか、問題ナッシング!って感じだよね!」
 お前の頭がナッシング、だろ。という言葉をかろうじて飲み込んだ。こんなに天然でボケでアホな子はこの時代、珍しいぞ?
「前から言おうと思ってたけど、私ね、戸口さんみたいにクールになりたいの!」
「いや、無理」
「やーん!かっちょいー!」
 …ダメだこりゃ。私はふっとため息をついた。池内さんと話すと、いつもあっちのペースになってしまう。
 入学式で出会い、あれからもう2年か。私たちはいつの間にか友達だった。
 正反対だけど何故かいつも一緒だったな…
 私たちはいつも「戸口さん」と「池内さん」。素っ気無くふるまっていても私は池内さんが大好きだった。

「バーカ」
 池内さんのおデコをピンとはじく。
「った。ふふ、戸口さんもバーカ」
 彼女も私のおデコをはじいた。

ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン、ピン…ベスッ!ベスッ!

「おい、バカ共」
はっと横を見ると熱血タコが出席簿を片手に、さっきより赤い顔になっていた。
「とりあえず一時間目始まるまで廊下に立ってろ」
「はーい」

 私たちが仲良く廊下に立ったのは言うまでもない。



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「んーっ、今日も疲れたね!」
 池内さんがピョンとのびをした。
 もう日は暮れかかっている帰り道。道がオレンジ色に染まっている。
 野球部がひたすらボールを追いかける校庭を横目に、帰宅部の私たちはスッタラスッタラ歩いていく。

「瀬木先生ったら反省文書け、なんて。ホームルームでお喋りしてただけなのにね」
「2週間、毎朝毎朝やってたらそりゃね」
「いけないのかな?」
「いけないだろ」

 そうかあ、と珍しくも池内さんは神妙な顔をする。おお、珍しい池内フェイス。
――ふと、池内さんは足を止めた。
 おっと、と私は3歩前に行ってしまった。

「どした。早く歩きなよ」
「ん。オレジンだなって」
「おれじん?」
「オレジン?正しくはオレンジ?だなって。道が」
 どういう間違え方…もうつっこむ気力もない。

 でも、確かに辺り一面オレジン…オレンジ色になっていた

「ね、綺麗じゃない?」
「あ、まぁね」
「…なによお。反応薄いなあ」
「あんたが濃すぎるんだよ」
 うすいよおと池内さんが暴れる。池内さんっておとなしいね、というのは一生私の口から出ないであろう。命かけるよ。

「ねえ、戸口さん。オレンジって夕方の色だよね」

え?

「……夕方の色。」
「…戸口さん?」


  夕方の色…
  オレンジ…
  道いっぱいに…


「戸口さんってば!」


  なんだろう、この感覚。
  なにかが…

  だめ、思い出せない


「ねえっ!!」
 池内さんが私の頭をはたく。
「うっ、あっ、何?」
「何って…どしたの?ボーッとして」
「いや…」

 私はオレンジの世界を見わたした。
 一瞬…何だったんだろう…

「ごめんね、私なんか悪いこといった?」
 私は悲しそうな顔をする池内さんに、軽くチョップした。


「………バーカ。」





-続-
2005/11/20(Sun)23:28:10 公開 / 灯瑠
■この作品の著作権は灯瑠さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
はじめまして。初小説です^^;

まだまだ未熟ですが、ちまちま書いていきます
長い目で見守ってやってください
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