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『くものはなし』 作者:黒ネコ / ファンタジー ショート*2
全角1321.5文字
容量2643 bytes
原稿用紙約5.6枚

あーのびのび。

真っ青な空。
どこを見ても青、青、青!

こういう青空をオイラ一人、ふよふよふよふよ泳ぐのって
ホント気持ちいいや
ほかに雲もいないし、オイラだけの空!!


あっ、目が合った。どーも始めまして!
オイラ、「くも」っていうんだ!
知ってるだろ?雲。

オマエ、空を見るなんて珍しいニンゲンだな
へへ。気に入った


…何?誰に言ってるのかって?そこのオマエだよ、オ・マ・エ。
疲れた顔してんな〜大丈夫か?
そうだ。オイラの話を聞いていきなよ

え?用事がある?
ニンゲンの用事なんてどうせちっぽけなもんだろうが!
聞いてけ聞いてけ!

どうせニンゲンは無駄な事ばっかしてんだから
たまには雲の話も聞いていきな

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そう、その日オイラはいつものように街を泳いでたんだ

本当にいい天気で、雲はオイラ一人って感じだった
綺麗に晴れた空なのに、ニンゲンは空を見ようとしないんだ
おかしいだろ?

…はあ。ここ最近、世界も変わったよ
車はブンブン。ビルもたくさん建ってるし、ボーッとしてるとぶつかりそうだ

それに、ニンゲン達が忙しそうに歩いている
せかせかせかせか
オイラは、ふよふよふよふよ
まったく、何でそんなに急ぐんだよ
ちったあオイラを見習ったらどうなんだ?なあ。


色々考えながらふよふよ漂ってると、キキーッと凄い音がしたんだ
なんだなんだと音の方へ泳いでいってみると、
電車が一本、線路の真ん中で止まってた
故障したらしく、車内はガヤガヤとざわめいている

(これだからニンゲンは…)

そう思って、別の場所に泳ごうとしたら、ふと、電車内のある女の子に目がいった

小学1年生くらいか?
悲しげな顔をしてうつむく女の子がイスに座っている
隣に座ってるのは母親のようだ

母親は携帯電話をしきりにいじっている
そうだ、メールというやつだ

メールで家族か誰かに事故の事を知らせているのか?と思ったが
なんだかそういう感じではない。もし知らせるんだったら電話だしな
ただ、遊びでやってるって感じだ

母親が見てるのは携帯電話の画面だけ
女の子は、自分が見られてない事を理解してるのか、じっとうつむいたままだった

(おいおい…)

オイラ、ちょっと悲しくなった
せめて女の子の手を握ってあげるだけでもいいのにさ
どうして気づいてあげないんだろう

大切なのは画面なんかじゃないのに


女の子は綺麗な空に気づいたのか、窓に目をやった
青い空、たった一つの雲

「きれい…」

声は聞こえなかったが、女の子はそう言ったようだった


―――オイラは女の子と目が合った


(こんにちは、お嬢ちゃん。ご機嫌いかが?)


オイラは、空高くからおじぎして、挨拶した
その女の子はちょっとだけ笑ったようだった


と、その瞬間、電車がカタンと動き出した


女の子は小さく手をふった
オイラは大きく手をふった


電車はガタゴトいいながら、みんなをのせてトンネルに入っていった



ばいばい、優しいお嬢ちゃん…

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という話だ。


え?結局オイラの言いたい事は何かって?

それは自分で考えろ!!
2005/09/15(Thu)20:37:45 公開 / 黒ネコ
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