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『駅裏の魔法使い』 作者:翠にゃん / 未分類 未分類
全角6357.5文字
容量12715 bytes
原稿用紙約20.85枚
相方との「お題バトル」の今回のお題が『水』だったので、水をからめた小説…です。
ある晴れた日の夕方。
人通りの少ない駅裏の路地をふらふらと歩く2つの影があった。
1人は背が低く、もう1人は背が高い、でこぼこコンビ。
身長だけでなく顔立ちも正反対で、
背の低い方はアイドル級の可愛さ、背の高い方は平均以上のかっこよさ。
その辺を歩いていても嫌でも目立ってしまう2人組だ。
小学生の頃から仲が良く、周りからは「あいつらデキテんじゃねーの」的な勘違いをされることもしばしばであった。
長い髪を後ろで1つに結った長身の男の方が口を開く。
「なぁ水音…まだつかねぇの?」
「もうちょっとだと思うけど‥僕だってよく知らないよぉ。みなぎは本当に全然知らないの?」
ぷーっとほおをふくらませる『葛城水音(かつらぎみなお)』は、意識してるんだかしてないんだかわからないが、
そんな仕種で老若男女問わず、すべての人を魅了してしまう。
現に2人の通っている「海潤学園」には“水音ファンクラブ”なるものまであり、
生徒たちは水音を見かけただけでキャーキャーワーワーと騒ぎ立てる。
もちろん教師たちまでもが水音に夢中だ。
そして唯一水音と一緒にいる権利を与えられている『羽村(はねむら)みなぎ』は、そんな水音を見て一言、「知らねぇよ…」とつぶやいた。
水音の行動や言動でドキドキしないみなぎは「神の領域だ」とか、「感情が欠乏しているんだ」などといわれ、
いろんな意味でこの2人組は「学園1の有名カップル」だった。



さて、話は戻って放課後。
明日は水音の16回目の誕生日。
水音は一体誰と過ごすのか、と学園内はちょっとした騒ぎになっていたが、結局大半の人が予想した通り
「おい、水音。行くぞ」
「うん! ねぇみなぎ、ホントに明日僕のうち来てくれるの?」
という2人の会話によって、半強制的に目の当たりにさせられることとなった。
「あぁ行くよ。それより例の店、探してみるんだろ?行かねぇの?」
「行くよぉ〜!! あ…じゃぁみんなばいばぁーい☆」
水音は笑顔をふりまき、先に行ってしまったみなぎのあとを「まって〜」と言いながらぱたぱたと追いかけていった。
わかりきっていた結果だったが学園中はため息に包まれた。
そしてみなぎが振り返った時に目にした『少しの希望を持っていた輩たちのがっかりした様』はかなり滑稽だった。

学園から徒歩で1時間ほどの距離にある、さびれた駅の裏側は、本当に静かだった。
2人ともこんな所に来たことはなかったのだが、先日水音はおもしろい噂を聞いたらしく
「僕、気になるお店のこときいたんだけど、1人じゃ怖くて入れないと思うのね。だから…一緒にきてくれない?」
と言ってきたのだ。
ボケボケで天然な水音の言うことなんて、半分も理解できないだろうと思いながら、その「噂の話」を聞き始めたみなぎだったが、
さすがにここまでひどく意味不明なことを言ってくるとは思わなかった。
「あのね、お店の中には大きなおなべがあってね、その中にはいろんなものが入っててね、
 棚にはいっぱい薬の入ったビンとかが置いてあってね、んでね、こーもりとかからすとかがいてね」
「水音…「ね」が多すぎだ」
「う〜っ! とにかく魔法使いがいるんだって!お話のなかに出てくるような魔法使いが住んでるんだって!
 でもその家の中を見ちゃったら、その大きなおなべの中に入れられてぐつぐつと煮られちゃうんだって!」
みなぎは頭を抱えた。
「あのな、水音。おまえ、天然なのは知ってるけどいくらなんでもそんな話信じるやつはいねぇぞ?
 どうせ誰かがおもしろがっておまえに話してきただけだって。
 大体「店」って言ってんのに、入ったらなべに放り込まれるんなら「店」として成り立たないだろうが…」
実はみなぎもその不思議な店の噂は聞いたことがあるが、変人の店主がやっていて、変わった物が売っている店だってことしか聞いたことがなかった。
でもせっかく水音の誕生日だし、もし本当に変わった物が売っている店ならば、そこでプレゼントの1つも買ってやろうと思い、
みなぎは興味半分と水音のおもりを兼ねて一緒にその店に行くことを快諾したのだ。
しかし遠い…そして場所がわからない。地図にも載っていないのだ。
その後も水音がキャイのキャイの言いながら一生懸命話すことに相づちを打ちながらしばらく歩いたが、
ついに疲れの極地に達したみなぎの口から冒頭の「まだつかねぇの?」発言が突如飛びだしてしまったのだ。
そして水音がほおをふくらませた直後。
突然真後ろから声をかけられた。
「お主らの探しているのはこのじじいじゃぞ?」
「!?」「!?」
振り向くと水音よりちょっと背の低い、小さい白髪のじいさんが佇んでいた。
こんな静かなのにこのじいさんの気配に全く気づかなかったみなぎはかなり驚いた。
自分のことをにらみつけるようにみているみなぎと目があったじいさんは、
ニヤリと笑うと水音の方を向き、肩をぽんぽんっとたたいた。
「わかっとるよ。誕生日のプレゼント、彼氏と買いに来たんじゃろ?」
「えっ?プレゼント?」
「うわっ!! 水音、ちっちがっ………」
「うははは、そんなにあせらんでもいいじゃろうに。そこの可愛こちゃん、ちょっと待っとれ」
何のこと?って顔をした水音を置き去りにして1人あせりまくるみなぎをみて、ひとしきり笑ったじいさんは、すぐ後ろにある古そうな建物の中に入っていった。
「プレゼント?」
水音はもう一度不思議そうにみなぎに訪ねる。
「いや…その噂の店で気に入ったものがあれば、誕生日プレゼントとして買ってやろうかと思ってたんだけど…  
もしかしたらあのじじいがうわさの変人店主か?」
赤い顔をしてみなぎがそんなことを言っていると、じいさんはすぐにその建物から出てきた。
じいさんは手に持ってきた少し大きめの弁当箱くらいの大きさの木箱を水音に渡した。
「ほれ、おまえさんたちにはこれがオススメじゃよ。2人でパーティーでもしながら開けるがよいぞ」
水音はその木箱をくるくる回してあっちこっちから見ながら嬉しそうに「わぁ〜っ、わぁ〜っ」と言っていた。
「水音、中身もわかんねぇのにそんなに気にいったのか?」
「うん! だってなんか不思議な感じがするよ? しかもおじいちゃんが僕達のために選んでくれたんじゃん!」
それを聞いたみなぎは苦笑しながらズボンのうしろポケットから財布を引っぱりだした。
「お代は…効果を試してからでよいぞ。ま、きっとまた来ることになるじゃろうしな」
みなぎを見上げながら、じいさんは意味深な言葉を吐き、水音の頭をポンッと叩いて建物に入っていった。


「僕、ずっと疑問だったんだけど」
しばらく無言で何かを考え込んでいた水音が口を開いたのはいつも学校の帰りに使っている商店街付近にさしかかったころだった。
「プレゼントって、僕知らなかったのになんであのおじいさんは知ってたんだろう?」
水音が黙っていたので、みなぎもその間同じことを考えていたのだ。
あのとき焦ったのは水音に内緒にしてたことをじいさんに言われたからだった。
「あれだろ、うちの学園の誰かが『水音くんのお誕生日、何プレゼントする〜?』みたいなこと言ってたのを聞いてたとかじゃねぇの?
 制服見れば同じ学園の生徒だってわかるだろうし、水音は有名なんだからさ」
「うーん…でもやっぱしあのおじいさん不思議な感じだったよ。突然話しかけてきたりプレゼントだしてきてくれたり…」
そう言って大事そうに抱えていた木箱をこちらに向けてきた。
確かにリボンまでかけてあり、「Happy Birthday」なんて書いてある可愛いシールまで貼ってある。
じいさんが建物に入ってからこれを持って出てきた時間を考えてみたが、あの短時間にこの包装は不可能だっただろう。
「ま、いいんじゃね? あんまり深く考えないことだな」
みなぎは自分に言い聞かせるように言った。
「うん…。あ、そうだ。みなぎ…プレゼントありがと。僕すっごい嬉しい!」
ほおを赤らめてお礼を言う水音にみなぎは不覚にもドキッとしてしまった。
(お…おれは断じてノーマルだぞ…!!)


次の日---。
登校してる最中から下校まで、授業中以外の時間はほとんどプレゼント攻撃を受けていた水音はさすがに少しくたびれた様子だった。
みなぎはみなぎで、ぎゃーぎゃー騒ぐ奴らどもの悪の手から水音を守る(!?)ことに必死だった上、
直接本人に手渡せる勇気のない奴らからの「水音くんに渡してください攻撃」を受けていたのだった。
放課後。
“水音らぶ”な教師たちの粋な計らいによって、大きな荷物は後から手分けして運んでくれることになったが、
小さいプレゼントは少し持って帰ることにした。
でも歩いている最中も何人かが「お誕生日おめでとう」と包みを差し出してくるので
結局みなぎの手は塞がり、前も見えない状態になった。
そんな疲労困ぱいなみなぎをよそに、水音はかなり上機嫌だった。
そりゃそうだ。
手には昨日じいさんからもらった(後払いで買った?)木の箱だけを大事に抱え、今から水音のお家でパーティーなのだ。
昨日、
「明日一度家に戻ってからこれ持って行くから」
そう言って木箱を持とうとしたみなぎに、水音は
「いや〜っ。学校に持ってきて!んでそのまま僕のうちに直接来るの!そしたらいっぱいいっしょにいれるでしょ?
 もちろん夜はお泊まりしてってくれるよね?」
と騒いだ。
それを聞いたみなぎは立ち止まると、力なくうなずいた。
承諾したくなくてもせざるを得なかったのだ。

それには深い深いワケがあったのだ…。

  
  あれは高校に入学してすぐのある4月の出来事だった。
  「あしたみなぎのお誕生日でしょ?おいわいしたいからお泊まりしにいってもいーい?」
  昇降口で靴を履き替えていたみなぎに水音はこれ以上ないほどの笑顔で話しかけてきた。
  この笑顔で学園の半数は気絶及び失禁するほどの威力がある。
  しかしみなぎはその笑顔をはね除け、ぼそりと
  「男どおしでお泊まり会かよ…つか俺、明日は彼女と過ごすし」
  と言った。その瞬間……
  「そ…そっか…そうだよね…ぼく…ぼく…じゃま……ごめんね…」
  消え入りそうな声でそれだけつぶやくと、水音は大きな目から大粒の涙をパタパタとこぼし、
  走り去っていったのだ。
  「えっ?あっ?んっ?…まぁいいか」
  軽く考えていたみなぎに、次の日恐ろしい悪夢が襲い掛かる。
 
  「おはよー」
  いつものように教室に入った瞬間、自分に向けられる非難非難非難非難……の目。
  校門辺りからいつもと違う負のオーラが漂っていたのはなんとなくわかっていたのだが、
  自分の教室でその理由がはっきりわかった。
  ぐるりととりかこむようにできた人の輪の中心で、水音はぐすぐすと泣いていた。
  「…こ…んの…やろう!!!!!」
  水音が何を言ったか知らないがこんなやり方は卑怯だ。ふざけんな。
  みなぎはわけもわからずカッとなり、水音の胸ぐらをつかもうとした。
  その時。
   「水音くん泣かすなんてさいてい!」
   「水音が可哀想だろ!」
   「水音くんが何したっていうの!」
   「水音に謝れ!」
   「水音と一緒に入れるだけでありがたいと思え!」
   「水音くん大好き!!」
   「水音さいこ〜!!」
  同じクラスの奴らだけでなく、他のクラスや2年・3年の生徒まで混ざっての大合唱。
  怒ってるとかっていうものじゃなく、嫉妬や妬み(やどさくさにまぎれての告白)だ。
  この時みなぎは悟った。
  水音と一緒にいるってことはこういうことだ。
  水音を中心に動いていると言っても過言ではないこの学園の中で、
  横にいても許される唯一の存在がみなぎ。
  そのかわり、水音を泣かせたり困らせたりすた場合は、
  嫉妬と怒りで呪い殺されてもおかしくない、危険な存在でもあるのだ。
  ケンカとか争い事があっても、余裕で勝てるだけの力を持っているし、
  別に仲間はずれなんて子供じみたことをされても怖くも悲しくもない。
  でも水音がみなぎを慕ってくる以上、みなぎは水音を守る存在でなければいけないのだ。
  学園のアイドルと一緒にいると、めんどくさいことに巻き込まれるものだ。

まぁ、水音には逆らえない、というか逆らう気もないというのが最近のみなぎの気持ちである。

さて、やっとの思いで水音の家にたどりつき、荷物をおろしたみなぎは大きなため息をついた。
いくら小さくて軽いプレゼントだけとは言ってもざっと50個以上はあるのだ。
「おーい、このプレゼントの山どうすんの? 1個ずつあける…」
みなぎが水音の方を見ると、水音は満面の笑みを浮かべながら
自分が抱えて持ってきた木箱のリボンをほどいているところだった。
「おいおい、じいさんが2人でパーティーしながらあけろって言ってたじゃんか…」
「いーの!あけるの! 他のプレゼントなんて別に興味ないし」
可愛い顏して恐ろしいことを言う。
「んじゃリボンだけほどいたらパーティーの準備しようぜ。木箱は逃げないから」
「む〜」
水音は悪態をつきながらもしぶしぶ立ち上がり、キッチンに向かった。
ケーキや料理をみなぎに渡しながら、水音は「早くみたいよ−」を連発する。
ハイハイ、と苦笑しながら持っていたお皿にのっているからあげを1つつまんで口に入れる。
相変わらず水音の料理は半端なく美味しい。
外交官の両親を持つ水音は小さいときから親の不在が日常で、
一通りの家事一般をこなしてしまう。
元々のすじもいいのだろうし、母親の教育がよかったのも幸いだったのだろう。
おもわず「うまっ…」というと
「あーっ、つまみぐいしたでしょ。水音もたべるー」
と近づいてきた。
「おまえは座ってからな」
みなぎはそういうとほとんど準備の終わった席にどっこらしょーと言いながら座った。
一通り準備が終わって、水音が最後に飲み物とグラスを持ってきたとき、
ケーキにささっている16本のろうそく全部に火がついたところだった。
机に乗り出し、しばらく炎を見つめた水音は、
大きく息を吸い込み、フーッと火を吹き消した。
「はい、誕生日おめでとう。水音」
「へへー ありがとぉ」
水音は本当に嬉しそうに笑い、電気をつけながら
「ね、箱あけてもいい?」
とみなぎの顔をのぞきこんだ。
「あぁ、あけろよ。俺も実はちょっと楽しみだし」
みなぎはそんな水音の行動がおかしくておかしくて、笑いをかみ殺しながらやっとの思いでそう言った。
よっぽど楽しみだったのだろう。
買ってよかったなぁ…と感慨に耽っていると
「なんだろ、これ?」
と水音はすっとんきょうな声をあげた。
みなぎは水音の後ろから箱の中身を覗き込むと
そこには7つの小ビンが並んでいた。
それぞれ赤、ピンク、青、水色、緑、黄色、紫の7色のリボンが結んであり、コルクのふたがしてあった。
「おみず…かなぁ?」
水音が言うように、ビンの中には確かに無色透明の液体が入っている。
「おい、そこ」
みなぎが指差した先には、水音が持っている木箱のふたの裏側。
ボロボロになった茶封筒みたいなものが貼ってあり、その中から白い紙のようなものが顔をのぞかせていた。
「なんだろね、これ」
首をひねりながら封筒の中身を取り出し、水音はわさわさとひらいてみた。
みなぎも横から覗いてみる。
そして2人は声を揃えてつぶやいた。

「まほうのみず?」
「魔法の水?」
2005/09/10(Sat)19:56:04 公開 / 翠にゃん
■この作品の著作権は翠にゃんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
前回「情景描写が足りない」ことが痛いほどわかったので、
今回はその辺に気をつけて、ちょっと明るめな感じで書いてみました。

そして…意外と長くなってしまい、2回に分けて投稿することにしました。

よろしかったら読んで感想をお聞かせください。
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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