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『もうキミしか見えない!第1話 更新』 作者:ディーダ / リアル・現代 恋愛小説
全角8973.5文字
容量17947 bytes
原稿用紙約29.9枚
  タッタッタッタッタッタッタ……学校へと続く道を俺はダッシュで駆け抜ける。
しかし、学校のカバンを持ち、走っているのは俺だけではない。
俺の周りに軽そうに見えるカバンから、いかにも思うそうなカバンを持ち
懸命に走り抜ける同じ学校の奴がたくさん見える。
なぜならば時刻は8時ジャスト 学校の登校時間は8時15分!
そう、これはいわゆる時間との戦いって奴だ。

「はぁ、はぁ、間に合わないなこりゃ……しゃあない、あの道を通るか」
 すると俺は学校へと急ぐ団体さんの列を外れ
立ち入り禁止の看板のたつ廃墟のビルへと進む。
そして、ビルの裏にある、魔物が出そうな林を抜けると足を止めた。
そこにある光景は今まで遠くに見えたはずの学校の裏だ。
 この道は本来近道と呼ばれる道だろう
しかし、廃墟ビルは看板に書いてある通り立ち入り禁止。
むやみに入ると自治体がらみでいろいろ面倒なのである。
その先の林にはさすがに魔物は出ないが
ヘビ、トカゲ、ネズミなどが良く出るためにあまり人は近づかない。
なので、近道とは言わずに「あの道」と呼んでいた。

 目の前の学校を見上げた後に、腕時計に目をやる。
「8時5分。うんうん、日の光がまぶしいね〜」
 ここからだと3分で校舎に入れる、楽勝な時間だ。
ガッツポーズを決め自然とにやける
「しっかし、今月入って3度目だよなこの道。まだ5日だぞ?かったりぃな」
 なるべく通らないようにしないとな〜
心でそう決めた時に、後ろから誰かが走ってくる音がした。

 ドスッ、林から走って来る音が俺に当たり止る。
当然、俺は道路に叩きつけられた。
ぶつかった方は、俺がクッションになりあまく痛くなさそうに思う。
「いてててぇ〜、一体何が起きたんだ?」
 叩きつけた背中をさすりながら、困惑混じりで言った。
すると、ぶつかり気を使っているのか俺のカバンを拾い俯いたまましゃべる。 
「あ、えっと、その……ごめんなさ〜い!」
 高い声で元気に誤りながら俺のカバンを突き出し頭を下げる。
それはまるで、賞状をもらう姿勢のように見える。
声を聞いて女子だと解った俺はカバンを受け取りながら
大丈夫?怪我は無い?と声をかけた。
初めて顔を上げ、黒い髪を伸ばし、なかなか可愛い子だと思う。
「は、はい! 大丈夫です。お陰様で」
「そっか、よかった。にしても驚いた〜俺以外のこの道知ってる奴がいるとはな」
 怪我がないと聞き安心していながらそう言った。

 しかし、向こうはマジマジと俺の顔を見ている。
えと、何かついてる?そう言おうとした時だった。
「あ、やっぱり優ちゃんだ! 久しぶりだね〜元気だった?」
 ……は?突然の挨拶に頭の中でクエスチョンマークが踊る。
たしかに俺は「優助」だけど、俺はこいつ知らないぞ?
ん?そういえば「優ちゃん」?何か懐かしく感じるのはなぜだ?
「ん? 思い出せない? けど優ちゃんだよね?」
 「優ちゃん」ではないが「優助」なのは認める。
ふと制服に目をやる、この制服に赤いリボンって同学年!?
ますます解らなくなる、中学の頃の先輩だと思ってたが同じ高校じゃないしな。
俺をしたの名前で呼ぶ奴はたくさんいた、しかし「ちゃん」は例外だ。
「あれれ? まだ、解らないの〜? 私だよ川崎京子だよ!」
 京子?また何か懐かしい感じがする
頭でパズルを並べる。「優ちゃん」?「川崎」?あり?俺も川崎……。
あぁ!もしかして、嫌、間違いない!
頭の中でパズルが揃い奥にあった記憶が目を覚ました!
「お、お前 俺といとこの京子か?」
「せ〜いか〜い。やっと思い出してくれたんだね優ちゃん!」
 その返事に思い出した!という達成感を抱く。
それと同時に疑問が浮かび、すぐさま質問した。
「正解って、お前小学校の頃引っ越しただろ! なんでここにいるんだ?それにその制服は?」
 同じ高校の制服…頭で分かっていながらも聞かずにはいられなかった。
気が動転するとはこういう事か、頭の中で1つ学習する。
「もぅ! 相変わらず鈍いね〜優ちゃんは〜! また戻って来たんだよこっちに」
 やっぱり〜と思いながらも頭の中は大パニックを起こしている。
いつから学校に?親はどうした?など無数の疑問が頭に浮かぶ。
そんな中、一際大きな疑問が頭をよぎる。
「お前、何で戻って来たんだ?それに、何でうちの高校なんだ? 他にも高校たくさんあるのに」
 ここらへんは高校がたくさん存在するそれこそレベルの低い所〜高いところまで。
そして俺が通うこの中央林水高校こと林水はごく普通のレベルだ。
俺の知る限り京子は小学校の頃から頭がよく常に学年の1位2位を争うほどの秀才だった。
「そ、それなんだけど…」
 良いにくそうにもじもじとした時だった
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン 学校の登校時刻の予鈴が鳴り響く。

「やっべぇ!鐘なっちっまった。またあの先生(やろう)に叱られちまう…急ぐぞ京子!」
 そういって京子の手を取り走り出す。
あの先生(やろう)とは、予鈴がなると校門に立つ学年主任の事で
遅刻癖のある俺には目を光らせる、そんな奴だ。
  「え? あ、うん」
 困惑の表情を浮かべながら返事をすると俺の横に来て学校まで走り出した。
走りは速い俺だが隣には京子の姿が見られる。
い、いがいと速いじゃねぇか……。

 下駄箱までたどり着くと8時12分。間に合う見込みがありそうだ。
ちょうど、先生(やろう)が出てきて校門に立つ、間一髪だ!
「これなら遅刻は免れるな あっぶねぇあぶねぇ」
「ありがとね、転校早々遅刻するとこだったよ」
「……? ちょっ、ちょっと待て今日から転校だったのか!?」
「うん、そうだよ……あ、いけない。そゆことだからまた後でね〜」
 きちんとした返答をする間も無く京子は行ってしまった。
朝からとんだ1日だな、まったく。
ため息を溜めながら腕時計を見て、ため息を飲み込む。
「やべぇ、ぼけ〜っとしてる時間が長すぎた!」
 校門で捕まらなかったのだから今日は遅刻になってはもったいない
慌ててそさくさと教室まで走り込むと、丁度チャイムがなった。
教室に入り、ドアを閉めずに席へ向かい
閉めてくれよ〜と窓際席の人に言われた言葉を背中に受け、席へと座った。

「セーフ、セーフ。ふぅ、今日は朝からかったりぃ一日だな ったく」
 席に着くと自然とそう言い放ち、ため息をやっと吐く。
するとすぐに担任の斎藤光也、通称サトミが入ってきた。
相変わらず時間ピッタリだなったく、もうちょい遅ければ遅刻減るのにな〜。
 起立!委員長の号令に合わせて立ち、挨拶をする
着席の声が聞こえイスに座ると近くの男に声をかけられた。
「おはよ 川崎〜毎度の事ながら遅刻ギリギリかい 忙しい奴だな」
「なんだお前か、毎度のことながら余計なお世話だ!」
 日課なのか、いつも通りの声をかけられ
いつも通りに質問をされ、いつも通りに返答した
こんな事している間にもサトミは出席を取りはじめる。
「今日は何をしてて遅れたんだ? 川崎優助さんよ〜」
「別に何でも良いだろ! それより、もうすぐ呼ばれるぞ!」
 この質問もいつも通り、普段はしかとだが今日は返答する。
いつも、同じ事の言い合いなのでアドリブがきくかどうかの実験だ。
「む? そ、そうか、まぁ遅刻しすぎでどうこうなろうと俺の知った事じゃないがな」
 今日もしかとだと思っていたらしい、返答されて驚いたのか口調が変わる。
フン、たまに態度を変えれば口調が変わるか、アドリブ聞かないやつめ!
心でにやりと笑っているときにサトミの声が聞こえた。
「岡崎〜! 居ないのか岡崎直弥」
「あっ、はい。きちんと出席してますよ〜岡崎直哉君は〜」
 何かを俺に言いかけていたが
名前を呼ばれたらしく岡崎は慌てて答えた。
「ったくのん気な奴だなお前は…まぁいい、次は、川崎〜」
「うい! ここにいるぞ〜サトミ」
 あいうえお順に俺が呼ばれるのが解っている
いつもの様に軽く返事をするとサトミがそこに突っ込みをいれる。
「その言い方はなんとかならんのか!」
 なりまへ〜ん! 軽く返してサトミをからかうと
頭を掻きながら少し照れくさそうに答える。
「サトミは呼び名になってるし許す。が、せめて「はい」と言えよ。え〜次は……」
 サトミと言う呼び名は本人も気に入ってるらしい。
へんな教師だよな〜まったく。そこが好かれるだろうけどな。
しかしまぁ毎日、全員に突っ込み入れてご苦労さんだなサトミさんよ。
まぁ呼ばれた事だし寝るとするかな、おやすみ皆。

 そう言って眠りはしないもののカバンをマクラに寝る体勢を取る。
「っと、聞き漏らしはないな、連絡は以上だ」
 委員長が号令をかけようとするのを止めて
サトミがまた話を続ける。
「静かに! 今日からこのクラスに入る転校生を紹介する。入れ〜」
 ドアが開くと同時に失礼しますと小さく聞こえ
ざわめきが聞こえてくる。
うるせ〜な〜と思いながらも転校生の顔を拝める。
「え〜、今日からこのクラスでお世話になる川崎京子です! よろしくお願いします」
 ペコリと頭を下げるとニコッと笑い手を振った。アイドル気取りかお前は……
転校生って聞こえてもしやと思えば、やっぱり京子か
京子以外の転校生を微かに期待していたが、現実はそうもいかないらしい。
「見ろよ川崎、お前と同姓の子だぞ ん? どうしたんだ、その面は?」
 どうと、言われてもいとこだしな不思議な気分だ
確かに会うのは8年ぶりになるが、わざと距離を取っていた。
はっきりいってあまり、嬉しくない気持ちの方が強い。
「同姓も何も俺とあいつはいとこだ」
 とりあえず隠した方がよさそうだがこいつには教えとく
後で知りませんでしたってなると面倒だしな、平気だよな。心に言い気かさせる
「マジかよ! お前みたいなぐ〜たら野郎と京子ちゃんがいとこ!? ありえね〜」
 わざとなのかずいぶんでかい声、言わない方がよかったか? 
しかし、周りがうるさくて俺らの会話を聞いてる奴は居なかった。
とりあえずは助かった、いろいろと厄介事になるのはかったるい
話したことに後悔しながらも口止めすることにした。
「おまえなぁ、言いふらすなよ! 変な噂立ったら真っ先にお前絞めるぞ」
「怖い顔するなよ! 安心しろ友の秘密くらいは守ってやるよ!」 
 すこし不安だったがこいつはけじめはつける男だ秘密は守る
まぁ大丈夫か、もし、裏切ったなら奥歯ガタガタ言わせりゃいいしな。
「え〜席は委員長の隣が望ましいが、空いてないしあそこでいいか?」
 と、指を指した先は俺の隣だった。 
マジかよ?勘弁してくれよと思っている所に
「はい、解りました!」
 と、満面の笑みを浮かべてこっちへ来る。
もしかしていとこって事知らない?そんな事を思いながらサトミを眺める。 
「同じ名字同士ちゃんと面倒みるんだぞ川崎優助クン」
どうなや知っているみたいだった
 クンまで付けられると嫌だと言えない。俺はしぶしぶへいへいと小さく返事をした。
「よろしくお願いしますね 川崎さん!」 
 いとこの隣なんてかったりぃ〜と思いながらも作り笑いの笑みを浮かべて返す。
俺の日常を返せ〜!心で泣き叫ぶが誰にも伝わらない
京子は微笑み、周りの男からは睨まれる、最悪だなこりゃ……。

「あぁ〜、今日も終了だぜ〜」
 HRが終わって帰ろうとしたときに肩を捕まる、声の主が京子だとすぐ解る。
休み時間は隣の教室へ行き、昼は1人で庭で食べた。
なるべく関わりたくないが逃げられない
腹をくくって振りいてやる。
「待ってよ〜優ちゃん」
 やっぱり京子だった。京子は話があるから一緒に帰ろうと言い出した。
まぁ帰るくらいなら平気か?
距離を置いたとはいえ、嫌いなわけではない。
ただ距離をとっていたので離しにくいだけだった
まぁ向こうから声かけてくるならいいか、そう思ったときに大事な事を思い出す。
「わりぃな、俺ゃ今日は掃除当番&バイトあるんだよな」
 一緒に帰ってもいいが、これは事実だ。
神様が行かない方が言いと言ってるんだと言い聞かし
諦めてくれる事を祈る、なにかとこいつもしつこいのだ。
「なぁに掃除当番は俺が引き受けてやる、バイトも変わりに出てやるよ」
 そう声をかけて来たのは岡崎だった。
お前が人助け?名に言ってるんだ?と思いながら口を開いてやる。
「いや、そういう訳にもいかないだろ」
「お前と俺の仲だろ、バイトは同じだし、掃除当番くらいやってやる。久しぶりに会ったんだろ」 いつもと違う口調、そっか、そうだったな。
俺とこいつとは隠し事がおそらく無い、いわばこんな奴でも親友なのだ。
こいつの家庭を思いだし、素直に好意を受ける事にする。頼む、小さく呟いた。
「いとこ同士、仲良く帰れよ」
「あ、ありがとうよ。お前がこんないい奴だなんて思ってもみなかったよマジで」
「ハハハッ、何Aライス1週間分おごりなら安いもんさ あ、天気雨くるし急いで帰ろよ じゃ!」
 いきなり口調が元に戻り、違和感を感じるがうなづいた。
ん?Aライス?1週間?ハハハ、んな事だろうと思ったよ!
冷たく微笑むがそこにはもう岡崎は居なかった。
「まったく、勘弁してくれよなまったく。はぁ……まあいい、一緒に帰るぞ」
 京子にそう言うと二人で歩き出す。
転校生の噂が広まったらしく、男どもに睨まれるが
そんな視線は無視して校舎を去る。

「そうゆう事なんで今日は俺がバイト出ますんで、失礼します。…ふぅ、いとこなんて滅多に会えない奴もいるんだぞ…感謝しろよな」

「で、話ってなんなんだ?」
 自販で買ったコーヒーを渡しながら尋ねると
ありがと、と言いながらコーヒーを受け取り、話始めた。
「私がこっちに来た理由を話さなきゃいけないから」
 無理に明るく話す京子に見えたが気のせいだろうと思い、話を聞いた
そういやなんでかな?と思いながら俺の分のコーヒーを買う。
「私のお母さん達の事なんだけど」
 いきなり、おばさんの話題が出来てきて
元気かなと思いながらもコーヒーを口に運ぶ。
「実はねお母さん達が出かけてる時に事故にあって」
 ……え? いきなり世界が変わったように思った
寒気がして体が震える、コーヒーも口から遠ざけていた。
「病院運ばれたけど帰ってこなくて……それで……」
 カラーン…急に力が抜けコーヒーを落とした
昔から京子は嫌な事を話すときにわざと遠い言い方をする。
おばさんたちがどうなったのかすぐにわかり、頭が混乱していく
そんな馬鹿なおばさんが亡くなった?嘘だろ?
「ど、どういうことなんだよそれは?おばさんが亡くなった? 嘘、だろ?」
 心で思っている事を率直に尋ねる
口調が激しくなっているのが自分でも解る、かなりの勢いだろう。
「こんな嘘つく訳ないでしょ!」
 俺の迫力を上回るほどの勢いで叫ぶ
こんな、京子の顔は見たことが一度も無かった。
もう、無理やりにでも明るく出来ない顔と声の迫力で嘘ではないのが解った。
「そんな事、初めて聞いたぞ…」
 頭が混乱して冷静でいる事を忘れさせていく
なるべく心を静めて静かに激しく問い掛けた。
岡崎の言った通り雨が降ってきた
「電話したけど、私の知ってる番号は使われてなかった」
 そうか、変えたんだっけっと思い出す。
この8年のうちに電話番号を変えた
その時に京子達とは距離を置くべく電話番号を教えなかった。
「…悪かったな。お前とは合うこともないだろうと思って新しい番号教えなかったんだ」
 お前と距離をおきたかったから、そんなことは言えずに
つい嘘をついてしまう。自分が情けなく思えて頭に来た。
「葬儀は近所のおばさん達があげてくれた。でも、寂しくなってこっちに戻って来たの」
 京子は激しい口調ではなくなった
しかし、雨の混じった涙がこぼれてきた。
「して……どうして、私を1人にしたの?」
 泣きながら話しているので良く聞こえなかったが
そう尋ねるいる事が解り、俺の考えを全て話す事にした。

「俺には両親って奴は居なくて、生まれてずっと孤児院に預けられてた。それは知ってるだろ? 俺が小3の頃におばさんが俺の所に来て、俺の事いとこだから、お母さん達の代わりにはなれないけど、これから面倒みるねって、そう言って俺を連れ出してくれた。正直あんた誰って感じだったさ、いきなりいとこだよって言われても実感なんてわかねぇさ。でも、でもな、孤児院に居ても誰とも付き合おうとしてなかったし、ずっと外で自由に遊べたらって、そう思ってたから、地獄から出れる、この生き地獄から出られるんだなって幼いながらに思ったんだ。外に出れたら自由に生きてやるってそうやって、自分の事だけ考えてた。けどその考えは変わった、俺と無理にでも付き合おうとするお前や、一生懸命家族として向かい入ようとするおばさん達を見て、俺は今、本当に幸せだと思った。けど、辛い過去を持った俺にはそれを素直に受け入れる事が出来なかった、みんな俺の為に無理してるんじゃないか? そう思い始めた。俺が来てからこの家族は変わってしまったんじゃないか? そう、考え始めた。俺には生まれつき家族なんて居ない、だからそんな俺が楽しいはずの家族にズカズカ入り込んできて、その幸せをぶち壊すなんてそんな事していいのか? って思い始めた。そのうちにお前の笑顔が偽りに見えてきて、おばさん達も迷惑に思い始めている、そんな気がしてきた。多分、お前がおばさんを取られるって思っている風に感じたんだろうな。だから俺なんて居ない方がいんだ、孤独しかしらない奴は家族って中に入っちゃいけないんだろう、そう思うようになって、消えてなくなりたくなった。そんな事考えてるうちにお前達が引っ越すって言い出して、不幸にしかできない俺は孤独に戻ろう、そう思った、だから引っ越さずに孤児院へ戻ったんだ」

 国語力が足りないのか、えらく長くしゃっべていた。
5分ほど、話していたのに隣を見ると京子は涙を浮かべて
ずっと話を聞いていた雨の中傘を差さずにずぶぬれだった。
そんな京子を見るたびに、心がいたくなり、涙がこぼれてきた。 
「これが、俺がこの8年間お前と距離取っていた理由だ」
 涙で声が震えながら語る俺に
京子が泣きながら答えてくれる。
「そんな、そんな事思ってなかったのに、め、むぇ……」
 呼吸を整えるのために
何度か深呼吸をしてまた話を続ける。
「迷惑だなんて、思った事、ヒック、な、なかったのに」
 その言葉を聞いて更に心が痛くなる
解っていた、孤児院に戻ると断固として言っていた俺を、涙を流してまで止めまいとするお前を見ながら、この解ってたんだ。そう言おうとするとまた京子が口を開けた。
「ほんと、本当は一緒に引っ越して、たく、たくさんの思い出作りたかった」
 京子の話す一言一言が胸に響いていく
京子は休み休み話を続ける。
「優ちゃんには、おとうさんとも、お、おかあさんとの思い出もないから」
「これから、たくさんつくろうと、して、た、のに」
「私を1人にするなんて、あんまりだよ、気持ちもしら、知らないで……」
 そういい終わると京子は再び泣きじゃくってしまう
あんまりだよ……そこ、言葉を聞くと俺の心は今には砕けそうになる
「……かだな、俺は、馬鹿な奴だよな」
 自分の考えが思わず、口から漏れる。
声を出したくなるくらいこみ上げてくる悲しみを噛み殺し俺は続けた
「不幸にしない為にって思って一人になったのに、結局お前を傷つけちまってたんだな」
 となりにいる京子がその場にしゃがみこみ
泣き始める、もう立っている体力ないのだろう。
俺もしゃがみこむと
「今まで、1人にしてごめん……もう、1人には絶対にしないから、俺を許してくれ」
 そう言い放ち頭を下げると京子が俺にしがみつく。
ずぶぬれの服の来た京子が触れると、そこから寒さが感じられる
「今まで、寂しかったんだよ〜ほん、ほんとに、もう1人にしないでよ〜……」
 そう言って更に激しくしがみ付く
ああ、もう1人にはするものか。そう呟くと俺はそっと抱きしめる。
「すまなかった、本当に、本当にすまなかった、これからは1人しないからな……」
 そう言って俺達は抱きしめあった。
恋人がする「抱きしめる」ではなく、俺達は互いに1人にしない
そう誓うつもりで抱きしめたのだろう。

 どれだけの時間が流れたのだろう?
雨は止んで空は晴れている。虹も見える。
「見てみろよ京子、虹が見える。きれいだな」
「うん、きれいだね優ちゃん」
 ずぶぬれの俺達は立ち上がり
空を眺める。まるで俺達を祝福するかのようなそんな綺麗な空だった。
「また見れるといいね優ちゃん」
「また、見れるさ。これからはず〜っと一緒なんだから」
「うん、そうだね……」
「……帰るか?」
「そうしようか」
 この綺麗な空の下、俺達は歩きだした。
その足取りは決して軽やかではないが、新たなスタートを告げていた。

「寒いな、さすがに」
「まぁ、あれだけ長い間雨にうたれてたからね、無理も無いよ」
 ずぶぬれの服を来た俺達は
くしゃみをしながら歩き回り話をする
「じゃあ、急いで寮まで送ってやるよ、こっちだよな?」
「ちがうよ〜。私の寮はこっち〜」
「こっちは俺の家のほうだぞ? 寮は向こうだぞ?」
「そうだよ?だって私の寮は優ちゃんの家だもん!」
「まさか、学生寮申し込んでないのか?」
「優ちゃん寮に来るつもりでこっちに来たんだよ?するわけ無いじゃん」
「はぁ〜、人の家を寮にすな!」
「えへへ〜、ずっと一緒にいるんでしょ? 硬いことは気にしないの〜」
「まったく、家事はお前に任せるぞ?」
「了解! お世話になります優ちゃん」
「ったく〜。かったりぃな〜」
 こうして俺達いとこであり、クラスメイトの同居生活が始まった。
かったるい。しかし、この先どんなことがあろうと
こいつから離れないと俺はこのとき自分に誓った。
俺達2人の笑い声が響くこの住宅街の中で……。

 しかし、この時の俺達には
これから来る不幸など知る由もなかったのだ。
「見ちゃった、見ちゃった。転校生の京子さんと優助がいとこで同居だなんて! これは、スクープ! さっそく次の記事にしよ〜っと!!」

 電柱から2人を覗いて影が2人の後をつけて行く。
バサッ その影の学生帳が落ちた
 2年5組 佐藤 真子 学校新聞製作委員会 副委員長…… 
2005/08/28(Sun)05:15:51 公開 / ディーダ
■この作品の著作権はディーダさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
アドバイズをいただいたので更新しました
見やすくすることと前提に内容の少しいじりましたので
更新という形でお願いします
これにて1話は終了したいと思います
意見など、ありましたら2話から取り入れたいと思います
まだまだ未熟でありますが
これからもお願いします^^;
この作品に対する感想 - 昇順
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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