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『自由』 作者:Orpheus / 未分類 未分類
全角1091.5文字
容量2183 bytes
原稿用紙約4.15枚
私には戸籍がなかった
生まれてからほとんど家の外に出してもらえなかった
出生届すら出されていなかった
家から出してもらえないだけで私には、それ以外は普通の家庭であったと思う
私は本が好きで本はいくらでも買ってもらうことが出来た
家族とそれなりに会話をしていたし
ご飯ももらっていた、衣服も買ってもらっていた
特につらくはなかったが
家の外に出て自分ひとりで生きたい、「自由」になりたい
と思うようになった
18歳のある日、私は逃げ出した
家から逃げ出すのは簡単だった
誰もいなかったし鍵もかかっていなかった
働いて一人で生きよう、逃げるとき私はそう決心した
私は自由だった
どこにでもいける、そんな気がした
とりあえずホテルに泊まった
お金の使い方は本から学んだ
逃げるときにしばらく食べれる程度のお金は持ってきた、2週間は働かなくても大丈夫だろう
その間に仕事を探さなくてはならない

1日目は町を歩き回ってみた
本で読んでいた想像とはずいぶん違っていた
とても新鮮なものが多かった
時々「求人」と書いた張り紙を見つけた
履歴書が必要だということを知った
履歴書とペンを買ってホテルに戻った
名前を書く
とりあえずホテルの住所を書く
電話番号にもホテルの電話番号を書いた

腕が止まる
「学歴」
私にはそんなものはなかった
ウソを書こうとも思ったが第一、どんな学校があるのかも知らなかったしすぐにばれてしまう
私は履歴書をあきらめた

2日目
履歴書を必要としない…過去にこだわらない職場を探さなくてはならない
一日中歩き回ったが見つからなかった
それから9日間歩き回った
お金も底をついてきた

ある日ついに履歴書を必要としないところを見つけたずねてみた
今まで感じたことのない雰囲気のところだった
そこにいる人たちもとても怖かった
私は逃げた
ひたすらに走り続けた
しばらくして振り返る
追ってくる人はいなかった
それすら確認せずに走っていたのだ

それからまた3日間職を探し続けた
お金も底をついた
ホテルも追い出された
夜の街は怖かった
どこに行けばいいのかもわからなかった
私は自由であるはずなのにどこにもいけなかった

気づけば家の前にいた
結局ここに戻ってくるしかなかった
ドアノブを捻る
ドアは簡単に開いた
両親は私の姿を見ると「おかえり」と言って食事を出した
「どこで何をしていたの」とか「心配した」などは言わなかった
両親は知っていたのだ
私が外では生きられないことを
私が働くことが出来ないことを
私にははじめから自由などなかったのだ

それ以降私が外に出ることはなかった
家の鍵は開いている、誰も家にはいない
それでも出ることが出来なかった
2005/08/11(Thu)22:21:04 公開 / Orpheus
http://blog.drecom.jp/orpheus004/
■この作品の著作権はOrpheusさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初投稿です
指摘されてみようと思い前にblogで書いてたのを載せてみました
ベースを仕事中に考え
続きを考えながら書きました
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