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『雨』 作者:翠にゃん / ショート*2 ショート*2
全角1377文字
容量2754 bytes
原稿用紙約5.7枚
雨が降り続く。
今日でもう一週間。

会社には しばらく休む と連絡をし、
何か怒鳴っていた部長の言葉を聞かずに電話を切った。
誰とも連絡を取りたくないから、
携帯電話の電源を切り、ゴミ箱に捨てた。

何もせず、ずっと同じことばかりをぐるぐる考える私。
何もせず、ずっとベッドに座っている私。


思い出すのは 優しくて淋しい水色の瞳。


わたしと過ごした日々は幸せだった?
わたしに出会えてよかったと思ってくれてる?

もういないあの子に、心の中で問いかけて1日が終わる。

日付けが変わる頃、わたしはお線香を一本あげ、
1日座っていたベッドに横になる。

目をつぶると、さっきよりも大きな音が窓を叩く。

あの子に出会った日も雨が降っていた。




わたしがあの子に出会ったのは3年前。
田舎から就職の為に上京して3ケ月たった、
ある雨の日の夜だった。
慣れない都会での生活と仕事、満員電車で
毎日くたくたになっていたわたしの元に、
あの子は現れた。

傘が役にたたないほどの大雨に、
いらつきを通り越して諦めたわたしは
傘を閉じ、雨に打たれながらのんびりと歩いていた。

いつも通る公園の出口。
しゃがみこんで見なければわからないくらい、
深い木の影に、あの子はひとりぽっちで震えていた。
泣いてたわけじゃない。
なぜそんな所をのぞいてみたのかもわからない。
でも確かにあの子はわたしを選び、呼んだのだ。
わたしと一緒に生きていきたかったんだ。

それなのにわたしはあの子を裏切ったんだ。




どうして気づかなかったんだろう。
あの子はずっと、わたしに伝えていたのに。

毎週決まった曜日・決まった時間になると
決まってわたしを困らせるんだ。

自分よりも「あの人」を選ぶんじゃないか、
自分が「あの人」によって滅ぼされるんじゃないかって。
あの子はずっと不安で、
だからこそいつもいい子にしてたあの子は、
「あの人」が家族の為じゃなく、わたしのためにつくってくれる、
二人だけの時間が近づくと、
狂ったように悪い子になって、
わたしにうったえかけていたんじゃないのか。

あの子のことばかり話すわたしに腹を立て、
あの子をこの世から連れ去った、動物嫌いの「あの人」。
あの子は本能で気づいていたのかもしれない。

気づかなかったのは、「あの人」との時間に夢中だった
愚かなわたし。
口先ばかりであの子のことを本当に考えられなかった、
浅はかなわたし。
自分だけの幸せを追いかけて、あの子を幸せにしてあげられなかった、
馬鹿なわたし。
恋してたわけじゃない。
でも今思えば、確実に「あの人」よりあの子を
愛してたわたし。
『愛してるつもり』だった「あの人」に、
『本当は愛してた』あの子を奪われたわたし。



ねぇ、神様。
この降り続く雨は
何を洗い流そうとしてくれているの?

あの子がこの世からいなくなったこと?
「あの人」があの子を殺してしまったこと?
「あの人」がこの世からいなくなったこと?

それとも
わたしが「あの人」をあの子と同じ世界に連れていったこと?


わたしの罪を神様は許してくれますか?
あの子は私の罪を許してくれるよね?



血だらけの自分の体と
もう動かないあの子を
抱き締めながら
わたしは今日も眠りにつく。


雨はいつまで降り続くんだろう。
2005/08/07(Sun)19:31:48 公開 / 翠にゃん
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■作者からのメッセージ
相方とお題を出し合い、そのお題に沿って小説を書く というバトル?をやっています。
自分のHPには知り合いしか来ないので、率直な意見がまったく聞けません。

ここで厳しかったり優しかったりする意見がいただければ、今後小説を書いていく糧になると思うので、どうかよろしくお願いいたします。
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