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『薬売りのマリア』 作者:菖蒲 / 未分類 未分類
全角3634文字
容量7268 bytes
原稿用紙約11.6枚
 その手紙にはこんな一言しか書かれていなかった。





 ここにいるあなたへ


 もしも、欲しいものがあるのなら言ってください


 売ります ――――それ相応の代価と引き換えに















 商品番号01:<孤独緩和剤>



 青い空がそこにあった
 いつもいつも
 僕の上には 見渡す限り広大な空があった
 地面はとてつもなく ぬかるんでいたのだけれど



 カランと、簡素で空しい音をたてて転がったのは、壊れて取手が取れかかったバケツ。
 中からは水が滴って、既に水浸しとなっていた木床にさらに数滴追加する。
 無駄なことだ。そんなことしても、別に大して水位は変わりやしないのに。
「はい、無駄な抵抗! 俺らを避けて帰ろうなんて無理だよ〜。ていうかさせねぇ」
 やけに耳に通る大きな声で、たった今自分が思ったことを対象だけ変えてリピートされる。
 嫌な気分だ。何でお前なんかに、僕の胸中を言い代えられなきゃならないんだよ。
 そんな露骨な気分が顔に出てしまったのか。ふんぞり返る格好で偉そうに腰に手をあててこっちを見下ろしていた奴は、不愉快そうに眉をひそめた。
 びしょ濡れになった白いシャツの襟を、グイと引っ張り上げられる。
「んだよ、そのムカついたような顔はよ。ざけんなよてめぇ、何でこんなことされてんのかわかってんのか?」
 互いの顔の距離が数センチとなるまで近づけ、実に面白く無さそうに訊いてくるのは、名前もよく覚えていない背の高い男子。男が同姓を男子と呼ぶのはおかしいかもしれないが、学校での区別といったら大体がそんなもんだろう。
 放課後。ホームルームも終わってクラスの皆がそれぞれ教室を出て行こうとした時。ざわめく生徒たちの波間から割り込むようにバケツ一杯の水を汲んで持ってきた数人の奴らは、ショルダー型の鞄をちょうど肩に背負った僕に向かってそれを勢いよく浴びせてきた。避ける暇も、逃げるタイミングも与えられなかった僕は、至極当たり前にそれを頭から被る。
 正確には顔面からだったが、どちらにしろ濡れた前髪を指ではらってまず目に入ったのは、口元を気持ちが悪いくらいに歪め渇いた笑い声を発して腹を押さえる奴らと廊下からクスクスと指をさして笑う女子の姿だった。
 それほどに、このみじめな風袋が可笑しいのか。単に、興味関心の薄い他人のことだと鼻先であしらわれる事項なのか。
 いずれにしろ、水をかぶるという事柄によって髪がはりついている顔などさぞ情けないことだろう。けれどそれを自分のこととして考えてみたら、けして笑って流せることではない。
 そしてその後、押し倒すように床に突き飛ばされ、今に至る。
 煩いな……こんなことをされる理由がわかるわからないの問題じゃない。ムカついていると他人から見ても取れるくらいに、険悪な表情をしているのなら、わざわざ訊かなくてもわかるだろう。
 ざっと思考回路を思い返してみても、主観的に思い当たる節が何もないから余計に気分が悪い。第一、抵抗もしてない。
 勝手に話を進めるなと、口に出して言う代わりに相手の節ばった手をはらいのける。
 と、すぐに右頬を殴られた。
 きゃぁ、と見物人が騒ぐ。
 それがまた気に障ったが、特に怒鳴ったりすることもなく口元に手をあてる。切った……痺れで箇所は判断できないが、血がついてる。
「いい加減にしねぇと顎の骨でも折るぞ? 病院送りとかされたことあるか、おぼっちゃん。いっつも見下すような態度で見やがって……そういうところがたまらなくウザイんですけどっ!」
 荒々しく言って、奴の仲間らしい連中に合図をかけると、三人が僕の腕を無造作に掴んで締め上げてきた。
 関節がひねられて痛い。たぶんそれ以上やられたらうめき声のひとつでも上げてしまうだろうが、何とかそれだけは堪える。
 錆っぽい味が口の中にじわじわ広がるのを感じながら、近づいてくる男子の顔を見て考える。
 髪は自分と同じで黒いが、随分と目つきのキツイ目の前のこいつ……誰だったっけ。名前が思い出せない。
「何見てんだよ、コラ」
「……見てないよ。名前が思い出せないだけだ」
 先ほどとは違って、今度は思っていることをそのまま声に出して言った。我ながら間抜けなことをしたと思う。
 ほんの少しの間をあけて、次は膝蹴りを肋骨の隙間に入れられた。一番の激痛に、口元がゆがむ。
「ほらほらほら! 誰か教師の一人でも呼んでこねぇと、こいつ吐くまでやるぞ?」
 楽しげに、鬱憤をはらすように連続して殴られ蹴られながら、徐々にまた気分が悪くなっていく意識の中。
 視線をめぐらせて周りを見ると、呼んでくるどころか、つい今しがたまで集中的に視線をおくってきていた大勢の生徒たちはもうほとんどがこちらを向いていなかった。様々な背中が、関わりたくないという念頭を残酷なまでに語っている。そして聞こえた雑踏の声。
「なぁ、今日お前のウチに行ってもいいか?」
「明日の宿題、図書室でやっていこうよ」
 何も見なかった。そいつらの横顔からは、そんな逃避感しか観て取れなかった。
 醜態と言っても過言じゃない今の自分の姿は、そんなふうに踵を返されるくらい、きっと僕自身が見ても、醜さしか感じないのだろうか。


 解放されたのは、下校時刻を告げる校内放送が流れた頃だった。
 ようやくうめき声をだしたのは、奴らが教室を出て行ったすぐ後。我慢して我慢して、返って洩れなくなっていた小さな悲鳴。体中が痛い。本当に吐くまでやられるのかと思っていたが、何とかそれも免れた。
 絶対に痣ができているはずの腹部は、筋肉痛が限度を超えたときのような感じ。手をついて起き上がるだけでも腹筋を使ってひどく痛んだ。
「っ……何なんだよ、ホント」
 既に暗くなり始めた空の下、帰路を一人歩きながら低く呟いた。
 ちょうど上り始めていた坂の脇に沿って続く金網に寄りかかりながら腹部を押さえる。と、今まで何でもなかった喉が寒気を訴え、免れたと思っていた吐き気が胃のあたりからせりあがってきた。
 やばい。立ち止まってしゃがみこみ、慌ててズボンのポケットに手を突っ込む。急く気持ちに反して湿った制服の素材はなかなか目的のものを外に出そうとしないが、懸命に引っ張って、裏地が飛び出すのも気にせずにハンカチを取り出すと、口元にあてがって必死にこみ上げてきた悪感をとどめようとグッと手に力をこめる。だが、やはり耐え切れずにその場に膝をつき、道端は避けて道の傍らの草むらに頭をかがめた。
「……はぁ、……はぁ」
 冷や汗が首筋を伝う。嫌悪感が背中を這うように行き交うが、鳥肌となって現れるその感覚をどうにかできるほど人間万能じゃない。拭うように手の甲で口の端をこすると、少しの間を空けて頭を草の匂いが満ちる雑草の中から上げる。
 身体を網に預けるようにして立ち上がると、横を通りすぎていく通行人の視線が刺さった。汚い、そう言いたげな目。
 その疎ましげな顔を苦い気持ちで見て、僕は落ちた鞄を拾い上げると、ゆっくり足を進めた。
 たなびく雲とはこういう風景を言うのだろう。青さなどとっくにどこか遠くへ流れていった空はオレンジと紫が混同したような淡い色合いをしている。雲などは、赤いという表現も似合うくらいに明暗の鮮やかさがあった。
 最早手を伸ばすのも馬鹿らしいくらい高い位置にあるそれと、シャツの色を見比べてみる。だが時間が経って黒ずんだ血の色とは比べてみても何の意味もなかった。無造作にグイと引っ張ったシャツ自体もしわだらけで、また買いなおさなければならないと考えると、ため息しかでてこない。
 ふいに、先ほど教室を出て行く際に見た黒板の文字を思い出す。
『黒崎 豊マジ死ね』
 黄色のチョークで書きなぐられた粗雑な字面。それなのにやけに大きくて、目立ちすぎて仕方がない主張。
 ああ、いつかは消えるだろうよ。こんな調子じゃ。
 でもいざそうなったときは、お前らどころかきっと誰も気がつかないさ。
 いつも、いつもそう。気がつくどころか見ようとせずに、見るどころか知らないふり。知らないどころかまるで気がつかず、気がつかないどころか存在など端からしないように。
 誰もがすれ違う、僕と。この街並みの中じゃない。街並みなどでは区切れないほどに、とりとめのない長い列をなした人間が横を流れていく。嫌な視線をよこしては、立ち止まりもせずに。おそらくそれが学校でも続いている、それだけのこと。
 それを人はなんて呼ぶだろうか。無視、無反応、いや――――無関心。
 自分でも呆れるほどに嘲笑めいた笑いを浮かべてしまうのは、苦虫をつぶしたようなこの感覚に慣れてしまったからなのか。現に舌を苛む味気の悪さに、自然と八苦を重ねてしまっているからなのか。
 そう考えると、苦痛の面持ちも無表情になり、黒崎 豊はよろよろと、家路への道を足取りおぼつかずに歩いていった。




続く
2005/08/06(Sat)18:38:20 公開 / 菖蒲
■この作品の著作権は菖蒲さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは、菖蒲(アヤメ)と申します。
まずはこの作品に目を通してくださった貴方様、ありがとう御座います。

今回初めて投稿させていただきます。
今までいろいろな方々の作品を拝読させていただいてきましたが、やはり自分もその中に加わりたいと試みてみました。

まだまだ未熟者ですので、ご指摘や誤字・脱字の訂正など御座いましたらどうぞお願いします。皆さんの意見として真剣に受け止め、精進していきたいと思いますので。

○補足と致しましては、商品番号01というのは第一話というのと同じ意味となります。まだまだ物語の序文ですので、不明確な点も多いと思いますが、そこはこれから徐々に更新していければな、と思っております。

※若干、修正をしてみました。
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