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『穴』 作者:おんもうじ / 未分類 未分類
全角2035文字
容量4070 bytes
原稿用紙約6.3枚
 天井に、大きな穴が開いている。大きな穴だ。どこからどう見てもそれは穴であるが、どこからどのように繋がっているかはまるで分からない。ドラえもんの四次元ポケットにでも繋がっているのかなどという愚考を頭に描かせるそれは、本当に、底の見えないもので、天井の奥――ここは最上層だから屋根裏か――に繋がってる気配もなくて本当にこの世ではないどこかに繋がっているような雰囲気であった。
 いつから空いていたんだろうか、僕はふと疑問に思う。僕がこの一室を借りたときにはこんなでかい穴なんて気配すらみじんもなかったし、実際に天上は薄汚れてるだけであって、小さい穴さえもこれっぽっちも空いていなかったはずだ。ということは、僕が部屋を借りてから出来た穴だ。じゃあ、この部屋を出るとき僕は、原状復帰義務とやらなんやらで敷金として払ったお金をすり減らされるのではないか?そんな、誰がどう見たってこんな穴普通じゃ空くはずがないし、僕が空けたなんて言いきれる人間がいるはずがない。
 でも、やはり敷金が返却されないのは痛い。せっかく借りてからこの方、もともと汚れてたこの部屋を極力これ以上は汚さないようにしてきた努力も水の泡となってしまう。どうにかしてこんな穴ふさいでしまいたいところだ。
 だが、まぁ無理だな。諦めよう。いざとなったら裁判だ。これを僕が空けたなんて言う理論的証拠も物的証拠も在り得るはずがない。僕はふっと自分の愚考を嘲笑すると、その愚考にさよならをした。

 それにしても、何なんだろうな、この穴は。見るからに不思議な感じがする。多分、物理的にありえない自体が起きているような気がする。これまで、生きてきた中ではじめての不思議体験と言えよう。思えばこの佐々間 昴(さくますばる)生まれてこの方23年間、極平凡な人生を過ごしてきた。本当に今まで不思議な体験など一つも無く、平和で、安泰で、するりするりと人生を過ごしてきた。にしては僕が今目にしている現実の割りに僕は平静を保っている。平凡な人生に慣れすぎてしまって、目の前の現実を受け止めてないのだろうか。でもおかしな話だ。ぬるま湯にずいぶん漬かった後に熱い風呂に入ると、実はこれ、すぐには適応できないものであるはずなのだけれど。ともかく、不思議な穴だ。
 
 僕はベッドの上で穴をみつめながら、その穴についてただ漠然とずっと考えていたが、ふと時計を見ると、その針は僕に日常を呼び戻した。
「やっべ、バイト遅れる」
 僕は急いで準備をし、玄関を出た。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 その穴は、結構前から――もうおそらく2ヶ月以上は経ったかと思う――あるのだけれど、穴に気づいて以来というもの、これといって穴自体に変化はなかった。がしかし、今日、その穴にある変化が起きた。それは、僕がバイトから帰ってきて、疲れた体をさっさと風呂に入れてやろうと思っていたときの事だ。
 穴が、何か奇妙な雰囲気をかもし出していた。超音波でも出しているかのごとく、景色が波紋状に揺れる。ぐらりっ。眩暈がして、倒れそうになるが、なんとかベッドのふちに手をやって体を支えた。
 なんだ、穴から放射状に空間が揺れて、……うぅっ……気持ち悪い。僕は吐き気を押さえて、ベッドに体を倒した。それでもその穴からくるプレッシャーはやまない。
 しかし、本当に吐きかけて、おえっとなって喉を押さえたそのとき、ぴたっ、とその歪みは止まった。
 何だったんだ??と僕は穴に目をやる。しかし、その穴はすでに何事もなかったかのようにすまし顔で平常を取り戻していた。
 僕は先ほどでた吐き気をまだ癒す事ができず、ずいぶんとその場を動く事ができなかった。本当に迷惑な話だ。なんで僕があんな穴なんかにこんな目に合わされないといけないのか。全く。ここの大屋さんから慰謝料さえもらいたい気分だ。でも、一回こんな気分にされたぐらいで慰謝料など貰えるのだろうか?まぁ貰えないとしても他の部屋に移ることくらいはできるだろう。でも、あの大屋さん頑固だからな、難癖つけてこの穴は僕が作ったとか言ってきそうだな。僕がそんな下らない考えを巡らしていたそのときだった。

 ぽとっ。

「ん?」
 つい言葉にでてしまう。今、何かが落ちるような音が聞こえたような。いや、正確には擬音と呼ぶべきなのかもしれないが。音か擬音か、正しくはどちらかはわからないが、とにかくそんな気配がした。
 僕はしばらく気持ち悪さを癒すために瞑っていた目をあけ、おそるおそるその穴へ目を向ける。何もない。そして、その視線を少しずつ下に持って行く……するとそこには信じられないふうけがふっっ。






「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」






ナマクビダーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!







 しかも僕の。









Fin

2005/07/30(Sat)22:30:24 公開 / おんもうじ
■この作品の著作権はおんもうじさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは。おんもうじですはい。あの、えっと……

コメントはとくにありません(死
あしからず^^;

誤字脱字修正しました。失礼します

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