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『自壊』 作者:茂吉 / ショート*2
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 「この弾丸は安全です。何が安全かと言いますと、原S爆弾のように破壊した後に何かしらその場所の生態系を破壊してしまうという危険性が「全くない」というところです。しかも戦車の装甲をいともたやすく貫く貫通力と、燃焼による爆発の破壊力を秘め迅速で的確な戦闘を行うには欠かせないものなのです!これを使用するだけでわが国の兵士の死亡率はぐっと下がり、制圧スピードも飛躍的に上昇するのです」
 M国が新たに開発した弾丸「劣化Uラン弾」が開発された時、M国は二次被害の可能性を否定し、誇らしげにこの弾丸がこれからの戦争で如何に機能的に働き、自国の正義を示せるかを語っていた。
 調査機関から、この弾丸に使われている「劣化Uラン」は彼らの言う「原S爆弾」と基を同じくする物質から作られている事実、そしてH射能汚染の可能性を指摘されても彼らの主張は揺るがなかった。
 理由は簡単だった。「原S爆弾」は使用前、「劣化Uラン」はその廃棄物から抽出しており被爆の問題はなく、寧ろ廃棄に困る物質を再利用している事を評価してくれと言わんばかりであったのだ。

 −…そんな時、M国から遠く離れた地域の国と国が戦争を始めてしまった。仮にI国とQ国と表記しておこう。
 戦争を始めた理由はI国がQ国の油田を不正に占拠したからであった。
 Q国と親交のあったM国はここぞとばかりに嬉々として大量の援軍と兵器をQ国に送った。もちろんその中には新兵器である「劣化Uラン弾」も大量に含まれていた。
 戦闘はM国の参入で勢いを得たQ国の圧勝だった。新兵器の投入はすぐさま効果が現われ、Q国M国の戦死者数は目に見えて激減し、その反面I国の戦死者は激増した。
 戦局はつねにQ国有利に動いていき、大規模なI国首都での市街戦を最後にI国は無条件降伏をし、戦争はQ国側の圧倒的勝利で終結したのであった。終結まで僅か1ヵ月足らずの短い期間の戦争であった。
 戦闘終了時、I国の市街で装甲を貫かれ破壊されたI国産戦車がテレビで多く映されM国の国民は「正義の鉄槌が見事に下された」と喜び、誇らしげに「世界のM国」と口々に叫んだ。他国の首脳たちも、その破壊力とそれに伴う自国の被害の少なさに興味を持ち…同じくらいM国に怯えながら…M国に接近してきたのであった。
 こうしてM国はたった1回の他国間の戦争でM国の力を示し、今まで以上に世界に対する発言権を得ることが出来たのである。

 I国とQ国の戦争の後1年間で他に2度他の地方で紛争があったのだが、これらも全てM国の「劣化Uラン弾」が活躍し、短期で(結果的には犠牲者が少ないうちに)終結した。
 それまでの歴史の中でこのように紛争が短期で終結したことは殆ど無かったのが、1年でこうして3回も続いたことに世界はM国に尊敬と賞賛を与え、ますます世界の中心としての評価を得たのであった。

 M国はこのように世界で評価が高まり、唯一の大国と呼ばれることを誇りに思い、非常に満足していた。
 その誇りは他国に対する余裕にもなって国策に現われた。敵対関係と噂されていた国々に対しても寛容になり、交易を盛んに行い経済援助することも厭わなかった。
 それは「優秀な兵器を多数持ち」相手より自分の方が優れているという優越感から来る危うい寛容さであったのだが、そのお陰で世界中の交易が盛んになり、その他先進国も、発展途上の国々も多く利益を得ることが出来たのであった。
 こうして短い間ではあったが、世界が「兵器を背景にした平和的外交」という微妙なバランスの上で歯車が噛み合い、成り立っていたのである。

 異変が表立って起きはじめたのはI国とQ国の戦争から3年の歳月が過ぎた時だった。
 それはI国の地元有力紙がある衝撃的な記事を発表したことで始まった。

 「戦後ベビーの3割が何らかの障害を持って生まれてきている」
 「白血病、ガンの患者が戦前と戦後の発生率で2倍以上の差に」
 「この惨状は過去J国が受けた「被爆」と酷似している」
 「原因は恐らく「劣化Uラン弾」であると思われる。M国は嘘をついている」

 「戦後を辿る」という記事の中でI国の記者は、世界が想像だにしなかった恐るべきデータが出ていたことを示し、M国を強烈に非難したのであった。
 
 その記事が出た事を知った世界がまさかの事態に動揺した。すぐさまM国を含む各国の調査団が派遣されI国での実態調査が行われた。
 病院の実態調査に、廃戦車等からH射能が出ているのかのチェック、植物や水に含まれるH射能のチェック等くまなく調査が実施された。
 …そして調査団が派遣されて3ヵ月後、公表されたのは「限りなく黒に近い灰色」という何とも煮えきれない結果であった。
 調査団が調べている間に起こった「その後の2つの紛争地域でも「I国と同じような症状を確認」という大問題も結局は同じような形で決着をつけられてしまった。
 いや、実際はI国も2つの地域も間違いなくH射能汚染による「被爆」の症状が出ていたのであったのだが、M国の各国に対する圧力と「可能性の問題なだけで証拠が無い」の一点張りに対する手段が無かったためであった。
 こうして半ば無理やりにI国達の責任追及から逃れたM国だったが、また新たな問題が押し寄せてきたのであった。…それは自国M国の中で起こった。
 I国の問題を深刻に捉え、遠征に行って来た兵士たちの現在を調べてみようと大手タブロイド紙が調査した結果驚くべきデータが検出されたのである。

 「I国とQ国の戦争に参加したM国兵士帰還後のベビーの2割が何かしらの障害をもって生まれている」
 「帰還兵士ベビーと一般ベビーの幼児ガン発病率の差は7倍以上の差に」

 この事実にはそれまで「我々が世界を平和にしてやったのに何を言っているんだ」と他国に対して踏ん反り返っていたM国国民にも寝耳に水の出来事だった。
 事実が発表されたとたん帰還兵士の家族や擁護団体が連日M国の大統領官邸に向かってデモ行進を行い大統領から謝罪と賠償を求めたのであった。
 しかし結局は「世界を平和にしたM国」と誇りをもつ国民の「平和のためには多少の犠牲は避けられない」という誰に対して指す「多少」というのか解らない理論が大勢を占め、また「今「劣化Uラン弾」の危険を認めてしまうと各国に対する莫大な補償と賠償が必要になり、大国M国の栄誉が地に落ちる。そんなことを誇り高きM国が死んでも認めるわけにはいかない」というM国の首脳の考えもあり、帰還兵士達の存在は握りつぶされてしまったのであった。

 しかし、やはりこのような苦しい対応で無理やりねじ込もうとしても反動が起こるのは当然であった。
 圧力をかけて抑えていた国々が口々に不満を上げるようになり、各地で反M国デモが続発し、M国を狙う暴動が続発した。
 M国はその度に「安全である劣化Uラン弾」を使用し暴徒を鎮圧した。…ここで「劣化Uラン弾」の使用を止めると「危険を認めた」と各国がまるで鬼の首を取ったように書き立てることを恐れたためであった。

 そんな力の抑圧を繰り返してしまったM国でついに悲劇が起こった。
 民主主義では到底ありえないはずであった反乱が起こったのだ。
 それは帰還兵士に同調した一部の軍部の者が企てた力での訴えであった。
 反乱軍はM国の主要都市の一つを占拠し、「全世界へ「劣化Uラン弾」の危険性を認める謝罪と、被害を出した国々や人々に補償と賠償をし、今後一切の使用の禁止を宣言する」事を大統領に請求した。
 「このままでは世界全土が「被爆」してしまう。その前に何としてでも止めるんだ」
 反乱軍のリーダーは映像を通して声高に全世界に主張したのであった。自国を裏切ってでも世界の未来を守りたい。声明を発表している男達には悲壮な覚悟が見て取れた。
 しかし、大国であり世界の中心である誇りと栄誉に縛られたM国が内部の反乱を認め謝罪するはずが無かった。大統領はM国の恥じと糾弾しすぐさま掃討作戦を実行した。
 世界の批難を受けつつも市街戦で一気に反乱軍を鎮圧し、結果…声高に危険を叫んでいたリーダー含め全ての反乱軍が殺害されたのだった。

 「予想以上に反乱軍の抵抗が激しく、結果的に意思は違えどわが国を思って立った者を全て失ってしまったのは悲しい結末だった」
 鎮圧後国防長官が涙ながらに会見を開き犠牲者を偲ぶ談話を発表したのであったが、他国の戦争で人道的配慮を常に先頭に立って行ってきたM国が何故か自国の反乱を…手段はともかく平和を叫んでいた者達を…1人も捕らえる事もなく何故殺害したのかは、本当に抵抗が激しかったとしてもありえない事態である、と各国に疑問を呈する事になった。
 この内乱で世界はより一層M国に対する疑問を深め、頑なに自らの過ちを否定するM国は益々世界から孤立していくことになっていったのである。
 しかし、どれだけ世界から批難されようと、最強の軍事力と経済力を持つ唯一の大国M国は自国の正義と正しさを主張し、挙句の果てには「どうせ文句を言っても、我々が居なければ何も出来ないくせに」とも取れるような発言を繰り返し、最終的には自国についてくる国には手厚いまでの援助を行い、批難する国には徹底的な制裁を加えると開き直りともとれる政策を開始したのであった。
 そして最後まで従わない国々を会話では無く「安全な劣化Uラン弾」等を使った武力で制圧するという暴挙に出てしまったのである。
それはまさに孤立した大国の世界を破滅に導く暴走であった…

 ここで、私は教科書を閉じた。
 目の前には私の話を熱心に聞いていた生徒達が不思議そうな顔をしている。
 「はい。「地球汚染の致命的な出来事、第一章M国」はこれで終わりにします」。何か質問のある人は手を上げてください」
 「先生!」
 多くの生徒がやはり腑に落ちないのか手を上げてきた。
 「はい何でしょう?」
 「結局、M国は「劣化Uラン弾」の危険性を最後には認めたのですか?」
 質問をした生徒は「認めなかったのだろうな」と漠然と感じている表情だった。
 「いいえ、結局M国は認めませんでした。それどころか、先程までの事象後も「嘘の安全性」を示すために各国の暴動鎮圧に使いつづけたということです。お陰で世界の至る所で汚染が進んでしまうことに拍車がかかったのです」
 「おかしいですよ!実際M国は危険性を理解していたのですよね!?」
 M国の行動が全く理解できないという憤慨した口調で他の生徒が叫んだ。
 「本当、おかしいですよね。普通に考えたら危険性を認めてこれからをどうするかを考えるべきであった事は明白です。」
 生徒達は私の話を肯定するように大きく頷いた
 「しかしです」
 私は、生徒達に言い聞かせるように話し始めた。
 「今でこそこうして地球人は地球人として一つに纏まっていますが、そのころは先程説明したように地球自体でも多くの民族が多くの国を作り、その1つ1つのコミュニティを中心に別々に生活していたのです。…別々のコミュニティでも共同の生活が出来ていれば問題なかったのですが、「この国よりは上に行きたい」という競争意識が歪んだ方向に走ってしまい、何処のコミュニティも「弱みを見せるとその場所を徹底的に突かれて追い落とされてしまう」という強迫観念めいた意識がとても高かったのだと思われています。M国は先にも言ったように大国としてのプライドと名誉を傷つけてなるものかというものばかりに固執し、それが結果的に大局を見誤ったのは間違い無いでしょう」
 「バカみたい」
 誰かが、私がこの事実を知った時思ったそのままの言葉を吐いた。
 「本当、実際私もバカバカしい事だと思います。何故そんなしらがみに縛られていたのか意味がわかりませんよね。だけど、この出来事から学ぶ事は大変重要なことですよ。その場その場での行動ばかりで先を全く考えていなかった祖先の愚行を反面教師として、今の私たちは生きていかなければいけません。未来を考え、私達にできる最善の行動を常に意識していくことが大切なのだと。そして最早取り返しのつかない所まで侵食してしまい普通に暮らせなくなってしまった地球と言う星を、我々人間が作り出してしまった重い責任を忘れてはいけないのです」

 そう…生徒達にはまだ言っていないのだが、汚染を拡大化させた張本人と言われている劣化Uラン弾は、対象物に当たると燃焼しH射能を撒き散らし近くの砂利や埃までも被爆させてしまったらしい。そしてそれらが風に乗り遠くの大地や人をも被爆させてしまい被害を拡大したとのだ。
 また、逆に対象物に当たらず、燃焼出来なかった弾は土壌を汚染し、地中の水分に溶け込み地下水に侵食。それらを吸って成長する植物達が先ず始めに被爆し、それを食べている動物達も被爆、その動物を食べる動物が最後に被爆するという何とも悲しくも愚かしい食物連鎖の悲劇を巻き起こしたのだ。
 それが大国の暴走により至る所で使用され、結果動物の殆どが死滅し、人間も皮肉なことに各国が密かに被爆を恐れて作り出していたこのシェルターという建物に入れなかったものは全て死滅したと言う。考えただけでもゾッとすることを先祖はしてきたのだ…。

 「今、私たちはこの全て先人たちが「被爆」から逃れるために作った建物に閉じこもって生活しています。水は大気中から集めて少しずつ作る事しか出来ない貴重な資源です、作物は全て人工の土壌から作り人工の太陽で成長させています。私たちが生まれた頃からこの生活が続いていますので「不便だ」と思うことはありませんが、これだけは覚えておいて下さい。私たちの先祖の時代は、水は自然と溢れ、大地には緑が溢れ、太陽という光が照りつける豊かな時代だったことを。そして、その自然を破壊し、その所以で自らの生活する場所をも壊してしまった浅はかで愚かな先祖がいたことを」

 地球からH射能が抜けるまで後1000年以上かかると言う。
 私たちはその時が来るまでこの先祖の犯した大変な罪を子孫に伝えていかなければならない。
 自壊した世界を取り戻すために…
2005/05/29(Sun)14:04:51 公開 / 茂吉
■この作品の著作権は茂吉さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
皮肉感たっぷりな作品を短くまとめて書いてみようと思ったのが…なんだか極論になった挙句ユーモアの一つも入れられないものになってしまいました。というか教科書そのものみたいな書き方になってしまったかな、と反省です。そんな作品ですが最後までもし読んでくださる方が居られましたら、本当お付き合いありがとうございました!それだけで感謝感激雨あられでございます。至らないところが沢山あると思いますので、ご指導よろしくお願いします。
あ、最後にこの物語はフィクションです登場する国は実在しませんので宜しくお願いします(笑)
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