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『DOPE』 作者:田中 通 / 未分類
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「ねぇ、開けてくんない?」

クーラーどころか扇風機すら無い、鉄筋コンクリートのアパートの一室。
吉村は目眩がするような暑さの中、同じ空間にいる人間の言葉を聞こうと努力した。
「何…?松定。」
寝ころがしていた自分の上半身を起こして、問いかけた相手の手元を見た。
そこには何かの液体やら、針やらが不衛生に広がっていた。
ピアスを開けるものだと、吉村はなんとなく理解した。
「ピアス…、開けんの?」
「うん。」
微笑みを浮かべて頷きながら、松定は己の用意した、そのための針を手でくるくると弄んでいた。
「それで開ける気かよ。」
「うん。」
「でもお前、耳とかもう開ける場所ねぇじゃん。」
吉村が指差した松定の耳には、新入りを迎え入れることのできる場所などなくて。
「んー…。今度はね、ココに孔、開けようと思って。
 ね、開けてくんない?」
そう言って松定は自分の舌を出して指差した。
「ベロ?…やだよ。
 前、ヘソピ開けてもらった店で開けりゃいいじゃん。」
眉を顰めて吉村は拒否の言葉を松定に渡したが、松定は微笑を浮かべたままだった。


耳には異常な数のピアスと、ボディピアスは臍だけだが、いつも微笑みを浮かべたままの表情、何を見ているのか分からない目と、それとたまに変なことを言う、松定。
この異常者を、吉村は始めて見たとき薬でもやっているのかとおもった。
まぁ、今でも実際はどうだか分からないが。

この異常さが楽しくて、吉村は松定との付き合いを続けている。

付き合いが短いわけではないが、長年付き合って来たわけでもない。
初めて会ったときは、あまり近づかないようにしていた。

ただ、松定が臍につけたピアスを見たとき、魅せられた。
それを見たとき、吉村は自分の体が興奮しているのに驚き、そして悟った。

『何だ。オレも、異常じゃん。』

身体が震えた。
それに、快感を覚えた。

これが、オレの本質か。 と、吉村は無意識に自覚した。


そのときを、そのことを、その感覚を、吉村は今、思い出した。


「ねぇ、ダメ?吉村に開けて欲しいんだけど?」
松定が自分の左手の人差し指と、親指で舌をつまんで問いかける。
吉村は身体が熱くなるのを感じた。

下腹から上り詰める熱。

あついあついあつい。

異常な自分。  今までの自分は無い。


松定の出した舌が、吉村の異常な欲情をかきたてた。

「何で? オレ?」

吉村の目眩の中の質問に松定は問主と目を合わせずに答えた。

「吉村が欲しいけど、無理だから、吉村のアナが欲しい。」

笑いながら。

「オレが欲しい?」
「うん。でも、今は吉村のアナの方が欲しい。」

ゾクゾクした。

「他は、いらない。
 吉村が、作って。」

腹の中が、ゾワゾワと騒いだ。






「いたい?」
「へーき。」

「また、どっか開けてね。」

「もう、どこにもそんなの作ってやれねーよ。」

それでも、松定は微笑んだまま。


異常者と異常者が孔でつながり。


興奮と快感の互いが。


不始末は目に映らない程度。

2005/05/25(Wed)00:57:21 公開 / 田中 通
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