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『あの世からの訪問者』 作者:ゆうき / ショート*2 未分類
全角976文字
容量1952 bytes
原稿用紙約3.3枚
 これはどういうことだ?
 浩二は目を大きく見開いていた。なぜなら、浩二が目を覚ました時、死んだはずの親父と、爺ちゃん、さらには曾爺ちゃん、曾婆ちゃんが我が物顔でリビングを占拠していたからだ。
 彼らは朝っぱらから、酒を飲みまくっている。ドンチャン騒ぎだ。
 浩二は一瞬夢かと思い、頬をつねってみたりしたのだが、やはり痛かった。
 信じられないが、これは現実なのだ。
「何よ……これ?」
 唐突に後ろから声がした。振り向くと、妻の良子が顔を青白くして立ち尽くしている。
「俺にもよくわからないのだが……って良子!!」
 浩二は倒れかけた妻の良子を両手で抱き支えた。
 どうやら、常識を大きく逸脱した光景に、良子の精神が耐えられなかったようだ。良子は昔から、線の細い女性だった。
「おーい、浩二。何してんだ? せっかく帰ってきたんだから、お前も酒を飲めよ。寿司はもう注文したからな」
 親父が日本酒を片手に持ちながら言った。
「ちゅっ、注文したって、親父!! 俺の家には、そんな金ないぞ!! っていうか、何で生き返っているんだ!?」
「何でってお前、お盆だからだろう」
 悪びれる様子も無く、親父が酒を口に運んだ。
「お盆だから帰ってきたって……。んな無茶苦茶な」
 浩二のその言葉に、親父がドンと机を叩いた。
「いちいちうるせえぞ、浩二!! いいからさっさとお前も酒飲めや!!」
 そう言うと、親父は浩二の口に日本酒を注ぎ込んだ。





「さーてと、帰るかな。そろそろ時間だ」
 夜の十時を過ぎた頃になって、顔を真っ赤に染めた親父が言った。爺ちゃんたちが、名残惜しそうに酒臭いため息をつきながら、腰を上げる。
 やっと……終わったのか。
 浩二は朦朧とする意識の中で呟いた。もう一生分酒を飲まされた気分だ。すでに、四回吐いている。
 隣の良子は、呆然とした表情で、虚ろな視線をどこか遠くに彷徨わせていた。発狂しなかったのが、せめてもの救いだ。
 でもこれからが大変であろう。彼らが散らかしたゴミの処理、料理、酒の代金の支払い。
 考えれば考えるほど頭が痛くなるが、元凶である彼らが帰ってくれるのだ。
 これほど、嬉しいことは無い。
 その時、親父が浩二の肩を叩いた。
「何してるんだ、浩二? 早くしないと、あの世の迎えのバスが行ってしまうぞ」






             〜完〜
2005/09/20(Tue)23:44:40 公開 / ゆうき
■この作品の著作権はゆうきさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ショートショートで書いてみました。
地震でかなり寝不足気味です苦笑
それでは、読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
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