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『僕の為に争わないで! 上』 作者:七夜 / 未分類 未分類
全角2083.5文字
容量4167 bytes
原稿用紙約6.05枚
七海(ななみ)がいなくなったのは、ある暖かな春の日。
1週間続いた春雨がやっと止んで、待ってましたとばかりに、腕いっぱいの洗濯物を抱えて飛び出してくる白衣の天使、もとい看護婦のおばちゃん達が、病院傍の朝露に濡れた広場で、干し物そっちのけで他愛もないお喋りをしている頃だ。
その真上の病室、大窓のガラス越しに映える四角い青とは対照的な、生気のない白の中、クマのパジャマの袖に隠れた、白くて細い棒きれの様な腕を、渾身の力でゆるゆると差し出しては「死にたくないよ。一緒にいてよ」と、声にならない叫びを僕に伝えてくる。
僕は混乱と冷静さが入り混じった非常に不自然な状態で、とにかく彼女を繋ぎとめようと拙い言葉を幾つも紡ぎ、「ダイジョーブ、ダイジョーブ」などと、意味もなく必死に繰り返していた。
けれど――

ぱたん、と、零落ちる音。

単調で無機質な機械音。

表に出される事のない、静かな動揺や焦り。

後に続く医者の言葉を聞かない様、僕は何となくに見せかけて窓の外に目をやった。
丁度、雨が降り始めたらしい。
慌ててシーツを仕舞うおばちゃん達の姿が、やけに可笑しくみえる。
空では何万もの雨粒のプリズムが輝く橋をかけていたのだけれど、僕はもう、それを綺麗だと感じる心を持ち合わせてはいなかった。


七海はその時タダの、物になったのだ。
たとえ僕の涙と流れる血潮を全て注いだとしても、決して蘇る事はない。
しかし、思い出や恋しさは事あるごとに、キネマの如く鮮明に自分の心に浮かび上がってきて、僕はまるで、延々とそれらを上映し続ける、クーラーの効きすぎた薄暗い映画館に閉じ込められてしまった様だった。

自分をごまかす時、僕は独自のよく分からない論理を用いる事にしている。
今回はとりあえず、彼女の大部分は水、空気、土や木、動物になって、今も僕の傍にいる、と考える事に決めた。
まぁ、ほんの一握り。彼女の本質的な部分は、もう僕の傍にはいなくて、それが無ければ彼女も彼女でないのだけれど、それはこの際考えに入れない。
「彼女はいつも、僕の傍にいる」
オーケイ、これをテーマに小説なんか書けば、読者が泣くこと請け合いだ。
詩的な言葉が時として、裏で出回るアブナイ薬なんかの様に人を惑わせ、めくるめく空想の世界へと連れ出してくれるのは、本当にありがたい事だ。

僕は少しずつ立ち直り、明るさを取り戻しつつある。
次の年には新しい恋人もできたし、胸を切り裂く様な痛みも、今はほとんど感じない。
一生忘れないと誓った事でも、月日さえ流れてしまえば、いっそ全て消え去ってしまえばいい、なんて思う様にもなるもので、都合の良すぎる僕は今、まさにその状態にある。
3年と3ヶ月、夏も終わりの8月末だ。

長い夏休みの予定をほとんど消化して、僕はすっかり気が抜けてしまっていた。
最初の方で一気に課題は終わらせてしまったし、特にやるべき事も見つからず、狭い部屋にごろごろしながら、手近のパソコンを一日の半分以上いじっている。食事すら儘ならない事も度々だ。
これではいけないと感じ、散歩でもするかと思い立ってみても、数メートル先の扉がやけに遠い。ダメだこりゃ、と呟いてみた後、再び横になる。
エンドレスに続くその動きには自分自身飽き飽きしている筈なのに、どうもやめられない、とまらない。――かっぱえびせん。そういえば、この頃食べてないなぁ。
くだらない事が次から次へと浮かんでくるのを、とりあえず楽しんでみる事にする。
この夏行った海、溺れそうな彼女を助けようとした僕が逆に溺れかけて、彼女に助けられた苦すぎる思い出。お祭り、カキ氷で頭痛を起こして花火もまともに見られなかった。「雅弘くんって弱々しいね」と笑って言われたのは、大きな痛手だった。
楽しいことを考えるはずだったのに、何だか気分が暗くなってしまった考えるのを止めて息をつくと、少し楽になった気がする。窓の外はいつの間にかどんよりと曇っていて、洗濯物をしまおうと思って立ち上がったら、洗濯をこの頃全くしていない事に気づいてしまった。再びがっくりと床に吸いつけられる。
そういえば、今年の夏休みはあまり良い事がなかった。確か、牧場へ行った時も牛に蹴飛ばされたし――
「雅ちゃん、大丈夫?」
底抜けに明るい彼女の声が聞こえた気がする。大丈夫な訳ないに決まってるじゃないか。考えてみろ、転がされて糞まみれだぞ?
と、ここまで考えて、ふと思いつく。少し前の回想では、彼女は自分を「雅弘くん」と呼んでいた気がする。新しい彼女は2年経った今でも、自分を「くん」付けで呼ぶし、こんなにフレンドリーに接してはくれない。
ついに回想が空想に発展したか、と自分の哀しさを噛み締めようとした時、再びさっきの声が響く。
今度ははっきりと自分の脳内に、じゃなく部屋全体に。
「雅ちゃん、久しぶり」
思わず背筋が寒くなる。背後を見ようと恐る恐る首を回すと、バキバキと言う音がした。
ドアの所には、見慣れたクマのパジャマに身を包んだ、居る筈のないヒト。
や、と言ってゆるゆると上げたのは白くて細い棒切れの様な――


未完
2005/02/13(Sun)01:53:47 公開 / 七夜
■この作品の著作権は七夜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして、七夜と申します。
今まで閲覧だけさせてもらっていたのですが、
今回、何を思ったのか自分で書いてしまいました。
幽霊話ですが、題名から読み取れる様に、結局はギャグに落ち着く予定です。
拙い作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。
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